宇宙戦艦ヤマト外伝 "BLACK BAD BUTCH"   作:箕理 田米李

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さてさて前回突然のデザリアムの襲来により逃げるしかなかった新生BBB戦隊と第440艦隊の面々ですが、なんとか地球圏外縁に逃げ延びたようです。
今回はそこから物語がスタートしますが、まぁ旧作を観た事ある人にはわざわざ説明する必要もないことが話される訳ですが見たことないって人もいるでしょうからどうかお付き合いくださいまし。それではいきましょーッ‼️


第9話「地球の占領、多田部の決断」

"オールトの雲"、それは地球圏の最辺境に位置する第11番惑星の外縁部にある別名「彗星の巣」と呼ばれる宙域だ。ここには大小様々な大きさと形をした氷塊が無数に混在している。通常彗星は太陽に近ければ近いほど重力に引かれて尾を発生させて進むが、ここオールト雲にある氷塊は彗星であることに間違いはないが太陽から遠いので尾は引いていない。しかもこの彗星の組成は氷塊なので当然ほとんど氷であるが、中に微量の金属原子がありそれが昇華してレーダーに反応してしまうのだ。その為この宙域での操艦は困難を極めるので多くの船乗り達は「できれば通りたくない」と誰もが思う所だ。しかしその宙域の複雑さは一種のカモフラージュとして利用でき新生BBB戦隊司令 多田部はそれを逆手を取ってここを退避場所に選び補給基地が建設されたのもここが「味方もそうだが敵にとっても捜索しづらい厄介な場所」とされたからだ。デザリアムの突然の襲来からなんとかここに逃げおおせた新生BBB戦隊と第440艦隊の艦艇群はドックに腰を据え整備と補給に入る。旗艦級艦艇、損傷艦、補給担当艦(空母を含む)が優先的にドック入りし残りは基地周辺の警戒を行っている。

 

地球圏 第11番惑星外縁部"オールトの雲"

無人補給基地

艦艇ドックエリア

 

新生BBB戦隊 旗艦≪デア・エクス・マキナ改≫

艦橋

 

多田部「金森さん、補給と整備は順調❓」

金森「えぇまぁ、あぁ川上さんそれは向こうの護衛艦の方に回してください。」

川上 姫路(かわかみ ひめじ)「分かりましたでございますわーッ❗️」シュタタタッ!

金森「失礼、無人とはいえキチンと整理されていたので装備も部品/備品、OMCIS(有機物リサイクル式食料製造/供給システム)をフル回転させても平気な程の十分な量の水と有機物はありますので長居することになっても大丈夫そうです。」

多田部「そっか、ガミラス戦争の時にガミラス側が作った基地らしいからそれなりに年数は経ってるみたいだけど安保条約が結ばれてからは防衛軍も使う事を考慮して少し改良を加えてるし補給のついでにくる清掃業者のガミロイドやアナライザー型ユニットのお陰で綺麗に保たれてるんだね。」

 

多田部は補給と整備の事でパトロール艦≪エゾーケン≫の副長である金森 むつみと話をしていた。多田部曰く「この2つに関しては彼女の力が大いに助かっている」とのこと。

 

多田部「そういえば金森さんは自分の艦の事は良かったんですか❓まぁこちらとしては補給の維持管理できるベストな人材である君の力が今まさに現在進行形で必要なんだけどもだっけど。」

金森「あぁ〜良いんですよ。あの2人(艦長の浅草と戦術長の水崎)と違って私が好きなのは航海じゃなくこういった後方任務ですから。周辺警戒が任務ですと告げたら喜んで飛んでいきましたよ。「冒険だ❗️冒険❗️」と言ってね。普段立ち寄れない所ですから尚更です。」

多田部「そっかそっか、まぁ本人達が楽しんやってくれてるなら良いよ。浅草艦長は確か退役したらアニメの監督になるのが夢って言ってたね。」

金森「えぇ、防衛軍に志願したのもその為のネタ探し的意味合いもあります。「遠い宙域へも足を伸ばせて色々観測できる」という事でパトロール艦勤務を志願したらほんとに叶って挙句艦長にまでなるんですから何が起こるか分からないものですよほんと。」

多田部「アハハハハ(汗)」

 

淡々に自身と艦と乗員達について色々と話してくれる金森に多田部は苦笑いも交えつつ「ほんと色んな人がいるな〜」と思うのだった。

そこにピピーッ!ピピーッ!と突然多田部が身に付けてるヘッドセットから通信音が入る。

 

