淫魔との生活譚~夫婦のような同居生活を経て人外に至るまでの経緯について~   作:Nピーマン

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書きたくなったので初投稿です(暴論)


プロローグ 始まりの同棲生活

 

人は何かしら社会に貢献する

歯車のようなものだ。

その歯車である人は、ある時は悲鳴を、

苦痛を訴えながらも

生活のため、働き、回り続ける。

だが、その歯車である人が何かしらの理由で

回らなくなったら?

歯車のない社会は正しく機能しない。

社会は、優しく手を差し伸べてくれるだろうか?

 

答えは否だ。

 

社会は回らなくなった歯車を捨て、

その代わり足る新しい歯車(じんざい)に入れ替える。

社会は残酷な程に効率的に出来ている。

 

私こと、須藤海はその壊れかけの歯車だ。

労働基準法の定める労働時間を軽く超える残業労働。

上司からの人格否定するような激しい罵声の数々。

同僚・先輩にスケープゴートの如く押し付けられる仕事。

酷い時には、そのまま日の目を浴び、

一睡もしないまま連勤をする羽目になった事さえある。

休日出勤なども当たり前な訳で。

休日などあったものではない。

 

幸い、私の身体は生まれつき丈夫であった。

身長190㎝、体重100㎏の重戦車と

言わんばかりの体格に恵まれた私は、

それらの理不尽な制裁に耐え抜いていた。

 

しかし、如何に身体が頑丈でも、

精神はそうでも無かったようで。

 

ある日、会社の先輩がした

仕事の失敗の責任を押し付けられ、

数時間に及ぶ上司の罵声に

ついぞ、私の心は壊れた。

 

あれほど頑丈であった身体が

一切動かなくなってしまっていた。

 

その後病院で鬱病の診断を受けた私は、

無期限の休職を余儀なくされた。

 

本来であれば、休職中会社側は、

満額出なくともその期間分給料を

支払わなければならない。

 

しかし、流石はブラック企業。

うんともすんとも言わない。

働くことのできない奴に、そんなもん誰が出すかと

言わんばかりの対応であった。

 

傷病手当に関しても、

精神病では認定は中々下りないと聞いていたし、

事実、認定されなかった。

 

それどころか会社は訴えられる前に

保身を考え、退職金なしのリストラ斬りを

してきたのだ。

 

私は絶賛精神病発症中の中、

ポカンとするしか無かった。

 

知らず知らずして無職になってしまった

私は途方に暮れていた。

 

幸いにも貯金だけはあった。

残業代は2時間分までしか出なかったが、

残業自体は毎日やっていたし、

休日の出勤手当も僅かながら出ていたので、

手取りは他の会社員の基本給よりかは

ずっと良かったのは唯一の救いだ。

 

都心の賃貸の家賃。生活費を考えると、

どうにも不安が残るが。

この先5年程は何もせずとも過ごせるだろう。

 

それまでには、鬱病は改善されるだろうと。

私はどこか気楽に考えていた。

 

しかし、現実は思ったよりも残酷だった。

ある日、買物に出かけた際、

最寄りの商店街に差し掛かった時、

人々の往来を見た瞬間、

激しい動悸と嘔気を襲った。

思わず、近くの電柱に寄りかかるように

嗚咽を漏らす私。

 

その光景に人々の視線が私に注目する。

その人々の視線が、私自身を見下すような、

嘲笑するような視線に感じた。

 

 

私は嗚咽しながらよろよろと立ち上がると、

自分の身体を腕で抱くようにして、

逃げるように背を向けた。

 

 

途中、心配するように声を掛けてくる

人がいたかもしれない。

事実、人の姿があったのは確かだ。

 

しかし、その時の私は全ての人に

悪意を持つようにしか思えなかった。

 

 

私はいつの間にか、

人と接する事が出来なくなっていた。

 

 

その日から、私は家に籠りがちになった。

無職の引き籠り。

私は社会から完全に逸脱し、

社会の歯車達から、見下されるような存在に

成り下がっていた。

 

しかし、私の心は安寧に満ちていた。

確かに社会との接点は無くなったが、

自分の世界に閉じこもったままでいられるのであれば、

社会に出る必要がないのであれば、

それ程楽な事はないと。

 

流れるがままに、自堕落に、無為な生活を送っていた。

 

 

そんな失意の中過ごし、

会社をクビになって数か月が経った頃か。

朝5時頃だったと思う。

早朝とも呼べる時間帯にインターホンが鳴り響いていた。

 

朝早くから何事かと思った。

ネット通販の宅配業者にしては早い時間帯だし、

それ以外で家に尋ねてくる人間は新興宗教の勧誘ぐらいだ。

 

私はチェーンをかけたまま恐る恐るドアを開ける。

するとそこに立っていたのは、

異様に露出度の高い、水着のような服を身に纏っており、

しかし身体に所々、擦り傷のような傷をつけた、

栗色の髪をたなびかせた美少女であった。

 

 

「あの、すみません。ここに泊めていただけませんか?」

 

 

開口一言に発したのは、そんな言葉であった。

 

 

 

 

