「見えちゃう」男の物語   作:キラ

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藤宮麗華を探せ

「そろそろ完全下校時刻だな……」

 

 生徒がいなくなってしまうと聞き込みもできなくなるし、今日はここらで打ち止めか。

 残念ながら、藤宮さんに関する情報を手に入れることはできなかった。長期戦は覚悟していたから、予想外ってわけでもないが。

 

「大丈夫かい? 疲れてるように見えるけど」

 

 佐城さんが心配そうに声をかけてくる。周りに人がいるので、言葉ではなく親指を立てることで『大丈夫』と返事をした。普通に会話すると、独り言を連発しているように見えて気味悪がられる可能性がある。

 ただ、結構息があがっているのは事実だ。バス代ケチって走り回ったのは失敗だったかな。

 そんなことを考えていると、ポケットの中の携帯がぶるぶると震え始めた。電話をかけてきたのは……先ほど連絡用にと番号を交換したばかりのクラスメイトだ。

 

「もしもし」

『三上くん、そっちはどうだった?』

「駄目だったよ。やっぱそう簡単には行かないみたいだ」

『そっか……こっちも手がかりなし。いくつか学校まわって聞いてみたけど、知らないって』

 

 佐天さんの方も、役立ちそうな情報はなしか。

 

「今日はもう終わりにしよう。ありがとな、おかげで予定以上にたくさんの場所を探せた」

『お礼言うのは、無事藤宮さんを見つけてからでいいよ。じゃ、また明日』

「また明日」

 

 通話を切り、携帯をポケットにしまう。なんとなく夕焼け空を見上げると、カラスがカーカー鳴きながら飛んでいるのが目に入った。

 

「帰るか」

 

 さっさと寮に戻って横になろう。少し休んでから晩飯だな。

 

 

 

 

 

 

 俺の住んでいる男子学生寮は、柵川中学から歩いて15分ほどのところにある。うちの学校の生徒専用の寮というわけではなく、家賃が安い場所を求める学生が集まっている。お金に余裕のある人は、もっと設備のいいところを選ぶというわけだ。

 

「男のひとり暮らしにしては、きれいに片付いてるね」

「昨日掃除したばかりなんで」

 

 いつ幽霊が現れるかわからない以上、ある程度部屋の清潔感は保っておかなければならない。死んでいようが生きていようが、お客さんを家にあげることに変わりはないからだ。

 

「ふいー」

 

 鞄と上着をその辺に放り投げ、フローリングの床に倒れこむ。ほんのりひんやりしていて気持ちいい。

 

「テレビつけるんで、見たいチャンネルになったら教えてください」

 

 寝ころんだまま近くにあったリモコンを手に取り、テレビの電源を入れる。

 

「あ、じゃあこのニュース番組にするよ」

「別の番組見たくなったら声かけてくださいね」

 

 佐城さんが今日のニュースを確認している間、俺はちょっと休憩だ。

 

「………」

 

 携帯を取り出し、連絡帳の画面を開く。

 サ行に追加された名前を見て、そういえば女子の連絡先を登録したのは数年ぶりだな、なんてことに気がついた。

 

「佐天涙子さんか」

 

 まさか今になって霊が見える人に出会うなんて、本気でびっくりした。しかも人探しを手伝ってくれるなんて、俺としては本当にありがたい。

 付け加えるなら、佐天さんは見た目もいい。主観だが、クラスでもトップクラスにかわいいと思っている。しかも性格良し、料理もできるっぽい。

 そんな子の電話番号をゲットできたのは、ひょっとするとかなりラッキーなのではないだろうか。

 

「舞い上がりすぎだな」

「ん? 何か言ったかい」

「いえ、独り言です」

 

 番号交換はあくまで成り行きでそうなっただけだ。向こうが俺と仲良くなろうとしたわけじゃないんだから、そこのところはわきまえておかないと。

 そう心の中で言い聞かせていると、右手に持った携帯が着信音を鳴らした。メールが送られてきたらしい。

 

『ちゃんと送れてるかな? 佐天です。電話はしたけど、メール書くのは初めてだね』

 

 噂をすればなんとやらで、送り主は佐天さんだ。

 

『中学生になってから男子のメルアド登録したの、三上くんが初めてなんだよね。というわけで、これからよろしくお願いします!』

 

 ……そ、そうか。初めてなのか。

 