多田部「はい多田部、どちらサンジョルジョマジョーレ❓」

(通信)クロンナウア「CIC(戦闘情報センター)通信からクロンナウアがお送り致します❗️至急ブリッジへお越し願います艦長殿❗️」

 

※多田部、移動中、、、

 

≪マキナ改≫艦橋

 

金田「艦長上がられます。」

多田部「なんだった❓」

クロンナウア「やっと地球との通信が繋がったと思ったらこんなのが来ましたね。見てくださいびっくらこきますよ❗️」

 

そう多田部を呼び出したクロンナウアは艦橋のメインパネルに地球からの映像を流す。そこには青い肌にスキンヘッドをした人物が大きくアップで映し出されていた。だがその男はどうやらガミラス人ではないようだ。

 

(地球 防衛軍司令部からの放送)

デザリアム 地球攻略特別編成派遣軍

総司令長官 カザン「私がデザリアム地球攻略特別編成派遣軍 総司令長官のカザンである。」

 

地球の防衛軍司令部からの放送に映るカザンと名乗る男はデザリアム人だという。多田部はそれを見るや否や「クロロン、この放送を艦隊全艦に」と言いクロンナウアも「了解❗️」と言って直ちに新生BBB戦隊と第440艦隊全艦に放送を流す。

 

カザン「本日、我がデザリアム軍が地球全土を完全に占領した事をここに宣言する......。もし我らデザリアムに反抗する者が1人でも居ようものなら地球の各地域に撃ち込んだ"重核子爆弾"を直ちに爆発させる。」

 

「なんだそれ❓」とザワつく捕虜にされた防衛軍司令部の軍人達と放送を見る新生BBB戦隊と第440艦隊の面々。不思議そうな反応をする地球人達に「見るがいい」と司令部のメインパネルに映像が流される。それは防衛軍司令部のある日本(【極東管区】)や【北米管区】【欧州管区】【中東管区】【アフリカ管区】【中南米管区】【中央アジア管区】それぞれの地域に黒く巨大な物体がそびえ立っている映像だった。これが重核子爆弾というものらしい。

地球占領という事実もそうだが、画面に映るその馬鹿デカい爆弾の存在にも驚いて圧倒される。

 

カザン「我らデザリアムの文明の粋を極めた大量破壊兵器だ。最も諸君ら地球人の定義による大量破壊兵器とは少し違うがな。」

 

「どういうことなんだ❓」と疑問に思い各々顔を合わせて不思議がる防衛軍司令部の捕虜にされた軍人達はザワつくが、直様(すぐさま)カザンが説明する。

 

カザン「この爆弾が一度起爆すれば、地球の自然には何ら影響を与える事なく一瞬の内に諸君ら地球人類の脳細胞のみを破壊し絶滅させる事が出来るのだ。」

捕虜にされた防衛軍官僚と軍人達、新生BBB戦隊と第440艦隊の面々は動揺を隠さずにさらにざわつき始める。

 

カザン「この脅威に晒されたくなければ無用な抵抗を示さず、我らの要求を呑むことだ。」

 

「重核子爆弾というヤバめな代物を突きつけられた状態でするような要求とは一体なんなのであろうか⁉️」とまたまたザワつき始める。「静かに聞くんだ❗️」とデザリアム兵が言う。

 

カザン「2年前に我らデザリアムの調律を妨害した悪魔の船、、、そう、"宇宙戦艦ヤマト"の所在を明らかにせよ。」

防衛軍官僚A「ヤマトッ⁉️

同B「ヤマトだってッ⁉️」

 

「ヤマトはどこだ❓」という質問にま〜たまたまた動揺する官僚達。「ヤマトになんのようだ⁉️」「なぜ探してる⁉️」との声も聞こえてくる。

 

≪マキナ改≫艦橋

 

多田部「ッ⁉️(ヤマトの所在❓なぜそんな事を❓そういえば「サレザー事変」以降ヤマトを含む第65護衛隊は再編成されたとは聞いていたが、その後詳しい所在については機密となっていたっけ、、、。)」

 

ヤマトがイスカンダルでデザリアムと戦った後、旗艦を務める第65護衛隊は艦隊戦力の増強、人員の補充、装備拡張等の再編成が行われたのは防衛軍関係者は知る所であるが、その後の65護衛隊の所在は何故か機密扱いされており知る者は少ない。

