マガマガくんが猛き炎にリア充自慢をするようです 作:ムラムリ
何か、ミョーにこの短編読まれたり好まれたりしている気がする。
マガマガ君とは親しくしたいですね。
塔。
端的な名で呼ばれるそのフィールドは、今でも未知で覆い尽くされている古代技術を駆使して作り上げられた、天をも貫く程の高さを誇る建造物の周囲一帯である。
エルガドからやや遠くにあるその地域に、金銀火竜が訪れたという報告が入って来た。
朽ちてもなお、崩れるような気配を一切見せないその塔には、強力な竜や古龍が縄張りにしようとやって来る事は珍しくない。
人里からは遠く離れており、そう気性が荒くなければ討伐まで決定される事はなかった……が、今回に関しては色々と微妙だった。
*
襲いかかって来た鋼龍の竜巻を掻い潜りながら、金火竜はその頭を尾で引っ叩いた。
「ギャァッ!?」
弾き飛ばされ、起き上がった所に更に一発。
「グゥッ!? グ、ゲボッ」
猛毒の染み込んだ尾の棘。それが数本、鋼の鱗すらも貫いて鋼龍の頭に突き刺さっていた。
毒に犯され、口から血を吐く鋼龍。元々毒を不得手とする古龍だ、身に纏っていた暴風も弱まってしまう。
そこへと金火竜は容赦なく青い火球で追撃し、再びダウンさせると、前後不覚に陥ったその鋼龍の目の前に上体を持ち上げて立ち塞がった。
「ガッ、ググ……」
鋼龍が見たのは、その鱗と同様に金色に輝く、冷徹な目。
その片足が持ち上げられると、鋼龍の頭を鷲掴みにし、持ち上げ、思い切り踏みつけた。
ゴシャッ!
「イ゛ア゛ッ!?」
その鉤爪にも毒はある。思い切り握られ、叩きつけられた勢いで顎を貫かれ、脳天から頭蓋に差し込まれ、背筋から食い込まれ。
視界すらもぼやけていく。
そして、金火竜は再び足を持ち上げた。
ベギッ!
鋼龍の角が砕けて、からからと転がっていく。
グヂャッ!!
鼻が潰れて赤い血がたっぷりと吐き出される。
ドギャッ!!
その蒼い目玉が潰れて中の液体が血と共に垂れていく。
「グルル……」
それでも金火竜はこの鋼龍に対して憂さ晴らしをするように、その息の根が止まろうとも、暫くその頭を踏み砕き続けていた。
「…………」
襲いかかって来た爆鱗竜の爆鱗の雨をひらりひらりと造作もなく躱しながら、その背後へと容易く到達した銀火竜。
逃げる暇も与えず、その頭を鷲掴みにして地に叩き伏せる。
「ゴウッ!?」
上空に舞い戻り、強くブレスを溜めるその姿。
炎などこの俺には効かないぞ、馬鹿め、と起き上がりつつ思っていると、その口の中から見える炎は、どうしてか青い色をしていた。
頭の中で疑問と、そしてそれ以上の警告が鳴り響いた時には、ブレスは眼前まで届いており。
「ギィアアアアアア!!??」
更なる火力を以て強引に焼かれる苦痛に悲鳴を上げる。
バンッ! ボボンッ! ドガンッ!!
そして、切り離さない限りは炎に包まれても爆発しないはずの爆鱗すらも立て続けに誘爆を起こし、その衝撃で爆鱗竜はひっくり返された。
ズンッ!
「ヒィアッ!?」
その上へと着地した銀火竜。
既に全身は見るも無惨な黒焦げになっており、目も焼き爆ぜてしまったのか、その顔が向く先も覚束ない。
「グゥゥゥ……」
ベリッ、ブチブチチッ!
ドスッ、ザグゥッ!