「三上くん、何にやにやしてるんだい?」

「に、にやにやなんてしてませんよ?」

 

 いかん、動揺で声がうわずってしまった。落ち着け落ち着け。

 しかし、思わずドキッとするような内容だったな……佐天さん、女子力高い。

 

「よし、夕飯作ろう」

 

 時計を見ると7時15分前。ちょうどいい頃合いだろう。

 気持ちを切り替えるついでに起き上がり、ぱぱっと室内着に着替えて台所へ。

 冷蔵庫の中身を確認し、献立を考える。今日は疲れてるし、手軽に作れるものにしたい。

 

「面倒だからあれにするか」

 

 まずキャベツ、玉ねぎ、卵を冷蔵庫から取り出す。

 フライパンにサラダ油を垂らし、コンロのスイッチオン。

 適当な大きさに切ったキャベツと玉ねぎを投入。塩こしょうをアクセントに添える。

 火が通ったら、かき混ぜた卵を上からかける。野菜と絡み合うようにしっかりとまぜまぜしましょう。

 卵が固まったら火を止めて、フライパンの中身を皿に移す。仕上げに市販の焼肉のタレをお好みの量ドバババ。

 

「野菜炒めの完成。いただきます」

 

 ご飯を茶碗によそって、テーブルに座って手を合わせる。

 

「………」

「なんですかその妙に生ぬるい視線は」

 

 食卓について来た佐城さんがじっと見つめてくる。なんだか非常に食べづらい。

 

「いや、僕と似てるなーって」

「似てる?」

「妻と離婚した後は、食事を用意してくれる人も当然いなくてね。仕事で疲れて家に帰って、コンビニ弁当ですまそうと考えるもそろそろ冷蔵庫の中の物を消費しないと腐ってしまう。そんな時は、野菜炒めと焼肉のタレに頼ったものさ。親近感を覚えるよ」

「………」

「物音がないのが寂しいから、テレビを意味もなく音量大きめで流したりもしたなあ」

 

 親近感?

 それってつまり、まだ中1の俺が、40歳のあなたと同じレベルのおじさん臭い生活を送っているということでしょうか。

 だとしたら、さすがにそれは認められない。

 

 

 

 

 

 

「急にコンビニに来て、どうしたんだい」

「ちょっと買い物です」

 

 野菜炒めを完食後、俺は近くのコンビニに足を運んでいた。俺から離れられない佐城さんも、当然一緒について来ている。

 なぜここに来たのか。それは、若者特有の華やかさというものを佐城さんに見せつけるためだ。

 コンビニの中のあるスペースに向かった俺は、目的のブツがきちんと残っていることにホッとする。

 

「あったあった」

 

 目の前の棚に置いてあるのは、どこのコンビニでもよく売っている2個入りのショートケーキのセットだ。

 夕食後のデザートとして、ちょっとこじゃれたスイーツを食べる。フフフ、これはおっさん臭くない。完璧だ。

 

「本当に僕と同じだね。頑張った自分にご褒美って、たまにひとりでケーキ買ってひとりで食べるんだよ」

「………」

 

 じ、実はケーキなんて最初から買うつもりなかったんだよな。結構高いし、思いつきで買ってたら家計に響くし……。

 結局、ハイチ○ウ青りんご味だけ買って帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 それから風呂に入って宿題して、佐城さんと一緒にバラエティを見ていたら、いつの間にか時刻は11時になろうとしていた。

 

「そろそろ寝ます。テレビ消すけど、いいですか?」

「ああ、かまわないよ。ところで、幽霊は眠れるのかな」

「目を閉じてたらちゃんと寝られるみたいです。理屈はわかりませんけど」

「そうか。それなら夜中に起きっぱなしで退屈することもなさそうだね」

 

 今までの経験に基づく説明をしながら、俺はベッドの中にもぐりこむ。目覚ましをセットすることも忘れない。

 佐城さんの方をうかがうと、フローリングの上に敷いたカーペットを寝床に選んだらしく、ごろんと寝転がっていた。もっとも、幽霊なのでふわふわ浮いているのだが。

 

「……ありがとう」

「えっ、いきなりなんですか」

 

 電気を消して目を閉じようとしたところで、突然佐城さんにお礼を言われた。

 

「もう死んでいる僕のために、一生懸命麗華を探してくれている。感謝しないはずがないよ。君はいい子だ」

 

