燦然と輝く勝利の加護 作:光車
そして短め。
5月のいつだったか。
一度だけ、エルドラドと併走したことがある。
その時私は全く追いつけなくて、2バ身もの差ができてしまっていた。
当時の私は、同期では1番だと思ってたから負けた事が衝撃的で。
でも、いやだからこそすごいと素直に思った。
ああなりたいと、あんな風に走りたいと強く思った。
できるできないじゃなくて、なりたいって。
でも、いつのまにかエルドラドは記憶を失っていた。
私と一緒に過ごした記憶も、トレーナーと一緒に訓練した記憶も、なにもかも。
強気で高慢な、けど人に対する思いやりも強いエルドラド。
それが全部消えてしまったわけじゃないけど、それでも性格すら変わっていた。
そんなエルドラドのコスモス賞を見て思った。
──ああ、弱くなったな、って。
『第4コーナーを通過して、ネオユニヴァースここで抜け出した! 更に後続を引き離します!』
『強い強い! 完全に独走状態! 圧倒的な実力を見せつけました、ネオユニヴァース!』
『大差勝ちです! ネオユニヴァース、期待の新星として高い実力を存分に見せつけました!』
「良くやったわね、ネオ」
「いえ、このくらいは当然です」
私のメイクデビューは大差勝ちという圧勝で幕を閉じる。
当然、私のトレーナーである東条トレーナーも私のことを褒めてくれる。
けど、私はあまり嬉しく無かった。
(今の脚だと、あの時のエルドラドを差しきれない)
そういうことだ。
今の私ではどれだけ全力を尽くしてもエルドラドを差しきれない。
本気でそう思ってしまう程、きっと私の中では差があった。
「相変わらずネオは謙虚ね……」
「そういうわけではないのですが」
東条トレーナーは苦笑いしながらそう言うけれど、別に謙虚とかそういうことではない。
ただ単純に。エルドラドに追いつくまで気を緩めることができないだけである。
(今のエルドラドなら抜けるだろうけど……弱くなったあの子を抜いても意味がない)
だからいつか、エルドラドが元の力を取り戻したのならば、その時は。
そう考えた時、私の顔にはきっと獣の如き獰猛な笑みが浮かんでいた。
〜−〜−〜−〜
11月16日、東京スポーツジュニアステークス。
そこで起きたのは、ただの蹂躙だった。
(けど、足りない)
しかし足りない。
エルドラドがあの時私に見せたあの末脚に比べたら、今あの子が発揮してる末脚は比べるべくもない。
「あの子の末脚を一部では黄金の末脚なんて言ってるけど……。あの子の
大差勝ちとはいえメイクデビューだった私とは違い、エルドラドはデビュー戦自体が格上挑戦のオープンクラス。
そこで7バ身差という結果でねじ伏せたエルドラドの末脚を黄金の末脚と称する人が居る。
けれど私は知っている。
エルドラドの末脚はあの程度のものではないということを。
だからこそ残念に思った。
同じだけの末脚しか使わない、いや使えない今のエルドラドを。
「だからこそ、私達が戦う皐月賞までには力を取り戻してほしいのだけど」
どうするべきか悩みながら、私は中山レース場から去った。