転生したらダイワスカーレットの兄になっ………えっ!?姉ですか!? 作:ミレニア
OP戦。
「ダイワメジャー強い!ダイワメジャー強い!!ダイワメジャー今ゴール!!!9バ身差を付け一着ダイワメジャー!」
GⅡ スプリングステークス。
「5番を抜かしてダイワメジャー先頭!内からキョウワスプレンダと外ブラックタイドが上がってくるがダイワメジャー先頭のまま!先頭ダイワメジャー、一着ーーー!ダイワメジャー無敗のまま重賞初制覇!三連勝〜!皐月に向け、準備は整ったぁー!」
事前に言っていた通りダイワメジャーはOP戦に出走し一着。その後スプリングステークスも一着で制し三連勝。ちゃくちゃくとメジャーの実力もファンも付いてきており、もっともノリに乗っているウマ娘の一人であろう。
「今のところは問題無し…と。はぁ、しかし凄いな、本当に」
チームシリウスのサブトレーナーにしてダイワメジャーの担当。そんな彼はメジャーの勢いの凄まじさに驚かされていた。
ここまで順調。このまま行ってしまえばメジャーが目標としている無敗の二冠ウマ娘だって取れてしまうのではと思う位には。
だが、それと同時に不安の要素もあった。
それはやはり…日本ダービー。世代の頂点を決めるレースと言っても差し支えない舞台。
だが、メジャーには2400mという距離はまだ長く感じる。スタミナという面に於いては少なくとも走りきる事は出来る。だが、他のウマ娘と走る訳だから、そうなれば位置取りやその他の事を考えるとやはり心許ないと思わざるを得ない。メジャーの最も得意な距離は1600~2000m辺りだろう。
マイルでの活躍の方が輝けると彼は思い続けるが、メジャーはマイルよりも距離の長いレースを希望する。少なくとも今はダービーを。ならばトレーナーはその声に応えねばならない。ウマ娘の夢を、想いを叶える存在。それがトレーナーだと自負している。
「ただ、先にダービーを考えるよりも、まずは皐月賞だな」
首を振り考えを変える。日本ダービーについての事も大事ではあるが、先の事ばかりを見据えて目の前の事を疎かにしては足元を掬われてしまう。
サブトレーナーは皐月賞の出走表を確認する。
「やっぱり、今年は激しい年になりそうだな…」
3番人気、4枠7番ブラックタイド。
デビュー戦は一着。次走では四着となってしまったがその次からは一着、二着と好成績。更には高い人気を維持し続けスプリングステークスでもメジャーにアタマ差二着。一度勝っているからとはいえ、アタマ差での勝利なのだから油断ならない。
4番人気、2枠3番コスモサンビーム。
デビュー戦は五着とギリギリ掲示板圏内といった成績だったが、その後は二着二回、一着四回とこちらも好成績、さらに朝日杯も制したジュニア級王者。こちらもスプリングステークスで既にメジャーが勝利を上げているが油断は出来ない。
1番人気、8枠18番コスモバルク。
北海道からやって来たウマ娘。デビュー戦からダートであり、そのまま四戦ずっとダートレースを走っていたのだが次走を芝のレースへの出走。ダートを主戦としていたウマ娘が芝で勝つのは少なく低評価だったのだが、それを覆し一着。更に次走は芝の重賞レースだった為四番人気だったがまたも一着。皐月賞への前哨戦の一つとされる弥生賞も一着とメジャー以上に来ているウマ娘。メジャーを差してくるとしたら間違いなくこのウマ娘だろう。
「メジャーは…7枠14番で2番人気か。普通これだけの成績なら1番人気を取れていてもおかしく無いんだけどなあ。…やっぱり今年はレベルが高いな。ん、そういえば…この5番人気の子、メジャーが気になってたっけ」
それを思い出し、そのウマ娘が出ているレースを見ながら考えをまとめる。
5番人気、8枠16番ハーツクライ。
メジャーと同じく三戦し、二勝。しかし何だろうか。この子の持つ差し足は危険な気がする。今はまだ大丈夫かもしれないが、その後はどうだろうか。
「…やる事は多い、が。メジャーの為だ。メジャーを勝たせる為に最善を尽くす。それしかない」
「──それでね、スカーレットはさ、こう言うんだよ。お姉ちゃんはもっとアタシを頼って!って。もうかっこいいし私の事を考えてくれるしで涙が止まらなくて!はあ〜、会いたいなぁスカーレットー」
『は〜、とってもメジャーさん想いな妹様ですね〜!』
「そうなんだよ〜、ほっっっんとに可愛い自慢の妹なんだ〜♡」
夜、トレセン学園に住むウマ娘達が好きなようにプライベートを楽しむ時間。
今日も今日とて一人寂しく部屋で過ごす…ということはなく。デビュー戦の時に出会ったアグネスデジタルと会話していた。最初は畏れ多そうにしていたデジタルだったが、最近では普通の会話が出来るようになり、メジャー自身も寂しい夜を楽しく過ごせるようになった為、デジタルには感謝していた。
『あのー、メジャーさん。私ですね、気になってた事があるんです』
「うん?どうしたの?」
『はい。メジャーさんはその妹様とご連絡はされてないんですか?』
それは当然の疑問でもあった。何度も暇があれば寂しい寂しいと口にしていたメジャー。ならば何故連絡の一つもしないのか。
「あ、あぁー。それはー、そのぉ」
『…その?』
「……声聞いたらもっと寂しくなっちゃうと思うから」
『…へ?』
「だってスカーレットの声を聞いたら私は絶対会いたくなるから!もっと声を聞いてたいと思うし直接会いたいって思うし!それで電話を切っちゃえばきっとより一層声を聞きたくなって寂しくなるしで無限ループ!…それに、スカーレットと話すなら何か大きい事をしてから話したいしね。スカーレットのカッコイイお姉ちゃんが何も手にすること無く、なんてかっこ悪いし。しっかし…はぁ。スカーレットにはいろいろ言ってても、私が実現出来てないんだからほんとダメだなぁ。……ダメダメジャー」
意外と余裕があるのでは、とデジタルは思ったが彼女は出来るウマ娘なのでそっと心の内にしまいこんだ。
それとは別にデジタルはそんな二人の姉妹愛が感情深いのか。
『…なんと言いますか、羨ましいと思います。メジャーさんをそんなに考えてくれる妹様に、そんな妹様の事を想っているメジャーさんの関係が』
「ありがとう、デジタル。そうだ、デジタルもさ、トレセン学園に入学したらスカーレットと仲良くしてよ。絶対、いい関係になれるからさ」
『ありがとうございます、メジャーさん。…メジャーさんは次の皐月賞、出るんですよね?』
事前にデジタルには話してあった。と言うよりはポロっと喋ってしまっただけだ。
まぁ、デジタルはそんな事を言いふらす様な事は絶対しないし、後日発表される内容でもあるが。
「もちろん、私はダービーを勝つ。ならその前のレース、皐月賞位はちゃちゃっと勝たないとね!」
『この時だけは私はダイワメジャーさんの推しとして活躍してみせます!レースも見に行きます!ですから、頑張ってくださいね!!』
デジタルの応援は嬉しい。きっとスカーレットも応援してくれているだろう。チームのみんなやサブトレーナーもだ。
だからこそ、こんな所では躓いて居られない。
「当たり前、勝つのは私。皐月賞も、ダービーも…ね」