怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです   作:S・DOMAN

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忘れもしませぬ。あれは拙僧が成れ果ての姫君と戯れていたころ・・・51

 

 

 

「そ、それって…っ!」

 

 

「ええ!オーゼン殿の装備されておられた一級遺物、〈千人楔〉そのモノに御座いますれば!これは何としても購入せねばなりませぬぞ!」

 

 

「…なんでそんな物が“村”にあるんだ?」

 

 

「拙僧もよく分かりませぬが……『店主殿!コレと全く同じ形をした物を、あるだけ全て買い取らせていただきたく!』」

 

 

 拙僧がそう言い放ちますと、店主は驚いたのか、慌ててこの品物の山の中から〈千人楔〉を探す作業に取り掛かります。

 その行動があまりに激しいので、埃が散って敵いませぬ。手に持っていた楔を店主に預けて、拙僧らは店の外にて時間を潰すことにいたしました。

 

 

『では、また後ほど参りまするので!』

 

 

 その声に甲高い雄叫びで以って返しなさった店主殿に、一瞬顔を顰めましたが、いかんいかんと気を取り直して商店街へと抜けてゆくのでした。

 

 

 

 

 

 

「―――ン?ああ。リコ殿?リコ殿!」

 

 

「はいはいどしたのドーマン?」

 

 

「いえ、大したことでは無いのですが。コレを」

 

 

「何これ?……っ、これってお母さんの手記じゃない!何処でみつけたの!?」

 

 

「ええ。実は先ほど、ここではない別の商店に立ち寄った際に見かけまして。絵柄が美麗でしたので買わせていただきましたが……その様子ですと、何やらリコ殿にとっても大事な物であったようで!いやァ!買っておいてよかったです!」

 

「……ンん、良ければ差し上げましょうか?」

 

 

「ほんと!?ありがとう!わぁ……うん、やっぱりお母さんの字だ!」

 

 

「何と書かれているんだ?」

 

 

「うーん……ちょっと待ってて…」

 

 

 先ほどナナチ殿らに随伴させていた式神から、殲滅卿直筆の手記が送られてきましたので、リコ殿に渡してみたのですが…

 

 ……しかしまぁ、歩きながら手記をご覧になるとは、随分と器用なことをなさるものです。現代(前世)っ子の“あるきすまほ”なる行為に通ずる所がありますねェ…

 

 リコ殿もレグ殿も、完全に自分の世界に潜ってしまわれたので、拙僧はただ図体の大きいだけの木偶の坊と化してしまいました…

 

 拙僧も今晩の夜まで予定はありませぬし、外の式神も上手くやっているようで、上層―――四層より上―――では到底見つけられぬような素晴らしい、正に〈至宝〉と呼ぶに相応しい品々を幾つか発見しておりまする。

 

 ……ただ、予備のために持たせておいた残基*1を五体も消費しているのは受け入れがたい事ですなァ。

 

 いえ?仕方のない部分はあるのですよ?使い方の分からぬ遺物を解析するためには、どうしても生きた人間が必要でありますゆえ。ですが、死なぬようにする対策というのはいくらでも取れるワケでありまして。

 

 残基を一つ消費して、通常のモノよりより人間らしい(・・・・・)式神を用意し、それに使用させるとか…

 

 …聞いてますか?貴方に言うておるのですよ、二号。

 

 

『勿論、重々承知しておりますとも!ですがねェ、こちらの拙僧も拙僧でありますれば、分割すればするほど自我やら思考なんぞを統率するのは困難になるのです』

 

『…そも、この躰は既に別たれたものでしょう?既に切り分けた肉から、さらに得を獲ようとすれば、必ずどこかで破綻しますぞ?』

 

 

 ンンンンン……悩ましい。悩ましいですなァ…

 

 確かに、貴方の言うことも一理あるのです。特に、『使用者の望むモノを写す眼球』なる遺物は、実際に自我を共有しておらねば、詳しい性能を知ることなどまず不可能。

 そのような一級……いや、特級すら相応しき遺物に残基を使うのは別によいのですよ?

 

 ですが………なんです、それ?

 

 

『ソソソ?』

 

 

 その……ンン。言うのも憚られるような、悍ましき外観の…

 

 

『…―――アァ!ゴ』

 

 

 それ以上は言わずとも結構!それは()に送るのです!

 

 

 

 

*1
前線基地にて手に入れた成れ果て





今回登場した遺物!作中に登場させる時は所々変えるかも…


長月スイは 奈落に巡り還る…

名前 蠢く枯れ葉(シヤーベリウム)

等級 1級遺物

備考 見た目は蠢くゴキ…枯れ葉の様に小さい虫の様な金属。一番近い生物の意思を汲んで力場の流れ関係無く蠢くのが特徴。溶かして服の素材にすると身体を補助して反射神経が良くなる。非情に有用だが人気が無い。


ほうじ茶三昧は 奈落に巡り還る…

名前 貪欲なる瞳

等級 不明(特級でもいい)

備考 人間の瞳を模したような形のレンズで、“見たいもの”を見る事ができるようになる。今、本当に“見たいものだけ”を映す。

 それはモノに限らず、忘れていた記憶を写したり、壁の向こう側であったり、奈落の底だって覗けるかもしれない。
 上手く使えば力場だって見えるかもしれない。ただし、そのレンズを通して見続けると、そのレンズに囚われ、現実の世界を見る事すら叶わなくなるという。

 「見たい」「知りたい」という欲求に応じてそのレンズは、覗いた者の眼球を覆い隠し、最終的には溢れ落ちる。溢れ落ちた眼球から、再びレンズが剥がれ落ち、それをまた誰かが見つける。

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