中央共通暦268年15月
人民共和国首都ポーコ
統一人民委員会館 人民委員長室
「同志委員長、クラムアン帝国の元帥が親衛軍によって処刑されたようです。」
葉巻をふかしながら、ユラユラ椅子で揺れていた老年の男は、部下と思わしき中年の男にそう報告され、葉巻を灰皿へ放り口を開いた。
「残念だ...彼にはまだ利用価値があったというのに...だが、彼が最後に送ってくれたクラムアンの軍配置は、ありがたく使わせてもらおう。同志秘書官、さっそく宣戦布告の準備をしてくれ、あぁそれと宣戦布告は我が軍が攻撃を開始する5分前にしてくれたまえ。」
「同志委員長閣下、了承いたしました!直ちに準備に取り掛かります。」
秘書官はソレを聞き、待っていましたとばかりに準備に取り掛かる為、委員長へ一礼し部屋を出ていく。
それを眺めながら人民委員長は、自らの机の引き出しを開け中から一枚の古ぼけた写真を取り出した。
「あぁ...私の...我が親愛なる古き者よ...貴女様を必ずや、あの邪悪な蛮人共から解放して差し上げます...必ず...必ず!」
人民委員長は先ほどまでの、秘書官が居た時とは打って変わって、恍惚とした表情を浮かべながら写真へ向けて、何かにとりつかれたような気味の悪い声で誓いかけた。
=========数日後========
「我々...ルカーロ人民共和国は、これより邪悪で粗暴なる"クラムアン帝国"へと、宣戦を布告することを此処に広く宣言するものとする。全共和国人民は帝国の圧政に苦しむ数億の諸民族を、解放する事を統一人民委員会委員長の名において、確約する事を誓う!」
「・・・だが、クラムアン帝国はその邪悪なる統治でもってして、強固な抵抗をしてくるだろう、しかし!心配することはない!人民の解放者である我々統一人民委員会とその人民委員を選出した我々共和国人民の団結をもってすれば、必ずや極悪非道のクラムアン帝国は人民に膝を屈するのは間違いない!」
「えー以上、同志統一人民委員会委員長の宣戦布告及び全人民への宣言のお言葉でした、同志委員長ありがとうございます。」
ラジオ局のアナウンサーはそう人民委員長へと、感謝の言葉を述べた。
それに対して、人民委員長はにこやかに笑いかける。
「いやいや、同志アナウンサーこそ本日はありがとう。感謝するよ。では、私は次の仕事があるので後は任せたよ?」
そう言い残すと、人民委員長は足早にラジオ局を後にした。
========十数日後=======
人民共和国首都ポーコ
人民軍総司令部前
「これはこれは、同志人民委員長!わざわざご足労ありがとうございます。」
人民委員長へそう声を掛けたのは、大仰にポーズを取りながら近づいてくる人民軍大将であった。
「おや、同志ダールフォ大将、軍の状況はどうかね?順調にクラムアン軍を計画道理に殲滅できているかね?」
という、人民委員長の問いかけに、少々気まずそうにだがハッキリと、ダールフォ大将は人民委員長へこのように回答。
「残念ですが、同志人民委員長殿、一部の地域で帝国軍の予想以上と言える頑強な抵抗に会い、かなりの損害が出ているようです。ですが、作戦全体としてはほぼ問題なく遂行中であります。」
「ふむ...うん?ほぼ かね?実際の所、どれだけの損害が出ているんだね?」
ダールフォ大将の回答を聞き、訝しむように詳細を人民委員長は聞き出そうとする。
「はい、それが...既に歩兵4個師団が壊滅、2個装甲連隊が半壊しており、現在これ等の部隊を再編中であります。」
「4個師団と2個装甲連隊もかね!?帝国軍にはまともな配備がされていなかったのではないのかね?ダールフォ大将、これは一体どういうことだい?ことによっては...人民法廷で君を裁かないといけないことになるが、しっかりと教えてくれるかね?」
其れを聞き、一気に表情が強張り汗がどっと出始めたダールフォ大将は、それでも尚震えながら一語一句間違えないように、慎重に慎重に人民委員長へ返答した。
「はい...同志人民委員長、敵戦力は事前の見積もりでは、7個歩兵師団・1個装甲師団と見られていました、ですが国境を実際に突破し十数km程前進した地点で、複数の要塞とそれを守備する推定12~17個師団と接敵、何とか要塞は突破出来ましたが、突破するために2個装甲連隊が半壊、歩兵4個師団もこの戦い迄で損耗してしまい、現在後続部隊と合流し再編中であります。」
それを聞いて、人民委員長は僅かに表情を曇らせ、帝国の方向を恨めしそうに睨み付けたのであった・・・
======数分後=======
人民委員長は大きく息を吐き、ダールフォ大将をこれから肉になる家畜を見るような目で見ながら、口を開く。
「ダールフォ大将...残念だよ、君がそこまでに指揮能力が欠如していたとはね...ダールフォ大将...あなたを、国家資源の浪費及び無謀な作戦で人民の生命を無価値に打ち捨てた罪で解任する、後は人民法廷で判決を下そうじゃないか。」
「い...委員長!どうか...どうか人民法廷だけは!人民法廷だけはお許し下さい!私には、まだ価値があります!どうか...!」
人民委員長の発言を聞き、大将は打ちひしがれ大泣きしながら、惨めに這いつくばり人民委員長のズボンへと縋りついたが。
「私に触らないでください、薄汚い恥知らずな人民の敵が、人民の労力によって作られた私のズボンを汚すなど言語道断です、恥を知りなさい恥を!」
と、罵りながら元大将となった憐れなダールフォの頭を革靴で踏みつけ、護衛の兵にダールフォを一時的に収監するために引き摺り上げさせ、服の胸に付けられていた勲章を無慈悲にはぎ取った。
「この勲章は、人民の裏切り者であるあなたには、相応しくないですね、同志そこの裏切り者を速やかに独房へ、私は人民法廷の用意がありますので。」
そう言い残し、ズルズルと蹴とばされながら引き摺られて行くダールフォを、蔑む目で見つつ自らも人民法廷の用意の為去っていった・・・
=====某所======
???「あらら、かわいそ...自分の酷い作戦とも呼べない物を最低レベルとはいえ、マシな作戦に作り直した優秀な人を勿体ない...にしても、あの子何処かで私にあったっけ...まぁどうでもよいかな...んふふふふ」