淫魔との生活譚~夫婦のような同居生活を経て人外に至るまでの経緯について~

 

 

 

 

 

朝、目が覚めると台所で包丁の

小気味よい音が聞こえる。

とても懐かしい夢を見た。

失意の内に、自分の殻に閉じこもっていた

あの時の自分の夢を。

 

彼女と初めて邂逅した、

そして私の運命が変わったあの時の夢を。

 

 

「あら、起きていたの。おはよう。カイちゃん」

 

 

台所で朝食の一通りの準備を終えたのか、

同居して3年経つであろう、

最早居て当たり前の存在となった

ほわほわした雰囲気の栗色の髪の女性。

“咲”が私にそう微笑みながら挨拶を交わした。

 

 

「あぁ、おはよう。」

 

 

そんな彼女に、私も笑顔で答えた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・

 

 

穏やかで、

幸せを噛みしめながら朝食を味わい、

二人で食器を片付けた後、

TVのニュースを掛ける。

 

今朝の話題は、芸能人のスキャンダルだった。

何でも奥さん以外に3人もの女性と関係を

持っていたのだとか。

所謂3股である。

奥さんとの結婚以前から女性関係で

スクープされていた芸能人なだけに

世間では衝撃と怒りの声が

上がっている様子が映されている。

 

咲はそのニュースの内容を見ながら

妙に納得した様子で、

 

「あー、この人前々から

やりそうな感じだったのよねぇ。

なんというか、こういう人って

欲望のオーラがだだっ黒いのよ。

もう私から見ても気持ち悪いくらいに。

質が悪い事にそういう奴に

寄って来るのが人の性っていうのかしら。

人外が減らない訳だわぁ。」

 

とごちていた。

 

私は、そんな彼女の言葉に

「へー、そうなのか。」と

何と為しに相槌を打っていた。

 

別に彼女が電波であるとか、

彼女の言葉を適当に流している訳でもなく、

本当にそうなのかという感じで

聞いている。

 

何故、真に受けているのか。

それは、彼女が人間ではないからだ。

 

淫魔(サキュバス)

 

それが彼女の正体だ。

人の夢に現れ、淫夢を見せて

男性の精気を吸う人外。

 

それが彼女の正体である。

 

3年前、家を訪ねてきた傷だらけの

彼女を家の中へ入れた。

 

最初に悪魔のような羽や尻尾を

出した時、衝撃を受け、腰が抜けそうだった。

人と接する事に恐怖を覚えており、

数十分と人と一緒に入れない上に、

人外の女性と来たものだ。

 

私としてもビビり散らかしていたが

それでも、傷ついた人、

それも女性を外へ放って置けない。

 

そんな小さな正義感からだろうか。

彼女を保護する事にしたのだ。

 

今思えば警察でも呼んだ方がいい状況だが、

生憎、人が大勢来る面倒事を避けたかった

自分としては、それが最善の選択だったのだ。

 

しかし、私自身女性の免疫がある訳でもなく。

ましてや屋根の下女性と二人の環境下で過ごすなど

生まれてこの方したことのない私は

この後結構後悔する事となったのだが。

 

この時、彼女が私をどう見ていたのか。

受け止めていたのか。

 

もしかしたら、私をただの餌として

見ていたかもしれない。

 

ただ憐れんでいたのかもしれない。

 

見下していたのかもしれない。

 

 

それは彼女の内にしか分からないが。

 

 

だが、それでも彼女には感謝している。

 

毎日美味しい料理を作ってくれた事。

 

荒れ気味だった部屋の清掃や洗濯などの

家事を嫌がらずしてくれた事。

 

精神的に辛く眠れない時に

優しい言葉をかけて、抱きしめてくれた事。

 

 

おかげで、私はここまで生きられた。

幸福と平和に満ち溢れた生活を送れた。

私はとても満足している。

 

しかし、彼女に私は何も返せていない。

淫魔である彼女が、同居をしてから、

淫魔らしい事を何もさせてあげていない。

 

 

それが私にとってとても心苦しかった。

 

 

だから、私は切り出した。

 

 

「なぁ、咲。」

 

「ん?どうしたの?カイちゃん。」

 

 

コテンと首を傾げる咲。

あぁ、この笑顔を見れるのが最後になるのは

心苦しい。

だが、彼女のためになれるのであれば、

私は命を捨てても構わない。

 

 

「お前の望みを言ってくれ。」

 

 

私の言葉に、咲は数秒間を置いた後、

 

 

「あはっ♪」

 

 

妖しく、淫靡に嗤った。

 

姿が、人の普段着から、

露出度の高いビキニボンテージの姿へ。

普段隠している羽や尻尾も露出させ、

初めて会った時と同じような

淫魔の本性を現した。

 

 

「本当に~、いいのかしら?」

 

人外の雰囲気を露わにした咲。

しかし、初めて会った時のような恐れはない。

むしろ、彼女のその気の当てられて尚、

私は彼女を愛おしく想っていた。

 

私は、彼女の問いに応える。

 

 

