「ふぅ、ったく。まさかこんな物があるなんてなぁ。」
目覚めてから丁度1ヶ月、4月の初め頃。やっとの思いで退院した俺は夢で会った次狼の言葉を頼りに寝室の、両親の遺品が押し込まれたクローゼットを整理していた。さて、俺の両親、ドルヲタとその推しというなんとも珍しい夫婦である。そして姓が猿渡、と。つまり、俺の父親は猿渡一海で、母親は旧姓で石動美空。かずみんとみーたんだった。前世の記憶が戻って直ぐは記憶の混濁が起こって思い出せなかったけど入院中に記憶を整理していて気付いたんだよな。
で、こっからがひどいんだけど。父さんと母さんの遺品、結構ヤベーイブツが多い。例を上げると、
・
・
・母さんのアイドル衣装(なんであるの?)
肝心なのはここからだ。
スクラッシュドライバーにロボットスクラッシュゼリー、ブリザードナックル。そして猿渡一海が持っている筈がない彫像状態のガルル、バッシャー、ドッガだった。流石に色々あり過ぎだろ。
「……ま、取り敢えず解放したい所だが…。どうやって解放するんだ?」
参ったな、キバ本編じゃキャッスルドランから出た直後に解放されてたから良くわからねえぞ。
『方法なんか簡単だ。俺達に触れろ。そうすればお前の中に居る俺達が元の体―その彫像に戻れる。』
ん!?なんか頭の中に声が響いてるんだけど!?この声はガルルか?てか俺の中に居るってどういう?
『だって君が死にかけた時に同化しちゃったからね。』
『お前の体…もう…ファンガイア、みたいなもん…。』
今度はバッシャーとドッガの声!?え?てか俺ファンガイアなの?でも普通の飯で生きてるよ?死にかけたって半年前の事故の事!?訳が解んねぇ!
『いいからさっさと俺達を解放しろ。そうしたらちゃんと説明してやる。あと俺たちはファンガイアじゃないぞ馬鹿たれ』
あ、はい。で、確か彫像に触れればいいんだよな?って眩し!?
「ふぅ、やっと元に戻れたぜ。」
蒼い毛並みと月のように煌めくポニーテール、尖った角と紅い瞳、鋭く生え揃った牙と爪、所謂人狼と呼ばれる姿をしたウルフェン族最後の生き残り。
名をガルル。
「これでまたトランプで遊べるね。」
緑色で艶のある体表と指の水かき、ガルルと同じ紅い瞳の半魚人――マーマン族、バッシャー。
「それより…飯…。」
紫色の凹凸の多い体表に肩に付いた巨大な装甲、3体の中で最も力強い不死人――フランケン族、ドッガ。
「飯って言われても何もないってか狭いわ!取り敢えず人間態になれっての!特にドッガ!」
主にドッガのせいだが、ただの寝室にこれだけの人外が揃うと狭い。主にドッガのせいで。
「……っと。これでいいか?」
「まあ、変なとこはないし問題ないと思うけど。」
「で、全部説明してくれるんだろうな?」
「うん、ちゃんと説明するよ、次狼が。」
「はあ…まあ、俺に回ってくるよな。とにかく、だ。飯にするぞ。音也、どこか人の少ない喫茶店とかないのか?」
「あ〜、うん。1つ知ってる。」
「よし、じゃあ行くか。」
「わ〜い!久しぶりのご飯だ〜!」
「メシ〜!」
騒がしいなあ…。
見滝原のとある路地裏にある隠れ喫茶。俺の密かなお気に入りにして、『思い出した』事で最も訳がわからなくなった場所でもある。
――喫茶店『
「いらっしゃい!って音也じゃないか!久しぶり、でもないか。退院した日にも食べに来てくれたしなぁ…。いつも遊びに来てくれる優しい孫を持っておじいちゃん幸せ!」
「はいはい、感極まってないで仕事してよ。珈琲、あとランチプレート4つずつお願い。」
「はいは〜い。」
お祖父ちゃんに注文を伝えてテーブル席に座り、次狼に話を切り出した。
まあ、会話も長かったし要約するとこうだ。
一つ、次狼達はファンガイアとの戦闘で一度父さんに助けられている。
二つ、しかしそれからすぐ、二人は事故で亡くなってしまった。
三つ、その借りをかえす為に俺を見守り、件の事故では俺と同化して俺を延命したが、副作用として俺は人間を辞めたぞ、ジョジョ。
尚そのせいでキバの鎧で変身しても耐えられるらしい。
「と、いうわけだ。まあ、キバの鎧は無いが俺達は力を貸してやるから安心しな。」
「そりゃあ心強いわ。これからよろしくな、次狼、ラモン、ドッガ。」
「わかった。」
「任せてよ。」
「で、それはそれとてお前等家に住むのか?ぶっちゃけあの部屋で男4人はキツイと思うんだが。」
「そうだな……。」
次狼達が仕事も出来なきなゃアパートも借りれねぇ。どっかないかな、住み込みで戸籍も要らなくて信頼出来る喫茶店とか…………。それって
「なあ爺ちゃん、この人達訳ありで一文無しなんだけどここで雇えない?出来れば住み込みで。」
「う〜ん、住み込みはちょっと無理かな〜。それに無条件はちょっとねぇ〜。」
駄目か〜。ここしかないと思ったんだけどなぁ。
「あ、そうだ!さっきの珈琲のブレンドを当てられたら雇ってもいいよ〜。」
「へ?そんな条件でいいの?爺ちゃん。言っといて何だけど信用とかないよ?」
「音也が頼むって事は信用出来るし、後は珈琲に詳しかったら問題なしだからね〜。」
マジかよこの人俺のこと信頼し過ぎでは?
