悪事を働かない、あくタイプ使い   作:羽虫の唄

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心の中の無免ライダーが「お前(スランプ)に立ち向かわなくちゃいけないんだ!」と立ち上がったので初投稿です。

※今回、オリジナルリージョンフォームとして、原作とは異なる姿のサーナイトが登場します。その姿や設定が、とある方のイラストと似通っておりますが、そのイラストの作者様、自分の双方に、接点はございません。
詳しくはこちらの活動報告をご確認下さい。何か問題が起これば、即座に該当キャラクターを変更する予定です。


小馬鹿にしたり罵ったりしない、メスガキ (上)

 日に数回、(あお)い砂浜を観光名物にしているヨツバタウンからは、近くの離島とを繋ぐフェリーが出発する。

 向かう先は、幽幽(ユユ)島と呼ばれる人口200人程度の小さな島だ。

 

 ゴーストタイプの群生地として有名なユユ島に向かう為、フェリーを利用した乗客の1人である、筋骨隆々の男性・ギガンは、常に浮かべているその不気味な人相の所為か、出発前・搭乗中・到着後に徹底した手荷物検査を受けたものの、無事に波止場へと足を下ろした。

 

 人相だけで危険物を持ち込んでいる可能性を疑われると言う、失礼極まりない事態に遭遇したが、別段、それを気にしている様子はギガンには見られない。

 寧ろ、その口角を更に吊り上げてさえいる。

 

 

「さァて。それじゃァ早速向かうとするか、ククク……!」

 

 

 ヒメンカに似た色彩の頭髪を気障ったらしく流した彼は、自身の不気味な笑いを前に、周囲の人間がサッと身を引くのも構うことなく、目的の場所に向かって歩み始めた。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 ──さて。ギガンが辿り着いたそこは、根だろうと幹だろうと、枝だろうと葉だろうとその全てが黒い木々で形成された、おどろおどろしい森である。鬱蒼と茂った木々は陽の光を通さず、日中であろうとも灯りを必要とする森の中は夜半とそう変わらない、そんな場所だ。

 

 島民から『いざよいの森』の名で知られているそこに住まうポケモンは、それぞれが中々の強個体。並のエリートトレーナー程度では歯が立たず、少なくともポケモンリーグ未経験者では、まず返り討ちにされるのがオチである。

 

 

「──ククク…! 随分とまァ、威勢の良い…。思う存分相手をしてやりなァ、テメェら!」

 

 

 そんな、地元住民すらも寄り付かない危険地帯に訪れたギガンはと言えば、『いざよいの森』に到着するや否や、腰のホルスターからハイパーボールを抜き出し、自身の相棒たちを登場させた。

 

 暗闇に潜むゴーストタイプのポケモンたちは、ギガンたちに向けて容赦無く攻撃を仕掛け、四方八方から襲い来る〝シャドーボール〟や〝ナイトヘッド〟を前に、しかし彼らは獰猛に牙を剥いて笑みを浮かべている。

 

 

「モルペコ、〝オーラぐるま〟で蹴散らしてやれ!」

 

 

 もるぺこっ! とギガンから指示を受けたモルペコが、頬袋で貯めたエネルギーを放出。その場で回転車の様に動かし、目にも留まらぬ速度で森の中を駆け巡る。

 

 エネルギーの消費に合わせて起こるホルモンの変質により、モルペコの模様と一緒にタイプも切り替わる〝オーラぐるま〟は、言わずもがなゴーストタイプにとっては致命的(こうかばつぐん)であり、手痛い一撃を受けたオーロットたちは、加速を続けるモルペコを忌々しげに睨み付けた。

 

 

「ベトベトン、〝かみくだく〟!」

 

 

 モルペコの一撃を受け、動きの止まった彼らに繰り出されるのは、リージョンフォームのベトベトンによる、凶悪な〝かみくだく〟。有害物質の結晶体を牙代わりに放たれた容赦無い一撃に、屈強なオーロットたちは悲鳴を上げつつ撤退していく。

 

 

「ククク…! 〝れいとうビーム〟だサメハダー!」

 

 

 に、追撃を仕掛けるのは、海のギャングとして名高いサメハダーだった。モルペコやベトベトンに手傷を負わされ退いていくゴーストポケモンたちを、射出された氷結エネルギーが貫いていく。

 その命中精度は凄まじく、正確無比という言葉がぴったりだった。……当のサメハダー自体が無数のゴーストタイプを前に、発狂寸前で涙目になっていることが玉に瑕ではあるものの。

 

 

「ヌ───ッ」

 

 

