玉藻の前に取り憑かれた『天狗』の子   作:赤い靴

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お久しぶりです!
9話目です!
最後まで読んでいただければ嬉しいです!!


第9話 決裂

 001

 

 8分29秒──

 僕は店内に飾られた時計を見ながら時間を計る。

 

 夏油さんが喋り出してからの時間だ。

 手元のコーヒーはとっくに冷め、皿に乗るスイーツすら目に留めず、彼は僕に語り続けた。

 

 内容は、呪詛師になる事を決めた経緯、その過去。

 

 その過去話から僕の前世……、あの記憶の保有者が分かった。

 

 “星漿体(せいしょうたい)”。かの天元(てんげん)様との適合者──

 

天内 理子(あまない りこ)

 

 呪詛師、夏油の資料を漁った時に、彼の経歴書にあった名だ。

 これで、一つ謎が解けた。あの光景は、五条悟と夏油傑との記憶だったのだ。

 

 では何故?天元様との同化に失敗した人間が、僕の元に……?

 

 

「で、私は猿共の時代に幕を下ろし、呪詛師の楽園を築こうと思ってる」

 

 12分56秒──

 

 僕が『あと30分』と言ってからの経過時間だ。

 

「それで高専を裏切り、日夜人々を懲らしめるために勤しんでいると」

 僕は少し皮肉を込めて笑った。

 

「あぁ、その通りだ。その通りだとも。かく言う鈴谷君も、私の過去話に共感する場面も有っただろう?」

 

「例えば?」

 思いつかないなぁと、あえて余裕顔を見せて言った。しかし夏油さんの次なる発言で、その余裕顔が消えたのが当事者の僕でもわかった。

 

「妙漣寺。その一族を滅ぼした。あぁ、でも30代目は、未だに生きてるけどね。以前、意識不明と聞いたけど」

 夏油さんはそのまま続けた。

 

「何故君は、そのような選択を取ったんだい?

 もう妙漣寺から犠牲者を出させない為だろうか?

 では、もっと深く、深く君に聞こうか……。

 どうして、妙漣寺はわざわざ『天狗道』などと言った地獄の道を選んだのだろうか?

『善のためなら、悪に染まる』。聞こえは良いが、君たちが、今までしてきたことは全て『悪』だ。

 赤子を攫い、才能が無ければ捨てられ、たとえ才があっても神通力を取得出来なければ売られる……。

 まぁ、つまり私が言いたいのは──」

 

 夏油さんは冷めたコーヒーを一口含み、ゆっくり口を開け言った。

 

 

「全て、何も出来ない人間(猿共)が原因だ」

 ニヤリと笑みを浮かべて語る。

 

「妙漣寺の起源は知っているね?仏、仏法に囚われ魔に落ちた修験者達──。そう、君たちは『人間を愛しすぎた』のだよ」

 

「つまり、鈴谷君。君も心の奥底でこう思った筈だ。『人間が呪霊に対抗できる最低限の力が有れば、この様にはなって居なかった』と……。どうだい?」

 

 まるで、僕の心の底。奥深くに仕舞い込んだモノを見られているかの様な感覚だった。

 夏油さんとの一連の話し合いから、僕を夏油一派(そちら)に引き入れたいとこがしみしみと感じた。だからこそ、僕は夏油さんに伝えないといけない事がある。

 

「確かにそうです。そう思った事は有ります。だけど、だからこそ僕は夏油さんに伝えないといけない事があります」

 僕たちは決して分かり合えない。それを理解してもらう為、僕は言った。

 

 

「そもそも呪術師は正義のヒーローなんかじゃあ無いですよ」

 

 

 この言葉を聞いた夏油さんは酷く悲しそうな顔をしていた。

 

 

 002

 

 

 残っていたスイーツを残さず平らげ、僕は帰る支度をする。

 

「では、帰ります……。ご馳走様でした。とても美味しかったです。……。……また、機会が有れば……」

 椅子から立ち上がり夏油さんに目を向ける。

 

「あぁ。君は本当に偉いなあ。どこかの五条(バカ)も見習って欲しいくらいだよ」

 あははははと笑う。

 

「もう時間は過ぎているが、僕の独り言を聞いてはくれないか?」

 

「?」

 

「君の術式、『還源術式』──。触れた者の呪力を『何処かに還す』。しかも、領域展開も使えるときた。私にとって、鈴谷君は天敵だ」

 またしても笑う。

 

「君を見ていると、何故か彼女を思い出す。それ繋がりで、私の馬鹿げた考えを聞いて欲しい」

 

「私は、人間(猿共)の時代を終わらせてようと思っている。しかし、君と同じある特級の考えが最近よぎってね。『原因療法』──。もしかすれば君なら出来る気がするんだ」

 

「どうやって?って感じの顔をしているね。大雑把に言ってしまえば、君の領域展開を地球中に張り巡らせる。まぁ、馬鹿げた話だ。私もそう思う。しかし、ピースはもう既に揃っている」

 

「私の『呪霊操術』、君の『還源術式』といずれ揃う『六神通』。本物の『玉藻の前』。そして、乙骨憂太の『祈本里香』。最後に『天元』。もうわかったかな?」

 

 

「僕が、夏油さんの手駒となった天元様と同化して、その結界を利用し、領域展開……。結界内に僕の術式を常に張り巡らせる……。そうすれば、擬似的に人間は『呪力から解放』される──。イヤイヤ、無理でしょ」

 

 どう考えたって無理がある。そもそも僕の領域展開の範囲はメチャクチャ狭い。

 しかも、それを実現するとすれば六神通が必要──

 

 幾ら最高傑作と言えど、6つの神通力の取得だなんて出来るはずがない‼︎

 

 あと、玉藻の前と、祈本里香が何故必要かすら分からない……

 

 

「そうか……。君が『無理』と言うのなら、ダメらしいな。よかった──」

 うつむきボソリと呟いた。

 最後の単語。それは鈴谷に聞こえぬほど、小さく小さくこぼした。

 

 

「では、また」

 

 

「あぁ、鈴谷君とはまた会わなければならないからね。君は君の信じた道を行けばいい。私は私で、我が道を行くよ」

 

 

 

 カラーン

 

 喫茶店のドアを開けて僕は店を出る。

 

 次会う時は、きっと殺し合いになるだろう。

 

 トボトボと歩く。あの喫茶店から100mは離れただろうか、脳内に玉藻の前の声が響く。

 

『見事に断りましたね、ご主人……。確かに、夏油様のあの計画にはかなり欠陥が見られ……実現はしないでしょう……』

 

 僕が天元様と同化して……。その話だろうか。

 ポケットから携帯を取り出し、耳に当てて喋る。こうでもしないと、空に語りかけるヤバい奴になってしまうからだ。

 

 カモフラージュ。カモフラージュ?

 

「まぁ、もし出来てもやらないけどね。確かに、僕は少しばかり人を恨んだよ。けど、今の生活も案外好きなんだ。人が傷つくのは……好きじゃない」

 

 

『ですが……。そうですね。できるだけ『良い終わり』になればいいのですが……』

 玉藻は寂しくそう言った。

 

 いい終わりなんて訪れる訳がない。

 僕らは呪術師。

 

 所詮はヒーローになり損ねた、力のある人間なのだから──

 

 




お疲れ様でした!

お待たせしました。
かなかな書く気が起きず……。
もう少しで終わるので、書いて行こうと思ってます!!

ではまたー
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