見る人が居るならば続くかも…?
ある研究所の地下深く、人間大のカプセルが7つ…。それを見上げるかのように一人の研究者が狂喜に満ちた声で叫んでいる。
「やっと…やっとだぁ!7つ揃った!」
7つのカプセルの中にはそれぞれ別の人間が入っている。
「これで私はこの国の…いや、世界の支配者になれるんだぁ!!︎」
そしてそのカプセルに付けられたラベルにはそれぞれこう書かれていた。
『al』『dl』『ve』『dn』『hn』『ail』『蜑オ騾?逾』と……。
_________
「っ!?︎」
目が覚めるとそこは俺の部屋だった。何やら恐ろしい夢を見た気がするが思い出せない。俺は寝汗をびっしょりかいていた。
(シャワーでも浴びるか……)
そう思い着替えを持って浴室へと向かう。鏡の前に立ち、『15年』見慣れた姿に向き合った。
西暦2797年…人類は衰退することなく、新たな『技術』を持って生存している。『技術』とは21世紀の言葉を借りると『超能力』、『異能力』、『固有技』などことである。その『技術』はあらゆる面での進歩をもたらし、生活水準も大幅に向上した。
そしてその『技術』が発現したのは西暦2402年、『第4次世界大戦』。第3次の時には使用されなかった兵器が第4次の時に使われてしまった。その影響により、皮肉にも『技術』は発現し戦争は落ち着いた。
そして現代……西暦2797年3月
俺…いや私は『技術高校生』の時田 輪。正確にはまだ中学生で入学はしていないが、4月からは女子高校生だ。
『技術高校』とはその名の通り『技術』を学ぶ、あるいは実戦使用許可ありの学校である。ここでは基礎を学び、将来役立つ知識を身につけ、社会に生かすというものがこの学校の目的だ。
「輪~!そろそろ時間なんじゃないの?」
浴室の外から母親の声が聞こえる。近くのデジタル時計を見ると確かにもうすぐ家を出なければいけない時間だった。急いで支度をして玄関に向かう。そこには母親の姿があった。
「ほら、早くしないと座るところ無くなっちゃうわよ」
「わかってるよ母さん。じゃあ行ってくるね」
「気をつけて行ってきなさい。あ!そうだ!私の『技術』で送ってあげようか?」
「いや母さんが行ったら、大騒ぎになるからいいよ別に。歩いても間に合うし……」
そう言って靴を履いて外に出ようとする。すると母親が私を呼び止めてきた。
「待って輪!これ持っていきなさい」
そう言うと母親は鞄を手渡してきた。中を確認すると弁当箱が入っていた。
「今日はあんまり美味しくできなかったけど……」
「ありがとう母さん。行ってきます」
そう言い残して外へ出る。
今から向かう所は、電子図書館という施設だ。そこでは電子上の様々な情報を得ることができ、勉強したり調べものをすることができる場所でもある。早く行かないと閲覧用の端末がある席が無くなってしまう。
(あと10分くらいかな?)
