「あっヴィルヘルムさん。見えてきましたよ盗品蔵が」
「なるほど。確かに蔵ですな」
俺は貧民街の奥にある建物を指差す
「では、私は交渉には参加せず基本的にスバル殿後ろにいるということでよろしいですかな?」
「はい、それで大丈夫です。もしヤバいやつが現れたらそんときはお願いします」
「勿論です」
コンコンと盗品蔵の、大きな扉をノックする。すると中から
「大ネズミに」と聞かれるから
「毒」
「スケルトンに」
「落とし穴」
「我らが貴きドラゴン様に」
「クソったれ」
と、問答すると開くのは前回で予習済み
そして、中から出てくるのは巨人族らしいここのなんだな胡散臭い気もしないジジイ、店主のロム爺だ
「なんじゃ、お前さん。初めて見る顔じゃな。じゃが、合い言葉を知ってるということはこっちの人間ということか?」
「こっちがどういう人間かは知りたくないが、ここに用があるのはあってるフェルトに会いたい」
「フェルトの客か。フェルトはまだ帰ってきておらんぞ。まぁ、中に入るといい」
「おう。じゃあ、邪魔させてもらうぜ」
「で、後ろのやつは誰じゃ?」
「ご主人、私から自己紹介を・・・ッ!?」
「・・・!!」
ヴィルヘルムさんが一礼したあとに顔をあげ、お互いに目があった瞬間どちらも目を丸く見開いた
「えっ・・・もしかしてお二人さん知り合い」
「こんなジジイ知り合いじゃないわい」
「私もこのような御仁。ご存知ありませんな」
「えぇ・・・絶対知り合いじゃん」
それもなんか因縁があるタイプの、とは口に出さないでおいた
「で、お前さんはフェルト何のようがあるんじゃ?」
店内に入ってカウンター席に座った俺にロム爺は話しかけてきた。いかにも不機嫌そうに
「そんなあからさまに不機嫌になるなよ。これやるから機嫌なおせって」
そう言って、ロム爺にコンポタを渡す
「ん?なんじゃ、これは」と、言いながらもちゃっかり袋を開けて中身をひとつまみして食べる
「おぉ!これはうまい!いい酒のつまになるの。まぁ、これに免じて許してやるとするか」
俺がいつお前を怒られせたんだよ
「俺はフェルトが盗んだ徽章を買い取りたい」
「いくら出すんじゃ?」
「単刀直入すぎだろ・・・まっ、俺は天下不滅の無一文。金なんてねぇ。しかし!俺にはこれがある」
ポケットから携帯を高らかに取り出す
「スバル殿、それは?」
「これは世に珍しい時間を切り取って保存するミーティアだ。俺はこれを対価にわたす」
「これがミーティア?わしも見るのは初めてじゃがどうやって使うんじゃ?」
「こうやるのよ」
パシャッとロム爺の写真を撮って画面を見せる
「ほらな」
「ほぉ、これはすごいのぉ!」
ロム爺だけでなく、ヴィルヘルムさんも画面をまじまじと見つめる
「スバル殿は飴といいそのミーティアといい不思議な物をたくさん持っていますな」
「たくさん持ってるっていうかこれが俺の全財産なんですけどね・・・で、ロム爺、これを査定してみてくれよ。ズバリいくらよ?」
ロム爺は俺から携帯を受け取ってうんうん、唸る
「う〜む、わしもミーティアを扱うのは初めてじゃが・・・これほどの物なら物好きが欲しがるじゃろう。聖金貨20枚でさばいてみせるぞ」
コンコンと、俺が発言しようと矢先扉が叩かれる音がした
「フェルトか?」
「多分な」
そしてロム爺は俺とやったときのように例の合言葉のやりとりをして、彼女を中に入れた。俺が待ちに待ち望んだフェルトのお出ましだ
「ん、誰だ?兄ちゃんたち。ロム爺、客か?」
「わしの客ではなく、お前さんの客じゃぞ。フェルト」
「アタシに?」
「そうだ、フェルト。お前が盗んだ徽章に用事があってきた」
「徽章?兄ちゃん、あのお姉さんの仲間か?」
「いや、違うなまぁ商談と洒落込もうぜ」
ひとまずフェルトは俺の隣に座ってロム爺から出されたミルクを一口飲んだ
「ロム爺これ水で薄めてるだろ?」
「タダで出してやってるんだから文句いうでない」
「ったく、ケチだなー。そんなんだから、客が来ないんだよ」
「お前さんにだけは言われたくないわ!!」
文句を言うフェルトとロム爺。やっぱコイツラ仲良いな。本当の孫とじいちゃんって感じがする。今もフェルトがロム爺の顔面掴んでなんかしてるし
「で、兄ちゃんはいくら出すんだ?」
「いきなりだな・・・ま、俺は金は出さねぇ。その代わり俺はこのミーティアを渡す」
カウンターに携帯を置いて、フェルトに見せる
