マガマガくんが猛き炎にリア充自慢をするようです   作:ムラムリ

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怨嗟マガマガ君は絶対に童貞だよねっていう話。


怨嗟マガド君は童貞で残念です

 ……同じ臭いがする者は、狩人であろうと、竜であろうとも見逃してきた。

 若い頃、角の一本と片目を切られただけで、もうそれ以降雌から見向きもされなくなった我と同じような。

 どれだけこの身を鍛えようともただそれだけで、もう我には命を繋ぐ事は出来なくなったのだと理解させられた我と同じような。

 そういう輩は見逃してきた。

 そう。我が潰すのは、リア充だけである。

 

 やってきた狩人は、今まで返り討ちにしてきたどの竜よりも、古龍ですらも上回る。

 だが、残念な童貞の臭いも、今までの何よりも強かった。

 鬼火を収めてみれば。

 狩人も武器を収めて、何故か一度帰り。

 程なくして子猫も子犬も置いて、一人で再びやってきて、そして我の目の前でどすんと座った。

「なあ……あんた……俺と同じだよなあ?」

 ……そうだな。

「言葉も通じるのか」

 童貞を見逃してたら覚えていたな。

「なるほど。なるほどなるほど……」

 こっちも、身振りだけで伝わるもんなんだな。

 そう思っていれば、うんうんと頷く狩人は、座ったまま俯くと、ぽつり、ぽつりと喋り始めた。

「……頑張ったんだよ? 俺。

 元凶だと思われていたメル・ゼナを倒しました。

 何か知らんがやってきたシャガルマガラも倒しました。

 真の元凶たるガイアデルムも倒しました。

 何かまたやってきた、あんのクソ迷惑カマキリカップルも倒しました。

 いつでも勝手にブチギレてる激昂ラージャンも倒しました。

 体内器官が暴走して暴れてるばかりのバルファルクも倒しました。

 そうじゃなかったら救世主だとか言われないもんね!

 でもさ、お茶に誘おうとするだけでも、『すまない、その日は用事があるんだ』とかばっかり言われるの。

 その気持ち、お前になら分かるよねえ、分かるよねえ!?」

 持ってきた瓶の中身を、ぐいと飲むと。

「『すまない、君の事はとても尊敬しているのだが……とてもすまない、男としての魅力は感じないんだ』とか、『ごめんなさい、猛き炎。貴方と一緒に居る未来が、どうしても思い浮かばないのです』とかさあ、それが英雄に言う事かよぉ!

 う、う、う、うわーん!!」

 挙句の果てに我の前脚に抱きついて泣き始めた。

「…………」

 すまない。我にでも、お前に番が出来ない理由は分かる。

「う゛る゛ぜえ゛!!」

 きったねえ顔。

 

 それで、我がここに来た理由なのだがな。

 ここらにも、貴様にも、幸福な同胞の臭いが染み付いている。

「…………え、ああ? アイツ? 強いよ。とても。

 あんたも相当みたいだけどさ、うん、そうだな、多分ダメだな」

 ……通じるんだな。軽い身振りだけで。

 それで、アイツとは?

「俺が童貞だからって言って馬鹿にしてくる、あんたと同じマガイマガド。

 で、妻子持ち。

 いや、待て待て待て待て。言っただろ、強いって。

 それに俺な……少し助けられてるんだよ、アイツに。それ以上に色々使われてるんだけどな!

 いやいや、それとは違うんだけど、うん、なんだ。

 俺とお前、戦ったとして、きっとどっちもタダじゃ済まないだろ?

 その程度じゃ、お前、アイツには負けるよ。

 俺、アイツに未だ勝てる気しねえもん。

 妻子持ちに負けて死ぬとか嫌だろ?」

 ……詳しく聞かせろ。

「……アイツ、竜に対して二撃以上振るっているところを見た事がねえんだよ」

 ……は?

「まず、俺が見たのは、ラージャンを出会い頭に、首を貫いたところだったな。

 次にオロミドロ。泥の中に突き刺したと思ったら、脳天を貫いて引き摺り出してきやがった。

 それからバゼルギウス。空中で揉み合った上で、地面に頭から叩き落としてたな。

 ぜーんぶ、一撃必殺。そんな事出来るか?」

 ……全部、弱かったんだろう?

