玉藻の前に取り憑かれた『天狗』の子   作:赤い靴

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第7話目です!

今回もごゆっくり読んでいって下さい。
前回の続きになります!

では〜


第7話 鈴谷宗一②

001

 

「とりゃっ‼︎」

鈴谷の一太刀が、呪霊を断ち祓う

 

相手は2級から3級レベル

助太刀が必要だと思っていたが、それすら要らなかったようだ

 

「大丈夫そうだな?鈴谷」

 

「うん!木刀に呪力を込めるのも慣れてきたよ」

あはははと、笑う鈴谷

 

「そうかそうか、ならば良い。この辺りも掃除が済んだことじゃ。少しばかり休憩といくか」

 

重蔵は手頃な石に腰掛け、カバンから魔法瓶と木の箱を取り出す

鈴谷も並ぶ様に座り込む。足が地に着いておらず、ブラブラと遊びながら周りを見る

 

「なんじゃ?何かおるのか?儂の眼には、呪霊はみえんぞ?」

コップにお茶を注ぎ鈴谷に手渡す

ありがとう、とお礼を言いそれに口をつける。そして鈴谷は話を切り出した

 

「最近、ちょっと辛くて、嫌になった時に『洞穴』に行くんだけどさ。そこにキレイな狐さんが居たの。この辺にも居るのかな〜って、思ってさ」

 

「狐……さんね。儂も鈴谷のように小さい頃は、よく狐と遊んでいたな」

昔を思い出し、重蔵もお茶を啜る

 

「ん⁉︎じぃさんも、遊んでたの?」

まるで宝物を見つけた顔で重蔵の方に向く

 

「そうさ。小さい頃の話さ。ある年、雪深い年。積もる雪の所為で、儂もその洞穴に行かなくてな。雪が溶け、春1番で行ってみたが……。以来、狐は現れなかった」

 

重蔵は、狐との記憶を巡らした

あの時は、儂も辛いことがあろうと、あの狐が一緒に居たからやってこれた。一緒にいた頃はまるで、冬の厳しさを忘れさせた、春のような時間だった

 

しかし、その春はとうとう迎えには来なくなってしまったのだ

 

 

「鈴谷、その狐さん。大切にしろよ?じぃさんとの約束だ」

小指を差し出す

 

「あ、『ゆびきりげんまん』だね!後藤(ごとー)さんとやったことあるやつだ!」

 

「じゃあ、意味はわかるな?」

 

「うん。約束!破っちゃいけない約束だって習ったよ」

 

そう言って、鈴谷は小指を出す

 

ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本のーます。ゆびきった‼︎

 

鈴谷の声が山に響く

 

「これでじぃさんも、安心だね!あ、でも狐さんとは約束しなくても仲悪くはならないよ!だって僕の家族だからね!」

 

「それも後藤に教わったのか?」

 

「そう!お菓子も秘密でくれるし、楽しいことも話してくれるから、僕は好きだよ!」

 

「そうかそうか。なら良かったな。儂も昨日、その後藤に教わってな……」

木の箱を開ける

そこには、少しばかり形が不揃いの『おはぎ』がぎゅうぎゅうに入っていた

 

「わぁ!美味しそう〜!食べて良いんだよね?」

 

「いいぞ。その前に、これで手を拭いてだな」

カバンから、手拭きを取り出して鈴谷に渡す。それを貰うなり、早々と汚れを落とし、おはぎを頬張る

 

「あんまぁい‼︎」

うふふふと、笑いながら食べ進める

見事な食いっぷり。作った重蔵ですら、ふと笑みが溢れる程の

 

「なんだ?その『あんまぁい』って……」

 

「『おいしい』と『あまい』を合わせた言葉なの!コレを思いついた時は後藤(どこー)さんに褒められたよ」

と、嬉しそうに笑う

 

そう言う意味か……と、ふむふむと頷く重蔵

ここに来て、重蔵は『ここまで来て、したかった事』を実行した

 

鈴谷の調子の良いことを機として、あの真紅の石を見せる

 

「ナニコレ?卵見たいな石?でも人の顔が……」

おはぎを食べる手が止まった

 

「儂も分からん。調べては見たが、一切資料が無くてな……。鈴谷なら、何か感じるかなと思ってな」

 

「別に……。それがどうかしたの?じぃさん?大切な物?」

頭を傾げ、ハテナと顔をする

 

