怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです 作:S・DOMAN
(色々な事に決着をつけて来たので)初投稿です。
緑色の液体を用いた料理で皆様方を餌付け……失礼。食事を振る舞っておりましたら、ふとリコ殿が口を開かれます。
「そういえばさドーマン、この緑色のやつを食べ始めてから、なんだか身体が軽いんだけど……あと、〈千人楔〉のすっごいお腹空くやつも楽になってるし…」
「―――ほォ。あぁ、なるほどなるほど。そういう効果でありましたかコレ」
「えっ、ドーマン?もしかしてこれって……遺物?」
「ンン〜……恐らくは?」
「っ!ねえねえどんな遺物なの!?見せて見せて〜!」
「ンン゛ン゛ッ゛!?ちょっ、暫しお待ち下され!此方にも準備というものが―――」
「分かった!!」
「き、切り替えが早いご様子で…」
リコ殿が“どうしても”、と仰いますので、この村より出で、今となっては懐かしきあの村を見下ろすことの出来る断崖まで参りました。
どうやらこの辺りは何ぞの深界生物の棲家であるらしく、獣除けの術を使用しておらねば引っ切り無しに我々を攻撃しに来るのです。
この遺物を使用するには丁度いい場所かと♡
「うわぁお……ドーマンの獣除け、やっぱりいつ見てもデタラメな効果してるね〜…」
「ンフフフフ!お褒めいただき恐悦至極!」
「キョーエツシゴク?」
「……“嬉しい”、という事ですよ。では嬉しい序でにこの遺物、使うてみましょうか」
獣除けを解除しますと、境界の外から睨め付けるような眼でこちらを見ていた原生生物が、一斉に飛び掛かってまいります。ですが…
何と緩慢な動作であろうか。
「『急々如律令』!」
瞬間、彼奴らは何か、目に見えぬ巨大な手に押しつけられたかのように地面にメリ込みました。
まあ拙僧の術のせいなのですが。飛ぶ為の翼を持ちながら、宛ら地にうちあげられた魚のようにビクンビクンと跳ねておる様は、何とも浅ましく滑稽でございまする。
拙僧の背にて感嘆の声を上げておられるリコ殿に、僅かに微笑ましさを覚えつつ、だらりと開いた口の中に豆を一粒放り込みました。
すると直ちに変化が始まります。身体のいたる所から薄緑色の水滴が滲み出て来たと思えば、徐々に数を増やしていき、終いには身体全体を覆い尽くしてしまいました。
身体の形すら保てなくなり、少しずつ少しずぅつ 輪郭が無くなってゆくのです。
……そして、ものの数秒程で、この翼竜は粘液の集合体と成り果ててしまいました。
「わぁ…!」
「ンフフフフ!如何でしたかな?」
「なんて言うか……スゴかったね!」
「ええ、ええ。スゴかったですなァ。では、この粘液を採取して終いといたしましょう。そろそろ皆様が心配しておられる頃でしょうから―――失礼」
「え?」
失礼。そう言った後、ドーマンはすっと黙り込んでしまった。
前に立ってみてもうんともすんとも言わない……何があったんだろう?
一分ぐらい経ったあたりかな?急にドーマンが動き始めて、
「申し訳ありませぬ、リコ殿。少々待たせてしまいましたな。では帰るとしましょう…」
そう言うドーマンは、何だか何時もより焦っているような感じがしたけれど、ドーマンにそれを聞いても、するりと躱されるだけで、何も教えてくれなかった。
そのままドーマンのジュツで一緒に“村”に帰った。
リコ殿
『本体!本体!!これよりそちらにファプタ殿を転移させまするぞ!』
『―――は?』
今回登場した遺物!
長月スイ は 奈落に巡り帰る…
名前 〈
等級 4級遺物〜特級遺物
備考
正確には遺物ではない特殊な豆を指す。黒かったり、赤かったり、紫だったりする土地ごとに生態や形、色などが変わる種類としては同一の豆。
その場所で取れた豆は採取されたその場所でしか取れず違う場所に植えて育てても別の豆になってしまう。味も場所によって代わり大抵は某百味ビーンズの様に酷い味(吐瀉物を処理した雑巾味とか)。
貴重な豆の中には火が吹ける様になったり、10日間飲食なしで行動出来たり若返ることができるモノが発見される。そんな夢ある豆だが呪いとしか思えない効果がある豆もあるため大抵は無視される。
この話では、『食べたモノを凄く美味で、栄養満点な緑色の粘液に変貌させる』豆のみが出てます。
なんでそんなものを古代人は栽培してたんでしょうね〜…