 森に踏み入ったかと思えば、次の瞬間には猛威を払い始めたギガン。

 どちらが先に手を出したかで言えば──僅差ではあるものの──森に住まう彼らの方が先ではあったのだが、どちらにせよ、ギガンたちが脅威であることに変わりはない。

 

 余裕綽々の様子で自身の手持ちたちを見やるギガン。その背後にこっそりと近づくのは、ぬけがらポケモンであるヌケニンだ。

 

 生身の人間がポケモンの……ましてや、霊魂や生命に深く関わることが可能な種から攻撃を喰らえば、その結果は火を見るよりも明らかだろう。

 なので、

 

 

「ノォック!」

「ヌ!?」

 

 

 身を潜めていたノクタスがヌケニンを打ち落とす。ギガンのパーティの中でも、随一の隠密能力を備えたノクタスによって、ヌケニンは呆気なく地に伏すこととなった。

 

 

「ククク…。()()()()()ながら、随分と手厚い歓迎をするじゃねェか。…──ッ、ベトベトン!」

 

 

 ジムトレーナーでさえも手こずる強さのポケモンが、しかも何体も。

 そんな危険地帯に踏み入っても不気味な笑みを崩すことのなかったギガンであるが、唐突にそれを引っ込めると、力の限り声を張り上げる。

 

 彼に名を呼ばれたベトベトンは、〝とける〟を使い自身の面積を広げると、触手の様にヘドロの体を動かし、周辺を駆け回っていたモルペコを手繰り寄せつつ、ギガンの元へと集合した。

 

 即座に襲いかかって来るのは、鋭い輝きを伴った無数の(つぶて)である。身体を隆起させギガンたちを丸ごと覆ったベトベトンの活躍により、その攻撃ではベトベトンしかダメージを負うことはない。

 

 

「相変わらず、えげつねェ威力の〝パワージェム〟を放ちやがる。──本丸の登場だ。気合い入れていくぜェ、テメェら…!」

 

 

 傷を負ったベトベトンにオボンのみを与えつつ、覚悟を決めるかの様に、不気味な笑みを浮かべ直すギガン。その目前では、黒く染まった木々が軋んだ音を発しながら形を変え、『道』を作り出している最中だった。

 今し方彼らに、まるで超大規模な散弾銃の様な攻撃を仕掛けた主が、道の奥先に姿を露わにする。

 

 華奢な体躯。赤い大きな瞳。頭髪を思わせる緑色の頭部…。

 

 ほうようポケモンとして知られているサーナイト──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──の登場に、ユユ島のゴーストタイプのポケモンたちが、イトマルを散らす様にして一斉に身を隠した。

 

 それだけで、如実にそのサーナイトの実力は推し量れる。

 指をさす様な動作の後に繰り出されるのは〝サイコキネシス〟。シンプルでありつつ強力なエスパータイプの技により、ギガンたちの周辺の空間が丸ごと圧縮されてしまう。

 

 言わずもがな、モルペコたちあくタイプのポケモンは、表皮や体内に存在するあくタイプエネルギーによってエスパータイプのエネルギーを中和する為に、その攻撃は無意味である。

 しかしそれはあくまでもポケモンに於いての話だ。人間であるギガンにとっては、勝手が異なるのは言うまでもない。

 

 

「ぐうゥ……ッ!?」

 

 

 ギシギシ、ぎちぃッ。

 ……そんな不気味な音を全身で奏でるギガンに、サーナイトの口が弧を描いた。ギガンの野趣溢れる獰猛な物と異なり、薄氷の様なそれは、見る者にその冷徹さをこれでもかと伺わせる代物である。

 

 サーナイトの攻撃に、苦悶の表情を浮かべるギガン。その鼻や目尻からは、次第にどろりとした血液が流れ始めた。それを見たサーナイトは裂けんばかりに笑みを深め、そして主人の危機にモルペコたちが一斉に飛び掛かる。

 直後であった。

 

 

「……(フン)ッッッ!!!」

 

 

 ──音にするなら、どぱーんっ、とかそんな具合だろう。

 

 ギガンが叫ぶや否や、サーナイトが展開していたサイコパワーによる空間圧縮が内側から破られ、圧力から解放された空気が小規模な爆発を引き起こした。木々が激しく揺れ、近くにいたモルペコたちや、隠れていたゴーストポケモンたちが派手に吹き飛んでいく。

 

 目を見開いて驚くサーナイト。自身の実力を微塵も疑っていなかった彼女の前で、鼻から垂れた血を拭いながらギガンが獰猛な笑みを浮かべて見せた。

 

 

「ククク…! どうしたァ? そんな驚天動地の瞬間を目の当たりにした様な間抜けた面を晒して。──分からねェのなら、俺様が一体何をしたのか教えてやるよ……」

 

 

 信じられない、と表情で語るサーナイトに向け、ギガンが告げる。

 

 

「力いっぱい動いただけだッ!!」

 

 

 ──この、ゴリランダーが!

