マガマガくんが猛き炎にリア充自慢をするようです   作:ムラムリ

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マガマガ君、R18ものしか書いてないなーって思ってたら出来た話。


マガマガくんが猛き炎にリア充自慢をするようです

 諦めきれないような悲鳴を上げながらも、とうとうナルハタタヒメは地に伏した。

 以前のようにどこかへと逃げ帰る事もなく、暫しの間のたうち回りながらも、その肉体からゆっくりと生気が失せていく。

 そんな様子を見届けた後、しかし俺はマガイマガドは相対していた。

 一時的に共闘した間柄とは言え、ハンターとモンスターという関係は変わらない。

 ただ、俺を睨みつけながらも、ソイツは倒れ伏したナルハタタヒメに意識が向いており、しかも涎を垂らしているその様子に、俺は苦笑せざるを得なかった。

 手持ちの物資をほぼほぼ使い尽くし、ナルハタタヒメもその動きにとうとう鈍りが見えてきていた頃にやって来たそのマガイマガド。

 もしかしたら、俺とナルハタタヒメが共倒れになる事でも画策していたのではないか? とかも思う程のタイミングだったのだが、そんな事は無かったようだ。

 こいつは最初から、ナルハタタヒメという馳走を食う為にやってきたのだ。

「……良いよ。俺だってもう疲れた」

 ただでさえ回復薬ももう尽きているのだ。

「帰ろうか」

 オトモ達にそう告げて武器を収めれば、マガイマガドは襲ってくる事も無かった。

 

 その翌日、研究者達からの報告を受けた時。ナルハタタヒメの死体は至るところが骨まで食い荒らされていたと言う。

 しかも、食われた量はマガイマガドと言えど明らかに一匹の腹に収まる量ではなく、更に同種の大小の様々な歯型があったとか。

 どうやらあの後、家族でも連れてきたらしい。

 

 それが一週間前の事だった。

 

*

 

「あー……」

 溶岩洞から少し離れた場所。隠れた温泉を見つけたのは、過去に採取に訪れていた時の偶然だ。

 効能だとかは分からないが、上手いこと岩場に阻まれてモンスターの痕跡も殆ど無いこの温泉は、長時間ダラダラと浸かっているのにうってつけな、温いものだった。

 ナルハタタヒメを倒した事で、ぼちぼち長い休暇も貰って。

 こうして真っ昼間からぼけーっと空を眺めながら、団子やら肉やらを肴にしながら酒を飲んでいる。

 ……正直に言おう、もう暇で仕方がない。

「暇だなぁ」

 何度も何度も口に出してしまう程だ。

 ……確かにギリギリの戦いではあった。マガイマガドが来ていなかったら負けていたかもしれない。

 だが、マガイマガドが来てからは一気に形勢が逆転した。

 当然と言えば当然である。あんな天変地異を起こすような古龍に喧嘩を売れる時点で、百竜夜行に便乗していたような個体とは別格だと分かるし、元々俺とギリギリの鍔迫り合いをしていたナルハタタヒメが、俺と同時にそんなマガイマガドも相手取るなんて出来る訳もなかった。

 子を宿していたであろう腹に刃尾を食い込ませながら容赦なく食い破られ、鬼火が全身を焼き爆ぜさせる。それを振り解く間もなく俺が急所に致命を叩き込む。それは最早虐殺と言っても良いものだった。

 だから俺は後に響くような大怪我もしなかったし、武器や防具を限界まですり減らすという事もしなかった。

 俺もオトモも、一日も経てばクエストに赴ける体調ではあったのだ。

 

 白い雲、青い空。

 湯気がふわふわと飛んでいる。

 宴で美味い飯も酒も食い飽きた。退屈だからとクエストに出かけようとすれば止められる。

 こうして外に出るのにも、装備を採取用に変えなければ許可は出なかっただろう。

 それだけ、俺の事を里の皆が心配していたのだという事なのだろうけれど。マガイマガドの事もあってピンピンな状態で帰ってきたんだから、さっさとそんな心配は解いて欲しかったし、俺だって元に戻りたい。

