転生したら……ウマ娘だった。   作:シラネ

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5話 正月土手ラン

どうも、トキノメグルです。

 

突然ですが、私達一家は毎年正月に父さん母さん各々の実家に帰省し、宴会を開くのですが、父さん側の家族……というか父さんのお姉さん、つまりは私達の伯母にはほとんど会った事がありません。

 

その人は中央トレセン学園で働いているそうなのですが、毎年とても忙しく、特に年末年始も学園内で残る生徒の為に奔走しているようなのです。

 

 

……なんとなく分かってはいるけど。

 

 

直で会えるのを楽しみにしています。

 

 

 

 

……そんなこんなで5歳になっての正月です。めっちゃ時が経つのが速いですね。数年分の行事はどこに行ったのでしょうか?(あと、書いている日全然正月関係ないけどby作者)

 

 

 

……

ある屋敷の座敷

 

「ミドリィ……メグルゥ……!……ひっく!ちょっとこっちにこ~い!」

 

「パパ、酔ってるね。メグルどうする?」

 

「行かなかったらめんどくさそうだから行こっか。」

 

 

二人揃って酔っぱらいの前へ座る。すると突然頭を片手ずつで大きく撫でてきた。

 

「お前たちは俺には出来すぎた娘達だよ~!ミドリはすっげぇ速いし。メグルも速いし、頭良すぎて怖いぐらいだし!あぁ娘が立派だよ~!」

 

「酔いすぎだよ!……でも、確かに孫たちは立派だねぇ。ありがとうね。立派に育ててくれて。ダイヤちゃん。」

 

「いえいえ!そんな大層な事は……!」

 

「何言ってるの。大層な事だよ。現に凄い良い子達じゃないか。」

 

「……そうですね。」

 

祖母が嫁であるダイヤを褒め、ダイヤは子供である娘達を優しく見つめていた。

 

……

 

「ねぇ、少し退屈になってきたから外で競走しない?」

鹿毛の従姉が退屈そうに尋ねてきた。

 

「良いよ!メグルもやるでしょ?」

 

「まぁ、そうだね。身体鈍っちゃいやだし。」

 

「メグルちゃん、大丈夫?」

 

「何が?」

 

「だって、まだ5歳でしょ?こんなことあれだけど、私達11歳だから……。」

 

年齢の事を考えて言ってくれているのか。実はこの従姉は正月になるとほぼ毎回インフルエンザの影響で正月に来れなかった子で私が既に1歳半ぐらいにはある程度ならば姉さんに置いていかれないぐらいには走れていたのに気づいていないのだ。

私が大丈夫だと言おうとすると……。

 

「レイン、私の妹を侮ってはいけない。普通に強いよ。」

 

「え?そうだったの。ごめん。」

 

「姉さんが言うほどでもないと思うけどね。」

 

そう言った途端、従姉のレインの態度が急変した。

 

 

「ミドリ。」

 

「?」

 

「この子、ウチの妹にしちゃダメ?」

 

「ダメだよ~。気持ちは分かるけど~。」

 

 

何のこっちゃ。

 

 

 

 

……

 

(実況:……翔真)

(解説:……翔真)

(スターター:ダイヤグリーン)

(判定・運営:アメノホマレ[叔母])

 

そんなこんなで近くの土手のランニングコースにやってきました。

各自アップをし、このクソ寒い中何故かある体操服を来てゲート代わりのライン上に集合し、スタートを待ちます。

 

1番 トキノレイン 先行

 

2番 トキノメグル 逃げ

 

3番 トキノミドリ 差し

 

 

 

 

【EX 土手 ダート ランニングコース2000 2000m 晴 良 直線】

 

 

晴れ渡る空、この酷く冷たいレースコースを暖める絶好のレース日和となりました。

一番人気を紹介しましょう。

3番 トキノミドリ

二番人気はこの子。

1番 トキノレイン

威風堂々と構える三番人気。

2番 トキノメグル

下剋上は起こりうるのか。

 

ゲートイン完了。出走の用意が整いました。

 

 

……

 

 

 

スタート!

 

各ウマ娘、綺麗にスタートを切りました。

 

先頭は、トキノメグル

続いて、トキノレイン

最後尾、トキノミドリ

 

 

トキノメグル、快調に飛ばしていきます。

3バ身後ろ、トキノレイン

続いて、トキノミドリ

 

 

トキノメグル、ペースが速い。

メグル~!頑張れ~!

「「おい!解説!」」

 

スタミナを切らさないか心配です。

 

残り1000mを通過!

 

依然先頭は、トキノメグル

4バ身後ろ、トキノレイン

すぐ後ろ、トキノミドリ

 

 

トキノメグル、掛かっています。

 

残り400mを通過!