 サーナイトのそんな悲鳴が、森に木霊した様な気がした。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 〝パワージェム〟や〝サイコキネシス〟、加えて〝シャドーボール〟などなど…。

 

 その特殊攻撃力の高さに物を言わせた遠距離からの攻撃を前に、特防と体力に優れたベトベトンが前衛を務め、動きの素早いモルペコやサメハダーが援護しつつ攻撃を仕掛け、ノクタスがギガンを護衛する。

 

 そんなやりとりを続けて、暫く経った頃。

 ギガンたちの苛烈極まりない戦いは、しかし1匹のポケモンの登場により、唐突に終わりを告げることになった。

 

 

「…… …… ……」

 

 

 まるで始めからそこに居たかの様に。

 

 漆黒の体躯と、対照的、毛髪を思わせる白い頭部。サーナイトとギガンたちの間に突如現れたそのポケモンは、両者を諌めるかの様にそれぞれへ向けて掌を向けている。

 

 

「…… …… ……」

 

 

 双方退け、とでも言わんばかりの眼光が鋭く向けられた。先に矛を収めたギガンに続き、サーナイトも展開していたサイコパワーを解除する。

 それを確認すると、黒いポケモンも両手を下げ──その先の掌に収束させていたあくタイプエネルギーを霧散させた。

 

 木々を捻じ曲げて作った『道』の端に寄り、丁度お辞儀をする様な格好となるサーナイト。彼女の側を黒いポケモンは通り過ぎ、その途中で、ギガンに向けて指をちょいちょいと細かく動かす。

 まるで着いて来いとでも言わんばかりの仕草だ。それを見たギガンは、乱戦によって服に付いた土埃を叩き落とし、後に続く。

 

 

「──サナっ!」

「うォッ。急に威嚇すンじゃねェ!」

 

 

 途中、サーナイトが苛立たしげに声を発し、ギガンは思わず声を荒げることとなった。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 黒いポケモン・ダークライの後を追って辿り着いたのは、『いざよいの森』で唯一陽光が射し込む場所である。

 

 大きく扇状に開けたそこで、ギガンはと言えばキャンプグッズを広げ、特製のきのみカレーを作っていた。業務用の大型鍋にきのみやルー、その他諸々の食材を投入して煮込めば、辺りにはなんとも美味しそうな匂いが立ち上り始める。

 

 その頃になると、初めは炎に慄いていたオーロットやパンプジンたちも、次第に鍋の周りに集まり出していた。モルペコやノクタスが器用に草葉で皿を作っているのを横目に見ながら、ギガンは仕上げとばかりに両手を使い、ハートマークを作り出した。

 

 その人相とは、とてもではないが似合わない。

 

 

「ククク…。──セイヤッ!」

 

 

 どぉう…っ! と、本場ガラルにてキャンプカレーの極意を学んだギガンにより、真心(物理)が投入された鍋は、天高く光の柱を聳えさせる。

 

 突然の怪奇現象を前に、オーロットたちはまたも鍋から距離を置いたものの、ギガンが草で出来た皿にカレーを装えば、『まぁ食えればどうでもいいか』と言った様子でそれを受け取り始めた。

 

 〝ポルターガイスト〟などで、器用にカレーの盛られた草の皿を仲間たちに配る彼ら彼女らを眺めるギガンは、彼自身の手持ちたちにも配り終えると、あるポケモンたちの元へと足を運ぶ。

 

 そこに居るのは、ダークライとサーナイトだ。

 これ美味いな、とでも言わんばかりの表情を見せるダークライと対照的に、サーナイトの方は、カレーを頬張りながらもじっとりとした視線をギガンに向けている。

 模様のせいで濃い(くま)が出来ている様に見えるサーナイトは、『原種』よりも幾分か青白い肌も合わさり、酷く不健康に見えた。

 

 

「ククク…! 本場ガラルで学んだカレーは一味違ェだろ? おかわりもまだある、腹が膨れるまで好きなだけ食うンだなァ、ククク…!」

 

 

 その言葉を聞くと、サーナイトはぶすっとした表情を見せる。容赦無く攻撃を仕掛けたことからも分かるとおり、あまり、ギガンのことを好んでいないらしい。

 

