転生したらダイワスカーレットの兄になっ………えっ!?姉ですか!? 作:ミレニア
シャアアアァァァ!皐月賞取ったどー!!!
いやマージで嬉しいなこれな!知ってるのと体験するのじゃ大違いだわ。
はぁー、しかし。確かにGⅠの、しかもクラシックレースを勝てるってゆーのは名誉ってのが分かる気がする。皐月でこれなんだ、ダービーならどうなんだ?… 震えてくるな。
観客席のファン達に手を振りながら控え室まで戻る。ライブまで時間はまぁあるからとゴロゴロと寝転がっていたら扉から二度、音が鳴る。
「どぞー」
「メジャー!!!」
興奮気味に入ってきたサブトレーナーを少し呆れながらも、勝利のピースを掲げる。
「勝ったよ、トレーナー」
「ああ!本当におめでとう、メジャー!ってトレーナー?」
「一々サブって付けるのめんどくさいじゃん。私のトレーナーである事には変わりないんだから二人の時は別にいいだろ?」
別に何かしら認めたからそう呼んだとかでも無く、本当に面倒の理由でそうなっただけだ。
それをどう勘違いしたのかは分からないが、サブトレーナーは嬉しそうに頷いていた。
そして、段々と複数の足音がこちらまで近づいているのが聞こえ、直後扉が吹っ飛ばされるのでは無いか位の勢いで開かれた。
「「「「「おめでとーー!!」」」」」
「ォワっ!?み、皆!」
「メジャーすっごいよー!」「よくやったね!!」「自慢の後輩だー!」
シリウスメンバーの先輩達がメジャーを褒めるなり撫でるなりして讃えていた。
「メジャー」
「…オグリさん、勝ちましたよ。皐月賞」
「あぁ、おめでとう。…クラシックのレースは、どうだった」
オグリキャップはクラシックレースの出走が出来なかった。だからか、自身が出れなかったレースに出て、勝ってきた彼女に問うた。
「…はい。良いですよ、ここは。皆が想いと夢を賭けて走り、たった一人しかそれを叶える事が出来ない。故に皆が本気でその座を狙い、座れた事に」
そう語り終えたメジャーはその手を握り締め、オグリキャップへと突き出し次の想いを語る。
「皐月の次は日本ダービー。貴方の代わりに勝ってきますよ」
その気迫は凄まじく、他のメンバー達も黙ってしまう。故にそんな今のメジャーに話せる存在など一人だけだった。
「…あぁ、早く学園に戻って君と走りたい。このレースを制してどれだけ変わったのか、ダービーを経験してどれだけ変わるのか。やっぱり、君といるのは楽しい。だから、もっと見せて欲しい」
怪物の欲望は留まることを知らず。過剰な期待と思わざるをえないが、メジャーは歯を剥き出しに笑い。
「待っててくださいよ。いつか本番で貴方に勝ちますから」
やっべー、どうしよ。オグリに喧嘩売っちゃった。いやね、オグリの空気に流されたと言いますかね。皐月賞を勝った余韻で特に何も考えずに言いましたがね。はぁ、分かりましたよ受け入れますよ。かかって来いよオグリぃぃぃ!!
つーか、やばいのはそれだけじゃないんだよ!ライブの事じゃあ無いよ。正直この曲あんまり動きが無いから覚えやすかったし、普通に歌えたんで怒られるようなことはない、大丈夫。…大丈夫よな?