 優しい声で語りかけられる。ちょっとくすぐったい気分になった。

 

「いい子とか、そういうんじゃないですよ。俺があなたの願いを叶えようとするのは当たり前です。これから先、ずーっとそばに中年のおじさんがいる生活は勘弁ですから」

「はは。そうはっきり言われると困るな」

「いい子って言うんなら、佐天さんの方がずっとふさわしいでしょう。あっちは本当に全然関係ないのに手伝ってくれてるんだから」

「そうだね。彼女もいい子だ」

 

 今度こそ目を閉じる。体が疲れているからか、すぐに激しい眠気が襲ってきた。

 

「おやすみなさい」

「おやすみ」

 

 近場の学校はだいぶめぐったし、明日は素直にバスを使おう――

 

 

 

 

 

 

「藤宮麗華さん? うーん……すまない。聞いたことがない名前だ」

「そうですか。ありがとうございます」

 

 翌日の放課後。

 昨日の同じように他校を訪れ、生徒に尋ねてまわることを続けているが、相変わらず藤宮さんに関する情報は手に入らない。

 

「そろそろ別の学校に行くか……」

 

 同じ学校でなくとも、彼女がどこに在籍しているのか知っている人さえいてくれればいいんだけどな。

 ここでの捜索を諦め、近場のバス停へ向かおうとしたその時。

 

「お」

 

 佐天さんから電話がかかってきた。何かあったのだろうか。

 

「もしもし」

『見つかったよ!』

「え?」

『藤宮さんの通ってる学校がわかったの!』

 

 いきなり興奮気味にまくしたてられたので、佐天さんの発言を理解するのに少々時間がかかってしまった。

 

「おお、マジでか!」

『マジだよ! 初春の知り合いに聞いてみたら、学校の先輩にいるって教えてもらえたの』

 

 初春さんって、確かうちのクラスの頭にお花かぶってる人だよな。答えにつながるピースは意外と近くにあったってことか。

 なんにせよ、ようやく事態が前に進みそうだ。

 

「それで、どこの中学なんだ」

 

 ここから遠くないなら、すぐにでも向かいたい。

 ……だが、返ってきた答えは、ちょっと俺の予想を超えたものだった。

 

『常盤台』

「常盤台か……常盤台?」

 

 ちょっと待て。常盤台って、あの常盤台だよな。

 

「常盤台って、ここから遠いのかい?」

 

 様子をうかがっていた佐城さんが尋ねてくる。俺の反応がよくないものだったためだろう。

 

「いや、遠くはないです。同じ学区内だし、むしろ近い方だ」

「それなら問題ないように思えるけど」

「……能力の優秀な人しか入学できない、超お嬢様学校なんですよ」

 

 確か、あそこは学舎の園というお嬢様専用で男子禁制の区域にあるんだよな。で、寮は学舎の園の外と内の両方に存在する。

 藤宮さんが外の寮に住んでいるならまだいいが、内側の寮にいる場合は最悪だ。ただの男子中学生である俺が入れるはずがない。

 

『三上くん、聞いてる?』

「ん? ああ、ごめん。ちょっと佐城さんと話してた。でも参ったな、よりにもよって常盤台とは」

 

 うっかり放置してしまっていたので、慌てて佐天さんとの会話に戻る。

 

『心配いらないよ。初春の知り合いの常盤台の人……白井さんって言うんだけどね。藤宮さんと会う約束取り付けてくれるって』

「……おいおい、至れりつくせりだな」

 

 どうやらその白井さんはすごく親切な人らしい。こっちとしてはありがたいと言うほかない。一気に希望が見えてきたんだから。

 

「そういえば、今どこにいるんだ?」

『風紀委員の支部。初春も白井さんも風紀委員だから、ちょっとだけお邪魔させてもらってるのだ』

 

 ちょっぴり自慢げに語る佐天さん。大手柄だから全然許されるけど。

 

『日付とか決まったら、また連絡するね』

「頼んだ」

 

 携帯をしまって、佐城さんの方に向き直る。

 

「なんとかなりそうです」

「本当かい!?」

「確定じゃないですけど、さっきまでよりはずっと可能性が出てきました」

「そ、そうか……本当に、麗華に会えるかもしれないのか」

 

