怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです   作:S・DOMAN

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忘れもしませぬ。あれは拙僧が老いたる獣の秘湯を発見していたころ・・・21

結局、ナナチ殿はその場でお決めになりませんでした。

 

 

ナナチ殿が夕餉を創るのをなんとか阻止しつつ、リコ殿と共に普通の夕餉を作りそのあまりの美味しさにナナチ殿を泣かせた後。リコ殿とレグ殿は我らよりも一足先に眠られました。

 

 

 

 

「………んなぁ…それで。話って何だ?さっき飯を食ってる時に頭ん中で言ってたけどよ」

 

 

「ンンンンン、いえ。どうやら先のことについて悩まれているご様子でしたので。差し出がましいようですが相談にでものってみようかと思いましてなァ」

 

「ヒトに戻そうとしておる拙僧がするものでも無いかもしれませぬが、まあ。しないよりかは気も紛れるでしょう?ささ、お話しくだされ」

 

 

 

 

拙僧がそう言うと、ナナチ殿はぽつりぽつりと話し始めます。

 

 

 

 

「……んなぁー、そうだよなぁ…なあ、ドーマンよぉ。しつこいようで悪いんだけどさ、ミーティは本当に人に戻れるんだよな?」

 

 

「そうですなぁ…人とまではいきませぬが、ヒト(・・)までは戻せましょうや。拙僧の力では、そこが限界です」

 

 

「さっきも言ってたけどよ、それってどう違うんだ?」

 

 

「簡単なことです。ナナチ殿と同じような成れ果てた姿でしか復活させることができないということですよ。分かり辛かったですかな?要するに、ナナチ殿のようにフワフワになられるということです」

 

「まあ今回の場合は恐らく、そちらの方が何かと都合がよいでしょうからねェ?」

 

 

「んなぁ?…どういうことだ?」

 

 

「ええ。拙僧らが『奈落の果て』までたどり着いた後上層(・・)へと戻るときに、少しでも生き残れる確率が上がった方が良いでしょう?」

 

 

「…オマエ、何言ってるんだ?奈落の底まで行くならもう戻ってこれねぇ。七層の負荷、知らねぇわけじゃねえんだろ?『完全な死』だ、もう戻れねぇんだよ!地上には!お、オイラは、おいらは……ミーティを死なせたくねぇんだよ……」

 

 

「ンンン……なるほど、なるほど。それは………ええ、貴方様の艱苦ももっともです。であればそうですねェ…今ここで明かすつもりもなかったのですが一足先にお教えしましょう」

 

「拙僧は奈落の上昇負荷を無効化する術を持っておりまする」

 

 

「……そいつはオイラも知ってるぜ、『カートリッジ』だろ?」

 

 

「ンンンンン!ああ、いえいえ!あのようなおぞましき欠陥品と拙僧の術を同じものであると、どうかおっしゃらないでいただきたい!ええ、ええ。断言いたしましょう。拙僧が生きておる限りあなた方は上昇負荷を受けることは無い、と」

 

「理論も術も出来上がっておりまする。あと重要なものが一つだけ足りませぬが、それも近々手に入る予定ですしねェ」

 

 

「んなぁ……にわかには信じられねぇな。ボンドルドはクズ野郎だが腕だけは一級品だ。そのボンドルドですら子供を使いつぶさなきゃ克服できなかった上昇負荷を、ホントにどうにかできるもんかねぇ?」

 

 

 

「ンフフフフフ!まあ、術の内容はいずれ使う時にでも!ああ、ナナチ殿。これでも心配ですかな?」

疾くこの者を惑はせ給へ。急々如律令

 

 

 

 

 

「……そうだなぁ、そうだよなぁ………それだったらきっと、だいじょうぶかなあ?」

 

 

 

 

 

 

「ンンン。どうやら、解決されたようですねェ」

 

 

「………んんぅ、正直なところ今もよくわかってねぇ。どうすりゃいいのかとか、そんなことはよ。でもよ?ミーティが今の姿のまま苦しみ続けてるのはきっと間違いなんだ、それだけはわかる。その状況がどんな形であれ変わるってんなら、元に戻せるってんなら……オイラ、やるよ。やってみせる。難しいこととかそーいうのは、とりあえずミーティを治してからだ!」

 

 

「フフフフフ!それはよかった。ああ、そういえば。本人の体を素材にしているとはいえ、人の形に戻った後とは肉体的にも精神的にも非常に不安定なもの。どうかミーティ殿の支えとなってくだされ、ナナチ殿?」

 

 

「んなぁ、わかってるよ……そういやさドーマン」

 

 

「ンンン、まだ何かおありですかな?」

 

 

「オイラの記憶を見たオメェなら分かるかもしれねぇけどよ。今のミーティはさ、不死身なんだよ。何をやっても死なねえんだ。でもよぅ…ミーティが人に戻った後もミーティは不死のままなのか?」

 

 

「………ンンン、きっとその不死性は失われることでしょう。ですがその名残は、傷の治りが早くなる程度になりますが残ったままかと。失った腕が生えてくるなどということは無いでしょうな」

 

「ああ、そうです。完全に不死性を取り除けなかった代わりといっては何ですが、ミーティ殿を治すとき彼女の左目も元通りににいたしましょう」

 

 

「んなっ?!あ、アレが治るのか?!『枢機へ還す光(スパラグモス)』で焼かれちまったのに!」

 

 

「ええ、ええ、治せますとも。ですからどうかご安心召されよ。貴方様の不安は全て拙僧が解決いたしましょう、悩みも試練も全てですぞ。ああ、ナナチ殿。よくぞここまで御一人で耐えられましたなァ?」

 

 

「ささ、後のことは拙僧にお任せなされ、お任せなされ………」

 

 

 

 

もはや夜も遅く、帳もすっかり下りてしまいました。幼子はそろそろ眠る時間でしょう。

 

 

よく眠れる(まじな)いでも、一つかけてしまいましょう。

 

 

 

 

「んなぁ~…なんか、安心したら眠くなっちまった……すまねぇな、ドーマン。オイラ、先に寝るよ」

 

 

 

「ええ、そうされるのがよろしいかと。明日にはミーティ殿を人に戻さねばなりませぬからねェ?」

 

 

「んぅなあぁぁーおやすみぃー……」

 

 

 

 

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