俺の好きなウマ娘とトレーナーの関係を描きたかっただけ。 作:いでんし
1000文字制限でちゃんとしたSSが書けるわけないだろ!
よろしくお願いします
アグネスタキオンの恋心検証
とある昼時のこと。
1人のトレーナーがトレーナー室でパソコンとにらめっこをしている中、1人のウマ娘が入室してきた。
「トレーナー君、いるかい?」
「おう。もうこんな時間か……弁当あるぞ」
「頂くとしよう」
入ってきたのはアグネスタキオン。ウマ娘の限界を超えることを目的として人々に怪しすぎる実験を強要する、トレセン学園屈指の危険人物である。
彼女は自身のトレーナー兼モルモットから弁当を受け取ると、笑みを浮かべながら食べ始めた。トレーナーが丹精込めて作った代物で、彩り、味、栄養価共に文句なしの逸品だ。
タキオンの食生活を問題視したトレーナーが弁当を作った所見事に胃袋を掴んでしまい、それ以来彼女は朝昼晩の食事をトレーナーに頼るようになってしまった。
とはいえ、トレーナーはトレーナーで弁当作りに割とノリノリなのでどっこいどっこいである。
「何を見ていたんだい?」
「アオハル杯の参加要項」
「ふぅン。参加するのかい?」
「気になってないと言えば嘘になるけど……一度に結構な人数の子抱え込むんだろ? タキオンで手一杯なのに厳しいぞ」
「私は賛成だね。いかんせん実験体を多数確保するチャンスだ! 見逃すわけにはいかないよ」
「そんなこったろうと思った」
「チーム名は『モルモットズ』でどうだい?」
「露骨!」
なんて世間話をしながら昼食を楽しむ。
タキオンの弁当箱は10分もしない内に空っぽになった。タキオンは満足げである。
「うん、今日の弁当も実に美味しかった。感謝するよ」
「ちゃんと噛んで食ったか? まぁ、お前が喜んでくれて良かったよ」
「ところでトレーナー君」
「どうした?」
「君、少し太ったんじゃないかな?」
「えっ」
衝撃の質問。トレーナーは油の切れた機械のような、ギギギと音が聞こえそうな動きで目線を逸らす。
「……なんのことですかね」
「目線を合わせたまえ。君、太っただろう」
「……はい、おっしゃる通りです……」
「まぁ、概ね揚げ物の食べ過ぎだろうね。ハマったとは聞いていたが、毎日のように食べていれば当然太るだろう」
「ぐぬぬ……」
『最近揚げ物にハマっててな。カレー唐揚げとかほんと美味しいんだよー』
2週間前のトレーナーの発言である。それ以降、彼の弁当箱には週6という今までにないペースで揚げ物が入るようになっていた。
唐揚げ、フライドポテト、コロッケ、エビフライ、イカフライ、玉ねぎのかき揚げ、おやつのドーナツにサーターアンダギー。毎日食べようものなら胸焼けまっしぐらなメニューの数々である。
普通のトレーナーなら多少の体重の増減は何の問題もないだろう。あくまでも、レースの主体はトレーナーではなくウマ娘だからである。
しかし、彼はアグネスタキオンのトレーナーにしてモルモットでもある。体重の増加は、例え小さなものであっても、実験において大きな誤差を生む。
「やれやれ、モルモット君がこんなザマじゃ実験もできないよ。いっそ他のモルモットを探すという手も……」
「What⁉︎ダメダメダメ! ダイエットするからそれだけは勘弁して!」
トレーナーは随分慌てた様子でタキオンに許しを乞う。あまりの慌てように、タキオンはついクククと笑みをこぼす。
「冗談だよ。……そこまで焦るとは思わなかったねぇ。何かあったのかい?」
「……カフェにさ」
「ん?」
トレーナーの目つきが変わる。表情も、どこか不満そうである。
「カフェのコーヒーに薬品ブチ込んでさ、身体を虹色に光らせてただろ?」
「そうだね。昨日のカフェは怖かったなぁ……あんな表情は副会長でも滅多に見せない代物だったよ。で、それがどうかしたのかな、トレーナー君?」
「正直嫉妬した」
「…………ほぅ?」
想定外の解答が飛び出してきた。思わずタキオンは固まり、反応が遅れる。
「なんで俺で試してくれなかったんだろう、ってさ」
「……あの薬はウマ娘用だからねぇ。人間のトレーナー君には使えないのさ。……しかし、まさか君がそんなことを言い出すなんてね。モルモット根性が染み付いて来たのは嬉しい限りだが、大の大人が学生に嫉妬とは……」
「なんだよ、悪いか?」
「そういうわけじゃ……」
「……………………」
「……………………」
「……………………?」
タキオンは何故か黙り込んでしまった。
訳もわからず黙られると心配になる。トレーナーは声をかけた。
「……タキオン? 大丈夫か?」
「……ふむ、このなんとも言えない感覚は……得体は知れないが、悪い気はしないな。モルモット君、実験開始だ。この感情を確かめるために、いくつか質問させてもらうよ。勿論、拒否権は無い」
