マガマガくんが猛き炎にリア充自慢をするようです   作:ムラムリ

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何かまた続いた


マガマガくんは猛き炎に腹が立つようです

 時折カムラの里にやってくるその商人は、どこからやってくるのかも分からない割には、質の良い商品を安値で卸してくれる事で来る度に話題になる。

 また、やって来た後には近辺で僅かながらマガイマガドの痕跡が発見される事もあり、マガイマガドと暮らしているとの噂も立っているが、当の商人は自らの事に関してはのらりくらりとはぐらかすばかりで、それが更に噂を呼ぶ形になっていた。

 聞かれた事が図星であれど、そのマガイマガドと共に生きる商人にとって虚実を使い分ける事などは慣れたもので、失踪した猛き炎の行き先を聞かれても、知りながらも何もそれを口に出す事は無かったのであった。

 

*

 

 二匹の子供を育て終えた事で番とも別れたマガイマガドは、その代わりに飼っている人間の数が二人に増えていた。

 気紛れから助けた商人と、それから生きる気力を失った猛き炎。

 それと原初を刻むメル・ゼナが何故かずっと居候している。

 何でこんな事になったのだか、と不満に思うばかりではあるが、そうでなければ退屈を持て余しているであろう事も過去の経験から理解しているのもあって、余りその感情を表に出す事はない。

 ついでに言うと、表に出したところでそのメル・ゼナには口や遊戯では勝てても、実力行使をされてしまえば何も敵わないと分かっているのもあった。

 

 商人を乗せて帰ってくると、メル・ゼナが出迎える。

「我の鱗は売れたか?」

 商人が返す。

「ええ、まあ。言った通り、一枚だけなら偶然拾ったとでも言い訳つきますけど、二枚目以降は流石に無理ですからね?」

「仕方ないな」

 そう言いながら、尻尾でひょいと籠を漁って、目当てのものを取り出す。

 人と共に暮らした期間があったからか、人の文化にも聡いこのメル・ゼナは人の食物を嗜めるとなると、マガイマガド以上に欲して来た。

 取り出したのは匂いの強い、発酵させた食物。

「ああ、これだ。この匂いだ。腐敗させるのとは違う、この匂い。たまらんな。ほれ、貴様も食え」

 そう言うと、ぼんやりと空を見つめるだけの猛き炎の口をこじ開け、食物を押し込み、水で胃へと押し込んだ。

 猛き炎は、言葉を口に出す事はおろか、自分で物を食べる事も、動く事すら殆どなかった。

 鍛え上げられた肉体はもう見る影もなく、肋骨も浮き出る程に痩せ細っているばかり。

 明らかに死にたがっている猛き炎を今も尚生かしているのは、何の縁もないこのメル・ゼナである。

 元々はロアルドロスのものであった巣穴の中で、ルドロス達からも見放され、ただ一人仰向けになっていた猛き炎。

 マガイマガドとメル・ゼナがその中を覗き込むと、猛き炎はゆっくりと立ち上がり、そしてガンランスを構えて襲いかかって来た。

 殺意はあったが、敵意はなかった。口には出さずとも殺してくれと懇願していた。自殺までは出来なかったのだろう。それを見て、メル・ゼナはその猛き炎を拘束して、そして持ち帰った。

 ……。

 猛き炎を生かし続けるメル・ゼナを見て思う事は多々あったが、マガイマガドがそれを口に出す事はない。

 介抱をする商人も置いておいて、マガイマガドはその場を離れた。

 

 後から、メル・ゼナがマガイマガドを追いかけるように歩いて来た。

「我はな、人のことを知っているようで知らなんだ。人と暮らしている時間もあったとはいえ、人の本質を理解する前に災厄が起きた。その後は人と交流する事など、一度たりともなかった。

 ここに来るまで我はな、復讐以外の目的の事など基本何もして来なかったのだ。

 我はな……猛き炎と会う事を、とても期待していたのだ」

「それじゃあ、何だ。あんたは要するに、あいつと戦いたかったとでも言うのか?」

「そうだな」

「直近だとどうだかは分からんが、それでも己と同等位でしかないぞ」

「命のやり取りをしたいと言っている訳ではない。戦いを通じて人の英雄というものを理解したかったのだ」

「それを今でも諦められていない、と」

「そうだな。だが……貴様のように思うところもある」

 メル・ゼナは空を見上げて、暫く黙った後。

「…………貴様が彼奴をどうしようとも、我は何も言わん。

 ただ、それだけだ」

「……そうか」

 

