マガマガくんが猛き炎にリア充自慢をするようです   作:ムラムリ

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原初を刻むメル・ゼナ格好良かったな〜〜〜〜って思ったらこんなのが出来た。


マガマガくんは王様と一緒に猛き炎を探すようです

 強さというものに悩んだ事が余りなかった。

 才能というものなのだろうが、ふとした時にその理由を考えると、暫しそれに悩む時間が出来た。

 己が他の同族や竜、古龍と比べても何が優っているのか? 何故、己は他の同族が苦戦する古龍ですらもあっさり屠れるのか?

 答えとしては、己自身の肉体と世界のの繋がりを生まれながらに鋭く感じられているからだ、というところに落ち着いた。

 風のざわめきとそれが運んでくる臭い。大小様々な生き物達の営みが発する様々な信号。それらを己は生まれながらにして深くにまで感じる事が出来ていたようだった。

 闇夜でも鬼火を出さずにいつもと変わらず行動出来るのは、同族の中でも己だけだった。

 雨風が激しくとも獲物の場所を晴天の時と変わらず察せられるのは、より嗅覚の鋭いような竜ですら出来ない事だった。

 突き刺す刃尾を常に急所に突き立てているのは己くらいのものだった。

 外敵を見た時に、どの位の力で叩いたり突き刺したりすれば致命傷になるのか事細かに分かるのも己だけだった。

 

 老いて尚、豊富な戦闘経験を以って広大な縄張りを保ち続けている雷狼竜が居る。

 観察眼が鋭く、今も尚技量だけは成長し続けている童貞狩人が居る。

 そういう奴等は下手な古龍より強い……が、それでも己には届かない。

 己のような才能を持った他者に、己は今まで会った事がなかった。

 多少寂しさのようなものを覚える事もなくはなかったが、会う事があれば、己の築いてきた安寧が全て根底から揺るがされる事となると思うと、別に会わなくても良い……と思っていたのだが。

 同じような才能を持つ、しかも古龍に会ってしまった。

 

*

 

「ここ辺りは羽虫が少ないな」

 青い翼を持つ、キュリアを持たないメル・ゼナ。

 ここらで通じる竜の言葉を流暢に使いながら、まるで警戒心の欠片もなく話しかけてきた。

 ただ歩くだけでも洗練されたような身の振る舞い。

「羽虫? キュリアの事か?」

「そんな名など付けるな。あの愚鈍で怠惰で臆病で地中から這い出る事しか趣味のない太陽から見放された糞な奴の配下になど、名を付ける事すら許したくない」

「……そうか」

 会話をしながらも、腰が引ける。

 こんな事など初めてだ。同じ才能を持つ者同士、そこにあるのは単純な種族差。

 同じ才能を持つからこそ、分かってしまう。

 ……こいつには絶対に勝てない。

 後ろに下がろうとする足を必死に抑えつつ、聞く。

「あんたは、そういう羽虫を侍らせる事が出来るんじゃなかったか?」

「確かに。我等はただの竜や古龍よりも意志を保ったまま扱えるだろうがな。それでも、あの羽虫は我等の糞尿より下に居るしかない能無しにしか忠誠を誓わん。

 ツケは来る。

 それで、ここらの縄張りは貴様のものらしいが、その羽虫を退治してくれているのか?」

「居たところで悪影響しかないからな。見つけたのは潰している」

「それは助かる」

 頭を下げられた。

「お、おい。やめてくれ!