トレーナーに詰め寄るタキオン。彼女の目の色はどこか普段とは異なって見えた。
「アグネスタキオン」ではあるが、それに何かが混ざり込んでいるような、そんな雰囲気だった。表現するならば……女の子らしさというものか。
タキオンらしくない雰囲気に、トレーナーはつい息を呑む。
「どうしたんだい? 君は実験台になりたいんだろー?」
「……はいはい、喜んで」
結局、トレーナーの昼休憩はタキオンの一方的な問答に消えた。
──────────
その日の放課後。
ウマ娘・マンハッタンカフェのグッズ置き場を半分占領して用意されたタキオンの実験スペースで、タキオンはノートパソコンと格闘していた。
と言っても、タキオンがパソコンを使っていることは特段珍しいことではない。普段の実験の際も、最初から薬品を使用して行き当たりばったりな実験を行うのではなく、パソコンでシミュレーションを行ってから実験に取り掛かるのが基本である。
ウマ娘の秀麗さもあるだろうが、タキオンがキーボードを叩く姿はなかなか映えると評判だ。コーヒーショップの窓際の席でコーヒーを片手に作業する、洒落たビジネスマンのようである。最も彼女はコーヒーが飲めないし、作業の内容は大抵ろくでもない実験である。最悪である。
「……うーん、どうも熱が入らないな。あの感覚の解明は、ウマ娘の限界を越えることよりも重要なのかもしれない……」
タキオンは実験を中断し、別の作業を始めた。
マンハッタンカフェは何をしているのかが気になり、こっそりタキオンの背後に回る。内容を見て「お友だち」がドン引きしていたように見えたが、気にせず覗く。
「!?」
タキオンが見ていたのは通販サイト「umazon」のページだった。商品は……少なくとも、学生が使うようなものではないことは確かだ。
「おっと。カフェ、覗き見は感心しないな」
「タキオンさん……そんなもの、何に使うんですか……」
「ちょっとした実験のために必要でね。口外はしないでくれたまえよ? あぁ、勿論カフェに使う気もない」
「そんなことしたら、ここから追い出します……絶対に……」
「しないと言ってるだろう。さて、そろそろ来るはずだが……」
直後、空き教室のドアが乱暴に開かれる。
段ボール箱を肩に抱えたウマ娘、ゴールドシップが仁王立ちしていた。その性格はとてつもなく気まぐれで破天荒。タキオンに匹敵する危険人物ともっぱらの評判である。
「毎度ー。ゴルシちゃんの宅配便だぜー」
「流石の早さだね、umazon。ウマ娘の名を冠しているだけはある」
「ゴールドシップさん……宅配便のバイトでも始めたんですか……?」
「いや、ただの趣味だけど。つーか飽きたな! やっぱアタシにはキンボールを極める方が合ってる!」
「なんですかそれ……」
「それにしてもタキオン、お前もマセてるなぁ? こんな物買っちゃってよー」
「中身を見たのかい? 宅配便業者失格だね、君は」
「いや、普通に箱に商品名書いてるけど」
「…………とんだ恥辱になるところだったよ。ゴールドシップ君に頼んで正解だったようだ」
タキオンが代金を支払うと、ゴールドシップは「よーし、最終目標はゴルゴル星でキンボールだ!」と叫びながら空き教室を出ていった。相変わらず訳がわからない。
「ククク、今までに前例のない実験だ。どうなるかが非常に楽しみだよ……」
こちらの考えることもよくわからない。カフェは実験体になるであろうタキオンのトレーナーが心配でならなかった。
アグネスタキオン:実験狂いの問題児ウマ娘。トレーナーには衣食住のうち食を完全に便りきっている。カフェにやきもちを焼いたトレーナーを見て謎の感覚が芽生える。紅茶が好きだが砂糖をアホみたいに入れるので純粋な紅茶好きなのかは怪しい。
タキオンのトレーナー:♂。タキオンの走りに魅せられてトレーナー契約を結んだ新人トレーナー(3年目)。タキオンのモルモットとしてのプライドは割と高く、加えてちょっと嫉妬深い。自身をミルクジャンキーと自称するほどに牛乳が好き。
マンハッタンカフェ:タキオンを追いかけてる際に机や椅子が謎の力で飛んできたらしい。本シリーズの不憫枠。コーヒー派だが一気に飲むとお腹を痛めるらしい。かわいいね。
ゴールドシップ:未だにキャラが掴みきれてないのでもう出ないと思う。好きな飲み物は不明。ところでゴルシちゃん、アーモンドフィッシュってお菓子の袋に描かれてる「ばんのうくん」のコスプレが世界一似合うウマ娘だと思うんですけど、お前どう?
ウマ娘が嫉妬することはよくありますけど、嫉妬するトレーナーもなかなかいいものですよ?
だから増えて……増えて……