「ほらほら、なんのブレンドか一斉にどうぞ!」
「キリマンジャロ」
「わからない」
「店長オリジナル」
「爺ちゃんオリジナル」
上からラモン、力、次狼、俺の順の回答。まあ、俺は答え知ってるけど。
「次狼君と音也正解〜!音也はともかく次狼君よく分かったね〜。もしかしてうちのファンだったりする?」
「いや、香りはキリマンジャロに近いが苦味が少し抑えられていたからな。恐らくオリジナルだろうと思ったのだが、あってるか?」
「ん〜、もう完璧だね。採用!」
これで次狼のバイト先はなんとかなったか。あとは……。
「ラモンと力はどうすっかなぁ………。」
「それはまた今度でいいだろ。それより家だ家。」
う〜ん。と全員が唸る中、爺ちゃんが声を上げた。
「そうだ!音也の部屋を3人が使って、音也はマミちゃんの部屋に住めばいいじゃないか!」
「は?いや待って。俺如きが巴と同じ部屋で暮らすとか駄目だろ巴は純粋無垢の天使だぞそんな彼女の部屋に俺が泊まるとか烏滸がましいにも程があるだろそもそも巴に迷惑かけるのはちょっと………。」
「別にいいわよ?猿渡くんなら変な事も起こらないだろうし……。」
「なんでそんな簡単に許可するんだよ断われよ!!!」
ナシタからの帰り道。たまたま買い出しの帰りだった巴と鉢合わせた俺達は次狼に勧められ、断ってくれるのを期待して「暫く巴の部屋に住まわせてくれないか」と頼んでみたのだ。その返答を聞いた俺はつい叫んでしまった。ほんとに危機感持てよこの天使め!!ってなんで目をうるうるさせてるんですか巴さん?え、半年前の事故で部屋が広くて寂しい?だから喜んで了承したのに、期待させて落とすとか酷いよ?
「わかった!暫くと言わず何年でも居てやるから泣かないでくれ!!」
「ほんと?ありがとう!!」
え、一瞬で泣き止んだ。というか泣いてなかった?嘘泣き?…………いつの間にか天使は小悪魔になっていたようだ(困惑気味)。
「お、お邪魔します。」
数日後、自宅(隣の部屋)から着替えやらゲーム機やらを運び出した俺は、久しぶりに巴家に出向いていた。
「さわ、ううん。音也くん!ただいま、だよ。」
「いや、いきなりただいまはちょっとまだ早いだろってか巴、呼び方……。」
なんでいきなり名前呼び?
「だってこれからは一緒に暮らすんだもの。だから音也くんも名前呼びしてね。変に気を使うようだったら許さないよ?」
「は、はい……。」
なんか何時もよりガンガン来るんだけど。圧が凄くて断れない。
「ほら、早くただいまして。もちろん名前も呼んでね。」
「あ、えっと。たっただいま、マミ。」
ヤバい、顔熱い。なにこれ名前呼びってこんな恥ずかしいものだっけ。小3くらいまではしてた筈なのにすっごい恥ずかしい……。
「はい。おかえりなさい、音也くん!じゃあ、早速荷解きしよっか!」
そう言って満足気に奥へと入っていくマミの顔も少し赤かったことに、俺は更に羞恥心を煽られる事になるのだった。
短くてすみません。プロットは完成したので次は早い………ハズ。