じゃなくて、問題はデジたんが血の海に沈んでること。
ライブ後にデジたんに会いに行ったらこんな事に。
いや、マジでこのままだと三途の川に行きかねない。てか行ってそうな量。
「デジタル!?ちょ、衛生兵ー!」
「……メジャーしゃぁぁん」
「大丈夫…なわけないよねこの量!」
「わたし、もう一遍の悔いなし…ガクッ」
「デジタル!応答せよ!デジターーール!」
10分後にどうにか蘇生し終えたデジタルは、起きた瞬間にマシンガンどころかミニガン級のトークを繰り広げる。
「──それでメジャーさんがゴールをすぎた時の表情がとてもお綺麗で心臓が壊れそうでしたがまぁそんな事はどうでもよくほんとに嬉しくて周りのお客様にご迷惑おかけしてしまったのが悔やまれますがというかメジャーさんのライブめちゃくちゃかっこよかったですマジでウインクされた時はもごもごもご」
「ごめん、ストップ。まず息継ぎして。それと結構第三者視点の感想って恥ずかしいからやめてね」
ほんのり顔を赤らめて目を逸らす。
デジタルは止められた事ではっ、と正気に戻ったのか何度も謝る。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!もうわたしのバカ!距離感を大事にと言ったのはわたしでしょうがぁぁぁ!」
「どうどう、落ち着いて。恥ずかしかったけど同時に嬉しかったからさ、ありがとね」
「あう、はいぃ。その、ですね。改めて言わせてください。皐月賞おめでとうございます」
「こちらこそ、応援ありがとうございますってね」
「これで妹様にもご報告出来ますね!」
「あー、うん。そーだね、はは」
「…あの、何かご不都合が?」
「んーや、そうじゃないけど。なんと言うか勝つたんびに連絡するのもなって思ったりして」
事実メジャーは三度レースを勝ち、その度にスカーレットに報告して話しがしたいとスマホを片手に葛藤していた。
…ちなみに何故葛藤していたかは心のどこかで「スカーレットが入学するまでにいっぱい勝って再会した方がカッコイイよくないか?」と思っていたり。
「いいじゃないですか、勝つ度にでも。小さな何かでも、こういうのって嬉しさを分かち合うからいいんだと思いますよ」
そんな思いを一刀両断。自分より三つ下の子に教示を受けた事に羞恥心よりも尊敬の方が先に出る。
「………すごい。さすがデジタル。さすデジ。やっぱりデジタルは優しくて凄いね。スカーレットとはまた違った意味で君が愛らしいなぁぁ」
「ふぇっ?!ちょ、メジャーさん!?わ、わたしがすごいなんてそんな…!」
「ん〜、かわいい〜♡よしよしよし〜」
「か、かわっ!?かわいいってわたしが!?そ、それよりもあ、頭を撫でるのはちょっと…!わ、わたしが持たないぃぃぃ」
メジャーは一つ大きな壁を乗り越えたことで重度の妹不足を発症。その代わりでデジタルに妹属性を見出してしまい、餌食となった。
どうにか解放された頃にはホクホク顔で立つメジャーと顔を真っ赤にし手で隠しながらお姫様抱っこされるデジタルが目撃された。
余談だが、メンバーやサブトレーナーはデジタルの事を知らないので誘拐かと誤解した。
夜10時。トレセン学園の美浦寮。
その後、デジタルを帰し、皆の誤解を解き祝勝会でわいわいとしながらご飯を食べ自身の住む部屋に居る。
窓から入る月の光のみが部屋を照らし、いつもなら騒がしい寮も静けさで包まれていた。
右側に置かれるベッドの上で体育座りをし、スマホを片手にじっと画面を見る。
その画面に映るのはダイワスカーレットと表示される名前と受話器のアイコンだった。
かれこれ30分はこうして悩んでいた。そしてようやく決心が付いたか「デジタルを信じる!」と一言呟いた後、受話器のアイコンを押した。
コールが二度、三度となり、彼女と繋がる。
「も、もしもし?」
『もしもし、お姉ちゃん?』
メジャーが入学してもう一年。
久しぶりに聞くスカーレットの声に、少し涙が出そうになった。
「久しぶり、だね。…そのー、元気だった?」
『元気だったわよ。お姉ちゃんも元気そうで良かったわ』
「そっか…。うん、元気でやってるよ。………」
『………はぁ。お姉ちゃんのばーか』
「えっ、ばか?」
『そうよ、ばか。お姉ちゃんの事だもの。きっと私が言った言葉のせいでカッコ悪い事をしないようにとかしてたんでしょ』
「なんでバレ──」
『アタシがお姉ちゃんの事を分からないとでも?…ごめんなさい。確かに、かっこいいままで居てって言った。でも、カッコ悪くてもいい。かっこよくなくたってアタシにとってはカッコイイお姉ちゃんに変わりないもの。……それに…、凄く…グスッ…寂しかった!』
「…スカーレット。……ごめん、私もずっと寂しかった。だけど勇気が出なくて、連絡出来無かった。だから、その分また話そう?会うことになるのは先でも、話位はいいよね?」
『ゔん!』
『でも、お姉ちゃんさ。一回手紙でめちゃくちゃカッコ悪いの送って来たのになんでそんなに拗らせちゃったの?』
「ヤメテ、ヤメテ。ユルシテ、ゴメンネ…」