この銀火竜もまた、爆鱗竜で憂さ晴らしをするように、今度は翼を引き裂き、爆鱗もなくなった胸に鉤爪を突き立てる。
暫しそうして虐げた後には、とうに爆鱗竜は絶命しており、それでもやり足りないのか、再び空へと飛び上がると、その青い炎のブレスを再び浴びせかける。
するともう、そこには、真っ黒な炭と、焦げついた染みしか残っていなかった。
「…………」
*
『倦怠期の夫婦って怖いな』
「なんだいきなり」
久々に会ったと思ったらいきなり何を言うんだこのリア充スレイヤーは。
『金銀火竜が塔に現れたと聞いてな、腹立たしいと思いながらも、古龍を凌ぐ強さを持つとも聞いていたしな。取り敢えずはと、我は様子を見に行ったのだ』
「うん」
『すると、別にイチャついてはいなかったのだがな、金火竜は憂さ晴らしに鋼龍を踏み潰しており、銀火竜は別の場所で爆鱗竜を憂さ晴らしに焼き尽くしていた』
「わお……」
『イライラしながもな、互いの事を想っているその姿がとても我の気に触れてな。
だが、襲い掛かれば一匹でも拮抗する上に、時間を掛ければもう一匹も合流するのが目に見えてな。
そうなれば我と言えど勝ち目はない。
そうしてやりきれない思いを抱えながら帰って来たのだ』
「……はあ」
帰って来たのだ、って。
「それで? ムカつくから共に殺しに行こうってのには行かないぞ俺は」
『えっ』
「いや、俺は別に素材目的とかで竜とか古龍とかに喧嘩吹っかけるほど喧嘩好きじゃないし……それに、既に出来ている幸せを自分から壊しに行くほど……野暮でもないの」
落ちぶれてないって言ったら流石に不味い。
『……そうか』
露骨にしょんぼりしやがって。
『では、我はどうすれば?』
「えぇ……それ、俺に聞く?
前にも似たような事言わなかったっけ。なんか別の趣味見つけろとかそういう事さぁ」
『……考えておく』
そうして去っていった。
……何だったんだアイツ。
*
とは言え、諦め切れるものではない。
この怒りを、この憎しみを、捨てろと言うのか?
いや……分かってはいる。分かっては。
このままこんな事を続けたところで、我はその内、子種も何も残せず死ぬだけだと。
けれど、それでも、我にはこれしかないのだ。もう季節がどれだけ巡ったか分からない程に、どれだけの番を食い千切って来たのか分からない程に、我はそれだけをし続けて来たのだ。
我よりあの番が強いからと言って、それを諦めろと言うのか?
それなら……でも、死んだ方がマシだとは言えない。かと言って、我は、角も失っている。
我は他の同族にはない特別な力を手に入れた。けれど、それでも、子種を残す事はもう出来ないに等しいのだ。
なら、どうすれば良いのだ?
……結局、また塔にまで来てしまった。
至る所に金火竜と銀火竜の痕跡が残っている。炎が吐かれた痕跡も残っているが、両方の爪痕や臭いが残る場所では、それは手加減されたものだ。
どーせ、くだらない事で怒って、喧嘩して、そしてまた時が経てばイチャイチャするんだろうあいつらは。
ぶち殺したい。片方の首を掻っ切って、怒った方が突っ込んできた所を返り討ちにして屍を重ねたい。
そんな事、今の我には出来ないのだが。
くそ……くそ。
この感情をどうすれば良い。策を弄してもあの金銀火竜を完全に分断する事など出来ないだろう。
やっぱり諦めろと? この感情をどうにかして収めろと?
…………何か居る。
辺りを見回す。月が高く上っている。朽ちかけた柱が至る所に聳え立つこの地。
痕跡は金銀火竜のものしか無かったが、僅かに、ほんの僅かに金銀火竜以外の臭いがする。
「……誰だ?」
「へぇ……気付くんだ」
声だけが聞こえた。その方を振り向くと、先程までは何も居なかった柱の上に、迅竜が居た。
通常とは違う、白い毛皮。
こいつ……かなりやる。
「君、この前も来てたよね。憎たらしい目線をあの夫婦に向けて。何か許せない事でもある訳?」
「……夫婦でいる事が気に食わない」
「……え?」
「倦怠期だろうと何だろうと、番でイチャイチャしてるのが我にとっては気に食わないんだよ!」
「…………それだけ?」
何だその呆気に取られた顔は!