 

土手の(最後の)直線は短いぞ!後ろの娘達は間に合うか?

先頭は、トキノメグル!速度を更に上げた!?

トキノレイン、トキノミドリ、上がってきます。

 

トキノメグル、速い、速い、独走だ!

 

 

……

 

トキノメグル、今、一着でゴールイン!

 

5歳が11歳に逃げで勝った!奇跡だ!下剋上だ!

 

二着はトキノミドリ

三着はトキノレイン

 

よく頑張った!

 

 

……

 

Ⅰ 2

5

Ⅱ 1

クビ

Ⅲ 3

 

タイム 2:02.5

……

 

 

「「マジで勝てんかった……。」」

 

「最後、5バ身差って……。」

 

「ウチの妹、化けもんやわ。あれで5歳なのが分からん。」

 

「……一応、私もミドリも同学年どころか上級生と比較しても速い方だよね?」

 

「うん。逃げであそこまで加速できるのか……。」

 

「「……鍛え直さないと。」」

 

 

……

 

家に戻り、さっきのレースの反省会が行われた。

 

 

「……チェッカーやるか?皆。」

 

「チェッカー!?2種類の駒が各々12個あるあのゲームの事?やるやる!」

 

「そう!それ!……って違う!ステータスチェッカー!自分の強さを数値化又はランク化させて見るの!」

 

姉さんが目を爛々とさせ、ボードと駒を即座に取りに行こうとしたが、父さんは突っ込みながら止めた。

 

「「あれ、嫌なんだよね~。」」

 

「どうして~?」

 

「自分がどのレースに適しているかやら自分がどれだけ弱いかを超的確に言い当ててくるんだよ。本当に嫌だったなぁ……。」

 

「仕方ないだろ?あれを見ないときちんとトレーニングが上手くいっているかをレース以外で判断しにくいんだから!」

 

「やるけど……どうするの?」

 

「これを使う。」

 

そう言いながら父さんが出したのは見た目血圧計の機械だった。

 

「穴の中に腕を通して血圧を測定するみたいにする。すると、この機械は理屈は知らんが自分の強さをステータスでは5つの項目、適性では10項目データ化してくれ、また、総合的な評価をも付けてくれる謎の極めて優秀な測定器なんだ。」

 

「本当に謎だね。」

 

「トレセン学園がトレーナーに無料で貸し出してくれるものなんだが、これは姉貴からくれたものなので問題なし。壊さないように使ってくれ。」

 

「伯母さん最近ホントに会わなくなったね……。」

 

「そのうち会えるよ。さあ、誰から使う?」

 

「じゃあ、私から!」

 

「ミドリの次は私!」

 

最後は私か。

 

 

……

 

 

トキノミドリ

 

バ場適性

 

芝 C

ダート C

 

距離適性

 

短距離 B

マイル B

中距離 C

長距離 D

 

脚質適性

 

逃げ E

先行 C

差し D

追込 G

 

ステータス(MAX1200)

 

スピード 176 F+

スタミナ 95 G+

パワー 185 F+

根性 103 F

賢さ 92 G+

 

スキル

 

固有

Greens Ran Lv.1

 

総合

 

E 620

 

 

……

 

「結構、頑張っているじゃないか。」

 

「そう!?……でも、もっと頑張らないと!」

 

「作戦は先行の方が良いみたいね……。今度は先行ではしってみよっか。」

 

(あれで高いの……?メイクデビューのキャラ以下じゃん……。)

 

 

……

 

トキノレイン

 

バ場適性

 

芝 B

ダート D

 

距離適性

 

短距離 F

マイル E

中距離 C

長距離 C

 

脚質適性

 

逃げ G

先行 B

差し B

追込 F

 

ステータス (MAX1200)

 

スピード 167 F+

スタミナ 148 F

パワー 153 F+

根性 120 F

賢さ 114 F

 

スキル

 

固有

フォール・レイン Lv.1

 

総合

 

E 658

 

 

……

 

「あれ、私の方が評価点は高いや。」

 

「あくまで、ステータス上ってだけだから、色んな要因が重なるレースでは数字だけでは勝負にならないよ。でも君もよく頑張っているね。」

 

「レイン、このまま頑張りましょうね!」

 

「そうだね!」

 

「さて、最後はメグルのだが……。」

 

……

 

トキノメグル

 

バ場適性

 

芝 C

ダート B

 

距離適性

 

短距離 C

マイル C

中距離 B

長距離 B

 

脚質適性

 

逃げ C

先行 C

差し C

追込 C

 

ステータス

 

スピード 201 E

スタミナ 214 E

パワー 183 F+

根性 358 D+

賢さ 814 A

 

スキル

 

固有

オールターフ Lv.1

 

総合

 

D 3005

 

……

 

 

「「「「「……。」」」」」

 

全員が静まり返った。

 

 

 

「……なんで?」

 

静まった空間を切り裂くように姉さんがこぼす。

 

……まずい。嫌な予感がする。

変というかこんな気持ち悪い成績を見て嫌悪感を抱いてしまったか?