 強い奴に頭を下げられるのは、ムズムズして敵わん!」

「何。あの肉体だけは肥えている青白に好きにさせていないだけで、我にとっては強く感謝するに値する」

 ……古龍なのにここまで謙虚な奴も初めてだ。

「それと、聞いて良いか? その人間がガイアデルム……」

 その名を出した途端不機嫌な顔になった。

「その青白とやらは、人間達に討伐されたと聞いているが、その口ぶり……もしかして複数居たりするのか?」

「当然だろう。アレは太陽から見放され、地の下に追放されたと言えど、個ではない。種だ。地の下にはアレの卵があるだろうよ。

 ……我でも、そんな地中に向かう程の蛮勇は持ち合わせていないのでね。真に歯痒いが、対処療法しか出来ない訳だ」

「そうか……」

 キュリアは少なくなってきたものの、アレとは一生付き合っていかなきゃいけねえのか。

 クソ面倒だな。

「それと、一つ聞いて良いか?」

「何だ?」

「何故、ここに?」

「それは勿論、我の縄張りだからだ」

「…………は?」

「いや、少し異なるかね。あの羽虫の出るところ全ての統治。それが王たる我の務めだ」

「…………」

「貴様は我にとても良く似ている。貴様が複数居たとしたら、流石に我も真っ向からでは敵わないだろう。その位の力はある。

 何故そんな力を持って生まれたか、考えた事は無いか?」

「あると言えばあるが。そこまで博愛精神を持っている訳でもないものでね。

 美味い肉を食って、良い嫁と共に過ごして、子を残せれば己は満足だ」

「つまらない生き方だな、貴様は」

「……身の程を弁えていると言ってくれ。

 縄張りと言うには、あんたと会ったのは初めてだが? 放置し過ぎではないのか?」

「ここらの人間は優秀なのでな。特にある人間は、羽虫に自我をも犯された我が同胞や古龍、更にはあの羽虫を侍らせるしか能のない古龍の面汚しから災厄級の古龍までも退けたと聞く。

 久しくここらに来たのは、別場所の羽虫も数を減らせてきたのでな、それら全てを成し遂げた一人の人間を見に来たのだ」

 ……あー……。

「残念ながら、そいつ、もう居ないんだよな。童貞である事に発狂して失踪した」

「……何て?」

 そんな事言われたら、古龍と言えど流石に顔も崩れるよな。

 

*

 

 発端はな、己の弟なんだ。

 まあ、何だ。聞いてくれよ。

 あんた、ここらも含めて広く生きてるなら己の種族の事も結構知っているよな?

 己達にとって、この頭から生える角が一番異性に対する強さを示す部分になる。己達に刻まれた本能ってものでな、角が欠けた雄はもう雌に見向きされない。

 己の弟は早い頃に角が欠けてしまってな、だがそれでも意地汚く生き続けて、強くなり続けて、己ほどではないが、同族の中では随一の力を手に入れた。

 そしてその狩人も雌に全くと言って良いほどモテなくてな。弟と狩人は初っ端会ったところから意気投合した訳だ。

 だが、何があったのか己は知らないが、雌に受け入れられないという恨みばかりを生きる糧にしていた己の弟はある時ぴったりとそんな悪感情を捨て去って、そうしたら物好きの雌の目に止まって、めでたく番も出来た訳だ。

 それを見た、その人間はな。災厄級の古龍も退ける程に強いのにも関わらず、まーったく雌にモテなく、その雄の象徴を自らの手で扱く事でしか発散してこなかったその人間はな。

 弟の言うところによると……人間とは思えない奇声を、ティガレックスかと思う程の声量で発しながらどこかへと消えていったんだと。

 

「な、なんと……」

「己も、その人間とは多少の親交があって馬鹿にしていたところはあったのだが……流石に申し訳なくなってな。

 だが、人里にも居ないようだし、かと言ってどこかで見かけたような話も遠方まで足を伸ばせど聞かないしで。

 多分……もう死んでいる」

「確かに、死んでいる可能性の方が高いだろう。

 だが、実際に死体が見つかったような噂も聞かないのだろう? 人間の死体は人里から遠ければ遠い程噂になるものだからな。

 それこそ、あの緑色の悪食にでも装備ごと食われたり、壁に張り付く白い目無しにでも丸呑みにされない限りは、な」

 白い目無しはフルフルの事だろうが、緑色の悪食?

「それはそうだが……」

「我と探しに行かぬか? 貴様とは性が合いそうだ」

「……断ったら?」

「理由でもあるのか?」

「子育て中なんだが」

「ふむ、成程。そう言えば、ここらには貴様と同等な雷狼が居たはずだが。貴様からも僅かにかの者の臭いがする。

 未だ健在なのだろう? 何、奴には我に借りがある。快く引き受けてくれるだろうよ。

 それ以外に理由はあるか?」

「…………いや」

 ……番と子供の安全が保障されただけでも良しとするか……。

 

*

 

 あの狩人が発狂したのは城塞都市。

 やって来れば、あのガイアデルムが出てきた大穴が近いからか、まだキュリアがぼちぼちと居る。

「折角だ。駆除していくぞ」

「……分かったよ」

 己の縄張りではないんだが。

 