 顔をほころばせる佐城さんを見ていると、こっちもなんだかうれしくなってきた。

 あとは、白井さんがうまくやってくれることを祈るとしよう。

 

 

 

 

 

 

「まさか次の日に会えるとは」

「あたしもびっくりだよ」

 

 放課後、俺たちは待ち合わせ場所に指定された喫茶店にいた。

 一日で約束を取り付けた白井さんもすごいし、翌日に会ってくれる藤宮さんもすごい。

 佐城さんと出会ったのが月曜で、今日が木曜。かなり早く目的を達成できそうだ。

 

「白井さん、あそこです」

 

 聞き覚えのある声がしたので振り返ると、お花を乗せた女子とツインテールの女子が俺たちの席に歩いてきた。

 

「あれ、初春も来たんだ」

「最初は帰るつもりだったんですけど、気になって来ちゃいました」

 

 えへへと笑う初春さん。で、初めて見るこっちの女子が白井さんか。

 

「ごきげんよう、佐天さん。そして、そちらの殿方が三上さんで間違いありませんわね?」

「は、はい。初めまして、三上侑生です」

 

 俺と同じ1年だって聞いてるけど、気品のようなものを感じさせる言葉遣いに面食らってしまった。さすがはお嬢様といったところか。

 

「藤宮さんは所用で少し遅れるそうですので、わたくしだけ先に参りましたの」

「そうなんですか」

「白井さんとはお店の前でばったり会ったので、一緒に入って来たんです」

 

 白井さんの言葉を聞いて肩を落とす佐城さん。もう少しだけ待ってください。

 ……しかし、女子3名に男子1名か(佐城さんもいるけど、他の人に見えてないのでカウントはしない)。

正直落ち着かないというか、どういう態度をとればいいのかさっぱりわからない。とりあえず注文していたレモンスカッシュをちびちび飲んでごまかそう。

 

「三上さん」

「はい?」

 

 早く藤宮さん来ないかなーと考えていると、白井さんに声をかけられた。

 

「頑張ってください。同じ情熱的な恋をする者同士、応援していますの」

 

 ……え、恋?

 

「一目惚れは何も悪いことではありませんの。佐天さんからあなたの心意気を聞いたからこそ、わたくしは今日の場をセッティングしたのですから」

「わ、私も応援してます。いい結果になるといいですねっ」

「は、はあ……?」

 

 おかしいな。白井さんと初春さんの言ってることが全然理解できない。

 

「あ、あはは……」

 

 ふと隣をうかがうと、乾いた笑い声を出す佐天さんの姿が。

 

「あの、これどういうこと?」

「い、いや、そのね? 白井さんに、三上くんが藤宮さんに会いたがってる理由を教えないと紹介しないって言われちゃって」

 

 佐天さんを連れて少し席を外し、事情を尋ねる。

 

「本当の理由言っても信じてもらえないだろうから、なんとかうまい話を考えようとしたのよ」

「それで」

「街中で藤宮さんを見かけた三上くんが一目惚れして、友達との会話を聞いて名前と学年を知った。寝ても覚めても藤宮さんのことが頭から離れない三上くんは、どうしても彼女に会いたくていろんな学校を探し回っていた……そういう話にしちゃった」

「んなっ……!?」

 

 開いた口が塞がらない。俺の知らない間にとんでもないことになってるじゃないか。

 

「ごめん! どうしても他に理由が思いつかなくて」

「……まあ、過ぎたことをどうこう言ってもしょうがない。理由を言わなきゃ、藤宮さんに会わせてもらえなかったわけだし」

 

 申し訳なさそうに手を合わせる佐天さんを見ていると、責める気にもなれなかった。実際ここまで来れたのは彼女のおかげなんだから、多少のことはなんとかしよう。

 

「どこに行ってたんですか?」

「たいしたことじゃない」

 

 席に戻ると初春さんに質問されたが、テキトーにごまかしておく。

 

「白井さん。今日は本当にありがとうございます」

「いいんですのよ。藤宮さんは気の良いお方なので、頼みごとをするのもさほど苦労いたしませんし」

「そうなんですか」

 

 どうやら性格の悪い人ではないらしい。白井さんの評価を聞いた佐城さんも満足気に頷いていた。まあ、父親が物腰柔らかいしな。

 ……しかし、俺はその人に惚れている設定らしい。まだ恋なんて経験したことないんだが、どうやら俺自身が気づかないうちに初恋をしてしまったようだ。

 一目惚れという話なので、まだ見ぬ藤宮さんは俺の好みの容姿ってことになるんだが。

 