 ……が、それとカレーが絶品であることはまた別である。ギガンと視線を合わせることなく、食べ終えた皿を彼に渡すと、おかわりを要求するサーナイトであった。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 ククク…。と、笑い声を発しながらカレーを振る舞う不気味な形相の成人男性という、なんともヘンテコな図はその後、巨大な鍋が空になるまで続けられた。

 

 マニアからすれば垂涎(すいぜん)は必至、苦手な者にとっては卒倒待ったなしの数と種類のゴーストタイプのポケモンたちも、特殊な部類とは言え生物であることに変わりはない。腹が満たされれば、眠りに就くのは必然的であった。

 

 次第に雑魚寝を始めた彼ら彼女らに混ざり、ギガンも適当な場所で寝転がる。頭の後ろで組んだ両手を枕代わりにする彼は、雑草で作られた天然物のベッドの具合を気に入った為か、直ぐに寝息を立て始めた。

 

 因みに、彼の手持ちは全てハイパーボールに収まっている。

 幾ら寝ているとは言えど、ゴーストタイプに囲まれつつ食後の惰眠を貪る姿は、愚鈍と言われても仕方がない。豪胆、と評されることはまず無いだろう。

 

 

「…… …… ……」

 

 

 一際大きく聳える樹木を背もたれにするダークライ。その視線の先では、寝入ったギガンの元へ、静かに近づくサーナイトの姿が。直ぐ側で膝を折り、自身を見下ろすサーナイトにギガンは気付くことなく──寝ているので当たり前だが──そのまま、一定のリズムで寝息を繰り返している。

 

 サーナイトが何かしても止められる様に、指先に黒いエネルギーを収束させていたダークライだったが、それも、サーナイトが静かに横になったのを確認すると、霧散させ、ダークライ自身もまた心地良い眠気に身を任せた。

 

 青い瞳が完全に閉じ切り──そうして、特性(ナイトメア)が発動する。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「─────」

 

 

 名前を呼ばれた()()()()は、声の方へと振り返った。

 見渡す限りの暗闇の中で、その幼い少女の姿だけがぽっかりと浮かび上がっている。

 

 

「─────」

 

 

 ニコニコと純真無垢な笑顔を浮かべる少女……キルリアのトレーナーは、駆け寄って来た自身のパートナーを優しく抱き止めると、そのままキルリアの頭を優しく、数度撫でた。

 

 

「─────」

 

 

 今日も可愛いね、などと褒められたことで、キルリアの心が温かなもので満たされる。そうして得た感情エネルギーを、エスパータイプとしての能力と、種族(かんじょうポケモン)としての特性を駆使して増幅して伝えれば、少女は更に笑みを柔らかく、温かなものに変えた。

 

 

「─────」

 

 

 キルリアは、優しい少女とのこうしたやり取りが好きだった。

 

 確かに、勝負の時には普段の様相が形を潜め、()()()()()鹿()()()()()()()()()が目立つものの、キルリアからしてみればそこもまた魅力的な一面である。

 やれガキの癖に、やら、やれ大人をバカにしやがって、などと言ってくる輩は悉く返り討ちにしていた。それを出来るだけの実力が、少女とキルリアには備わっていた。

 

 

「─────」

 

 

 バトルでは大人も舌を巻く程の腕前を披露し、自身のパートナーには惜しみなく愛情を注ぐ、とても素敵な人が、キルリアのパートナーである。

 

 

「─────」

 

 

 

 

 ……とても、素敵な、人で、あった。

 

 

 

 

「よォ」

 

 

 ふと、少女の温もりを堪能していたキルリアの聴覚が、少女と自身とは別の、第三者の声を拾い上げる。

 

 低く太い、芯の有る声の持ち主の正体は、そちらを見ずとも判別がついた。

 

 弱っちいのにやたらと負けず嫌いで、暇を見つけては挑んで来て、その度に実力差を理解させてやっても、決して挫折せずに何度でも立ち上がってくる、鬱陶しいことこの上ない奴である。

 自身と少女との憩いの時間を邪魔するのはもちろん、なんだかんだでバトルに付き合う少女の表情が、自身に向けられる笑顔と同じくらい、明るく柔らかなものなのが、キルリアはとても気に食わなかった。

 

 

「ククク…! なァに、俺様は別に邪魔をするつもりは毛ほども無ェよ。──満足するまで、そうしてなァ」

 

 

 ……弱いくせに、ザコなくせに、頭の悪いくせに、一度だって勝てたことがないくせに、1から10まで分かった様に、上から目線で言うコイツが、キルリアは──サーナイトは、とても、嫌いだった。

 

 理解者面で物を言うギガンに苛立たしさを覚えたサーナイトが、それまで抱きついていた少女から距離を取る。キルリアの体躯で見上げていた筈の少女は、サーナイトの体では酷く小さなものであった。