「いや、そうゆう訳では無い……。少し気になるだけじゃ……」

重蔵は手で、それを転がすように見る

 

「それ貸してよ」

渡す重蔵

 

ソレを遠くに投げ捨てる鈴谷。見事に木々に引っかからず、山の斜面に沿って落ちていった

 

「これで、また一つ考事がなくなったね!」

笑う鈴谷

 

確かにアレには、特別、呪力が込められている訳では無い

呪霊に化ける心配は無いが……

何がの触媒でもなさそうだった

色々調べたが、手がかりは無し

 

ならば

 

「そうだな。これで考え事が無くなったな!」

笑う重蔵

 

そして、再び呪霊狩りを行い今日、この日は終わった

 

あの真紅の石については解らないままだった

だけど、これで良かったのかも知れない

 

 

そして、1年後の冬の日

 

鈴谷の稽古人が大怪我をしたと報告が入った

その者に何があったかを聞くが、躊躇い、言葉を濁す

 

キリがないと思い、鈴谷のところに行く

 

鈴谷は部屋に居た

明かりを付けない暗い部屋の中。その隅で体育座りで、背を丸めて居た

 

目は虚ろ、服は乱れている

首元に、相手の手の跡。顔には打たれたであろう、青いアザ

その時点で重蔵は察した

 

乱暴されかけた、のだと

 

言葉をかけようとしたが、出来なかった、

躊躇ったしまった

 

重蔵はこの事に深く後悔する事となった

 

『妙漣寺の改革』を揚げて進めてきたと言うのに──

 

 

 

002

 

鈴谷が16の時のまだ雪深い3月の初め──

 

「……!──。でさ〜」

鈴谷は調理場から強奪(バレてないからセーフ)した、魚肉ソーセージを口で小さく噛みちぎり、毛並みが美しい狐にあげる

 

神通力を3つ取得し、周囲から『最高傑作』と呼ばれつつある

 

もうタイマンならば、妙漣寺には鈴谷に勝る者は居なかった

30代目、重蔵ですら今や老い衰えた。当主争いのきな臭い雰囲気が寺を包む

 

「僕が31代目どか、ありえね〜。絶対に!寺!出て行ってやる‼︎……そうしたらさ、オマエも一緒に来るか?」

 

「クゥ──ン!」

 

「そうかそうか!そうだよな‼︎でもさ、行くあてが無いよね〜。フリーの呪術師にでもなろうかな?」

狐を撫でながら呟く

 

「動物有りの物件に住まないと……。流石に都会は無理そうだな……。てか、人混みがイヤ」

 

はぁぁぁ、と深いため息をはく

 

洞穴から外を除く

時は夕暮れ。気温もグッと下がり、吐く息はより一層、白くなる

 

「……。もう、行かないと……」

鈴谷は最後に、狐の頭をクシャクシャと撫でまわす

心地良さそうな顔の狐。その表情を見るなり、鈴谷は寺に戻る

 

神足通で5、6回、テレポートし中庭に戻る

 

 

 

 

 

「おやおや。これは鈴谷殿。こんな時間にご苦労ですな」

隠しきてれ居ない上から目線な口調と、悪意を困った挨拶をその男はした

 

「あぁ、島田さん。いえ、そっちも……。ところで、神通力の取得、おめでとうございます。気配で直ぐに分かりましたよ?昨日、会った時は変化はなかったので、今日の昼辺りですかね?」

 

「やはりお気づきになりましたか……。ええ、そうです。これで(わたくし)も2つ目……。もう歳も50を過ぎた所……。やはり、貴方の様な才能はなかった様で……」

 

島田は口角を上げながら言った

表情と言葉が全く持って合っていない

鈴谷はソレが気持ち悪かった

 

「で?なんの用ですか?僕はもう寝ますよ。起きてても良いこと無いので」

冷たくあしらう

 

「ええ。そりゃあそうでしょう。では、単刀直入に──」

 

 

「俺の配下となり……妙蓮寺を!かつての先人の様に、この呪術界に妙漣寺の名を再び知らしめてやろうではないか⁈‼︎」

 

島田は声を荒げた

一人称すら、今の上司の立場である鈴谷に気を使わず、自らの思想を高らかに挙げた

 

