不良っぽい輩に右ストレート。
確実な手ごたえを感じつつ、地面に叩きつけました。
「お、お前……は」
気絶しましたね。
ええ、私は悪くありませんよ。
間違いなく正当防衛です。
では本来の目的に向かいましょう。もう時間はありません。
「…逃が…さね…ぇ」
足を掴んできました。
でも焦点が定まっていない顔です。これは無意識に動いていますね。
そしてごめんなさい。
小さく謝りつつ、私は蹴り上げようと構えます。
「高田ちゃんを…守らねば…っ」
「…………」
重いですね。性格ではなく身体の方ですが。
服も汚してしまいましたね。私の能力は他人に効くのでしょうか。
やっぱり駄目でした。しょうがないですね。このまま連れて行きましょう。
ええ。高田ちゃんを愛する者に悪人はいません。彼も会場を守るために戦ったのなら、全握に参加する義務があります。
それにしても視線が痛いです。
でも避けられません。中学生くらいの少女が不良男をおんぶして並んでいたら、それは注目の的になること必須ですから。
「ここは…」
どうやら彼が目覚めたようです。
「立てますか?」
体重が消え、ようやく楽になりました。
「どうして呪霊がここにいる?何を企んで」
「高田ちゃんに会いにきました」
誤魔化す理由もないので話しました。
証拠にペラっと握手券を見せると、彼の瞳は大きく開いて、
「呪霊が握手会に?……ど、どこまでっ」
震える声に拳を構えます。
少しでも殺気があれば気絶させましょう。会場内では私も看過できません。
そして男は、
「どこまで高田ちゃんは魅力的なんだぁああああッッ〜!!」
うぉおおおお!と私をメリーゴーランドよろしく振り回されます。
殺気はないので抵抗しませんが、そろそろ迷惑なのでやめて欲しいです。
「まさか呪霊にまで高田ちゃんのファンがいるとはな!さすが高田ちゃん!人類を超えた魅力だ!──ぐぼ!?」
膝蹴りです。
そろそろスタッフがスタンバッテましたので、顎を砕いて沈めました。
「ぐぅ〜、いい蹴りだ。呪霊にしておくには勿体無いな!」
「呪霊とか知りませんが、全握では静かにしましょうよ。高田ちゃんに迷惑です」
「確かにそうだな!!」
背中をバシバシ叩いてきます。本当に分かっているのでしょうか。
「俺は東堂葵だ……名前は?」
名前と聞かれましても。
「自由に呼んでください。知り合いにはバイトちゃんと呼ばれています」
「バイトちゃん?まるで働いているみたいな言い方だな?」
「働かずにどうやって全握のチケットを入手するんですか。ちゃんと働いていますよ」
そう説明すると、意外と言うような顔を見せられた。
「呪霊が働く?……どこで働いているんだ?」
「それを今日会った人に話すと?」