<ポンコツアグロヴァルその1>
なんやかんやあってウェールズに身を置く事になったラモラックと現在その監視役になっているパーシヴァルの2人は彼らの兄であり、国の王であるアグロヴァルによって呼び出しを受けていた。
「なんで呼び出されたか心当たりある?」
「いえ。…俺の監視ではやはり不安という事でしょうか」
二人が部屋に入ると…
「よくきたなラモラック、パーシヴァル。良い服を仕入れたのでお前達も着るが良い。」
パーシヴァルは絶句した。アグロヴァルが着ていたのは黒文字で「長男」と書かれた青いTシャツだったからだ。そしてそのアグロヴァルの右手には「次男」と書かれた緑のTシャツ、左手には「三男」と書かれた赤のTシャツが掲げられていた。
「ダッサ!!」
思わずストレートに本音を溢したラモラックだったが、パーシヴァルは必死に無反応を貫いた。
「何か言ったかラモラック?」
「いえ。何も」
幸いアグロヴァルには聞こえておらずその場は何事もなかった。しかし、同時に何も起こらなかったと言うことはパーシヴァルのピンチはいまだに継続中ということである。
(兄上…また商人に騙されてヘンテコな服を購入したのですか…!)
アグロヴァルは名君である。戦争や政治、剣や魔法に礼儀作法、いずれも完璧な人物であり、鎧や式典用の衣服を身に纏えばその美しい金髪も相まって実に映える容姿をしていた。
だが、私服のセンスがダサかったのだ。
「申し訳ありませんパーシヴァル様、私も止めたのですが聞き入れてもらえず…」
パーシヴァルに小声で話しかけたのは最近アグロヴァルに仕えることになった元商人のトー。トーの目から見ても(使われている素材以外)アグロヴァルに相応しく無いと感じていたのだ。
「通気性に優れ肌触りも良い。お前も身につければ気に入るだろう」
いつものように微笑むアグロヴァルに対してパーシヴァルの表情は険しい物であった。
(申し訳ありません兄上…!まず身に付けたくありません…!その、ダサい…ダサすぎるのです…!俺にはとてもではありませんが着る勇気が出ません…!!)
どうやってこの場を切り抜けようか必死に考えるパーシヴァルだったが、アグロヴァルが直々に呼び出した上に着ろと言われれば断りようが無い。そしてパーシヴァルはそこであることに気がついた。
「ラモラック兄上!?どこです!」
そう、あまりの服のダサさからラモラックは思わず逃走したのだ。
「ふぅ、またウェールズを飛び出してきちゃったなぁ」
ダサい次男Tシャツを着せられまいとラモラックは思わず結社のアジトに逃げ込んでいた。
「やぁ、マーリンいるかい?」
ラモラックがアジトを訪問すると、マーリンがいつもとは異なる服装であることに気がついた。白いTシャツ姿である。
「ラモラックか、丁度いい所に来たな」
「まさか…」
振り向いたマーリンは白いTシャツには黒字で「結社」と書かれていた…。
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<ポンコツアグロヴァルその2>
「トーよ。」
「はっ!アグロヴァル様、お呼びでしょうか」
「うむ。今年のバレンタインだが…団長には我自らが手作りのチョコレートをプレゼントしてやろうと思う。その手伝いをせよ」
トーはアグロヴァルの発言に耳を疑った。政治や戦争、剣に魔法に礼儀作法、そして人を見る目などと言った王に必要な才覚こそ完璧なアグロヴァルであったが、それ以外は驚く程にポンコツであったのだ。つい先日もあまりにダサい私服を購入し、次男ラモラックが再度ウェールズから離反する原因を作ったばかりである。
「お菓子作り、ですか…」
「そうだ。エプロンも用意したぞ」
高らかに掲げる青いエプロンには黒字で「名君」と書かれている。トーはその糸目を見開いた。
「アグロヴァル様…そのエプロンは一体…!?」
「あぁ、お前にもこの良さが分かるか?」
(いえ、全くわかりません)
トーは大方この前の商人から追加で売りつけられたのだと察した。
「では早速チョコレートを作るぞ!共をせよ、トー!」
「は、はい…」
トーは不安を感じずにはいられなかった。しかし、城の厨房に立ち、ウキウキでチョコレート作りの準備を進める自らの主君には何も言えなかったのである。
「まずはチョコレートを湯煎だな」
早速チョコをお湯にブチこもうとしているアグロヴァルをトーは必死に止めた。
「アグロヴァル様!違います!湯煎とはお湯の熱でチョコを溶かすのであってチョコとお湯を混ぜることではないのです!!」
「何、そうなのか。はっはっは!それは知らなかったな」
(ならなんでそんな自信満々に迷いなく作業できるんですか…)
だが、手作りチョコとは言っても湯煎で溶かしたチョコをアグロヴァルが己の剣技で削り出した特製の型…形はヴェールズの紋章…に流し込み冷やして固めるだけである。湯煎さえミスをしなければあとはいかにポンコツなアグロヴァルであっても失敗などない。
そう、その油断が悲劇を生んだ。
「ではアグロヴァル様、この型に流し込まれたチョコを固めましょう。」
「トーよ。流石にそれくらい我でも分かる。冷やせば良いのだろう?」
自信満々に微笑むアグロヴァルにトーは一瞬反応が遅れた。そう、いつのまにか持ち出したその剣をトーが見た時には全てが遅かった。
「ジルベーネ・ヴェルト!!」
まさかの奥義である。確かにチョコは冷えた。トーの肝も冷えた。チョコを冷やすのに奥義をブチかます奴がどこにいる。ここに居た。チョコは出来上がったが厨房は大破した。
だが、アグロヴァルが予算を注ぎ込み高性能なキッチンになったらしくシェフが喜び結果としてアグロヴァル様万歳の流れになったのでアグロヴァルの覇道は止まらない。
このアグロヴァルからチョコを貰うジータはたぶん黒字で「団長」と書かれた桃色のTシャツ着てる。