「いやいや。最近だと、俺がバルファルクと戦ってる時に、唐突に現れたかと思ったら胸に刃尾を突き刺して、さっくり殺すとそのまま持って帰りやがった。

 バルファルクだぞ? 古龍だぞ? 俺が結構長い時間戦っていたとはいえ、まだまだ元気だった奴をだぞ?

 だからな……俺はあいつには逆らわないって決めてるんだ、もう」

 バルファルクって、あの天彗龍の事だよな? あの細い体をした、何よりも速く空を飛ぶ古龍だよな?

 我が見た時は自我すら失ってとにかく暴れ回っている奴で、我でさえも近寄りたくないと思わせる奴だったが……。

 …………世の中とは、世知辛いな。

 持ってる奴は何だって持っている。

「お前だって分かっていた事だろ?」

 いや……いや、そうだな。

 

「……で? お前、どうすんの?

 お前がきっと、俺の故郷を過去壊滅させかけたマガイマガドってことは大体察せられるんだけどさ。

 まあ……俺がまだ生まれてない頃の話だし、俺はお前にそこまで恨みを持ってない。それに、同じ強い童貞だしな!」

 ぶっ倒すぞ。

「だがな。ここに居たらお前を討伐せざるを得なくなるぞ。

 現に、近い内に、その時のお前の角を斬り飛ばしたウチの里長が来てしまうらしいし、流石に里長を単独で行かせるくらいなら、共にお前を討伐するよ、俺は。

 どうする?

 ここに留まって、俺と、お前の角と片目を斬り飛ばした奴と二対一で戦って死ぬか、それともここから去るか。

 実力を弁えてるなら、さっさと帰りな」

 本っ当に苛立つ事を言うな、こいつは。

 そもそも、我に縄張りなんて無えんだよ、帰る場所なんて無えし。

「それに、俺も言える事じゃないんだけどさあ。叶わない物事に固執しちまってる時点で負け組なんだよな。

 お前、負けて死ぬまでリア充を潰して生きるつもり? あのリア充マガドより弱い時点で、いつか負ける時は来るぞ。

 その時、俺の一生は満足出来るものだったって思える訳?」

 う……うぐ……。

「ほらほら。そんな怨みたっぷりなナリして、そこで考える位の頭も持ってんだろ、お前。

 そういう最期を迎えたくなかったら、帰る場所がなくとも今日はどっか行っておけ。適当に誤魔化しておくからさ」

 

*

 

*

 

 キュリアに毒された……傀異化した個体を狩る日々が今日も今日とて続く。

 カムラの里の方にもその羽を伸ばしやがって、学者さん達が言うには、これでも数は減ってきている方だと言うが。

 せめて、新しいメル・ゼナがやってきて来んねえかな。あいつが居ればキュリアもそこらのモンスターに好き勝手に寄生する事はねえだろ。

 って思ってたら本当に来た。

「メル・ゼナが来てから傀異化もすっかり収まった事だし、メル・ゼナ自身もそう暴れてるわけでもないし、討伐はなしで良くない?」

 俺がそう言うと、それでも観察はしてきてくれと言われて、はいはいと答える。

「……私の同行は必要だろうか?」

「いや、いいよ。俺と二人きりになりたくないでしょ」

「それは……」

 ……否定してくれよ。

 

「で、はい。あの童貞と遭遇したと」

 赴いてみれば、刃尾と三叉尾を金属質な音を立てながら剣戟のように打ち合った後、メル・ゼナのブレスに正面から耐えて、鬼火の大爆発を起こし、痛み分け。

 まあ、古龍と相打ちにするくらいの実力は持ってるんだよな、あの童貞。

 それなのに角を切られただけで雌から見向きもされなくなるとか、雌の目も狂ってんじゃねえかな。

 メル・ゼナも手強い奴だと認識したのか、一度退却しようと翼を開いて飛び立つ。

 逃すものかと、その童貞マガドが追撃しようとして、足を止めた。

「あっ……」

 メル・ゼナがそんな童貞マガドの様子に警戒したその瞬間。

 上から飛び掛かったもう一体の、俺を馬鹿にしてくるリア充マガドが、その首に噛みつき、地面に叩き伏せ、何もさせない内に首を引きちぎった。

 飛び立っていくキュリア達。

「殺さないでくれよ〜……」

 俺は膝から崩れ落ちた。

 マガイマガドの二匹は、そんなキュリアになぞ興味を持たず、互いを認識する。そもそもキュリアが寄生しようとすれば、どこに噛みつこうともすぐさま鬼火で爆散させられていく。