 今まで見てきたメル・ゼナよりも頑丈そうな肉体を持っていると思っていたが、きっとこれがキュリアに生命力を奪われる前の元々なのだろう。

 バルファルクのように翼の先端までをも使う攻撃は更に間合いが広く、連撃の多彩さも上回る。

 そして己より中々に図体が大きいのに、その両の翼と尾の一つ一つの動作でキュリアの数を確実に減らしていくものだから、己のように鬼火で身を守る必要すらない。

「どうした? 我に見惚れたか?」

「……あんたが羽虫の力を利用するなら、もう災厄を軽々越しそうだな」

「使わないとは言ってないぞ?」

「え」

「あの肥溜めの下こそ相応しい糞には……肥溜めは分かるか? 人間が植物をより良く育てる為に糞尿を貯めている場所だ。

 そう、あの肥溜めの下にこそ相応しい糞と対峙する時は、流石に糞から湧き出る多量の蛆虫を全て潰せる訳でもないのでな。

 慣れる位はしているに決まっているだろう」

「……どうなるんだ?」

「貴様を何もさせずに屠る事が出来ると断言しよう」

 誇張など一切入らない、ただの事実としての言葉。

「……己が何体居ればあんたに並べる?」

 そう聞くと、じっと己を見つめてきて。

「ふむ。三、いや、四……五もいくかもな」

 淡々と述べられる言葉。

 同じ才能を持つ者同士、それがやはり事実であるという事を否定出来ない。

 信じたくないが。

「それ程言うのなら、一度見せてくれても良いんじゃないか?」

「狩人を見つけたのならば、軽く見せてやろう。何せ、疲れるのでな」

 疲れるだけで済むのか。

「そういえば、貴様の弟はどこに居る?」

「知らん。仲の悪い訳じゃないが、良い訳でもない」

 己が弄り尽くしたせいだが。

「それは残念だ」

 

 一方的にライバル視されているという旧知のイヴェルカーナと出会って、一方的に叩きのめした後、気絶しているそいつからたっぷりと血を頂いていた。

「血を飲むのは変わらないんだな」

「骨を噛み砕くよりはよっぽど美味い」

 馬鹿にしてんのか。

 その気絶したままのイヴェルカーナを引きずって目立たない場所に移動させる。

「それに、生かしておけば何度でも頂ける」

 ……それは少し唆られるな。

「やめとけ。貴様の牙ではずたずたに引き裂いてしまうからな。そこから腐り果てて悪戯に苦しませるだけだ」

 やっぱり馬鹿にしてるだろ。

 

 傀異化したリオレウスを見つけた。見るからに異質な色に染まっており、正気はとうに失っているどころか、きっともう数日も生きられないであろう事がはっきり分かる。

 そして、それだけ圧縮された力を振るうであろう事も。

 それと同時に背筋が凍った。

 そのリオレウスに対してではなく、隣のメル・ゼナから溢れる怒りに。

「グギャアアアアッ、グッ!?」

 襲いかかってきたリオレウスに対し、造作もなくその三叉尾で首を掴み、持ち上げる。

 ……いや、掴んでない。喉の奥深くまで突き刺さっている。

「ヒューッ…………、グ、ガ……」

 メル・ゼナはそのリオレウスの頭を自らの顔の間近まで持っていき、少しばかりの間眺めた。

 ドス黒い血が三叉尾から伝って流れていく。

「誰かに伝える事は?」

「グ……ギィ……」

 聞くものの、リオレウスは全く力の入らなくなった肉体をそれでも動かそうと呻くばかりで。

 メル・ゼナは翼の鉤爪で首を切り裂いて、殺した。

 そして宿主の失ったキュリアが早速寄生して来ようとするのに対し、前足を持ち上げると一気に数匹を踏み潰し、すり潰す。

「……我の父はな、我以上に王として、竜から人から、そして古龍からも慕われていた。

 だが、唐突に地底から現れたあの日影者が全てを壊したのだ。

 矢面に立った父は、それに連なった古龍達は、どれもが発狂して帰って来た。慕われていた全てに牙を剥き、何もかもが破壊された」

「あんた、その時代を取り戻したいんだろ」

 王としての責務とかではなくて。

「否定はしない。ただ、我が幾ら何をしようとて、その時代はもう来ない事も承知している。

 我の種族は、寄生され過ぎた。本来の我の姿よりも、寄生された我等の方が多くなってしまった程に。

 取り戻すには、我等は暴虐を働き過ぎた」

 己からすれば随分と生温く贅沢な悩みだな、とも思うが。

 ただ……己も人を飼っている身であるからか、少しばかり共感する部分もなくはなかった。

 

