愛玩の獣はマスターを手に入れたい   作:若杉優太(テト/teto)

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 前々回の作品の前日談という位置付けで書いてみました。
 もっと、ニキコヤ親子とぐだコヤ書きたいなぁ……


#1.5 光のコヤンスカヤの憂鬱
もっと愛されたい


 それは、立香をシミュレーションルームでハワイへ連れて行く数日前の出来事だった。

 

「まさか、ライバルが増えるとは……今まで私の天下だったのに……」

 

 ぶつぶつと言葉を呟き、頭を抱えながらカルデアの廊下を歩いているのは、白い法衣を身に纏った美しい桃色の髪を持つ女――光のコヤンスカヤ。

 少し前まではマスターである立香の隣を常に歩き、楽しそうに笑顔を振り撒いていた彼女だったが、今の彼女の隣には立香は居ない。

 その理由は、数日前に立香を軟禁した自身の片割れが、立香をずっと独占しているからだ。

 

「(まったく……マスターは、闇の私を甘やかしすぎなんですよ……!)」

 

 どんな英霊にも平等に優しく接するというのは立香の素晴らしい所ではあるが、それでも自身を軟禁した英霊に優しく接するなど、流石にお人好し過ぎだ。

 時折、マイルームから出てくる闇の自分を見るが、その度に勝ち誇った笑みを浮かべられるのが癪に障る。

 

「ああ……もう!思い出すだけで腹が立ってきます……っ!」

 

 こういう時は気分転換で何かを食べるに限る。

 光のコヤンスカヤは自身の怒りを何とか抑えつつ、食堂へと肩を怒らせながら足を進めた。

 

 

 

 

「はぐ……ッ!はぐ……っ!」

 

 食堂のテーブルに置かれたタワーのように巨大なパフェをすくって、次々と口へと運んでいく光のコヤンスカヤ。

 イチゴ、メロン、ブドウ、マンゴー……数えきれない程の果物が乗っていて、尚且つクリームもこれでもかというぐらいに乗せられており、周囲の目を引く程の豪華さを誇っていた。

 そんなパフェを一心不乱に口へ運ぶ光のコヤンスカヤの姿に、食堂へ居た英霊達はやや引き気味である。

 

「お、おい……もうちょっとゆっくり食べた方が――」

「うるひゃいですね……っ!」

「……」

 

 心配して声を掛けたエミヤにぎろりと睨みを利かせると、光のコヤンスカヤはすぐにパフェを貪るように食べ始める。

 ――言っても無駄か……

 エミヤは大きく溜息をつき、すぐに諦めて厨房の方へと戻って行った。

 依然として周りの英霊にドン引きされる光のコヤンスカヤであったが、そんな目を一切気にせず、ただひたすらマスターに構ってもらえないイライラを、甘い物を食べることで誤魔化すことに専念していた。

 そして、数分後。

 

「はぐっ……!んっ……!んっ……!――ふぅ……ご馳走様でした……」

 

 最後にパフェの底に溶け出していたクリームの一滴まで全てを飲み干し、光のコヤンスカヤは椅子へ深々と腰かけた。

 

「(はぁ……マスター、マスターが居ないというのは、こんなに寂しいものとは思いませんでした……)」

 

 ストレス発散の為にパフェを食べたはずであったが、未だに光のコヤンスカヤの表情は晴れない。

 どこへ居ても立香の事を考え、誰と会話していても立香の事が気になってしまう。

 今の光のコヤンスカヤにとっては、立香の存在はカルデアに居る最大の理由の一つとも言える、かけがえのないもの……そんなものを一時的にとはいえ取られているというのは苦痛以外の何物でもない。

 もちろん、他に大事な存在も居る。

 それは――

 

「おお……!ここに居たか、光のヤースカヤ!」

「……っ!ニキチッチさん……!」

 

 聞き馴染んだ声に反応して横を向くと、そこにはニコニコとした笑みを浮かべているニキチッチが立っていた。

 光のコヤンスカヤは暗い表情をすぐに明るくし、嬉しそうにニキチッチへと微笑んだ。

 

「久し振り……でもないか。でも、最近あまりお前と会ってなかったから会えて嬉しいぞ!」

「はい!私も、嬉しい限りです……!」

「そうかそうか!光のヤースカヤは素直で良い子だな!」

 

 ニキチッチが席に座ったままの光のコヤンスカヤの頭を軽く撫でると、光のコヤンスカヤは席を立ってニキチッチとハグを交わした。

 

「今日は積極的だな光のヤースカヤ……もしかして何かあったか?」

「……っ!いや、あるにはあるんですけど、ここでは少し言いづらいです……できれば、場所を変えて話したいんですが……」

「ああ、全然構わない。どんな悩みでもオレが受け止めてやるさ……」

「はい、ありがとうございます……ニキチッチさん」

 

 変わらない懐の深さに感銘を受けつつ、光のコヤンスカヤは小さい声で礼を言って、ニキチッチの身体をより強く抱き締めた。

 ――少しは、私の気持ちも晴れるとよいのですが……

 ニキチッチに見えないように憂鬱な気持ちを表情に出しつつ、光のコヤンスカヤはニキチッチへ存分に甘えるのだった。

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