怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです 作:S・DOMAN
霊体のままであれども、この身に不便はありはせぬ。
だが、叶うならば肉体が欲しい。生きた肉体が、己の血が。身体の有無は陰陽術を使う上で非常に重要な要素の一つ。その己の体となるのに最適なものが目の前に転がっておるのだ。
元が女であるのが少々気に食わぬが、性別なぞ儂の前では飴細工よ、如何様にもしてくれようぞ。
今こそ我が肉体を取り戻すとき。受肉を、果たすのだ!
「ンンン。まあ取り敢えず何をするにしても準備が必要でありますれば。リコ殿、レグ殿、ナナチ殿」
「んなぁー!何でも言ってくれ!何だ!?なにが必要なんだ!?」
「まあまあ、落ち着いてくだされ。実のところ術の行使に必要なものは既に揃っておりまする」
「……ドーマン、それは一体?」
「清酒に岩塩に肉、それとナナチ殿の血と髪の毛でありまする。ああ、できれば新鮮なものが好ましいかと」
「―――一体、どれぐらい必要なんだ?」
「血液は平皿を満たすほど、髪の毛は一房ですが……これらは新鮮さが重要でありますので、儀式を執り行う直前に頂くのがよろしいかと」
「そ、そのぅ………オイラの肉とか血はまだどうにかなるがよぉ、酒とか岩塩ってどこで集めりゃいいんだ…?」
「…ンンン!ご安心召されよ、先程も言いましたが、全て揃っておりまする。このような事もあろうかと酒と塩は大量に持ち歩いておりますゆえ!これを分けて差し上げましょう。ええ、ですが」
「条件がありまする」
拙僧がそう言うと、リコ殿とレグ殿が驚いた顔をして言いました。
「ど、ドーマン?!何言って―――」
「少し、静かにしていて下され。リコ殿」
「えっ……」
「ナナチ殿、拙僧の条件とは至極単純なものでありまする。どうか、ヒトに戻られたミーティ殿と共にリコ殿の探窟隊に加わり、我らの旅に同行してはいただけませぬか?」
「………少し、考えさせてくれねぇか?」
「少し、考えさせてくれねぇか?」
目の前の大男から語られた条件は、オイラにとってとても魅力的だった。オイラにデメリットがほとんどないようなこの条件は、もしかするとオイラのことを気遣ってつけられたものなんじゃねえかって、思わず考えちまうほどだった。
オイラだって元々は奈落にあこがれてここまで来て
たぶんここに来る前の自分だったら、二つ返事で了承しただろう。
………けど、けどよぅ?もしミーティがちゃんと人に戻れて、一緒に冒険できるようになったとしてな?
オイラは、冒険の途中でミーティが傷つくのを見たくねぇんだよ…