「妙漣寺が人攫いを辞めてもう何年になる⁈御三家との繋がりも薄くなり!他の関係も脆弱なものとなった‼︎

明日(あす)食う(メシ)!武具や雑用品の購入‼︎それすら、神通力取得者(我々)が任務に行かねば維持する事が出来なくなってしまった‼︎

今の当主は頭がおかしいのだ‼︎何が『より良き妙漣寺を造る』だ⁉︎

呪術界をいつも裏から支えてきた我々が、今や笑いものだ‼︎

なぁ‼︎鈴谷ぁ‼︎おかしいと思うだろ⁉︎」

 

勢いよく唾が鈴谷の顔に飛ぶ。それほど熱狂的に、ただ1人の少年に問うたのだ

 

「きたねぇ……」

鈴谷は小声で呟くと、袖で顔を拭く。そして──

 

 

「あぁ、おかしいと思うぞ。『オマエ』がな」

 

交渉決裂

 

期待に反った答えに島田は眉間により一層、皺を寄せる

 

「第一に、人攫いどか頭おかしいんじゃねーの?僕は見たことすら無いが、失敗作の処分も。山で呪霊狩りする時に、沢山の骨を見たよ。余裕で察する──」

 

鈴谷はまだ続けて言おうとしたが、やめた

島田の顔色が急に変わったからだ。殺気を漏れ出し始めた

 

「そんな程度の理由なのか?」

 

「こんなにも大きな理由なのに、解らないのかい?島田」

 

 

「そうですか……。最高傑作と言われた貴方なら……ましては小さい頃、散々俺が痛めつけたガキがこんなにも、つまらなく成長するだなんて」

 

島田は両手を叩く

甲高い音と共に、室内の暗闇、屋根の上──

そこからはまるで虫の如く、妙漣寺の修験者が湧いて出る

 

憎き最高傑作を殺める為

妙漣寺の歴史上。最高傑作の行く道を正す為

ただ己の生きた意味を見出す為

自らの思想の為

強者との死合に価値を見出した為

 

鈴谷と戦う意味は人それぞれだが、今この瞬間バラバラだった視線が揃った

各々が見つめる先は最高傑作

 

 

「こんな中、じぃさんは何やってんだよ……」

 

鈴谷は小言を呟いた

 

鈴谷に勝る者は妙漣寺には居ない

しかしそれは、『1対1』、「あくまで模擬戦』である事を前提としている

 

最低でも2級術師のクラスである修験者──

神通力を取得した者は、特別1級術師とカウントされる

たとえ術式が貧弱だとしても、それを十分に補える『肉体』がある──

 

鈴谷を取り巻く影は50を超える

 

 

「じゃあ……もう……。死ね」

島田の一言で影が動き出す

 

 

「全員まとめてぶっ飛ばしてやんよ!」

 

鈴谷は拳に呪力を込めた──

 

 

 

003

 

 

煙幕、毒突き、目攻め、死角からの攻撃、閃光、飛び道具、槍、刀、斧──

 

戦いに秩序すらない

イヤ、これこそが『本当の(いくさ)』なのだろうか

 

距離を詰め、関節を外し殴って気絶させる

武器を奪い、飛んでくる手裏剣やクナイを弾き、1人、また1人と気絶させた

 

僕の中で、何やら黒いモノが蠢き囁く

 

『殺してしまった方が楽だろう?何故しないんだ?』

まるで僕を嘲笑うかの様にそれは囁いた

 

殺してしまったら、コイツらと同じになる。そうはなりたく無い、とソイツに返した

 

『くだらない痩せ我慢だ。もう自分に素直になれば良いのさ。ほら、今もこうして……人を殺したくてウズウズしている』

 

ハッと我にかえる

 

右手は力強く敵の首を締め付けて居た

この手をすかさず離した。もしもう少し遅れて居たら、と考えると吐き気がした

 

「うおおおお‼︎」

耳がキーンと鳴りそうな、大きな声を上げその者は太刀を振り下ろす

 

半歩、身体の軸をずらし太刀の軌道から避ける

1番下まで振り切った事を目視で確認するなり、足で太刀を踏みつける

 

「ゔっ‼︎」

一瞬で太刀の持ち主は青ざめた

鈴谷の一撃に対応しようとしたが、両の手は太刀を握っていた

それほど鈴谷の対応は早く、青ざめさせる程に威圧的だった

 

