燦然と輝く勝利の加護 作:光車
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嫌いなものはいろんな理由でできる。
大きな理由がある時もあれば、どうでもいい理由や何も理由がないときもある。
けれど、まさか僕がゲートを苦手になるなんて、思っても居なかった。
「うぅ、まさかゲートがこんなに嫌になるなんて……」
レースの時は気にならなかったけど、いざゲート練習をしてみるとなると想像以上に疲れる。
ゲートに入った後、集中することがなかなかできない。
コスモス賞のとき、なんで集中できたのかが全くわからないほどに、集中ができない。
ゲートに入ることは流石にできる。
けど、ゲートが開いたときに即座に反応することがほとんどできないのだ。
勿論、この状態でレースに出るとなるとほぼ確実に出遅れるだろう。
「……まさかこんなに苦手だとはな」
「ほんとにね……」
そして苦手なことを一生懸命やるのはとても疲れる。
結果、30分も練習できずに体力が切れてしまったのだった。
「……これ、改善できるのかなぁ?」
「改善するしか無いだろうな。レース中に出遅れるなんてことはできるだけ避けたいし」
まぁ、そうだよねぇ……。
選択肢は一つしか無いけど、現実逃避をしたくなるくらいには嫌になっている。
「……仕方ない、別のことするか」
「そうしよっか……」
そして、一旦ゲート練習は諦めて。
次走とこれからの目標について、明確にすることになった。
数時間後。
「まず次走は東スポジュニアステークス。これはいいな?」
「うん」
GⅢレースである東京スポーツジュニアステークス。
来年のクラシック有力候補であるウマ娘も何人か出てくるであろうレースだ。
そこで僕自身の実力を明確にする。
そのつもりだ。
「で、その次は」
「ラジオたんぱ杯ジュニアステークスだね」
そしてラジオたんぱ杯。
これもGⅢのレースで、ここでもう一度僕の実力を見極める。
特にこのレースは皐月賞と同じ舞台。
皐月賞を目標のレースとしているウマ娘も多く出てくる。
「コスモス賞の圧勝ぶりを見る限りそう簡単に負けるとは思えないが、この2つのどちらかで5着以下に負けたら……」
「うん、トリプルティアラ路線だね」
トリプルティアラ路線ではクラシック路線に比べて力のないウマ娘たちが集まる。
時折強いウマ娘も出てくるけれど、基本的にはそうなるのだ。
というのも、クラシック三冠は「実力」を示すためのもの。
それに対して、トリプルティアラの方は「華やかさ」だ。
当然、実力を示したいウマ娘はクラシック路線に行く。
「でも勝った場合は、弥生賞」
そしてラジオたんぱ杯ジュニアステークスを勝利した場合は、クラシック三冠を明確に意識してレース選びをしていく。
そのために皐月賞のトライアルである弥生賞に出走する。
勿論そこまで行くと、勝てるかどうかわからない。
いや、次走ですら勝てるかどうかわからないというのにそれ以降を考えるのは流石に先を見すぎか。
「それ以降は後々考えていく……ってとこか」
「だね」
これが数時間ほどの相談の末、完成したプラン。
基本的には三冠を意識していく予定になった。
「で、これで明確に三冠が目標になったな」
「やるべきことは変わらないけどね」
まぁ所詮これは事実確認であり、ただの息抜き。
今度息抜きのためのものを何か買っておこうと思う。
そうしないと息抜きができなさそうだし。
「じゃ、ゲート練習に戻るか」
「あ……うん」
回復したはずの疲れが戻ってきたような気がしたけど、きっと気のせいだろう。
そう思いたい。
〜−〜−〜−〜
「つかれた〜!」
いつものようにベッドに飛び込む。
ゲート練習や位置取りの勉強など、コスモス賞のときに洗い出した問題点。
それに加えて、単純な実力の向上のためのトレーニング。
それをやり続ければ、当たり前だが大変疲れる。
勿論それが勝ち続けるために必要なことではあるからやりたくないわけではないけど、それでも疲れるものは疲れるのだ。
「おつかれ、ドラド。でもあんまり疲れたー!って言ってると、疲労が抜けないよ?」
「さすがにそんなわけないよ、ユニちゃん」
苦笑いしながらユニちゃん──ネオユニヴァースに返事をする。
……なんかここにいる間に随分と女の子になったな、なんて思う。
おかしい、少し前までは男だったはずなのに。
あれ? 男だったんだっけ?
とりあえず思い出せないくらいにはあやふやになってる。
このユニちゃんことネオユニヴァースは僕の同室のウマ娘。
一緒に走ったことは無いけれど、実力は高いらしく「リギル」なんていう有名なチームにも誘われているくらい。
しかも僕と同期。
僕が記憶喪失になってしまっていることはユニちゃんにも伝わっている。
だからなのか、こんなわかりやすい冗談を言うことが時折。
それと、僕のことを結構気にかけてくれるウマ娘でもある。
だからこそ、僕が倒れてしまうほどに追い込んだトレーナーにとても怒っていた。
トレーナーとユニちゃんの関係は僕から見るとよくわからないもの。
仲が悪い時もあるけど、妙に仲がいい時もある。
聞いても「気にしなくていい」の一点張りなのである。
「あ、そうだ。お風呂入ってきたら?」
「あれ、先に入っていいの?」
「私はもう入ったわよ」
勿論僕とも仲がいい。
時折極端なボディタッチをしてくるときがあるのは困るんだけど。
でも、とってもいい友達だ。
「ほら、さっさと入ってきなさい。後でその体揉んで上げるからさぁ……ぐへへ」
「言い方よ」
こういうのが無ければ……はぁ。
ちなみにこれは僕の体をマッサージしてあげるというだけである。
決してやましい意味ではない……はず。
まだまだ先は長いのだ、これくらいの疲れで音を上げるわけにも行かない。
僕はひっそりと、左手を強く握った。
「ほら、入ってきなさいって! お湯が冷めるわよ!」
「わ、わかったって」
エルドラドとネオユニヴァース。
ネオユニヴァースは思いつきでエルドラドと同室に。