 散らばるキュリアを潰しながらやや湿った場所に来る。

 濡れるのは好きじゃないんだがな。

 ルドロスの数匹が己達を見て逃げていったんだが……あの狩人の臭いがしたような。

「…………」

 ルドロスの居た場所まで歩く。臭いを嗅ぐと。

「何か見つけたか?」

「……いや、いやいや。いやいやいやいやいや」

 一応、己はあの狩人を買っていた部分もある。

 災厄級の古龍をあの雷狼竜の手助けもありつつ討伐したというところで、もしかしたらとっくに己にも牙を届かせられる領域まで来ているのかもしれない、と若干ながら考えていた時もあった。

 それが、もしや、まさか。

「何だ?」

「……頼みがある。ロアルドロスが居ないか探してみてくれないか?

 己は……見たくない」

「……? 何を想像したと言うのだ?」

「言いたくない」

 それだけ言うと、メル・ゼナは不承不承ながらも動いてくれた。

「己も……話を聞ける奴が居れば聞いてみたいが」

 随分と離れてしまったから、こっちの、特に己の言葉など聞いてくれる奴など居そうにないが。

 

*

 

 帰路につく。

「……あの人間は、立ち直ると思うか?」

「立ち直るも何も。あいつにとって今が幸せなら、立ち直る必要も無いだろう」

「……英雄に輝かしい未来があるとも限らないのだな」

 己は、狩人を見ていない。だが、初対面のメル・ゼナが衝撃を受ける程に、その狩人は……狩人らしくなかったのだろう。

 それと。

「あんたは、物事を上から見過ぎているのではないか? 己は強いと自覚しているが、出来る事はそれでも限られている。古龍のような不思議な能力も持ち合わせていない。空を跳ぶ事こそ出来るが、骨まで食らって溜め込んだ活力を派手に使っているだけに過ぎない。

 あんたの見ている世界と誰しもが同じ世界を見ていると、どこか無意識に信じてしまっているだろう」

「……肝に銘じよう」

 ルドロスには狩人の臭いがこびりついていた。

 ロアルドロスの遺体があった。こんな湿地で腐り果て既に臭いも失せているその遺体には、アンジャナフのような強い顎に噛まれたような跡があった。

 近くにはそのアンジャナフの遺体もあった。狩人が得意とするガンランスで仕留められた跡があった。

 分かったのはそれだけ。

 どういう過程を経て、どうなったのか。考えたくもなかった。

 見たものを未だ信じられないように、メル・ゼナは空を見上げる。

「…………」

「そっとしておいてやれよ?」

「それにしても、アレは我にとって……我にとっては、幸福には思えない。

 ……すまない。力を見せると言ったが、そういう気分ではない。

 一度帰らせてもらう」

 そう言うと、逃げるように飛んでいった。

 ……あんな古龍を愕然とさせるなんて、早々無いよな。

 

*

 

*

 

 十分に育った子を縄張りから追い出し、番とも一度別れ、ふと気付けばまたあの狩人の元へと向かっていた。

 あれから季節が二つ巡っている。

 今でもあの場所で、そういう事をしているのか、それとも。

 時折気になりつつも、何せ遠い場所だから子育ての間は行く機会もなく。

 とはいえ、気になり続けてたと言えど、そこまで気乗りのする事でもなく。

 ゆっくりと数日掛けてその湿地まで辿り着く。

 

 少し離れた場所に、あのメル・ゼナが居た。

「……久しいな」

「何かしたのか?」

「いや。色々考えたが、何も。時々見に来ていただけだ」

「変化はあったか?」

「…………。

 やはり、幾ら群れを守る力があろうと、子を作れないのでは意味がないのだろうな。

 大半が程なくして去り、今は老いて子を作る力もなくなっているルドロスが死んで、一人になったところだった」

「……それから狩人は?」

「ずっと洞穴に引き篭もっている。外に出ていない。

 そういえば、最後に見てから三日程経つか」

「…………見に行くぞ」

 




続きは多分ない。

猛き炎

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