今にも殴りかからんとする拳は、強大な呪力で覆われていたのを見てしまったからだ

その見た目通りの鈍重な衝撃が脇腹に入るのを感じた瞬間、その修験道は意識を失った

 

 

「さて、次は……」

顔、特に額から流れる血を、袖でサッと拭き全体を見る

 

おおよそ30名強──

 

(まだ居るのかよ……。撤退、逃げも可能性に入れて動こうか……。流石にキツすぎる……)

 

 

「かなり辛くなってきたのでは?」

島田が嬉しそうな顔をして言った

 

やはりというか、この騒動の主犯格は島田で決定だった

特に動かず、配下に指示を出して居た

 

先程まで姿が見えなかったのが引っかかる……

 

しかし、島田を戦闘不能にすればこの騒動も収まるだろうと、思った鈴谷は島田の背後に神足通で駆ける

頭が倒れれば残りの奴らの戦意も無くなるはずだ

 

2、3回、神足通で移動し島田の居る一際高い建物の屋根に行く

 

屋根に足をつけた途端に、生暖かい風を感じた

春の香り──

 

そして目先には──

 

ニヤついた島田と4人の従者

その足元には、何やら赤い物体が横になって居た

 

何かの動物。腹は大きく裂けその周辺は毛も血で染まり、内臓は既に抜かれている様だった

風になびく美しい毛と、島田の笑い声

 

その時僕は理解した

 

 

「島田ぁぁぁ‼︎‼︎」

 

 

「んな、デケェ声出さなくても聞こえてるよ‼︎最高傑作‼︎‼︎」

 

 

 

刃は既に無く、刀と云うには余りにも粗末な武器を片手に、鈴谷は島田の首を目掛けて進み出す

 

それを止めようと阻止する従者を1人、また1人と倒してゆく

その勢いは止まることなく鈴谷は島田の元に駆けた

 

しかし──

 

夜の闇から、恐ろしく早い一刀が鈴谷を襲う

島田しか見れて居なかった所為もあり、満足に交わし切れず左腕に傷を負う

 

急いで距離を取り鈴谷は、その者の次の一撃に備える

夜空の雲が晴れ、月明かりがシルエットを照らす

 

白髪が目立つ短髪。背は高く、服の上からも磨き上げられた筋肉がわかるほど大きい。そして、極め付けは顔にある一筋の傷

そう、その者は鈴谷を長年、実の孫の様に可愛がって居た後藤であった

 

「──ーッ‼︎ど、どうして‼︎」

息が詰まりながらも後藤に心の叫びを放つ

 

「どうしても何も。ただ、俺の夢の為に」

後藤はそう言い切った

 

「後藤さん。ありがとうございます。これで鈴谷(アイツ)の精神すら、もう終わり。肉体も、修験者を『無理に生かそうと』したから、よりダメージを」

クックックと、笑いながら島田は後藤の側による

 

「おいおい。それ以上は近寄るなゴミが。年老いたからと言って、俺は生半可な神通力持ち(お前)なら、10秒有れば殺せるぞ」

後藤は冷たく後藤に返す

 

「んで、もう降参か?最高傑作?」

鈴谷に語りかけるも、その本人はすでに(くう)を見つめ、ただブツブツと独り言を吐いて居た

 

「そうか、じゃあ『コレ』はもう要らないよな。直々に俺が殺してやったんだ。感謝するんだな、嶋田」

後藤は狐の死骸を手に取ると、屋根から中庭に向かって投げ捨てた

 

ドシャ

 

そんな音があたりに響く

 

 

「どうして……後藤(ごとー)さんが……?じぃさんが、来ないのももしかしたら……。どうしよう……どうしよう……。どうやったら……狐さんを生き返られる……?僕がいけなかったのか…………。僕が…………全て……」

 

放心状態の鈴谷に後藤は近寄り一言呟く

 

「あぁ、そうだとも。お前が『最高傑作』だからいけないんだ。皆、夢を見てしまったのだよ。30代目も、島田も、お前も俺も……。だから──」

 

 

さようならだ

 

 

後藤は項垂れる鈴谷を切り捨てた

 

鮮血が鈴谷の白い髪の一部分を濡らし、力が抜けた身体はそのまま、屋根の傾斜に沿って転がり落ちて行く

 

その先は奇しくも後藤が、狐の遺体を投げ捨てた中庭だった

 

