怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです 作:S・DOMAN
ヴエロエルコ殿から提案された村殺し。拙僧はそこに勝機を見出しました。この女はたった今、自らの手で墓穴を掘ったのです。
この茶に混ぜられた花の蜜ではありませぬが、まるで甘露の如き、逃れ得ぬ蠱惑的な言葉のみを紡いでみせましょう。
「……皆様の願いはよく分かりましたとも。ええ」
「ですがヴエロエルコ殿、貴女はそれで良いのですか?」
「……うん。きっとそれが、あの子にとって一番いい事だから」
「―――んッフフ!ンンフフフフハハハハハ!!それには『実現可能な範囲で』という小書きが付くでしょう!?そうではないのです。ないのですよ」
「拙僧は忌憚無き望みをこそ叶えたい!ですから、貴女の心の奥底にある真なる願いをどうか拙僧にお教えいただきたく!」
『疾くこの者を隷し給え。急々如律令』
「わたしの、ねがい…」
「おぉっーとここからは僕が務めよう。どうやらヴエコは冷静さを欠いてるようだ……ほら。落ち着くまでお茶でも飲んでて?」
うーん困ったなぁ、僕の呼びかけにも全く反応しない。完全に自分の世界に入っちゃってるよ。
ここまでは凡そ筋書き通りに進んでたんだけど、ドーマン君のあの言葉。アレがダメだった。あんな事言われちゃったら流石のヴエコでもブレちゃうじゃないのさ!せっかく事前に協力してくれるよう頼み込んだのに…
でも、僕らが交渉を有利に進める為には君が必要なんだよ。ヴエコ。君には何が何でもこっちについてもらわないと、僕らとしても困るんだよねー
一応、横で黙って聞いてくれてる
「……まぁ彼女の願いはだいたい察しが着くけれど、問題は達成した後さ。そうでしょ?」
「ええ。そこはまぁ拙僧にお任せあれとしか…」
「そこだよ」
「……んン?はて…」
「ずっと疑問だったんだ。キミたちはあまりに上手く行き過ぎてる」
「みんなの着てる装備、どれもこれも統一感がないでしょ?これって隊に加わったタイミングがバラバラだからじゃないかな?だとすれば君たちは大穴に、徐々に数を増やしながら降りてきた事になる!うん!スゴい事だと思うよ?本当さ!」
「普通隊員っていうのは減っていくものだ。普通はね?その理由はいくつかあるけれど、一番の問題はやっぱり食料だろう。それぞれの腹を満たすだけの食料はどうしたって必要になる。でも旅の途中で口の数が減っていくから、強行軍でもなんとか耐えられる…」
「なのに君たちの隊はどうだい?口の数は逆に増えて、それなのに有り余る程の食料があるじゃないか!なんらかの工夫があったとしても出来すぎだ。やりようは無いわけじゃないが、子どもがするにはキツすぎる」
「ならそれを解決できるのは君しかいない訳だよ。ドーマン」
「確かにそうですが……先程からつらつらと、何を言わんとしておるのです?」
「……ドーマン、君はいったい何をしようとしているんだい?この大穴に、何を求めてやって来たんだい?」
「それはモチロン!少年少女らの織り成す冒険活劇を、一番の特等席から鑑賞したかったからですとも!」
「あははーウケるー冗談でしょー?君はそういう人種じゃ―――」
「いや。ワズキャン」
「―――ん?どうしたんだいヴエコー。急に横から」
「ドーマン君はホントにそれを望んでたよ」
「……えっ。ちょっ。ちょっとヴエコ?」
「ドーマン君の願い……私が見た中で一番強い願いじゃなかったけど、確かにドーマン君の願いには『鑑賞』があったの」
「…へーそう。そりゃスゴい」
これは……うん。ヤバイね!!普通こんな土壇場で裏切るかいヴエコー!?
もう無い。