時刻を確認しながら歩く。少し早めに出たため余裕はあるはずだ。しばらく歩いていると大きな建物が見えてくる。あれこそが私が通っている『電子図書館』だ。
建物の前まで来て周りを見渡す。既に何人かの学生がいるようだ。自動ドアを通り館内へ足を踏み入れる。目の前には受付があり、そこにいる女性に声をかけられた。
「こんにちは。本日はどういったご用件でしょうか?」
「えっと……今日は端末を使わせてもらいたいんですが」
「はい、学生証をお願いします」
言われた通り財布の中からカードを取り出して差し出す。それを受け取った女性はパソコンにカードを挿入した。
「確認が取れました。ではこちらにお進みください」
カウンターの横にある通路を指差される。そこを通っていくといくつもの扉が並んでいる場所にたどり着いた。
「そちらの一番奥の部屋をお使い下さい」
「わかりました」
示された部屋に入るとそこは机と椅子だけが置かれた10畳ほどの簡素なものだった。だがそれがかえって集中できる環境になっている。私は早速自分のIDカードを差し込んで端末を操作し始めた。
「うげ…」
端末のニュース欄に見に覚えがある人物を見つけると、思わず声が出てしまった。
『時田夫婦またもや技術で圧倒!』『時田夫妻、またもや技術で犯罪組織壊滅』『時田夫妻、今度は技術による事故解決』『時田夫妻、技術により交通事故被害者を救う』
etc…… 画面には次々と両親に関する記事が表示される。
『時田 守』『時田 空』…これが両親の名前だ。2人は世間では有名人であり、『その技術に負けなし!』とも言われているほどの実力者である。そんな2人の子供として生まれた私は、小さい頃から両親の技術を間近で見続けてきた。おかげで今では『技術』に関してそれなりの知識を持っていると思う。
そして私はこの『技術高校』を志望した。理由は簡単、父さんや母さんの母校だからだ。2人のような技術者になりたいと思っている。
(まあそれだけではないけど…さて、そろそろ始めるか)
端末に表示されている画面を切りかえ、検索項目を入力する。キーワードは『時空』……と。
『時空』という単語を打ち込むだけで何百ページものデータが出てきた。その中から適当に目についた物を開いてみる。そこにはあることについて書かれていた。
『西暦2402年、日本は第4次世界大戦の影響で国力が低下していた。そのためアメリカや中国などの大国が日本に圧力を加え始めていた。そんな中、突如として現れたのが『時空転移システム』である。そのシステムを使用し、日本は第4次世界大戦を乗り切った。だが、システムの詳細は分からず、現代でも……』
「うーん……オカルトっぽいなぁ…確かに時空関係ではあるけども。これじゃ入学まで間に合わないよ…」
何故わざわざ電子図書館まで行ってこんなことまでしているのか。それは両親と私の『技術』について話さなければならない。
両親の…まずは母親の時田 空は『空間万能技術』。空間転移はもちろんのこと、名前の通り空間に関することなら万能の如く扱える技術。
次に父親の時田 守は『時間停止技術』。詳しいことは分からないが、時間が止められるという、世界でも類を見ない技術。
そして私、時田 輪は『硬化技術』…と言われている。といっても、他の類似している技術者みたいに、ある部分だけ硬化や任意で硬化することは出来ない。私の場合は『無意識に全身を硬化』しているそうで、不意打ちに対応は出来るが硬化強度が低い。そのため、貫通力の高い銃弾や、腕力が強い者の攻撃は通ってしまう。せいぜい、『お前硬くね?』くらいである。
両親の能力は遺伝しやすいとは言われているものの、これは遺伝の問題なのかは不明らしい。少なくとも、親戚に『硬化技術』という者は居ない…
そこで、少しでも手がかりになればと思い『時空』関係の記事を片っ端から読み漁っているわけだ。
(でもやっぱり難しいな……もう少しレベルを上げて調べようかな……)
端末を操作しようとしたその時だった。突然持っていた携帯が鳴り響いた。驚いてビクッとしてしまう。誰だよ全くもう……
携帯を見ると、そこには『着信:母さん』の文字が表示されていた。
「もしもし?母さん?どうしたの」
「輪!?…あぁ良かった。」
「え?」何が良かったんだろう。
「今どこ?」
「えっと、今は電子図書館にいるけど」
「そうなの!?今すぐそこを離れなさい!」
「え?」どういう事だろう。
(って、電話切られてるし…)
携帯から音声は聞こえず、確認するとホーム画面になっていた。
(とにかく外に出て離れないと)
訳も分からないが部屋の外に出ようとする。すると出入口の自動ドアが開いて男が入って来る。
(なっ…!?な…に…この男?)
一目見た瞬間に感じた。『危険』だと。
もう4月に入り暖かくなったのにも関わらず、厚手の黒いコートと手袋をしている。顔は深く被ったフードのせいでよく見えない。
男は部屋に入るなり真っ直ぐこちらに向かってきた。思わず後ずさる。
(なんなんだ一体……!!)
これが私の最初の戦闘であり、『秘密』への入り口
…いや、既に入っていたのかもしれない。