「………」

 

 佐城さんの顔を見つめる。人の良さはにじみ出ているんだが、顔立ちが整っているわけではない。若干猫背気味なせいで覇気も感じられない。

 この人の娘、ということになると……うーん。

 

「あ、いらっしゃいましたわ」

 

 白井さんの言葉に、全員が視線を入り口に向けた。いよいよ待ち人来たりだ。

 とりあえず何を話すかは考えてあるから、変に緊張せずに口を動かせば大丈夫なはず。

 探し求めた佐城さんの娘さん、はたしてどんな人なのか――

 

「ごめんなさい。ちょっと先生に捕まっちゃってて」

 

 謝罪の言葉とともにやって来たのは、白井さんと同じ制服を着た女の人。

 栗色の髪を後ろでひとつに束ねた、いわゆるポニーテールがゆらゆらとゆれている。

 ぱっちりとした目に、小さな鼻と口。身長は佐天さんと同じくらいだろうか。ただ、胸は明らかにこの人の方が大きい。服の下からも激しく自己主張している。

 総評。

 

 か、かわいい……!!

 

「ああ……間違いない、麗華だ。大きくなったなあ、本当に」

 

 俺の隣では佐城さんが成長した娘の姿に感動していた。俺も彼女の容姿に感動していた。誰だ数分前にうーんとか言ってたやつ。

ここまでどストライクな外見の人に出会ったのは、間違いなく生まれて初めてだ。

 

「では、わたくしたちは席を外しますので」

「が、頑張ってください」

 

 ぞろぞろと席を立つ白井さんたち。……え? こっから俺ひとりなの?

 

「三上くん」

 

 佐天さんがこっちを向く。頼む、不安だから残ってくれ!

 

「ごめん、流れ的に無理。外で応援してるから、ちばりよ!」

 

 なんの脈絡もない沖縄弁を残して、最後の希望も行ってしまった。確かに『一目惚れした女の子に会いたい』という目的から考えれば、ふたりきりにしてくれたみんなの采配はナイスということになるだろう。その目的が本当ならばの話だが。

 

「あ、あのですね、えーっと」

 

 まずい。あまりに藤宮さんが美少女だったせいで、事前に考えていたセリフが全部吹き飛んでしまった。

 

「?」

 

 慌てふためく俺を見て、きょとんとする藤宮さん。その反応もすごくかわいらしい。

 

「えー……初めまして。柵川中学1年の、三上侑生です」

「ご丁寧にどうも。常盤台中学2年の、藤宮麗華です。理由はうかがってないですけど、私に会いたいって言ってくれたんですよね」

「は、はいそうです」

 

 で、この後どうつなぐ予定だったんだっけか。頭が真っ白で何を言えばいいのかわからない。わからないが何かを言わなければ、何かを……

 

「と、友達になってください!」

 

 あああ、しまった! 全部すっ飛ばして直球を投げ込んでしまった!

 

「いいですよ」

「いいんですか!?」

 

 頼んだこっちが驚くくらいの即答だった。

 

「お友達は多い方がいいですし。男の子にこんなこと言われたのは初めてなので、ちょっとだけびっくりしちゃいましたけど……でも、うれしいですよ」

 

 満面の笑みを浮かべる藤宮さん。来る者拒まず、器の広い方のようだ。

 なんにせよ、俺はこの人と友達になったというわけで。

 

「よしっ!」

「くすっ。そんなに喜んでくれるなんて」

 

 人目を憚らずガッツポーズをしてしまうくらいうれしい。

 

「……三上くん。なんだか君の喜び方によこしまなものを感じるんだが」

 

 何を言いますか佐城さん。俺はただ、あなたのために頑張っているだけです。藤宮さんと仲良くなれば、普段の生活とかも聞けるだろうし。

 

「ええと、それじゃ、少しお話ししませんか」

「はい。いつもは女の子とばかりおしゃべりしているので、ちょっと緊張しますね」

 

 よし。では佐城さんのためにいろいろ話を聞いてみよう。

 ……あくまで、あくまでついでだが、その過程で親睦を深められればなおよしだ。

 




次回もよろしくお願いします。
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