転生したらダイワスカーレットの兄になっ………えっ!?姉ですか!? 作:ミレニア
「…トレーナーにここに来てって言われたけど、何の用だろ」
夕暮れ時の山の中。トレーニングを禁止にされた日から来ることがなかったこの場所に前日、トレーナーに呼び出された。
「…来ないな。…なら帰っても──」
「すまない。待たせただろうか?」
「……え?オグリさん…?」
声を掛けてきたのはトレーナーでは無く、チームシリウスのエース。オグリキャップ。
「あの、オグリさん。トレーナーは?」
「あぁ、彼から私に託された。君のこと」
「…?託された?」
「あぁ。私が君を叩き潰すことをだ」
「は?何を言って…っ!?」
オグリキャップがこちらを睨みつける。そう錯覚するほどに彼女の雰囲気が変化し、ダイワメジャーを後ずらせた。
「レースをしよう。私と、君で。かかってこい、ダイワメジャー」
山中、二人のウマ娘が立つ。
コースを描くように引かれ、年月と共に薄くなったレースをする為の線。
「ここからスタートで、コースを一周後に少し前にある看板がゴールだ。距離は2000m」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。いきなりレース?というか、私そういうの禁止に…」
「君のトレーナーは許可を出した。…なぁ、メジャー。一つ聞いてもいいだろうか」
冬となり、少し秋風が残るようなぬるく、冷えた風が吹く。
「…何ですか」
「君の目標は何だ」
「…目標、ですか?「ああ」………そんなの決まってる。あいつに負けないこと。私はあいつに勝たなきゃいけない。負けちゃいけなかったのに…勝てなかったから…今度こそ───」
「違うだろう」
「───は?」
「思い出すんだ。君は何のために走ってる」
「…なんの……ため」
「レースを始めよう。…3.2.1」
「ちょ、そんないきなりっ!」
ゼロ、そんな言葉と共にオグリキャップが走り出す。それに遅れてダイワメジャーもすかさず着いて行く。
「…ぐ、……くそっ」
早かった。これが全盛期は過ぎたであろう走りであるというのにダイワメジャーは追いつける気がしなかった。まるでキングカメハメハと重なるように見え、身体が鈍く感じる。
(…そっか。私は、怖いんだ。彼女と走るのが。私がどう走ろうと、どんな作戦を立てようと、全てを蹴散らして玉座に座らんとする大王に…)
思えば思うほど、ダイワメジャーの脚が動かなく感じる。
(…ははっ、笑える。あんなに啖呵切っておいて、皆に言いまくって、たかだか一回負けて怖がって。今まで順調で来れてたからってどこか調子に乗って痛い目見て。…怖いよ。また負けるのもそうだけど。何をしても無意味なんじゃないかって。あいつに負けたくない…。でも、あいつは私以上に強いんだから…私が負けるのは………)
「メジャー!」「っっ!!?」
「前を向けっ!君が何を考えてるか、私には分かる!リギルの彼女に勝つことよりも、負けない事を考えてるんだろう!だが、それは駄目だ!君が立ち直るには前を向いて走り続けろ!」
「…そんなの」
「君にも色んな支えて貰っている人が居るだろうっ!」
(…チームシリウスのメンバー。いつも私の為に力を入れて併走もレース経験も積ませてくれてる。トレーナー。いつも遅くまでトレーニングメニューや食事管理、様々な所で支えてもらってる。友達…デジタルか。何気に夜が寂しく無くなったのは彼女のおかげだし。
なにより、スカーレット)
「……あっはは」
(あぁ、バカだなぁ!ホントに!何で忘れてたんだろ!私の目標はあいつに勝つこと?それも一つ。じゃあレースに勝つこと?それも一つ!だけど一番は!)
「私が世界一誇れる姉になるんだよおおおおおぉぉぉ!!!」
「そうだっ!私達は一人じゃ強くなれない!仲間が居て!トレーナーが居て!友達でありライバルが居るから!」
「「はあああああぁぁぁぁぁ!!!」」
「はぁ…はぁ…」
時間で問えばトレーニングを禁止されてからそこまで経っていないだろうに、身体がいつもより重く感じる。
「すっきりしたか?」
「…はい。ホントにありがとうございます」
だが、心は確実に晴れていた。
「それは君のトレーナーに言うべきだ。何より、私は君と走れて楽しかった」
「あはは…それなら良かったです。そうだ、私はどんなにかっこ悪くとも妹に、皆に誇れるウマ娘になる。そう改めて決めました」
「そうか。なら後は進むだけだな」
「はい!」
「…あぁ、そうだ。最後にトレーナーから伝言を伝えられていた」
「………ぁえっ、なんか嫌な予感」
『君が留守の間に何度も鳴るから、何か緊急な事だったら不味いからと電話に出させてもらった。相手は君の妹さんだったけど…
めちゃくちゃ怒っていたから気をつけてね』
「……………スーッ。……………オグリさん」
「なんだ」
「三女神に祈ったら時間巻き戻ったりしませんかね…?」
「しない。諦めて怒られるべきだ」
「………はい」