「所でお嬢さん」
「ん?お嬢さんってアタシのことか?」
「そうです。年はいくつですか?」
「フェルト、そんなジジイの質問に答えんでもよい」
「いや、ロム爺もジジイだろうが」
あ、今突っ込んだのはフェルトじゃなくて俺ね?そこんとこよろしく
「なぁ、やっぱヴィルヘルムさんとロム爺って絶対知り合いだよな。しかも、何か因縁があるタイプの。もしかして、永遠のライバルだったりして?」
互いに睨みあっていた、2人は俺の言葉に
「ライバル?ははっ、スバル殿は冗談がお上手ですな」
「こいつと、ライバルじゃと?ふっ、笑わされるのぉ」
いや、お二人絶対仲良いだろ
「別にアタシの年齢くらいいいだろロム爺。どーせ、正確な年齢はわかんないだし」
「つまり、生まれたのがいつか分からないということですか?ご両親は?」
「親の顔なんか知らねー。物心ついたときからこの偏屈じいさんと一緒だったぜ?」
「なるほど」
「これで、満足か?」
「えぇ。それだけで充分です」
・・・やけにヴィルヘルムさんの声音がおかしいな。さっきから言動も少し突拍子がないし。ロム爺のせいか?いやでも、視線というか意識はロム爺には向いてないしな
だとすると、フェルトか?でも、ヴィルヘルムさんが、初めて会ったはずのフェルトのことで何か気にかけることがあるか?いや、まぁ確かにこんな子供が盗みで生計をたててるって知ったら元の世界でも異世界でも何か思うことがあると思うけど
「なぁ、兄ちゃん」
「ん、どうした?」
「暇だから、そのミーティア少しいじらせてくれよ」
「えっ・・・ちょっと素人に精密機械を渡すのは怖い。というか、暇ならここの掃除でもしたらどうだ?こんな小汚かったら来る客も来ないぜ?」
「悪かったな、小汚くて!」
「そんなかっかすんなよロム爺。早死にするぜ」
「なら、もっとこの老体を労らんか!」
「いや、ロム爺を老体っていうのには少し無理がある」
そんな巨体で筋肉ムキムキの人に言われてもなぁ
「ところで、フェルト。依頼人ってどんなやつだった?」
「あ?確か黒い外套を羽織ったぼいんぼいんの姉ちゃんだったかな」
「ふーん、ぼいんぼいんねぇ・・・」
「イヤらしい顔すんなよ・・・」
「してねぇよ!」
ただ今どきそんな表現聞かなくなったよなぁって感慨深いなって思ってただけだし。確かにおっかないけど、ぼいんぼいんだったよなとか思ってねぇし!?
それより
「ヴィルヘルムさん。腸狩りがこのあたりにいる理由がよめたかもしれません」
「何故ですか?」
「恐らくですが、フェルトが言う依頼人は腸狩りです。俺が見た人相とまんまだ」
「となると、交渉に訪れて油断している所を切り捨てますか?私としては殺さずに捕まえたいのですが・・・」
「ヴィルヘルムさん意外とおっかいっすね・・・でも、一応平和的な交渉になるかもしれないので最初っから斬りかかるのは」
「いえ、どのみち私は腸狩りを捕まえなければなりません。あの徽章を盗む指示をしたという者を私は逃すことはできない」
「・・・・・・・・・そこまで言うなら俺はもう、何も言いません」
「えぇ。ところでスバル殿は今この国の状況を知っていますか?」
「この国の状況?いや、恥ずかしい限りなんですけど国名以外なんも知らないです。実は戦争中だとか?」
「いえ、それよりも重大です」
「それよりも重大・・・ということは、もしかして王がいないとか?」
「その通りです」
「マジか・・・でも、王がいないんだったらその息子とか兄弟が王様になれば解決するんじゃないんですか?」
「確かにその通りです。通常ならばそれでよかった。しかし、王だけでなく王族全員が死んでしまった」
「え・・・?王族全員が?そんなこと普通あるわけがない。まさか、暗殺?」
「いえ、この国は流石に王族全員が、暗殺されるほど廃れていないですよ。王族だけが病気に罹り死んでしまったのです」
そんな、王族にだけ罹るそんな都合のいい病気とかあんのかよ。つくづく異世界だな
「そして、次の王の候補。王選候補者が今の所4人いるというのがこの国の現状です」
「へーー。なるほど」
などと、俺たちがコソコソと話していると、コンコンと扉が叩かれる音がした
「アタシの客かな」
そう言ってフェルトは椅子から立ち上がり、取っ手に手をかけた
俺とヴィルヘルムさんは固唾を呑んでその時を待った
しかし、俺たちの緊張を予想外な形で途切れた
「やっと見つけた。今度は逃さないから」
「ったく、本当にしつこいな。アンタは」