「あぁ。君の糧になれるのであれば本望だ。

私は十分に幸せを味合わせて貰った。

色んな物を私は君に貰った。

だから、今度は私が君に返す番だ。

遅くなって悪かった。

最後になるが、言わせてくれ。ありがとう。」

 

 

私は深々と頭を下げる。

 

 

彼女はその私の姿を見て、

ぺろりと舌なめずりをする。

 

 

そして、咲は望みを言い放つ。

 

 

「じゃぁ~、私と契約して頂戴?」

 

「契約、というと命を差し出すという事か?」

 

「命、かぁ~。まぁ、うん。

広く言えばぁ、そんな感じ?になるのかな?」

 

それくらいお安い御用だ。

自分の取柄は頑丈な身体だけだし、

精神的に弱い私の魂にどれだけの価値があるか

分らんが。

それでも、咲のためになるのであれば

喜んで差し出そう。

 

 

「はいはい。この書類にサインしてねぇ。」

 

 

ふむふむ・・・・全く分らん!

字自体がどの言語とも取れない物だ。

しかし、何か異様な雰囲気を放っているような気がする。

悪魔の契約書だ。そういうものか。

 

 

私は迷うことなく、サインする。

 

 

「ふふ、サインしたわね・・・。」

 

 

咲は、サインをした私に対し満足げに頷いている。

さぁ、これで準備ができた。

一思いにやってくれ。

 

 

私は目を瞑り、最後の時を待つ。

 

 

 

・・・おかしい。

 

 

何もない。

 

 

いつまでも痛みは来ない。

 

 

もしかすると私は既に死んでいるとか?

 

 

ならばそれは助かる。

 

 

身体が頑丈だからと言って痛みがない訳ではないし、

どちらかというと苦手な部類だ。

 

 

さて、死後の世界というのを拝見させてもらうとしよう。

 

 

私は目を開いた。

 

 

 

 

そこには咲がいた。

 

 

そして唇に当たる柔らかい感触。

 

 

まごうことなくそれは、口づけだった。

 

 

唇が離れ、目を見開いた私は彼女を見る。

 

 

咲は嬉しそうに頬を赤く染めていた。

 

 

「これは、一体・・・。」

 

 

私は混乱しながら、彼女に問う。

 

 

「私、貴方の事が好き。

 

あの時、貴方は精神的に参っていたのに、

傷ついた私を家に入れてくれました。

 

私に、淫魔にはない温もりをくれました。

 

私のために喜んだり、悲しんだりしてくれました。

 

 

私に貴方は色んな物をくれました。

 

優しい貴方に惚れました。

 

でも私は淫魔で悪魔だから、

口約束の婚姻ができないの。

 

だから、契約書という形で書いて貰いました。

 

ずるくって御免なさい。」

 

 

・・・そうか。そうだったのか。

私は、彼女の気持ちに気付けていなかった。

なんと、愚かだったのだろうか。

 

 

「もし、嫌だったら契約書を破れるけど―」

 

 

そこまで彼女が言った所で私は手で制した。

 

 

「嫌な訳ないじゃないか。

むしろ、待たせて済まなかった。

私と一緒にいるのが君にとって苦でないかと

不安に思っていた。

だから、君の好意に気付けない振りをしていたのかもしれない。

私は君から様々な物を貰った。

出来れば、それらを返せるよう、

一緒に幸せにしていきたい。

もし良いのであれば、私の生涯の伴侶となってください」

 

私はそう言って頭を下げて、手を差し伸べた。

 

すると、彼女は目じりに涙を浮かべながら、

ぱぁ、っと笑顔を咲かせ、私に抱き着いてきた。

 

 

「勿論!!よろしくね、カイちゃん♪」

 

 

頭を私の胸にこすりつけながら抱き着く咲。

 

そしてそのまま、後ろのベッドへ押し戻されるように

私は後退させられる。

 

そのままベッドに寝かせられた

私が、今度は何をするのかと

再び咲の顔を見た時、

その顔は好色な表情を浮かべていた。

 

 

 

「淫魔が婚姻を結んだ後、

ヤる事は一つなの。

 

 

 

ねぇ?カイちゃん。

 

 

今日は寝かさないよ♪

 

 

まだ日が始まったばかりなんですが?

 

 

 

そんな突っ込みを待たず、咲に身ぐるみを剥がされる私。

 

 

 

結局私は、その日が終わるまで、

彼女にしっぽりと搾り取られる羽目になった。

 

 

 

 

それこそ天国に

上るような気分になれたが、

真面目に死ぬかと思った・・・・。

 

今日ほど身体が頑丈である事に

感謝した事は無い。

 

 

満足げに私の横で

すやすや眠る咲を尻目に

絞られ消耗した私は、

命のありがたみに感謝しながら

静かにその意識を閉ざすのであった。

 

 

 

 

この時、これが、

私の運命をまた大きく変える出来事になろうとは。

 

 

 

私は知る由もなかったのである。

 

 

 

歯車は歪にも動き始める。

 

 

 




書きたくなったので書いた。
反省はしていない。
意外と見てくれている人が多ければ続きを書こうと思います。
文章力ないのは許してくれよな~、頼むよ~。
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