 そんな事、表立って言う事も出来なかったが。

「それにしても、あのマガイマガド……」

 妻帯者なんだよなあ。

 見た限りだと大した傷も付いていなかった。番も子供も居て、あの実力だと良い縄張りも持っている事だろう。

 人生ならぬ、竜生満帆という訳だ。正直に、ちょっと羨ましい。

 俺にも嫁さん候補は居るとは言え……いや、そういう事を考えると碌な事にならなさそうだからやめておこう。うん。

 そうじゃなくて。

 思う事は、やっぱりアイツ、俺とナルハタタヒメの共倒れも狙っていたんじゃねえか? と言う事で。その位の強かさは持ってない方がおかしい。

 それに考えてみると、俺があの場から去れたのは、俺が温情を掛けたのではなくて、アイツにとって俺を倒すより食欲の方が優先されたから、という方が合ってる。

 俺がもう碌なアイテムを持っていなかった事を察していても全くおかしくないし、そもそもくたびれた俺達が二戦目でアイツに勝てたかと言うとかなり怪しい。

「本当に、美味しいところだけ持って行きやがってあのヤロウ……」

 俺だってあの状態のナルハタタヒメの素材で何が作れるのか、楽しみにしていたところあったのにさ。

 イブシマキヒコとナルハタタヒメの防具、控えめにクソ性能だったけど、あの状態のナルハタタヒメの素材こそが真価を発揮出来るんじゃないかとか少しは思ってたのに。

 今度出会ったらタダじゃおかねえ……って言っても、アイツが居なかったら俺が危なかったのも事実な訳で。

 はぁ、何とも腑に落ちねえ。

 

*

 

「……ぶっぺぇ!」

 やべえ、寝たまま温泉の中に沈みかけてた。

 まあ、起きたけど。

「うー、あー、あっ?」

 気を取り直して団子でもつまもうかと思ったら、何かガルクよりちょっと大きめの、小さいマガイマガドが俺の団子を貪ってる。

「おいっ、おい……」

 その奥で俺の採取用の装備がでっかいマガイマガドに踏み潰されている。

 今更気付いたのか、馬鹿め、というような顔。

「……」

 素っ裸。装備なし。持ち物、なし。ばちゃばちゃと水を跳ねさせる音が後ろからも聞こえてきて振り向いたら、もう一匹のでかいマガイマガドがもう一匹の子供を抱えて温泉に入っている。その子供は俺の肉を齧っている。

 逃げ場も、なし。

 すっかり青褪めた俺に、俺の装備を破壊したマガイマガドが歩いてくる。

 こいつ、あの時のだ。特徴は無いが、どうしてか断言出来る。家族連れでこの温泉にやって来るとか、そもそもこの場所知ってたのかよ。それとも俺を尾けてたのか?

 俺の目の前まで来たそいつは、最後に咥えて持ってきたハンターナイフを俺の目の前で落として、踏み砕いた。

「……」

 幸いなのは。今すぐ殺される事は無さそうだ、という事だ。

 殺すつもりなら、俺はとうにこの温泉の中で臓腑もばら撒かせている。

 次にそいつは俺を温泉から引きずり出して、俺の臭いを嗅ぎ始めた。

「おい、何だよっ」

 そう言うも、抵抗なんて出来ない。少しでもこいつが力を加えれば、俺の体は簡単に引き裂かれるだろう。

 色んな場所の臭いをくまなく、果てに股間の臭いすらも嗅いでから、そいつは顔を上げて。

 凄く見下した、にやけた顔をした。

「え、あ……あ?」

 なまじ人と少しばかり似たような顔をしているからか。

 その顔の意図が分かる。分かってしまった。

 ーーお前、番も居ないのかよ。

 ……何だこの屈辱。

 最後にそいつは、残っていた俺の酒瓶を咥えてぐいっと器用に飲み干すと、俺を尻尾で捕まえて温泉に入る。

 深いところまで行くと、人みたいに仰向けになって、俺を腹の上に置く。

 前脚で抱えられて、赤子をあやすかのようにぽんぽんと顔を叩かれた。

「……おい、放してくれよ。帰らせてくれ、頼むから」

「グルゥ?」

 こいつ、人の言葉分かってないか? というか、酒に関してもそれがどういうものか分かってるよな!? おい、その番のマガイマガド、俺を憐れむ顔で見るんじゃない!

 というか、これ絶対に俺をペットみたいに扱ってるよな。そうだよな?

 俺が一から十まで悪いんだけどさ、そうだけどさあ!

 俺の肉と団子を食い終えたマガイマガドの子供の二匹が泳いでこっちにやって来る。

「ギャウギャウ!」

「ゴルルゥ!」

 父ちゃん、こいつ何? 食っていい?

