怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです 作:S・DOMAN
日の光の全く届かぬほど奥まで進んでまいりました。
暗闇にはとうの昔に慣れまして、闇の中であっても昼間のように……とは流石にいきませぬが、周囲には村の子らもおりますし、その目の輝きを辿って行けば困る事など何一つありませんでした。
ただ一つ悩み事を挙げるとするならば、饐えたような吐瀉物の臭いでしょうか。名は分かりませぬが、紫色で、単眼、女型の成れ果てでございます。
……はァ。吐くくらいなら上で待っておれば良かったのに。何故ついて来られたのでしょうねェ?まぁ事前にそう伝えたというのに無理やり付いて来たのですから己の責任でしょう……それでも嘔吐する際の苦しげな表情と声には価値がありますが。
そのような事を続けること数分。ふと暗闇が和らいだかと思うと、少しばかり小高い丘の上に彼女がいるのが見えました。
他の方々もお気づきになられたのでしょう、皆様めいめい息を呑んだり、固まったりと、多種多様な反応をしております。
唯一何も感情も見せぬのはワズキャン殿ただ一人でございます。まァそれもそのハズ。ワズキャン殿は定期的にこの場を訪れていたようですし、特段驚くことなど無いのでしょう。
闇の中、ゆっくりと顔を上げられます。
切られる事なく伸び続けた髪の毛が房となり、はらりはらりと顔前を掠め、そしてその相貌が明らかになりました。そう!
この方こそ三賢の最後の一人、名を―――
「ふへぇ…!あのぅそんなにもったいぶられると私としてもすごくやりにくいっていうか、そのぅ…」
「………」
「あぅぅ…つ、続きをどうぞ?」
「あ、いえ。なんかもう良いです。それではヴエロエルコ殿。とっととこの狭苦しい洞穴を出ましょうぞ」
「―――ぁ…っ!あぁ!せっかくかっこいい説明があったのに!」
「ソソソソソー…」
「なになに〜?なんで二人とも落ち込んでるの?僕としてはそろそろここから出たいんだけど……ほら、子どもたちの目もあるし?」
「う〜……うっさい。ワズキャンはちょっと黙ってて」
「―――うえぇ?なんでさ?」
「結局みんな落ち込んでるじゃんか…」
「いや、オイラもメンタル面とか専門外だし、知識があったとしてもこんなのどうしろってんだよ…」
仮に深界百層なんてモンがあったとしても、そこで起こる上昇負荷はこれ程酷くはならないだろう。オイラたちはずーんと沈んだドーマンとワズキャンと、あと……ぶ、ぶえろ?ぶえろエルコとやらの三人をずるずる引きずりながら運んでいる最中だ。
途中まではあの黒いウネウネしたヤツらが手伝ってくれたので楽勝だったけれど、崖を登り切ってからはそういう訳にもいかねぇ。こっからは自分の力でどうにかしねぇとな…
「んぎぎぎぎぎ……あんたらマジで重いわねー!」
「どうやったら、こんな、デカく、なれるんだ!!」
レグの腕を外した時に出てくるあの頑丈なワイヤーで二人を笹巻きにし、残ったヤツら全員で引っ張っていた、実はこれが案外いい。結構がっちりしてるからな。
問題は引っ張るヤツの力不足なのだ。
『ふっ。よっ……あわわわわ落ちる落ちる落ちる!』
「ちょっパッコヤン!?危ない」
あ。ぶえロエルコはこの娘が背負ってくれているんだが…
「プルシュカー。オメーいつの間にソイツの名前を?」
「ん?どうにかして会話が出来ないか試してた時に、向こうから教えてくれたんだ!」
『ソソソ……なるほどなるほど。貴女がパッコヤン殿でしたか』
『え、ウソ。私何で認知されてるの!?』
『ええまあ。結構な有名人ですので?』
「ドーマンん?喋れるんだったら、そろそろ、歩いて、ほしいんだけど!?」
「ソソソソソ♡もう少しだけこのままで…」
階段から突き落とした。