IS:UC   作:かのえ

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主人公声優が同じということでクロス
ネタでしかない

6/24 加筆修正


一章 ユニコーンの影


 ある晴れた日のことだ。心地の良い、澄み渡った青空。この空が汚染されているだなんて思えない晴天。市街地から離れたその土地はそこよりかは清浄ではあるものの、人類の営みの結果かはるか昔に比べると汚くなってしまっている。

 

 足音が響く。晴天のせいでカラカラに乾いた土を踏みしめる音だ。すらりと高い背丈に流れる長髪。凛としたその瞳の先には倒れている少年(侵入者)がいた。

 

 少年は、うつ伏せに倒れていた。

 少し長めの茶髪。西欧人らしい掘りの深い顔立ち、しかし、その瞳は安らかに閉じられていて、色を知ることは出来ない。

 細身の身体、投げ出された腕、そしてその先にある手。男らしくなる途上のやわらかく、そして角ばった手の先には純白のペンダントらしきものがあった。それに埋め込まれた純白の宝石には、一角獣(ユニコーン)の文様が描かれている。

 

 長身の女性の影が少年の身体を覆う。

 

「どこのどいつだと思ったら男、だと? やれやれ……IS関連だというのに最近は男での問題が多すぎる」

 

 女性――IS学園の教師の一人で、そして警備とあればこれ以上有用な人はいない。そんな彼女、織斑千冬はそう呟くと手にしていた通信機器に声を吹き込んだ。

 

「侵入者と思われる人間を発見。10代中ごろの男だと思われる。私が来る前から気絶している模様。各員、武装を解除して良いだろう」

 

 通信相手が彼女の声に抗議しようとするが、関係が無い。それよりも早めにこの男を拘束し、事情を聞くことが先だ。そう彼女は自らの体重と同じか、それ以上あると思われる少年を軽々と担いだ。

 

 千冬が彼を背負うと同時に手からペンダントが零れ落ちた。美しい宝石、一角獣の文様。首を傾げながらもこれは彼の私物であると判断した彼女は彼を背負いながらかがみ、それを手にして校舎のほうへと向かうのであった。

 

 数分歩き、彼女がたどり着いたのは簡素な部屋。扉を開くとベッドがあり、治療器具が視界に入る。そこは保健室。この学校の特性上、保健室というものはとても重要な役割を負っている。将来世界に羽ばたいていくであろう少女たちのケアはとても大事なのだ。それも、思春期と言えば尚更の事。

 そんな彼女たちが相談しやすいためにも普通の学校でもある集団で使う保健室とは別に、ここのような個室が作られた。

 

 少年をベッドに横たえた千冬は前傾姿勢となった時に顔にかかった髪を背中に払い、椅子に座る。無理やり起こすことも考えたが、相手の感情を鑑みてそれは却下した。

 よく考えなくとも不自然な侵入だ。ここに来るためには海からか、モノレールでしか方法が無い。そして、不審者など即座に発見できるセキュリティもある。

 だというのにこの少年は海を渡ってきた形跡も無い、モノレールを利用した形跡も無い、セキュリティにも引っかからない。突如『はじめからそこにいた』かのように現れたのだ。

 

 彼の身体が動く、目覚めるのだろうか。部屋の外には警備員が配置されている。もしものことがあったときの保険だ。

 

「ここは……」

「目覚めたか」

「その声、ミヒロ少尉……?」

「私はミヒロなどという名ではない」

 

 頭を揺らしながら上半身を立ち上げる少年。別の名前を呼ばれたのもあるが、その声に千冬は顔をしかめる。なぜならば、その声が彼女の『唯一の肉親』と似ているそれだったからだ。

 

「あなたは?」

「私は織斑千冬。IS学園の教師だ。そして、お前を尋問する人間でもある」

「尋問? それにIS学園って……それに、海? ということは地球? 地球にいるのか、おれは……」

 

 遠くに見える青。それを見た少年はそんなことを呟く。なんだこいつ、頭がおかしいのではないか? まるで『地球以外にいた』かの言い方を――

 いや、そんなことよりも、と千冬は考え直す。彼女がやるべきなのは彼の尋問なのだから。

 