「貴様だって番が居ないなら少しは分かるだろうが! 貴様からも雌の臭いなぞ全くしないからな!」
「いや、全然。誰かと番になるとか面倒臭いじゃん」
「……………………は? い、いや、貴様、何を言ってる?」
「縄張りを持って、番と好き勝手する子供を外敵から丁寧に守って、飯もきちんと与えてとか、ある程度育ったら狩りの仕方を教えてとか、面倒臭くない?
思い出すとさあ、よくも僕の両親はあんな面倒臭い事やってたよ。感謝はしてるけど、僕には無理だね」
こいつの言っている事が理解出来ない。
「別に迅竜なんてどこにでも居るんだしさ、僕一匹が好き勝手に生きたところでどうって事もないし。
それなら好き勝手に生きた方がお得だからね。
責任を持って、番と子供を守るとか、そんな事より楽しい事は沢山溢れてるし」
「……楽しい事、とは?」
「そりゃあ、美味しいもの食べたり、まだ行った事のないような場所に訪れてみたり。
こうやって便利な体も持ってるしさ、人にちょっかいかけたりも時々してるよ」
そう言うと、一気に姿を眩ませた。
あの霞龍と同等程に見えなくなっている。
「……それで、貴様は満足なのか?」
「うん。他の竜とかに言っても納得してくれる事少ないけどね。僕は満足してるよ」
「…………貴様、人間臭いんだな」
「それは良く言われる」
あの狩人が、我でも見て分かる程に雌に惹かれなさそうな雰囲気をしているのに、どうして我のようになっていないのか。
少しだけ分かった気がする。
*
『我は、少し旅をする事にしようと思う』
「何だ唐突に」
昨日までのが嘘みたいに、怨虎竜っぽくない落ち着いた雰囲気を出してしまってさあ。
モテそうじゃないか、クソが。
『親元を早くに離れてから、我の中にはずっと恨みや妬みといったものが渦巻いていた。
漸く、それを客観的に見れるようになった気がしてな』
「……はぁ」
おいおい、何があったんだこいつ。
『滾らせ続けていた鬼火も収めて、ゆっくりした時間で己を見返したいと思ったのだ』
「…………そうか」
『貴様も来るか? 貴様にもそういう時間が必要かもしれんぞ』
「……かもしれないけどなあ。俺達は、そう簡単に生まれ育った場所とかそういうものを放って好きには出来ないんだよ」
『だろうな』
何だよ、その分かっていたような言葉は。
『それじゃあな。我は東に行く。気が向いたら追って来い』
「……へいへい、行ってら」
帰って来なくて良いぞ、とまでは言う気にはなれなかった。
そしてとても気軽な足取りですぐに姿が見えなくなってしまうのを見届けると、どうにも取り残された気分が拭えなくて。
「…………付いて行けば良かったかなあ」
石を蹴っても、そのモヤモヤとした感情は晴れなかった。
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> 我でも見て分かる程に雌に惹かれなさそうな雰囲気をしているのに <
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金銀火竜:
倦怠期。でもラブラブなのは見て分かる。ついでに古龍より普通に強い。
月迅竜:
独身貴族。
怨嗟マガド:
全く異なる価値観を知って、結構落ち着く。
1~2年後に帰って来たら番が出来てる。
そして猛き炎がとうとう発狂して出奔する。
怨嗟マガドの番
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実は居た幼馴染が見直してくれた
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角無しでも強さを認めてくれたヤンキー
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角無しでも落ち着きに惚れた淑女
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角無しでも女王様が最低限強さを認めた
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巣立ったばかりのおもしれー女
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兄の番が子育てを終え円満に別れた後に番う