 

004

 

暗い意識の中、鈴谷は『体験』させられてしまって居た

妙漣寺30代に及ぶ、人攫いと、処分について

 

『人攫い』

その子供を必死に探す母親

夫婦の仲が悪くなる一家

酒に溺れる父親

これを機に新しい命を育む家庭

と、いった残された家族のさまざまな視点

 

そして、泣き崩れる子に厳しくあたる妙漣寺の修験者──

 

『処分』

喉を潰される痛み

目を潰された事による暗闇の恐怖

恐れ、恐怖

死にたく無いと言う、生への渇望

 

処刑人の冷ややかな感情

健をナイフで切る感覚

喉を潰す感触

目を潰す快楽

 

 

実際の時間は15分も経って居ないだろうか

 

しかし、鈴谷は見た光景、あるいは体験した事の全ては、これまでの妙漣寺の『悪行』を凝縮した為、鈴谷にとっては長く苦しい時間に感じた

これも全て、中庭に鈴谷が落ちた時に始まった

 

遠くなる意識の中、神通力の1つである『宿命通』が鈴谷に告げた

 

『妙漣寺を滅ぼすべし』と──

 

最早、全てを失ったと感じた鈴谷はソレを断った

しかし神通力は許さなかったのだ

 

過去1000年に渡る悪逆を尽くした妙漣寺を鈴谷は知った

そしてこの先、近い将来再び妙漣寺は悪に堕ち、これまで以上に犠牲者が出てしまうと神通力は告げた

 

そんな事、神通力に告げられなくともわかっている

今も憎悪と吐気で死にそうだ

 

 

「……分かったよ……!……最高傑作の『僕』が‼︎全てを終わらせれば良いのだろ⁉︎」

 

重くダルい身体を這いながら起こす

 

 

「おい!生きてるぞ‼︎」

 

少し遠く、後ろから声が聞こえた

 

「殺すなよ?生かして島田さんに差し出すんだ!」

 

「おいおい。勿体ねぇ事すんじゃねぇ。出す前に俺たちで『遊んで』からでも遅くねぇ」

 

「マジか……。だが、それも良いな。アイツは失敗してたが今は違う。鈴谷は弱ってるかな〜。あぁ、確かに遊べそうだ」

 

気色の悪い声がこちらに近寄る

数は3名程

 

 

後藤から斬られた部分からの血が止まらない

先程から呪力で傷口を覆っているが、やはり血が出る

 

何か特殊な呪具なのか、それとも毒でも塗ってあるのか……

 

震える下半身に力を込め、立ち上がる

 

「おりゃ‼︎」

3人組のうちの1人。鈴谷に蹴りを入れる

 

ドシャ

 

再び鈴谷は地に落ちる

 

「おい、まずは俺からだ!オマエ等、抑えとけ」

カチャカチャとベルトを緩める

 

「その次は俺な?あぁ、何して貰おうか?歯でも全部抜いとくか?」

そう笑いながら2人は、鈴谷の両腕を持ち上る

 

 

「……後で覚えてろよ……。ゴミ共が……‼︎」

 

ドガッ‼︎

 

「あんまりお兄さん方に、汚い言葉を使うんじゃ無いよ?きれーなお顔に傷がつくからね」

 

頬を殴られた所為で口を切り、血の味が広がる

 

 

(もう、どうしようも無いのか……。何が最高傑作だ……。

『殺さない』──。そんな下らない事、守らなければ良かった……。

あぁ、肉体も変化した様に、精神も暗く、冷たく、冷酷に成れたらどんなに楽なことか……)

 

 

「「もういい加減、楽しめましたよね?」」

 

何重にも重なる女性の声が響く

それと同時に両手を支える力が無くなる

 

倒れる身体を右足で踏ん張り、なんとか体勢を立て直す

先程までの者達は皆、首から上が無くなり、絶えず血が流れていた

そして鈴谷は異様な光が差す後ろに視線を移す

 

青色ベースの美しい十二単衣(じゅうにひとえ)

桃色の長髪に、狐の耳。頭には青いリボンを結んでいる

美しい女性。しかし女狐だった

 

鈴谷は見た瞬間理解した

 

今の自分には到底勝てない相手だと

しかし、鈴谷にはやるべき使命がある

 

妙漣寺を滅ぼす事──

 