 絶対そんな事言ってる。

「グルゥ……」

 恐る恐るその父親を見れば、目が合った。

 案の定と言うべきか、どうしようかなあ? と意地の悪い顔をしている。

「えーっと……何をすれば良いでしょうか」

 そう言えば、マガイマガドは悩むように頭を上げる。

「おい、お前やっぱ人の言葉分かってるだろ!」

 それで? というように前脚の指で頭を抑えつけられる。

 ばしゃばしゃ。

 泳いでくる音。

「あっづぅ!」

 子供の一匹が待ちきれないように俺の足を噛んだ。

 容赦なく痛い、っていうか食い千切られる!

「ゴルルァ!」

 その途端、父親が吼える。子供は途端に退散していった。

 ただ。

 その後俺を見る目は、助けてやったんだからな? という、やはり上から見る目で。

「仕組んでいたんじゃねえだろうな……?」

 そいつは何も答えなかった。

 

 足からだらだらと血が流れる。回復薬の一つでもあればすぐに治るんだが、それらはこいつが装備と一緒に潰していたし、その代わりにこいつがやった事と言えば、温泉から出して舐める事だった。

 何だろうなこいつ。ハンターが死んだら狙われる事まで分かってんのか? 子持ちの今はそこまでして殺すメリットも無いと?

 良く分からんが、少なくとも俺を生かしておく事にメリットがあると思っているのは確かだ。

 それでも……そのでかくてザラザラとした舌でべろり、べろりと舐められるのは正直気味が悪い。

 顔には出せないから、空を眺めている事にする。

 ……何でこんな事になっちゃったんだろうな。俺が悪いんだけどさ。だって、他の竜の痕跡なんて無かったもの。俺が見逃していただけだったかもしれないけどさあ。

 血が止まったのか、マガイマガドは舐めるのをやめて、それから尻尾で酒瓶を俺の前に持ってきた。

「……また持って来いと?」

「グルル」

 逆らったら、分かってるよな?

 牙を見せつける顔は、そんな事を言ってるに違いない。

 逆らわなかったとしても、子持ちのお前が逆恨みで危険を冒す事も無いんじゃないか? ……いや、こいつなら痕跡を残さずに面倒臭い嫌がらせを幾つでもやってきそうだ。

「……分かったよ。一回だけだぞ、一回だけ、な。早い内に、ここに置いておくからさ」

 不服そうな顔で、けれどマガイマガドは頷いた。

 

 血が固まれば、俺を噛まなかった方の子供のマガイマガドが近寄ってくる。

「……何だよ」

 番のマガイマガドは俺を睨みつけてるし。この足じゃ逃げる事はおろか、歩く事もままならねえし。生きた心地がしねえ。

「グゥ」

 目の前に小さい刃尾を突きつけられる。それには団子の串が挟まれている。

「俺は便利屋じゃねえんだぞ……」

 悪態を吐きながらも、今の俺には受け取るしか選択肢がない。

 父親のマガイマガドはそんな俺を相変わらずニヤニヤとしながら見てるし。俺の失態で酒が美味いってか? バカヤロウ。

 結局。俺は痛む足を引きずって、温泉に浸かるそのマガイマガドの隣に座り直した。

 おや、と見られるが、馬鹿にされながらでも、隅で寂しく座ってニヤニヤ見られているよりは、こいつに話しかけていた方がよっぽどマシだ。

「で? あの古龍、ナルハタタヒメって言うんだけどさ。アイツは美味かったのかよ」

「グゥゥ〜〜……」

 思わずごくりと喉を鳴らしていた。それ程だったらしい。

「お前がいつから居たのか俺は知らないけどさ、あの古龍、元々あそこまで強くなかったんだぞ」

 ほう? と、耳を傾ける。

「あいつは雌で、雄の番が居たんだけどさ。

 近くに干からびた雄の死体もあっただろう? 似たような形をした、青色の」

 そう言えば、何とも言えないような顔をして。

「アイツ、役に立たなくなった雄の首に噛み付いて、その全部を奪い尽くすかのように吸い取ったんだよ」

 おうおう。今の顔を見られないように番の方を見ないようにしている。

 ……一矢報いてやった。

 そう内心で笑っていれば。

 次にソイツは刃尾を動かしたと思えば俺の股間に当てて、俺を見てきた。その顔は脅迫とかではなくて。

 ーーそれをちゃんと使った事も無いお前の方がソイツより下じゃねえのか?

「…………」

 何で俺はこいつの言いたい事をここまで理解出来ちまうんだ。

「グルルゥ?」

 言い返せないのか? そうだよ、クソが!