家族には嫌われたくなかったのだが……。

意を決し、今から言われるであろう罵声を耐えようと構える。

 

 

 

「……なんで、こんなに賢いの!?いつ勉強してたのよー!!」

 

……そこかよ。

 

「これは……。負けるわけだわ。……賢さ。」

 

((現役時代の私達の賢さより遥かに高いんだけど。))

 

「ほえ~メグルちゃん、凄いねぇ~!」

 

(なんで、こんなに適性が高いんだ!?)

 

父さんだけがきちんと分析していた。

 

 

……てか、賢さだけでDになってないかこれ?(流石にそれはないか……。)

 

 

 

 

……

 

 

「いやー!目が覚めたわ。さっきのメグルのチェッカーで。」

 

「あの成績だったら飛び級できるんじゃない?」

 

ニシノフラワーみたいになれってか?……ありかも。無理だろうけど。

 

「……なんか、本当に出来そうなステータスだったな。」

 

うそやろ?てか、日本って飛び級制度普通にあったっけ?無いでしょ?

 

「小学校からかぁ。出来るの。」

 

へ?

 

「実はウマ娘科なら非常に優秀な成績を修めた生徒に限り飛び級が出来るのよ。」

 

「ウマ娘科?なにそれ?」

 

「小学生からは人間をヒト属とウマ娘属に分けて学習させるのが義務なの。じゃないと特に体育の時にヒト属の子がウマ娘の元からある強力な力によって怪我をしかねないからなのよ。」

 

確かにそうだ。ウマ娘の持つ力は絶大でそれを普通の一般人に振るえば良くて大怪我だろう。

 

「そして、大抵のウマ娘はスポーツ枠として学校に入学するの。だからスポーツ……というか足が速ければその時点で成績が上がるからあんまり学年が関係ないのよね。」

 

「ただ、勉強はしていないと飛び級制度の条件にある一定の学力を所有しているに反するから勉強は大事なんだ。」

 

「確か、最年少で10歳でトレセン学園中等部に入学した娘がいたかな?ウマ娘はスポーツ推薦枠として普通の小学校なら小学校内での飛び級並びに学校間での飛び級が出来るのよ。」

 

えぇ……。小4で?あと、その理論だと小1でもやろうと思えば中1になれるってことですやん。

 

「ただ、賢さがAって……。一体本当にどこで色々な事を知ったのかしら……?」

 

皆が不思議そうに私を見つめる。

流石にまだ前世の高校生から転生してきましたなんて言いたくないので、

 

「姉さんの学校の教科書を見てたらなんか、分かったから。……それだけ。」

 

 

そう言うと、また皆が黙り込んだ。

 

 

……

 

正月が終わり、早くてもう8月。

 

相変わらず保育園は退屈で仕方がない。

ん?時間を飛ばしすぎ?

何を言っているんだねモルモット君。

私は【トキノメグル】。時が廻り、経つのは早いに決まっているじゃないか!はっはっは!

 

……冗談は良いとして、最近、家で困っている事があるんです。

 

 

「お願い!宿題、教えて!」

 

ええ……。

 

 

ミドリ姉さんが夏休みに入ってからずっと宿題を放った結果、残り1週間で追われておられます。

 

両親はやれやれ……。とかあまり怒らない様子。

そして、とばっちりは急にやって来て、

 

「この算数ドリルの問題が分からないの!教えて!メグエモン~!というか、解いて!メグエモン~!」

 

どら焼き食いのロボットネタは良いとして、小学校高学年が保育園児に算数の問題を尋ねてくるなんてどういう了見ですか!?

 

「姉さん、宿題は自分でやるもんだよ……。あと、私、保育園児だよ?小学校の問題なんて分かんないよ。」

 

「異議あり!じゃあ、あれは何!?あの赤くて分厚い何が書いているかさっぱり分からない大量の辞書みたいなのは!?」

 

成る程、覚えていやがったこの姉さん。

このブツは赤本っすね。解きたいから母さんに頼み込んで買って貰ったものです。

因みに母さん曰く全く分かんないそうです。父さんも頑張っていましたが、流石に全問解くのはキツかったそうです。

 

……全問解いた?

 

「私、保育園児だから、小学校の問題分かんないもん!だけど暇だから高校の問題解くもん!」

 

「ワケワカンナイヨー!」

 

「Good luck.」

 

「クソッタレー!!」

 

泣きながら机にかじりついて必死に宿題をやっていく姉さん。

 

結局終わったのは始業式があった次の日だったそうで。


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