 

???「ヤマトの所在を知ってどうすると言うのだ。」

???「長官❗️」

カザン「ほぉ...。」

 

そう口を開いたのは地球連邦防衛軍の統括司令長官の藤堂平九郎(とうどう へいくろう)だった。それに驚いて次に口を開いたのは副司令の芹沢虎徹(せりざわ こてつ)だ。

 

カザン「そういえざ貴君らは地球軍のNo.1と2だったな。なら知っておろう。答えろ、ヤマトはどこだ❓」

芹沢「ちょ、長官...。」

藤堂長官「ヤマトの所在を知ってどうしようと言うのだ❓」

芹沢「ッ⁉️」

 

「質問を質問で返す」某奇妙な冒険する漫画だったら絶対に怒られるパターンであるがここはヤマトなので気にせずに読んでくださいましw.

 

カザン「質問は許されない。貴君はこの爆弾の威力そして軌道上に配備した7基のゴルバ型浮遊要塞の存在を知った上ですぐに地球人類を抹殺するとは思わないのか❓」

藤堂長官「ふん、恐ろしいのだろう❓ヤマトが。」

カザン「なに❓」

藤堂長官「でなければとっくにやっているだろう❓ガミラスをそうしたように、違うか❓」

 

藤堂長官は怖気づくどころか堂々かつ毅然とした態度で冷静にデザリアム側の行動を分析して論じ始める。

 

藤堂長官「たかだか宇宙戦艦一隻に何をそんなに怯えているのだ❓」

カザン「我々が...デザリアムが...ヤマトを恐れているだと❓」

芹沢「長官、もうその辺で...。」

藤堂長官「そうだ。お前達が恐れているヤマトは我々の希望だ。それだけじゃない、地球にはまだまだ戦える力が残っているぞ。ヤマト一隻に対しそれだけの戦力を繰り出して挙句に我々を人質にとらなければ戦えないとは、想像してたよりもちっぽけなものなのだな。お前達デザリアムは。」

カザン「き...貴様ァ...(恐)」

藤堂長官「ヤマトを倒したければ自分達で探すが良い❗️そしてお前達にはかつての親友の言葉でこう言おう。「バカめ❗️」とな‼️」

防衛軍官僚A「そうだ❗️俺達はお前らなんかには従わないぞ‼️」

同B「人質取らなきゃ喧嘩もできねぇ卑怯者野郎がよ‼️」

同C「そんなに凄い爆弾ならやれよこの野郎ッ❗️早くやれッ❗️オモチャかあれ⁉️」

 

藤堂長官の相手を恐れぬ反論にデザリアムに圧倒され沈黙していた防衛軍官僚達に火を付けた。

 

カザン「この愚か者共めェ...えぇいこの者達を全員黙らせて引っ捕らえろ❗️見せしめに処刑してやれぇッ‼️」

 

先程までの紳士的な対応と打って変わって図星をつかれたのか、声を荒げて「死刑にしてやる(激おこ)」と怒鳴り上げるカザン。そしてそこで放送が途切れる。

その後少し沈黙の間が続いた。地球が占領されたこと、重核子爆弾とゴルバの存在、藤堂長官の反論、放送を聞いた皆の頭はまだ状況全てを落ち着いて飲み込む事ができないでいる。

 

新生BBB戦隊

旗艦≪マキナ改≫艦橋

 

多田部「クロロール、艦内マイクを。」

クロンナウア「え❓は、はいよ。」

 

多田部はクロンナウアに「艦内放送をするから準備してちょ」という。クロンナウアがマイクにスイッチを入れる。

 

多田部(艦内放送)「皆、地球の放送は見たよね❓地球はデザリアムに占領された。残念ながらこれは事実らしい。だが藤堂長官のあの態度を見た事だろう。ガミラスに滅亡されかけた時もガトランティスに地球を占領されかけた時もあんな風に決して諦めず希望も捨てないでいた。なら我々もそうしなければならないようだ。ヤマトに依存するつもりじゃないが、我々にだってできる事があるはず。長官が示した気概に負けない様に、我らもデザリアムに反抗する海賊となろう❗️」

 

「ウオォォォォォォォォッ❗️」と新生BBB戦隊の全艦全乗員が声を上げた。

 