 

 背後から「……もう良いのか?」と確認の声が発せられれば、サーナイトは枷の嵌められた腕で溢れる雫を拭いながら、小さく、首を縦に揺らす。

 ギガンに手を引かれる形で、サーナイトは暗闇の中を進んで行く。

 

 

「─────」

 

 

 その途中、一度だけ振り返れば、少女は変わらぬ姿で、変われない姿で、かつての笑顔をサーナイトに向けていた。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「──あらぁ〜、ギガン君! ごめんねぇ、毎度のことながら」

「ククク…! このくらい、なんてことはありませんとも。自分で良ければ、何時でも手伝わさせてもらいますよォ、ククク…!」

 

 

 さて、その後。

 目を覚ましたギガンは、『墓守(ダークライ)』に邪魔をした礼と合わせて別れを告げ、サーナイトと共にとある民家に足を運んでいた。

 

 ギガンを出迎えた初老の女性は、彼が抱えていたサーナイト──眠っている──の運搬をイエッサンに任せ、〝サイコキネシス〟でサーナイトが寝室に運ばれていくのを眺めながら、ギガンを招き入れる。

 

 

「今、ちょうど塩釜焼きが出来上がったのよ! 良かったら食べていってね!」

「ほォ…! 塩釜焼きですか、そいつはまた凄い…! では、少しお邪魔させてもらうとしますか…!」

 

 

 女性に連れられ、通路を進むギガン。

 案内された先では、巨魚を丸ごと使った見事な塩釜焼きを主役に、素晴らしい出来栄えの郷土料理たちの数々が彼を出迎えた。

 

 席に着き、さぁ料理をいただこう──その前に、ふと、彼が視線を巡らせれば、その双眸が、棚に飾られた写真立てを捉える。

 収められた古い写真には、1人の少女とキルリアが、屈託のない素敵な笑顔と共にピースサインを掲げている姿が写っていた。

 

 

「……もう、7年にもなるんだねぇ」

 

 

 写真へと視線を移していたギガンに向けて、女性の……少女の母親の呟きが発せられる。寂寥(せきりょう)を含んだ声音に、ギガンは何かを言わず、代わりに、懐からジュース缶を取り出すと、それを写真立ての横へと供えた。

 

 

「ったく、勝ち逃げなんざつまんねェ真似しやがって。……向こうで会ったら、続きをしようじゃねェか、ククク…!」

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「──にしても本当にごめんねぇ。サーナイトったら、未だに予防接種の時期になると逃げ出すのよねぇ。いつまで経っても注射に慣れてくれないんだから、困っちゃうわ」

「ククク…! まあまあ。自分は大丈夫なンで、気軽に呼んで下さって構いませんよォ、ククク…!」




サーナイト:【ことなるすがた】
タイプ:いわ/ゴースト
モチーフ:墓石、泣き女(バンシー)
とくせい:〝なきさけぶ〟
場のポケモンが戦闘不能になった時、自分が覚えている音系の技を、ランダムに1つ発動する。
・進化方法
充分に懐いた状態のキルリアを、キルリア以外の手持ちポケモンが全てひんしの状態、もしくは手持ちがキルリアのみの状態で戦闘に出し、その戦闘で敗北すると進化。






誤:小馬鹿にしたり罵ったりしない、メスガキ
正:もう小馬鹿にしたり罵ったり出来ない、メスガキ

お久しぶりです。
今日までガチ目になんにも書けなかったので、割と今、虫の息になってます。今までのクオリティを保てているのかすら判別がつかん。

以下、補足説明↓
登場した『いざよいの森』周辺は樹木葬地帯の設定。ダークライはそこで『墓守』を務め、墓参りに来た人物をゴーストポケモンたちから守ったり、もしくは、サーナイトの様に『もう会うことの出来ない生前の人物・ポケモン』との思い出を、悪夢を利用して見せたりしている……みたいな感じです。
優しさと言うより、生者が死者を追いかけることがない様に、ある程度『満足』させている感じ。(言い方がアレですけど)

これからは、ちょくちょく投稿が再開……出来れば良いのですが、まぁ、頑張ってみます。長らくお待たせしてしまい、大変申し訳ありませんでした。
他の作品も頑張らねば……。

次回はちゃんとしたメスガキものになると思います(震え)



↓お待ちしてます、お気軽にどうぞ。
雑談・ネタ箱

ギガンの手持ちで少し悩んでいます。飛行要員は、次の内だとどのポケモンがいいと思いますか?

  • ドンカラス
  • バルジーナ
  • ガラルファイヤー
  • いっそオリポケ
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