だからこそ、無謀だと分かっていながらも、鈴谷は口を開いた

 

「どなたか存じませんが……助けてくれて……ありがとうございます。

ですが……。僕には……やりたい事が……。それまで」

 

生かしてはくれませんか

 

そう懇願した

そう祈った

 

その言葉を聞くなり女狐は目を潤ませた

 

「貴方と一緒に居た狐です!ずうぅぅぅぅと化けていました!理由は少し諸事情がありまして、今は言えませんが……。

ですが!貴方と居た温かい日々!それは決して忘れることのできない幸せな日常でしたわ!」

 

「……え?じゃあ、貴方があの狐さん?」

鈴谷の短い問いに、満面の笑みを浮かべ「はい」と返す

 

「そうか、良かった……。生きてたんだね……」

 

「ふふふ……。あまり私をみくびってもらっては困りますよ?あの程度、私の最大体力の1万分の1も削れてません」

堂々と、まるで親に自慢する子供の様に女狐は鈴谷に言った

 

「そうですわね。まずは私の自己紹介から。ゴホン!私、<玉藻の前>と言います。以後お見知りおきを。ではご主人!まずは……」

そして玉藻の前は、傷ついた鈴谷を反転術式で軽々と治してゆく

 

「あ……。ありがとうございます……。玉藻の前さん」

 

「『さん』は不要ですわよ?狐の時の様に、軽々しく呼んで欲しいなぁ〜と思ってます!」

 

(自分よりも確実に格上の相手に愛称で呼べと……。一歩間違えたら死か?……どうしようか。じゃあ、お稲荷さんと同じように──)

 

「タマモさん。そう言うよ」

これを聞いた玉藻の前は満足そうに笑う

 

「ええ。では、早速本題に。ご主人、私に取り憑かれてはみませんか?神通力持ち、その最高峰である貴方では無いと出来ない……」

 

「うん、いいよ。よろしくねタマモさん」

話の途中だったが鈴谷はソレを了承した

 

「そんな軽々と……。ですが、お互いそれが良いのかも知れませんね。ええ、これで主従関係が出来ましたわね。勿論、主人(あるじ)はご主人ですよ」

そうニコニコしながら言った

 

「……でも一つだけお願い……イヤ、約束を……」

鈴谷は過去を思い出し玉藻の前に告げる

 

「主従じゃあ無くて、対等の方がいい。友達の方がいい。僕の事は何で言ってもらっても構わないけど……」

ここにきて、後藤さんに教えてもらった『友』の定義を思い出し言ってしまった

 

先程、後藤に斬られたばかりだと言うのに……と考えたがフッと笑ってしまった

 

 

「貴方がそう言うなら……。では失礼。あぁ、そうそう。私、呼ばれるまでは一切、力を貸しません。存分に覚醒した自分をお試しあれ──」

玉藻の前は、鈴谷に取り憑いた

 

直後、鈴谷に断片的に『前世の記憶』がフラッシュバックする

その後、玉藻の前が乗り憑った所為か、異様に力が湧いてきた

 

まるで、呪力の核心に触れたかの様に……

 

「じゃあタマモさん。行くよ」

 

 

 

その後、妙漣寺は血で染まった

鈴谷の覚醒に歓喜し笑いながら死んでいった

「自分の存在は、最高傑作をより高みにさせた‼︎」と

 

島田を殺し、ついには親しかった後藤にすら手をかけた

「友として、そして僕に色々と教えてくれた師匠として……。約束を果たしに来ました……」

後藤にはその言葉だけで十分だったのか。鈴谷が小さい頃ら後藤と隠れて菓子を食って居たあの微笑ましい顔をして刀をぬいた

 

幾度となく、大小の傷を作りながらも後藤に勝利した

死に際に後藤は言った──

 

「全ては、あの(バカ)(はかりごと)よ。心して行くがいい。……それにしても、あの小さい子がこんなにも強くなったな……」

 

それだけ聞き、鈴谷は先を急いだ

 

残りは30代目の首

それと僕の命

 

妙漣寺の滅亡まで、残りはあと2つ──

 

 

 

 

005

 

「…………!お────い!聞いてる──?」

五条先生の声で我に帰る

 

「……すみません。聞いてませんでした」

 

