怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです   作:S・DOMAN

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忘れもしませぬ。あれは拙僧が成れ果ての姫君と戯れていたころ・・・55

 

 

 

 ガタガタと震えるドーマンを宥めるため、背中をぽんぽんしていた。

 ワズキャンさんの方はもう落ち着いたのか、さっき注いだお茶モドキを飲みながら振動するドーマンを眺めているようだ。

 

 ……ドーマンをこうしちゃったのは私のせいだけど、きっかけはワズキャンさんに盛られた毒なんだから、もうちょい気にしてほしいな…

 

 

「ところでワズキャンさん、なんでこの家には毒のある花が多いんですか?」

 

 

「ん?んー、そうだねぇ。僕の趣味っていうのもあるんだけど、一番の理由はやっぱり、そう。“抗体”を作るためさ」

 

 

「“抗体”?」

 

 

 私が繰り返すと、ワズキャンさんはしたり顔で説明してくれた。

 

 

「そうさ!深層の獣には毒を持つモノも多いからね、予め体を害する物(・・・・・・)への耐性を付けておくっていうのは無駄なことじゃ無いよ?どう?君も一杯」

 

 

「あ、それは遠慮しときます」

 

 

「そっかー」

 

 

 ……本当にこの人は、所々に違和感を感じさせるように喋るのが上手だと思うの。わざわざ毒の事を“体を害する物”、なんて回りくどい表現で言うかなぁ?それか、わざと気を引くような喋り方をしている…?

 

 ドーマンもそうだけど、ワズキャンさんも妙に勘が鋭い。もしかしたら似た者同士、何かシンパシーとか感じてるのかな?

 あ!それともアレかな?四層で見かけたあのタマウガチみたいに力場を読んでるのかも……へへ。なんちゃって〜…

 

 

「ワズキャンさん」

 

 

「んー?何だい?」

 

 

「ワズキャンさんって、何をそんなに怖がってるんですか?」

 

 

「…」

 

 

 怖がっている、っていうのはちょっと言い過ぎな気もするけれど、これ以上にぴったり当てはまる言葉は無いと思う。私たちと会うときに、いつも飄々とした喋り方をするのは、恐怖の裏返しなんじゃないかな?

 

 

「私達がこの村にお邪魔した時もわざわざ迎えに来てくれたし、その後も、私達の食事にいろいろ毒を混ぜたり……かといって外から来た人を疎ましく思ってるのか、っていったらそういうワケでもない…」

 

「さっき私たちが入ったお店の店主さんは、元々外からやってきた探窟家の人らしいし、外から来る人を積極的に殺そうっていうことでも無いんですよね?なのに何で私達の時だけ毒を盛るんですか?」

 

 

「……驚いた。何にも考えてなさそうな顔してるのに、スゴいねぇ」

 

 

「それ褒めてるんですか…?」

 

 

「ん?うんうん。褒めてるとも!うーん……そっかー。もうそこまで分かっちゃうか…」

 

「なら早めにしておいた方がいいかな?ベラフ?ちょーっと仕事を任せたいんだけど!」

 

 

 ワズキャンさんはなにやらぼそぼそと呟くと、ナナチやミーティたちと戯れていたベラフさんに声をかけた。

 

 

「また見回りか?」

 

 

「いいやーいいタイミングだしね。解放だよ」

 

 

「……そうか。そうか。永かったな」

 

 

「ワ、ワズキャンさん?ベラフさんも、いったい何の話をしてるんですか?」

 

 

「……そうだねぇ。何て説明すればいいか…」

 

「この村の外れにちょっとした洞窟があるんだけど、そこに一人、昔からの知人が住んでるのさ。そんなに仲が良いわけじゃあないけど、やっぱり同郷のよしみっていうのかな?村を出るとき一緒に連れて行きたくってねぇ」

 

 

「でしたら拙僧も同行いたしましょうか?あ、リコ殿。撫でるのはもう結構ですぞ」

 

 

「うーん…?ドーマン君も来ていいけど、奥まで(・・・)来れるかは分からないよ?」

 

 

「いえいえ、大丈夫ですとも!拙僧であればその程度どうとでもなりますので!」

 

 

 ……まーたドーマンが悪い顔してる。今度はいったい何をするつもりなんだろ?

 

 

 

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