「ミーティア?おいおい、金じゃないんだったら相手になんないぜ?」
「まぁ、待てフェルトよ。そのミーティアわしの見立てだと聖金貨20枚以上の価値があるじゃろう」
「え?これがかぁ?」
ロム爺の言葉でフェルトも興味を示す。やはり、先にロム爺鑑定してもらった方が話が進むのが早い
「どーだフェルト?その徽章とこのミーティアを交換。悪くない取引だと思うぜ?」
「確かに悪くない取引だが、依頼人に黙って渡すわけにはいかねぇ。交渉ってのはフェアじゃないといけねぇしな」
「でも、依頼人ってのはせいぜい聖金貨10枚くらいが限界じゃねーの?」
「そこまで知ってんのか・・・やっぱ、商売敵かなんかか?」
「商売敵っていうか自分の仇っていうかなんというか・・・まぁ、そこはどうだっていい。取り敢えずフェルト、一応徽章を見せてくれないか?」
「まぁ、そうだな。そんくらいはアタシもしないとな。ほら」
フェルトの手に握られていたのは確かにあの娘の徽章だった
「よし、じゃあそれとこれ交換といこうぜ?」
「待てってま「スバル殿」
フェルトの言葉を遮ったのは今まで傍観を決め込んでいたヴィルヘルムさんだった
「改めてお聞きしたいのですが、スバル殿はその徽章を手に入れてどうなさるおつもりで?」
あれ、もしかして俺ってヴィルヘルムさんに疑われてる?いや、でもそんな雰囲気じゃないな。真剣な目つき・・・ヴィルヘルムさんがどんな意図を持って俺に質問したのかわからないが、もちろん俺の答えは変わらない
「前にもいったとおり、持ち主のあの娘に返します」
「作用ですか。その目やはり、杞憂でしたな。ところで、スバル殿はその徽章がどんな代物か知っておられるのですか?」
「いや、なんも知らないですけど、凄い大事なものと言ってたからなんか身分を証明するもんなのかなーって」
「身分を証明・・・当たらずも遠からずといったところですな」
「おい、いつまで2人でコソコソ話してんだよ」
「あぁ、悪いフェルト」
ヴィルヘルムさんに言葉を遮られた上に、少しだけほっておいたからか少しイライラしている
「というか、今まで触れてこなかったけどその爺さん兄ちゃんの使用人かなんか?もしかして、お忍びの貴族だったりすんの?」
「あれ言わなかったけ?俺は身分不詳、国籍不明、その上無職の無一文だぜ?」
「身分不詳で国籍不明でその上無職の無一文で目つき悪くて貧相な身体してる16歳?ここに住んでる奴等より酷いな・・・」
「勝手に台詞付け足して人のこと哀れむなよ!かなしくなるだろーーが!あと俺は18だ!」
「え?18?嘘だろ・・・」
「なんでそんなにショック受けてんですかねぇ!?」
「だって18で無職の無一文とかやべーだろ・・・」
くそっ、ぐうの音も出ねぇ
「そういや、そこの爺さんのせいで聞きそびれたがなんで兄ちゃんはこれをこんなに欲しがるんだ?」
「そうだな・・・」
ここで変なこと言ったらフェルトに疑われるだろうし、なんて答えようかな
「それの持ち主はさ俺の恩人なんだよ。恩人に恩を返したいのは当たり前だろ?」
「盗品を買いたいなんて言うから後ろめたい理由でもあると思ったのにそんな綺麗事かよ。てか、それアタシの損にならないか?」
「どうしてだ?」
「その後その持ち主と結託してアタシを捕まえるとか・・・」
「心配しなくてもそんなことしねーよ。俺が嘘つくような目してるか?」
「してるな」
「いや、してねぇよ!?」
「と、言うわけで俺にもう渡してくれても構わないのよ?」
「だから、それはフェアじゃないって言ってるだろ。聞き分けないな」
まぁ、ここで変に急かしても怪しく思われるだけかもしれない。ヴィルヘルムさんには悪いが最悪の場合に備えて貰おう
「ヴィルヘルムさん、さっさと徽章を手に入れてずらかろうと思ったけど無理そうなんで、もしもの時はお願いします」
「無論です。その為に来ましたから」
ヴィルヘルムさんにフェルトたちに聞こえないようにそっと耳打ちする
最悪エルザと商談になっても、持ち主に返すなんて言わなければワンちゃんあのまま帰ってくれる可能性もあるだろう
俺は考えを巡らせながらミルクを口に含んだ
「まず・・・」
スバルの行く末
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公爵家へ
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メイザース領へ