「おいおい。せっかく、伊地知が『30代目のお見舞いに行ってきて、報告してる』っうのに。ほら、伊地知も言ってやりなよ」

先生は、伊地知さんに指を差す

 

「あ、いや!鈴谷くん!お見舞いと言っても、未だ意識不明の中ですから……。報告と言いましても、大したものでは……」

伊地知さんはテキパキと僕にそう返す

まるで、五条先生を無視しているかの様に……

 

「伊地知。君、僕を無視してるよね?後で、本気(マジ)パンチな」

ひぃぃぃと声と共に、冷や汗が吹き出す

 

「いえ、伊地知さん。大丈夫です。僕がさせませんから。あと、報告ありがとうございます……」

僕はそう返した

 

「じゃあ、僕はこれで寝ますね。夜の10時をもう回ってますし……おやすみなさい」

僕はそれだけ言うと、会議室のような部屋を出るなり自室に急いだ

 

「(お見舞い)行かなくて良いのかい?」

と五条先生の問いが聞こえた気がするが無視

 

もう眠い。限界が来てる。しかし、寝る前にやりたい事が……

 

 

隣の隣と言っても、憂太くんの部屋から近い

物音があまり鳴らない様に、ソッと戸を開けベットに倒れ込む

 

電気を付けないでいるが、窓から月光が入ってきてまぁ明るい

僕は横になったまま、タマモさんの携帯を手に取り電話をかけた

 

「あ、もしもし。僕です。鈴谷です。明日、任務があるので、明後日に変更して欲しいです……。はい…………。ええ──。では、」

 

明日は、僕と憂太くん、そして棘くんとで、寂ついた商店街の除霊の任務

朝8時発なので、もう眠らないとマズイ

明日眠気で死ぬ

 

瞼を閉じると、サッと意識が遠のいて行く

 

『行かなくて良いのかい?』

五条先生の言葉が脳裏に浮かぶ

 

行く訳ないでしょ

そう心の中で返し、鈴谷は意識の狭間に落ちていった

 

その最中、かつて『友』の意味を教えてくれた後藤の言葉を思い出した

 

『友とは、決して人のの夢、又は野望にすがったりはしない。

誰に強いられる事は無く、自分の生きる訳を自ら定め進む者。

そしてその夢を踏みにじるものがあれば、全身全霊をかけて立ち向かう。

それが、俺自身であっても……。

俺は、友とはそんな対等な者──。

そう思ってる……』

 

 

 




お疲れ様でした‼︎

ここまで読んでくださりありがとうございます‼︎

時間があいてしまいました…

七海の言葉を借りるなら
「労働はクソ」
ただこの一言に尽きます…

今回も少しだけ解説?と後書き?を

解説です

ここは一点だけ

後藤が、この騒動の黒幕は重蔵と言ったのには、理由が少しばかり…
幾ら神通力持ちとは言え、人間の比率が多い重蔵です。老います。老いには勝てません。残念。
つまり全盛期はもう過ぎて行き、力でねじ伏せる事が次第に出来なくなっていきました。
ここで重蔵が考えたのは、『最高傑作(鈴谷)を覚醒させ、妙漣寺を潰す』と言うシナリオです。
この事は、大の親友であった後藤にも相談してます。
勿論、後藤は断りました。なんせ、自らの子供の様に可愛がって居た子に残酷な選択を科さないといけないからです。
ですが、後藤は知ってます。自分は妙漣寺の当主には一生なれず、ゲスな野郎が後を継ぐと。
これは後藤にとっても、断腸の思いだったのでしょうか。渋々引き受けてしまいます。
そして後藤は鈴谷を斬り、覚醒させ、本気で鈴谷と斬り合い、負けたのです。

解説終わりです。

次は後書き(メチャクチャどうでも良い話しか有りません)

fgoでの、バレンタインイベントが終わったと思ったら、なんかガチャ来ましたね笑
石、全部無くなったんですけどね泣
めちゃくちゃ欲しい。欲しい。でも石ない……。最悪

それはそうと、フロムソフトウェアの最新作ゲーム
エルデンリングが発売されますね!
買います。めちゃくちゃ楽しみです!
ステータスを何に振ろうか、と考えるだけでワクワクがとまらねぇ(レジライ風)

ゲームしながら、ゆっくり書こうかなぁと思ってます

長くなりましたが、ここまで読んでくださいましてありがとうございます!

では、また〜
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