怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです 作:S・DOMAN
“黒笛殺人事件”1
「黒笛の連続殺人だと?珍しいな」
眼鏡を掛けた、長身の男がそう聞き返す。豪奢な椅子に深く腰掛けて足を組むその恰好は、男がもしモデルであれば様になっていただろう。
この薄汚い男の住処である豪邸は、オースの町でも一、二を争うほど広く、けれどしっかり清掃の行き届いた屋敷は、この男の部屋だけが散らかっていた。
足の踏み場も無い程に書類や本が散乱した部屋の中には、どうやらもう一人の人間がいるようだ。
「はい、それも全て黎明卿『新しきボンドルド』の探窟隊、『
「―――ハア?!白笛の探窟隊がどうして殺人なんかするんだ?彼らはずる賢いだけでなく、クオンガタリのような狡猾さも持っている。本当に祈手ならば、もっと俺たちの仕事が減るように動くだろうさ」
『助手』、と呼ばれた男は、その心情を体現するかのように背を丸め、言い辛そうにしながら応える。今回の出来事は、この破天荒な師匠にしょっちゅう付き合わされる助手の目から見ても異常な出来事であった。
「い、いえ。クォーロ様。恐らくは勘違いなさっているのだと思いますが」
「何をだ?……いや待て、まさか……おい助手。被害者はどっちだ?」
「それが、信じられないことに」
「ああもういい。なるほど。『祈手』
『助手』が答える。今度は背筋を伸ばし、ハッキリと。
「岸壁街の住人にです。なんでも、今オースの町におられる『祈手』は全て殺されたとか。現在『祈手』は国外にいないので、残っているのは『
「……フフッ。あのなア、君。俺を馬鹿にしてるのか?黒笛。さらに白笛の探窟隊に所属してる様なヤツらが、どうやったらそこらへんの薄汚い浮浪者共に殺されるって言うんだ?!そんなわけ無いだろう!」
「それを解明してほしい。というのが依頼内容ですよ?」
「ハアーーーァ……俺は便利屋じゃないんだぞ?ま、黎明卿以外じゃオースでマトモに手術できるの俺位だしなぁ……全く人手不足が恨めしいよ。しょうがない。ていうかそもそも受けるしかないだろ。俺たちは組合の専属なんだからさア?」
「まあこれも形式というヤツなんですよ。多分ですが」
「ハアアーーーーー!!!……ああそうだ助手。本部にもうひとっ走り頼む。『報酬はいらないから、不動卿を呼べ』」
「はいはい了解しました。では行ってきますね」
助手が部屋から出ていったのを見届けて、男は居眠りを再開した。おお哀れ。この部屋に散らばっている本は、殆どがこの男の目隠し代わりなのである。
「へえ?それで私の所に来た訳かい」
『助手』の連絡から数時間後、本部所属の黒笛探掘家が一名監視基地を訪れていた。通常の探掘家が身に纏うようなカーキ色のそれでは無く、白と黒のツートンで構成された制服は、機能性ではなくむしろ見栄えを意識して作られたものであろう。
一般には知られていないが、これは『組合』の
「はい。探窟家組合本部、本部長からの命令です。不動卿、オーゼン殿。至急オースの街へご同行願います」
「ンん。分かった。準備をしたらすぐに向かうよ…」
「…ところでさぁ。キミ、コレホントは誰の要請なんだい?組合の使いなら多少は知ってるだろ?」
「私もあまり詳しく知らされておりませんが……恐らくは、『快癒卿』絡みかと」
「……はあ、そうかい。こりゃまた厄介事に巻き込まれそうな予感がするねぇ…」
「彼がお嫌いなのですか?」
「ああもちろんさ。あのガキと関わるとロクな事がない。『臆病者』、『奇人』、『変人』……いい噂なんて、聞いた試しがないよ」
「まったく。大体
「夢と希望に溢れる探窟家も、上に行けばお役所仕事ですからね」
「ンふふ。違いない」
オーゼンの笑い声が耳に届いたのだろう。本日何回目かの掃き掃除を終えたマルルクが、間仕切り越しにこちらを覗き込んでいる。
「……ん?あ、お師さま!お客様が来られてたんですね!ちょっと待っててください。何かお出ししますよ」
「ああマルルクちゃん。こんにちは。大丈夫だよ、もうすぐに出発するから」
「そ、そうですか。え?お師さま、どこかに出かけられるんですか?」
「ああ、二、三日留守にするよ。お土産は何がいいかい?」
「何でもOKです!お師さまお師さま!なるべく早く帰ってきてくださいね?飲みつぶれたりして、他の人に迷惑かけないでくださいよ?」
「うるさいねぇ、帰ったら裸吊りだよ」
「えっ?!」
次のヤツもう書いちゃったので失踪します。