「お前の名前は」

「バナージ・リンクスです」

「年は」

「16になります」

「何故ここにきた」

「何故って――どうして? おれは『ユニコーン』に乗って。そして」

 

 はじめは素直に答えていた彼、バナージだったが急に返答に詰まる。

 記憶が混濁する、頭痛がする。 コロニーレーザーをサイコフィールドで打ち消して、彼女の語る『箱』の真実を世界に。

 ここまで考えて、さらに激しい痛みが襲った。何故、何故という疑問ばかりで答えは出ない。

 

「ユニコーン? しかも乗る、だと?」

 

 千冬はそんな彼の言葉をまるで『男なのにISに乗っていた』ように感じた。

 

 IS――正式名称「インフィニット・ストラトス」

 一人の天才が作り出した、なぜか女性にしか扱えない宇宙空間で活動することを想定したもの。

 

 この少年の年で乗れる乗り物といったらバイク、自転車くらいしかない。そして、それに名前をつけるなど中学生までに許されることだろう。だからといって、彼が口にした『ユニコーン』がISである、という発想に至るのは普段の彼女なら絶対にしないものであったが。

 しかしながら、『男なのにISを動かした』という前例があるのだ。数ヶ月前ならそんな何をバカな事を、と一笑に付すようなことなのだが。

 

 もしそうだとすればあのペンダントは。しかも、一角獣の文様。これは調べる必要がある。そう考えた千冬は口を開く。

 

「リンクス。お前が倒れていたところにこんなものがあった。お前のものか?」

「それは、いえ。見覚えが無いです」

 

 見せたのは彼が所持していたペンダント。しかし、そうにも関わらず彼はそれを知らないと答えた。それは、ISの待機状態であることを隠すためだろうと千冬は判断。ならば少しこれを調べてもいいか、と聞く。

 あっさり受け入れられたそれに疑惑を感じながらも、彼女は外の人間にそのペンダントを手渡した。

 

「さて、お前がどこから来て、何をしようとしたのかを教えてもらおうか」

「おれは……それよりここは何処なんです? おれは帰らないといけないんだ」

「なら帰るためにもこちらの質問に答えるのが早いぞ?」

「それはそう、ですけれど」

 

 バナージは考える。自分がユニコーンのパイロットであるというのは悟られていないだろう。何せ、先ほどこの女性は言った。学園の教師だと。

 そしてユニコーンが地球に落ちているのならば軍関係者が来てもおかしくない。ならば、ユニコーンに乗る前のただの学生だったバナージ・リンクスを教えればいい。幸い、パイロットスーツではなく私服だ。

 

「インダストリアル7のアナハイム工業専門学校に通っているただの学生です。自分でも全くしらないうちに地球に来ていたみたいでここが何処なのかすらもわかりません。何がしたい、と聞かれたならば、コロニーに帰りたい。それだけです」

 

 しかしながら、それは悪手だったと言える。――否、ここが『宇宙世紀』ではないとバナージが知らないのだから、仕方のない事だった。

 

「コロニーだと? お前は何を言っているんだ。嘘をつくにもほどほどにしろ。人間はまだ宇宙に居住を構えていないし、進出のためのISですらその領域に達していない」

「な、え……それはどういうことですか!」

「言葉通りだ。お前の言っていることはただの妄想だ」

 

 なんだって、と目を見開く。ならば、とバナージは問う。

 

「待ってください! それなら、今は宇宙世紀――いや、西暦なんですか!?」

「ああ、もちろん西暦だ。宇宙世紀だなんて、そんなものありやしない」

 

 バナージは目の前が真っ暗になったかのような気がした。

 西暦、それはもう100年近く前の暦だ。おれは過去に来てしまったというのか? それよりも、これまでのことが妄想だとされて帰る手がかりすら掴めなくなってしまう可能性だってある。