「やはり、エミリア様の・・・しかし、ここはスバル殿にまかせるとしましょう」
「大人しく返してくれたら乱暴なことはしないわ」
どうして、サテラ(偽名)がここにいるんだ!?いや、ここにいること自体は一回目で辿り着いたんだから、ここに来ることは可笑しくないな
「っていうことは、俺がいなきゃもっと早く辿り着いたってことか。俺はとことんお荷物だったな」
それとヴィルヘルムさんが何か呟いていたが小さくて聞き取れなかったな。やっぱ、ヴィルヘルムさんはなんか知ってんのかな。さっきから、結構意味深な発言多いし
「私からの要求は一つ。徽章を返して」
そう言い放つ彼女の周りには、恐らくというか確実に彼女の力で生み出された先が鋭利に尖った氷柱が8つ。
そのうち1個ずつ俺とヴィルヘルムさんに向けてあり3個ずつフェルトとロム爺に向けられていた
「・・・ロム爺」
「動けん。厄介事を厄介な相手ごと持ち込んでくれたもんじゃな、フェルト」
いつの間にか例の棍棒を握っていたロム爺だが、それ以外に動きはないしどこか弱々しい雰囲気だ
「ケンカやる前から負けなんて認めんのかよ?」
「ただの魔法使い相手なら儂も引いたりせんがな・・・この相手はマズイ」
ロム爺はサテラ(偽名)をじっと見て言った
「お嬢ちゃん。・・・あんた、エルフじゃろう」
エルフ!?ファンタジーの王道のエルフがこの世界にも存在したのか!?やべぇ、そういう状況じゃないってのはわかってるんだけど少しだけ興奮してきた
「正確には違う。私がエルフなのは半分だけだから」
その言葉を聞いたフェルトは急に声を荒げて
「ハーフエルフ・・・それも、銀髪!?まさか・・・」
「他人の空似よ!・・・私だって、迷惑してる」
ん、どゆこと?
「兄ちゃん・・・さては、まんまとアタシをハメたな?」
「ん?」
「持ち主に返すと言うから頭のおかしいやつだなーとは思ってはいたけどこういうことかよ!」
「えぇ・・・」
俺としてはそんなことを疑われるのは心外だが、たしかに状況的にはフェルトがそう疑うのも無理がないな
「・・・?あなた達仲間じゃないの?」
「そっちこそこの兄ちゃんと仲間じゃねーのかよ?」
「違うと思うけど・・・」
「む、知り合いではなかったのですか、スバル殿」
「確かに恩はあるんですけどあっちは多分無意識だから俺のこと知らないんですよ」
「なるほど」
「えっと、そっちのおじいさん何者?」
「私のことはお気になさらず」
ヴィルヘルムさん、その台詞めっちゃ気になるやつですよ。兎も角、サテラ(偽名)も思っていた状況と違って多少困惑している様子だな。ここは俺が綺麗に纏めてみせるぜ
「小芝居すんなよ。さっさとアタシから徽章を取り上げて無様なアタシを見て笑うなりなんなりすればいーじゃねーか」
「お前急に卑屈になり過ぎだろ。強く生きろよ」
「兄ちゃんにそれは言われたくねーよ!!」
なんでだよ
「まぁまぁ、フェルトはその徽章をその娘に返して後腐れがないようにして、えーと君はもうこの大切な徽章が盗まれないようにして、さっさとお家に帰る。これで一件落着でいいじゃん。フェルトにはちゃんと俺がミーティアを渡すからよ」
「親身になってくれるのはありがたいのだけれど釈然としないわ」
「それはアタシもだぜ」
「なんでそんな睨むような目で俺を見るんだよ。ウィン・ウィンになるような解決策だと思ったんだけど」
チラッと横目でロム爺を見ると
「魔法ではなく精霊術が相手じゃ。滅多なことでは動かんよ」
と言われてしまった。というか、精霊術って何よ
どうすっかなと必死に頭を回していると、迫る黒い影が見えた
「パック、防げ!!」
サテラ(偽名)に迫る凶刃を氷の盾が防いだ
「なかなかどうして、紙一重のタイミングだったね。助かったよ」
「助かったのはこっちだ。まだ5時前の勤務時間で助かったぜ」
親指をたてるような仕草に俺も返す
そして、俺の前にはいつの間にか音もなく、抜刀していたヴィルヘルムさんが目の前の黒い影を見つめていた
「スバル殿あれが・・・」
「えぇ・・・あれが腸狩り、エルザですよ」
こうなってしまったら腹をくくるしかない。さぁ、クライマックスだ
そろそろ一章終わりです
スバルの行く末
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公爵家へ
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メイザース領へ