 

 それから暫く後。

 そのマガイマガドはばしゃあと温泉から出て、唐突に俺を尻尾で巻きつけながら外へと出た。

 どうやら、先に俺だけ送り返すようだった。……素っ裸で。

「せめて装備の布くらいはっ」

 うるせえ、と言うようにいきなり走り始めた。

 どどっどどっ。

 速い! 景色が霞んで見える!

 ただ、そんな驚きも一瞬で吐き気に変わる。

 俺の事など最低限しか気にしておらず。乗り心地と言うか、なんというべきか。それは言うまでもなく最悪で、吐いてこの尻尾を汚したら即座に殺されると思うと必死で口を抑えるしかない。 

 しかも途中、ラングロトラやリオレウスとすれ違うと、何だあいつ? という目で見てきたのだけは不思議と分かった、というか意図的に速度落としやがって、羞恥心も酷かった。

 しかもベースキャンプの近くまでやって来れば、今度は目の前にラージャン。

「ゴアアアアッ!」

 マガイマガドを見るなり戦闘態勢に入ったラージャン。マガイマガドも応じて、ボボボッと全身に一瞬で鬼火が滾る。当然俺を抱えている尻尾にも。

「え、おい!?」

 その瞬間、俺は空高くに放り出されていた。

「……は?」

 ラージャンの目も真っ裸の俺に釘付けになり。ぽかんと口を開けている。

 その次の瞬間。ボンッ! とマガイマガドの背後で鬼火が爆ぜて、更にマガイマガドが加速し、ラージャンを突き飛ばす。ラージャンがごろごろと転がりながらも体勢を整えた時には。

 マガイマガドは既に刃尾を槍のように突き出して、その首を貫いていた。

 そして、放り投げた俺を咥えて回収する。

「マジかよ……」

 せめてきちんと装備を整えて挑めれば、五分五分くらいだろうと思っていたんだけどな……。

 確実に俺より強いじゃねえか。

 

 そうして俺をベースキャンプまで送り届ければ、殺したラージャンを見せつけながら、分かってるよな? という顔をしてきて。

「……いつ、どこに持っていけば良い?」

 俺は裸のままにマガイマガドの言いなりになりながら、最後にラージャンをそのまま晩飯として持って帰るマガイマガドを見届けるしか出来なかった。

「…………はぁ」

 素っ裸で、べったりと涎塗れになった全身。

 休暇、本当に要らなかったよ。

 本当に。本当に!

 

*

 

 月が空高く登る頃。行きとは違う格好で帰ってきた狩人は、どうしたのかと聞かれてこう返した。

「酷いリア充自慢にあった」

 げっそりとした顔で答える彼の真意を知るのは、その全身にマガイマガドの臭いがたっぷりと残っている事を察したオトモ達だけだった。

 そしてまた、その日からどうしてか彼女を作ろうと躍起になり始めたカムラの猛き炎は、やる事成す事が残念で。

 何だかんだでひっそりと交流の続けさせられる事になるマガイマガドに、会う度に鼻で笑われるのであった。




狩人:

MHRise主人公。
童貞である事までマガイマガドに見抜かれた哀れな猛き炎。
ウツシ教官を超える残念な人に落ちぶれます。

マガイマガド♂:
めっちゃ強い。
賢いし頭も回る。
べっぴんな番と子持ち。
縄張りも良いところにある。
人語も完全に理解し、酒も嗜む。
そういう知識は、人と何かしら過去に交流があった or 今でも誰かとしてるから。
そんな設定は細かく考えてないけど、辛い過去とかはない。
百竜夜行のマガイマガドはこいつの子供というのは少し考えたり。

マガイマガド♀:
番の事は変な部分もあるけど、強いし献身的だし信頼してる。

マガイマガド子1:
主人公に噛み付いた方。直線的で力強いけれど、父親からすると頭使わないせいでその内ハンターに狩られそうだなー、とか思われてる。

マガイマガド子2:
主人公に団子を要求した方。色んな事に興味を持ってる。父親からすると、そこまで強くはならないだろうけど長生きはするだろうなー、とか思われてる。


この小説出来たきっかけは、まあ、やっぱりナルハタタヒメとの決戦でマガイマガドがやって来たってのが一番の要因で。
百竜夜行を起こした奴をぶちのめしに来たって言うよりかは、単純に美味そうだったから、って方が個人的には合ってる。

続く可能性はあんまりないです。構想あるっちゃあるけど。
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