 黙って思考を始めたバナージを放置し、早々にこの男が妄想に取り付かれていると判断した千冬は、尋問は終わりだと言わんばかりに部屋を出ようとする。

 それを止めようとベッドの上からバナージが手を伸ばし、彼女が扉を開こうとする。二人のその行動とほぼ同時に、女性が部屋へと駆け込んできた。

 扉を開こうとしていた千冬と真正面に衝突しかけるも、ギリギリのタイミングで避けたその女性は、千冬へと慌てた様子で報告する。

 

「お、織斑先生!」

「どうした山田先生? ああ、尋問なら終わりだ」

「いいえ、それよりももっと大変なことです! あのペンダントからISの反応、そして起動しようにもバイオメトリクスが登録されていてお手上げ状態なんです」

「それで? 登録されている人間は誰だ」

「わかりませんが――おそらく彼、じゃないでしょうか?」

 

 山田と呼ばれた女性は神妙な雰囲気を出しながら、ベッドの上でいきなり部屋に入ってきた彼女に驚いているバナージを見ながらそう言う。

 だが、千冬はそれに反発した。

 

「山田先生、あいつが、織斑一夏が現れたからと言ってそんな」

「でも、世界各国で男の人を調べようという動きがありますが」

「ここはIS学園だ」

「調べてみるだけ調べてもいいのではないですか?」

 

 後輩の言い分にふむ、と千冬は一考する。もし、もし本当に彼が言っているとおり宇宙世紀があって、そこでの事故で過去に逆行したとするならば。

 未来の人間はこの時代と違うかもしれない。ISを動かせる可能性すらある。

 そう、そういえば確かに説明できないことはあった。セキュリティがどんなところよりも高いと自負できるこの学園に侵入できたという事実。これが出来るのは『あの馬鹿』か、この時代を超える技術力。

 

 その可能性を感じた千冬は彼の耳にだけ聞こえるように近づき、口を開いた。

 

「バナージ・リンクス」

「……はい」

「おまえ、工業専門学校に通っていると言ったな? もし宇宙世紀が実在しているのであれば、お前の持っている学生の知識程度でもこの世界の新発見にすらなり得る。そして、私には世界最高峰の頭脳を持つ知り合いがいる」

 

 あまり頼るのは好まないが、と付け加える。

 

「その人物であってもこの時代の技術を発展したものしか作りえなかった。宇宙には一歩届かない。だが、お前の持っている知識、それが本物であってその科学者が立証できれば――お前の言っていることを認めてやらんでもない」

「ほ、本当ですか!」

 

 限りなく近い距離でいきなり大声を出された千冬は不快そうに顔をしかめるも、続ける。

 

「ただ、条件がある。今からの実験に付き合ってもらうだけだ。いや、身構えなくてもいい。ただあるものに触れてもらうだけだ」

 

 バナージはしばし考え込み、そして了承の意を伝えた。

 ついて来い、と言われて彼は立ち上がり、歩く。

 そこから数分経ってたどり着いたのはパワードスーツのような機械が点在している空間。そこにはこの学校の女生徒と思われる少女たちが整備をしていて、千冬の背後を歩いているバナージを見てはぽかんとした表情を浮かべた。

 彼の鋭敏な感覚は『興味』、『驚愕』を彼女らの様子から感じ取る。

 

「ここでいいだろう。もし展開できたとしても邪魔にならない」

「何を?」

「このペンダント、調べた結果そこにあるIS――パワードスーツと言ったほうがいいか。それだということが分かった」

 

 触ってみろ、と言われたバナージはそのペンダントに触れる。そして何故かバナージは、それとアレを重ねた。

 宇宙を駆ける純白の彗星。あの日、導かれるように出会った巨大な白い体躯と。

 

「『ユニコーン』」

 

 瞬時に彼はパワードスーツ、ISを纏っていた。

 その身は純白。頭部にはブレードアンテナ。それは装甲の色と全身のシルエットを持って一角獣を思わせる。

 装甲の継ぎ目からはちらちらと赤の光が漏れる。それはサイコフレームの発光。何故光るのか誰も分からない、けれど確かに光を発している。

 バナージのバイザーに隠された視界は360度。彼は今までそれをなんとなく、で知覚はできていたがそれとは違う。全く別次元の視覚。

 

