怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです 作:S・DOMAN
『不屈の花園』を離れた後、拙僧らは深界五層『なきがらの海』に向けて歩いておりました。
「ンンン、ところでリコ殿。トコシエコウとは主にどこに生えておりますかな?」
「えっ?うーん…どこどこに生えてる!ってわけじゃないかなぁ。基本どこにでも生えてるし…」
「そこですよ、リコ殿。トコシエコウとはこの奈落のいたるところに生えている植物。それに化ける深層の虫どもが地上に出てきたなら、瞬く間に地上は山積みの
「トコシエコウはオースの町に住まうものにとって無くてはならない必需品、それに化けられてしまっては一たまりもないでしょう。まさしく『久遠を騙る虫』…ンンン!クオンガタリにふさわしき狡猾さですねェ!」
地上に住む自分の家族や、親しい友人が虫どもの苗床となった様を想像してしまったのか、リコ殿とレグ殿は顔を青ざめさせてしまわれました。
「考えてみればそうだな…そもそも遥か下。六層の原生生物が層を二つもまたいだところで発見されている時点で大分危険な状態なのだろうな…」
「うえぇ…ヤバいぃ。ナットやハボさんたちが『お祈りガイコツ』みたいになってるのを想像しちゃった…」
「だ、大丈夫か、リコ!」
「ンンンンン、少々気味の悪い話でしたかな。これは失礼!ささ、もうこの話は終わりにしてしまいましょう。次の野営地となる場所まで早く行かねばなりませぬゆえ」
もう五日は経ったでしょうか。あたりの景色も緑溢れる森林から、雪の積もる白銀の世界へといつの間にか様変わりしておりまする。
大断層を思い出させるような長い洞窟を抜けた先は、白く覆われた崖の上でした。この場所から、五層の景色を一望できるのです。
「…わぁ!」
さあ、ようやく着きましたぞ!深界五層『なきがらの海』へ!
目の前には四層のダイラカズラを彷彿とさせるような形をした氷の受け皿、『支え水』が連なっておりまする。
「…なあ、ドーマン!ドーマンってずっとその格好してるけど、寒くないの?」
「ンンン……実を言うと少しばかり肌寒いですが。まあ耐えられぬほどではありませぬ!」
そう言うと、拙僧は背中の部分に張っていた式神を一つ取り出し、ミーティ殿に手渡します。
「えっ!?ナニコレ、あったかい!」
「寒冷地仕様の式神にございまする。触れた部分を温かくしてくれるのですよ。ここに来る前に拙僧、8つほどこれを装備しておりますれば、心配ご無用ですぞ!ささ、ミーティ殿もおひとつどうぞ…」
「わあぁ、ありがと!」
「あー!ミーティずるーい!ドーマンー私にも一個ちょうだい!」
「す、すまないが僕も一個もらえるとありがたい…」
ンンンンンン!大人気ですなァ、拙僧特製の式神カイロ。まだまだ在庫はありまするゆえ、ご安心召されよ!