*

 

 夜になった。

 商人が焚き火を囲んで、猛き炎の隣に居る。

 マガイマガドは、言った。

「お前、正気までは失っていないだろ」

 商人はその言葉に驚きはしなかった。

 人であれ、竜であれ、何であれ。生き物が狂うには、それ相応の要因が存在する。

 人の話の中には、自尊心満たせなかった人間が狂った末に竜へと堕ちるという話があった。マガイマガドがそれを聞いた時、文字通り腹を抱えて笑ったものだった。

 狂うと言うのは、そんな下らない事柄で出来るものではない。もしそんな事柄で狂えるのならば、そもそもその人間が自己愛に元々狂っていただけの事だ。

 狂うと言うのは、自らの内側だけの事柄で出来るものではない。自らの外側から与えられた出来事が、心の許容範囲を大幅に超えてこそ起きてしまうものだ。

 猛き炎は自己愛に狂っている人間ではない。報われなかったとはいえ、他者の為に災厄そのものにまで牙を向けて、そして偉業を成し遂げて来た、人という群れの為に自らを捧げられる人間だ。

 猛き炎が外側から与えられた出来事は、猛き炎の心が砕かれる程の事ではない。もしそこまで愛に飢えていたのならば、愛というものに執着して離したくなかったのであれば。あの場所のルドロスは猛き炎の傍から離れる事を許されていなかっただろう。最後まで猛き炎の傍に居た、生殖能力を失ったルドロスをきっちり弔う事など出来ていない。

 猛き炎は何も答えなかった。

 だが、マガイマガドにも、商人にも。そしてきっと、メル・ゼナにも。分かっていた。

 深く心に傷付いているのは事実だろうとは言え、今の猛き炎は狂っている訳でも、そしてまた躁鬱になっている訳でもなく、何もしない事を選んでいるだけだ。元々あった強靭な精神力でそれをひたすらに続けているだけだ。

 言ってしまえば。猛き炎は駄々を捏ねているだけだ。今の状況に甘えているだけだ。

 マガイマガドにとって猛き炎をこんな状態にまで追い込んだ元凶は己にあるとも分かってはいて、申し訳なさを感じている部分も当初はあったが。

 こんな事を続ける猛き炎を見て、今となってはもうそんな感情などない。呆れと、怒り。そして殺意。

 ただ、だからこそ。マガイマガドは猛き炎をそのまま殺すのにも強く嫌悪感を抱いていた。

 猛き炎を雑に咥えて、マガイマガドは川へと向かう。

「……」

 牙が食い込んだ脇腹から血が染み出してくる。その味は何ともまあ、味気ないものだった。

 猛き炎は痛みからか僅かに身じろぎするが、やはり何も口に出す事はなく。

 そして、川へとぽいと投げ捨てられた。

 ばしゃん。

 ぷかりと浮かび、そしてそのまま夜の川を流れていく。

 ……暇ではなかったが、それ以上に下らない時間だったな。

 心底詰まらない顔をしながら振り返ると、メル・ゼナがまたやって来ている。

「文句は無いだろう?」

「……そう、だな」

「どうせあいつは自殺なんで出来ねえんだから、運が悪くなきゃどっかで生き続けるだろうよ」

 メル・ゼナもまた、ほとほと疲れたように溜息を吐いた。

「遊戯でもしようか。我にしては珍しく、打ちのめされたい気分だ」

「……こてんぱんにしてやろう」




猛き炎は自殺までは出来ないのでその内川から上がるけど、運が悪かったら血の匂いを嗅ぎつけた竜に見つかって何かをする前に死ぬと思う。
続き書かない、って言いながら書いてるんで、まあ何かの弾みで書く事は否めない、とだけ。

猛き炎:
1. マガイマガドに童貞である事をバカにされる
2. 空回りして女性達から嫌われる
3. 同じ童貞である怨嗟マガドと意気投合する
4. 童貞であったはずの怨嗟マガドが番を作って発狂する
5. アンジャナフに殺されたロアルドロスになり変わってルドロス達とハーレムを築く
6. 子供を残せないのでルドロス達から見放される
7. 自殺出来なかったから殺されようと様子を見に来たメル・ゼナとマガイマガドに牙を向けるが介抱される
8. ひたすらに何もしたくないし、何もしない事を続けていたら実は健常である事を見抜かれてポイ捨てされる

どうしてこんな事に……。
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