 そして、その二匹はいがみ合うかと思えば、どうにも見知った顔なのか、互いの顔をじーっと見たり、臭いを嗅いだり。

 ……どうやら、親族らしい。

 

「……要するに、この兄を超えたくて早くに親元を離れて、力を手っ取り早く付けたくて、過去のカムラの里で起きた百竜夜行に乗じたところ、片方の角と目を切られた、と。

 なるほどねー……。

 お前、短絡的な行動が全部裏目に出てるんじゃねえの?」

 うるせえ! と吠えられる。

 それにしても……順風満帆に成長して、通常個体のまま、この特殊個体にまで成った弟をも凌いだ実力を持ち、そして家族をこさえている兄かあ。

 きっと小さい頃から優秀で、それがコンプレックスで仕方なかったんだろうか。

「で、兄からしたら、何十年ぶりに会った弟はどうなんでしょうか」

 すると、じろじろと見た挙句。

『身の丈に合わない力を持っても、その身を滅ぼすだけだぞ』

 そう端的に告げると、弟は再びうるせえ! と吠えてから、メル・ゼナの足の一本を食い千切ってどこかへと去っていった。

「あーあ」

 あいつ、この兄を超えられる事は多分無いな。

『生きてるとは思わなかったな、あいつ……』

 聞けば、まだガルク位の大きさの頃に飛び出したんだとか。

「お前がいじめてたんじゃねえの?」

『…………』

 おいおい、否定しねえぞ、こいつ。

 でもまあ、こいつがやりそうな事は、直接いじめるとかじゃなくて、ひたすらにマウントを取るような事だろうなあ。

 お前まだ鬼火を使って二段ジャンプ出来ねえの? とか、そんな感じの。

 いや、より陰湿だわ、それ。手を出してない分、親からしても何も分からないだろうし。

「あ、そういえば、お前、メル・ゼナ殺さないで欲しかったよぉ……」

 は? と言うようにこっちに顔を向けてくるマガイマガド。

 事情を話せば、少しばかり済まなかったと言うような顔を向けてくる。

「傀異クエスト、もう行きたくないんだよぉ。無駄に硬いしさあ、一撃一撃が重いから油断も出来ないしさあ。

 なあ、お前、一緒に来てくれない? メル・ゼナが生きてりゃもう行かずに済んだんだからさあ」

 やなこったと、メル・ゼナの美味そうな部分だけを引き千切って持って帰ろうと準備をするのに対して。

「せめて、そっちで出た傀異化した竜はそっちで後始末してくれよ」

 それに関しては尻尾を振って分かった分かったと言うように答えて、ポンッ、ポンッと鬼火を爆ぜさせながら帰っていった。

 後に残ったのは、大して剥ぎ取る場所の残ってない、メル・ゼナの死体。

「……来た時期が悪かったな、お前」

 尻尾だけ剥ぎ取っておこう。

 

*

 

 寒冷群島。

 今日は傀異化したベリオロスが相手、と聞いてきたのだが。

「何で居んのお前」

 ベースキャンプのすぐ近くに、その童貞マガドが陣取っていた。

『兄が、傀異化した竜には、俺でも多少手こずるとか言っててな。

 それなら、我がさっくり倒せれば兄を超えられるって事だよな?

 その証人になって欲しい』

「え、あ、ああ」

 おい。

 キュリアに支配された竜と、キュリアを支配する古龍のどっちが強いと思ってるんだ?

 お前、騙されてるよ。

 ……でもまあ、俺ももう戦うの面倒だし。

「じゃあ、頑張ってこいよー」

 そう言うと、元気にベリオロスへと戦いにいく。何の疑いもせずに。

 あいつがモテないのも、結局、あいつが残念だからだ。

 うん、俺と同類だわ。

 南無南無。




怨嗟マガド:
幼少の頃、兄にマウント取られまくって、成長し切る前に親元を離れる。
強くなろうと躍起になって、過去の百竜夜行に便乗した結果、フゲンに角と目を切られる。
雌に見向きされなくなって、リア充スレイヤーに転職。
特殊個体になるくらいに強くなったものの、その頃にはリア充スレイヤーを拗らせ過ぎて、そういう意味で雌から見向きされなくなってる事に気付いてない。
そして再会した兄に早速騙されるくらいにはバカ。
強さは狩人と同等か、やや低いか。

狩人:
リア充マガマガ君と付き合いが長くなってしまったせいで、意思疎通がもう普通に出来る。


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