金田「素晴らしい演説でした艦長。」

多田部「いやいやらしくないですよほんとw.それに、長官があぁ言ってくれなかったらどうなってたか。」

アイク「どうやら士気は高まった様だねタクロー❓」

多田部「アイク。うんそうだね。」

 

四糸乃(映像通信)「多田部さん。」

 

多田部「お、四糸乃艦長。」

 

四糸乃「わ、私も、一緒に、戦い、ます❗️」

野水「ヒュ〜、あんな演説聞いちゃやる気にならない訳ないよタクロッち〜。よしのり達もこのまま黙って占領を受け入れるのは承伏しかねるからね〜。」

 

多田部「ありがとう2人とも。実はこれからどうするかもう考えてあるんだ。四糸乃艦長にも是非バリクソ協力したもらいたい。」

 

野水「オーケーオーケ〜、よしのり達がやれることならなんだってやるよ〜。ねぇ四糸乃❓」

四糸乃「が、頑張り、ます❗️」

 

多田部「それとアイク。参謀の君にも手伝って欲しいんだ。知恵を借りたくて。」

アイク「ほぉ、何をするつもりなんだ❓」

多田部「今からこの宙域をホームア○ーンばりの拷問宙域にしてやるのさ。フフフフフフフフ(悪い顔)」

ミホノラ「(ま、また艦長が悪い顔してる、、、。)」

 

2年も経てば流石に見慣れてきたハーガワネンであるが、やはり多田部の悪巧み顔は恐ろしいと思ってしまうも「戦略/戦術家として学ぶべきことは多い」とも思っている。

 

多田部「っとその前に、こんな状況にこそピッタリな曲があったなぁ❗️ミホホンッ❗️」

ミホノラ「は、はい⁉️」

多田部「君の出身は確かフィンランドだったよねぇッ⁉️」

ミホノラ「は、はいそうですが、、、。」

多田部「なら尚のことピツタシだ❗️ほれっ❗️」

 

多田部がハーガワネンに投げ渡したのはフィンランドの撥弦(はつげん)楽器であるカンテレだった。「うおっと⁉️え❓カンテレ⁉️なんでぇ⁉️」とハーガワネンが驚く間も無く音楽が流れる。それは彼女にとって懐かしい故郷のイントロだった。

 

多田部「さぁ音色のお奏でしくよろよぉッ❗️ビート鳴らせぇッ‼️」

ミホノラ「は、はい❗️(ええい、こうなったらヤケって奴です❗️)」

 

ミホノラは生まれ故郷のフィンランドの民謡である「Sakkijarven polkka」を弾き始める。"サッキヤルヴィ"と呼ばれるフィンランドの都市が第二次大戦中の継続戦争に於いてソ連に占領され、その土地を奪われたフィンランド人達の哀愁を込めてこの曲が作られたという。今まさに地球を占領されたが、藤堂長官の言葉に奮起し「(地球を)占領されても挫けない❗️」という意を込めて流し新生BBB戦隊と第440艦隊の面々は歌うのだった。




第5話以来の戦闘のない回となりました。第11番惑星の外縁にある「オールトの雲」と呼ばれる宙域はPS2「暗黒星団帝国の逆襲」に登場した場所です。リメイク風に「ガミラス戦争時にガミラスが基地作ってて、それを防衛軍も使い始めた」という事にしました。「無人基地だから物資の搬入とか清掃とかどうする❓」という点はフォロワーさん達と意見を交えながら決めました。
カザン率いるデザリアム[地球攻略特別編成派遣軍]の名称についてはそのまま[地球侵攻軍]だとまんま過ぎて面白くないのでナウシカのクシャナ殿下率いるトルメキア帝国辺境派遣軍の名称をモチーフにしつつ「デザリアムには本来ないし作るつもりもなかった軍だから2年の歳月を掛けて編成した特別部隊」という感じにしました。
カザンは旧作(ゲーム版)同様に最初は落ち着いた態度で話始めるわけですが、藤堂長官に図星を突かれて最終的にキレてしまいましたねwww.藤堂長官が沖田艦長の台詞である「バカめ❗️」と言わせた所は個人的に気に入ってる演出です(自画自賛)。
そんな長官の姿を見て多田部達も奮起する事になりサッキヤルヴィン歌って士気上げてますね。デザリアムに対し一体どんな嫌がらせを考えているのか❓次回をお楽しみに。

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