怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです 作:S・DOMAN
トリアーエズBRT2さん、誤字報告ありがとうございます!
腹が膨れれば眠くなる。これはどのような世界であれど共通する永久不変の真理でございます。
意識が無ければ記憶など拙僧の思うがまま。皆様方が寝静まっておられる間にプルシュカ殿の記憶をパパっと弄りまして……これでよろしいですな。
「んんぅ……あれ?ドーマン、どうしたの?」
「―――ああいえ、何でもありませんとも。さあリコ殿、もうひと眠りいたしましょう?拙僧が子守歌でも歌って差し上げましょう…」
毛布に包まったリコ殿の頭を撫でてやりますと、それが擽ったかったのでしょう。少しばかり顔をゆがめますが、じきにその不快よりも人肌のもたらす快が上回ったようで、今は拙僧のされるがまま。
このように撫でる技術だけが向上しているのは拙僧の沽券に関わるような気も致しますが…
そのような何もせぬ時間が続き、二人して揺らめくランタンの灯を眺めていると、不意にリコ殿が口を開かれます。
「……ねぇ。ドーマン」
「如何なさいましたかな?」
「いろいろ、ありがとね」
「…ンん、寝ぼけておられるので?」
「いや。こういう機会でもなければなかなか言えないからさ…」
「オースの街でも、眠れない夜はこうやってランタンを引っ張り出してきてさ。
「“奈落の底はどんな景色なんだろう”……なんて考えながら」
「…」
「それでね?レグやドーマン、ナナチやプルシュカと一緒に探検してきてさ。その時のことを思い出しちゃったの」
「“わたし、まだあの頃のままだ”って」
「……」
「あのオースの街で奈落を夢見る子供だった頃から何も変わってない、いっつも私が隊長だ、って威張ってるだけの―――」
「それは違いますとも。リコ殿」
「…」
「リコ殿。ここ奈落ではいかなる存在にも『価値』が存在するのです。食材をよく見つけられるだとか、原生生物と戦うことができるだとか…」
「ですがそのような『価値』あるモノたちも、磨かれなければ光らぬのです」
「それらを磨きあげて十全に力を発揮させる。光無きものすら輝かせる、価値あるものに意味すら持たせる……それは貴方様にしかできぬことなのですよ。我らが隊長殿?」
「……そっか。わたし、隊長やれてるんだ…」
「ええ。それはもう完璧に………さあ、もうひと眠りなさいませ。じきに出立ですから」
「うん…」
冒険と冒険の間。何の意味も無い空白の、その一幕。
ただゆらゆらと揺れ動く火のみが我々を照らすだけ。
(……暗黒の太陽、ですか。斯様なモノでも、案外照らせるものですなぁ)
寝息を立て始めたリコ殿を起こさぬよう、音を立てぬようにと浮きながら洞穴の外へと出ます。
轟々と吹雪く雪嵐の中を一人で進みます。
眼前にある半ば崩壊しかかっている前線基地を目指して。
「みんな!準備はいい!?忘れ物は無い、よね!?」
「待ちなされリコ殿。厠…トイレは大丈夫ですか?あの球の中にあろうはずもございませんから、ここで出しきっておいた方が宜しいのでは?」
「うっ…よく分かったね…」
「ドーマン…お前そりゃねぇぜ…」
皆様からの刺すような視線を受けながらも、拙僧はなんとかあの祭壇の中での一幕を阻止したのでありました。
拙僧は殿を務め一番最後に水の如き膜の内へと入りますと、皆一様に明るい雰囲気でありまする。
両の手を損なうことなく動かせるリコ殿、レグ殿。
黎明卿の支配から完全に脱したナナチ殿とミーティ殿、そしてプルシュカ殿。
“原作”などという物は既に形骸化しておりました。ここにあるのはただ美しき、夢と希望
首にぶら下げていた白笛を擦り、そして術を一つ発動させます。
ガコンッ、という音が鳴り祭壇が起動しました。水面が徐々に渦巻いて割れてゆき、空いた隙間に潜り込むようにして沈み始めます。
そして球が完全に水の中に沈んだ時、天を裂くような轟音が響き渡り、水面がざわざわと揺れ動きました。
「な!?おいドーマン!オメェまた何かやったのか!?」
「ンンン!?そんな失敬な!何でもかんでも拙僧のせいにするのはやめていただきたく!」
「そ、そうかよ…すまねぇな」
まあ今の爆発は拙僧が起こしたものなんですが。
「やっぱそうなんじゃねーかよ!?」
「おっと、口に出ておりましたか?どうかお気になさらず♡」
「次に
「ンフフ!ですがこの遺物は無事ですので?何も問題はありませぬとも!」
なにやらまた拙僧の株が一つ下がった気も致しますが……さして気に留めることではないでしょう。
懐に忍ばせておいた“行動食4号”を齧りながらこの『なきがらの海』を眺めるのでした。
多種多様な生物の死骸が重なり山を為すこのなきがらの海。骨の山脈に少しずつ前線基地の“なきがら”が積もっていきます。
……あれ、痛い。何故だか皆様の視線が痛いですぞ。
番外編もやりたいし本編も進めたい……
やりたい事はあるけどそこに至るまでの過程も書かなきゃいけないってのがS・DOMANの辛いところなのです。