怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです 作:S・DOMAN
さてさて、今は暴れるリコ殿をレグ殿と協力して宥めた後。お二人ともどうやら疲れ果てて眠ってしまわれたご様子です。
まあ無理もないでしょうな。前日にしっかりと休息をとられていたとしても、まだ日も昇らぬほどの時間からの強行軍は年端もいかぬ子供がするには些か荷が重い。
このように間抜けな寝顔を晒してしまうのも無理のないことでありましょう!
……因みに拙僧、レグ殿の腕のトラップの外側にはじき出されてしまっておりまする。おお!なんと、拙僧は悲しい…
『このペースで進んでゆけば―――』などと先程は息巻いておりましたが、二層突入の目印である『風乗りの風車』なるものは未だ遠く、拙僧らの遥か足元にありまする。『石の箱舟』は、既に越えたのですが。
しかし、原作でもこのペースで進んで行かれていたのでしょう?よくもまぁこれで追っ手を撒けたものです……おっと!そうでしたそうでした!拙僧今まで忘れておりましたが、この後追手の探掘家との遭遇イベントがあるのでした!
かくなる上は拙僧だけ幻術を使って隠れましょうかねェ……
……ああ、そういえばレグ殿の
せっかくの機会です。リコ殿が密かに書かれておられるという日記でも一つ、拙僧も記してみようと思いまする。
「ん、うぅん……」
―――ンンン?どうやらリコ殿がそろそろお目覚めなさるご様子。この話は、また後程…
えいっ
ちょんっ
「ふえああああああああああああぅッッッ!!!だれああああっ!!!」
「ひゃあっ!!どしたのレグ?!」
「フフフフハハハハハ!!おはようございます!リコ殿、レグ殿!よく眠れましたかな?」
「あえぁ!!?ドーマンッ?!……ああ、ドーマンか、びっくりしたぁ…」
「ええ、お二人とも随分と深く眠られていたようで。あれ程動き回っておられたのですから。よほどお疲れだったのでしょうなぁ」
「くぁっ……うーん、たしかに。私、いつの間に眠っちゃってたんだろう……ごめんねレグ。レグのおなか、あったかくて」
「まあ無理もない。今日はずっと起きてたからなぁ…」
「さあさあお二人とも!軽く眠気覚ましの運動をしたら出発いたしますぞ!」
「ふぁああい、分かった……って、ドーマン!私が隊長だもん!!んもぅ、忘れないでよー」
「ンフフフフ!随分と大きな欠伸ですな!この様子であれば眠気覚ましは必要ないかもしれませんねェ?」
「もーうー!!」
ああ、画面越しに見ていた方々との会話というのは、斯くも心揺さぶられるものでありましたか!ンンン!甘露!甘露!!
拙僧の鍛え上げられた腹筋をポカポカと叩いているリコ殿を見て、ついつい頬が緩んでしまうのでありました。
「ん?あれ……ねえレグ、ドーマン。今何かヘンじゃなかった?」
「どうしたんだ?」
「いや。あそこでなにか光ったような気がして……気のせいかもだけど」
おやァ、おかしいですねェ?本来ならばこれはレグ殿が気付くべき事であるはず…
先程の巨大なカマキリの如き虫……はて、“ゴゴウゲ”でしたかな?を避けて通るよう拙僧が誘導したのが、徐々にズレとなってあらわれているのでしょうか?
この手の転生モノであればある程度『世界の修正力』、『抑止力』なるものが働きそうなものですが。どうやらこの世界、あの程度の些細なズレも物語に影響するようですねェ。今回はこの程度で済みましたが、さらに大きい変化であればどうなるか…
いやはやしかし、この躰が『蘆屋道満』のもので本当に良かった!陰陽術というモノは正に万能の代物でありますれば!拙僧も多少であれば未来を見通せまするので。微細なるズレはその都度気づかれぬように修復しておかなければなりませぬ。
「いえいえ、どうやら気のせいではないようですぞ。さすがリコ殿!よく気付かれましたなァ!」
「えへへへへ、そうかなぁ…?」
「どうやら追っ手にありますれば。ささ、では拙僧少しばかり隠れまする。拙僧はすぐ傍に付いておりますのでご安心召されよ。おおっと!ではもう時間がありませぬので、これにてェッ!!!」
「っ。て、ええ?!ほ、ホント!?レグ!」
「ああッ、僕も今確認した!探掘家だ!一人だけどまっすぐこっちに向かってくる!あの三つ並んだ岩の近くだ!走るぞリコッ!!」
「うん!急ごう!」
さてさて、うまく逃げ切れますかなァ?
……なーんて。土台無理な話ですよねェ?
「さすがライザさんの娘だなぁ。おい。リコ」
「どうだい?俺もなかなかやるもんだろう」
「は、ハボさん?!そんな、どうしてハボさんが…」
「それにしてもよォ…」
「いやあ~盲点だったぜ!!お前さんが『奈落の至宝』だったとはなぁ!レグ!」
「……んん?肌の部分も遺物なのか?まったく見た目じゃあ分からんもんだな!それに金玉も!おっ、ここは機械仕掛けじゃねえんだな!荷物の分も差ッ引いたとしても……なんだぁ、結構軽いんだな。っおいおい蹴るなよ!」
「ハ、ハボさん。そこまでにしてあげて…」
「ん?……あっはっはっは!!悪い悪い!話がまだだったな!俺ァ、別にお前たちを捕まえに来たんじゃねえんだ」
「…ふぇ?」
「ああ、ナットとシギーが訪ねてきてな。『奈落の至宝』を見れる、最後のチャンスですよ!って。そんでまあ、こうして拝みに来たわけだ」
「できれば、拝むだけにしていただきたかった」
「ぬぁッはっはははははは!!!はー。ああ、ちなみに連中はねじれ石英のあたりを探してたぜ!ありゃあまだかかるな」
「……さてと、で?さっきのヤツは誰だったんだ?」
(リコ殿!拙僧の事はどうか内密に!!知られると少々マズいのです!)
「ぅええ!?……だ、誰の事?」
「いやあそれがな?さっき望遠鏡からお前たちを覗いてたら、なんかヘンな服着た大男がいたんだよ!お前たちと一緒に降りているようだったからな、俺ァてっきり、親切な道案内かと思ってなぁ!ぜひともお礼がしたくってよォ!!」
「……そ、その大男なら、もう自分たちよりも先に行った。そっちの崖から、そのまま下へ」
「―――へえ!そいつァ残念だったな!辛子饅頭の一つでもやろうかと思ったのに。先にいっちまうたぁソイツも残念なことしちまったなァ!!ハッハッハハハハ!!」
「ア、アハハハハ…」
「さてと、『奈落の至宝』も見れたことだし、あいつらとの約束も果たしておかんとな!」
いやぁ。なんとか乗り切れましたな。しかしハボルグ殿もやけにカンの働く御仁で……思わず冷や汗が出てしまいましたぞ。
しかしまぁ最後の方。もしも拙僧がリコ殿に語り掛けていなければいったいどうなっていたことやら。
これこそが探掘家どもの本能というヤツですか?嫌に
それにしても、ねェ。
(先にいっちまうたぁソイツも残念なことしちまったなァ!!)
ンンンン!笑わせる。そのような事は微塵も思っていないクセに。万が一遭遇でもしていたら殺し合いになっていたでしょうに!よくもまあいけしゃあしゃあと殺気も隠さず言えたものですなァ。最後の方なぞ、もはや隠せておらぬというのに!!
その面の皮の厚さ、拙僧も見習わなければなりませぬなァ!!フフハハハハハハ!!!
饅頭がノドに詰まったので失踪します。