「ほ、本当に」

「全く。面倒なことをしてくれる」

 

 自分を連れてきた二人の女性が驚いた声を出しているのをバナージは鮮明に聴きとった。そして更に同じ空間でISを整備していた女生徒すべてがISを起動させた彼に注目している。

 しかしながら、それの視線よりも自らの直感が動いた。

 

「応えろ、『ユニコーン』!」

 

 それは突如始まった。バナージの目の前には『NT-D』の文字が一瞬浮かび上がり、そしてキィン、と金属が共鳴するかのような音が頭に響いた。

『ユニコーン』を構成する装甲。それがスライドを始める。胸部、腕部、脚部。全身の継ぎ目が割れ、先ほどまで少ししか見えなかったサイコフレームの光が露出し、全身から赤の光が放たれた。

 続いて胸部、フロントアーマーも展開し、『ユニコーン』の体躯が一周り大きくなる。

 ビームサーベルのグリップが背中から肩へ、そして頭部が特徴的な変化を始めた。

 頭部に屹立していた一本の角。そしてその下にあったバナージの瞳を覆うかのようなバイザーが動き出す。

 バイザーは収納され二つの瞳に、角が割れてV状の角に。金の角が完全に開いてその変化が終わる。

 

 その姿は『ガンダム』

 この場所、時代に知るものはいない。しかしながら、宇宙世紀であるならば別の話。

 

 変化が終わり一息ついたバナージの視界には『La+』 の文字が浮かび、そして座標を示していた。直感と共に『NT-D』を発動させたが、それは正しかった。この示された座標にいけば自分がこの世界に現れた理由、そして帰る道筋も分かるかもしれない。

 

「せ、第二形態移行(セカンドシフト)を……?」

「いいや、違うな。おそらくだが、違う予感がする」

 

 千冬がそう言い終わったと同時に、『ユニコーン』は先ほどと全く逆の変化を始めた

 V字のアンテナは一本角に、デュアルアイセンサーはバイザーに包まれ、全身の赤はスライドして装甲の影に。

 もとの一角獣のフォルムへと戻った機体を見て彼女は再び口を開く。

 

「おそらく単一仕様能力(ワンオフアビリティ)だろうな。……バナージ・リンクス。とりあえず先ほどまでの話は置いておいて、お前の身の安全はこの私、織斑千冬とIS学園が保障しよう」

 

 唐突な彼女の言葉に、バナージはバイザーの下で困惑した表情を浮かべる。

 

「お前はしばらく、この学園に通うんだ。ようこそ、IS学園へ。私は歓迎しよう。型式番号RX-0『ユニコーン』、お前の専用機と共に」

 

 そして、全てが始まった。

 

 

 

 

 

 

 バナージが『ユニコーン』を纏ったこの部屋は整備科のための部屋。そこにはある少女が一人いた。

 数多くいる女子生徒中で異質な存在、自らでISを作り上げようと入学式前だというのに学園に住み着いている少女。

 彼女は偶然、その光景を見た。

 

 最初はまた男か、と思っただけだった。もう一人の男のせいで自らの手で完成させなくてはならなくなった機体。それに手を加えながらもチラチラと様子を伺っていた。

 そして、彼女は、その純白の機体が見せた『変身』に心を奪われた。格好いい、と。

 

 変身するIS、そんな世にも珍しい機体。しかもそれに乗るのは男。興味を抱くのも当然であった。なぜなら彼女は勧善懲悪のヒーロー、例を挙げるなら変身ヒーローに憧れているのだから。

 もしかしたら、と思う。彼ならば、本物のヒーローになり得るかもしれない。この世の中を揺るがす、そんなヒーローに。

 

 見たいと思った。これまで仮想上だったヒーローが、現実になるところを。彼がこの歪んだ世界に光を差してくれるところを。

 

 その日、更識簪にとってバナージ・リンクスは興味以上の対象となった。

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