目指すは地球の最強種   作:ジェム足りない

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五話 vs不審者

 ──妙に硬い。

 

 不審者の男を蹴り飛ばした緋乃は、蹴り飛ばされた勢いのまま倒れて、袋小路に向けて地面を転がっていく男を見てそう思った。

 頭部への蹴撃を左腕でガードされたのはまあいい。予測の範囲内だ。

 いや、少し嘘をついた。まさか気も使えないような相手にガードされるとは思っていなかった。

 

(まさか防がれるなんてね。これなら頭より足狙った方が良かっ……いや、そうじゃない)

 

 一発KO狙いの頭ではなく、防ぎにくいローキックで足にダメージを蓄積させた方がよかったかもと、脇道へ逸れる思考を修正する緋乃。

 今の問題はそこではない。問題はこの蹴った右脚に残る感覚だと、倒れた男を観察しながら緋乃は考える。

 

(気を使ったようには見えなかった。でも、この強度は生身の人間じゃない。硬い。生身にしては硬すぎる)

 

 相手が気を使えるかわからないので、もし一般人でも死んだり大怪我をしないよう、それなりに加減して放った蹴り。

 事実、緋乃の蹴りを食らう直前になっても男は気を使う素振りを見せなかったので、手加減しておいて正解だと緋乃は思ったのだが──いざ蹴ったときに帰ってきた感触は想像よりも硬かった。

 明らかに人間以上の強度であり、間違いなく気を用いた身体強化……のはずなのだが。何かが違う。

 気の運用にともなう発光現象は蹴りが直撃する寸前にも、直撃してからも確認できなかったのだから。

 

(どう見ても達人には見えない……っていうか達人ならこんな蹴りは受けないか)

 

 気を完全に使いこなせる達人中の達人だとしたら発光現象は起こらないが、それならこんな手加減された蹴りなどそもそも通じないはずだと緋乃は思い直す。

 もし達人が相手だったのならば、今の蹴りくらいなら簡単に受け流すか回避され、その隙に反撃を叩き込まれてこちらが倒れていたことだろう。

 

(むぅ……。変な奴……)

 

 動きは素人丸出しで、気も使えない。

 これだけなら図体がでかいだけの一般人にしか見えないが、でも妙に防御力だけは高い。

 緋乃が男の正体について考えを巡らせていると、その男が遠くで無言のままゆっくりと立ち上がる姿が確認できた。

 

(うめき声とか、これといった反応もなし、か。……人間っぽくないね。まさか、最近みた夢と一緒? また化け物?)

 

 不気味な男の様子からつい最近見た悪夢を思い出し、警戒を強める緋乃。邪魔なカバンを──不意打ち狙いを悟られないよう、あえて肩にかけたままにしておいたそれを──道の端に向かい投げ捨てると警戒のレベルを引き上げ、感覚というセンサーをフル稼働させる。

 ここは住宅街で、隠れる場所はたくさんあるのだ。かつての悪夢のように不意打ちを食らうかもしれないと、緋乃の目の前の男に対する意識が薄れたその瞬間。

 

「……!」

「むっ」

 

 偶然か、それとも緋乃の隙を感じ取ったのか。男は無言のまま、緋乃目掛けて猛スピードで一気に走り寄ってきた。

 その速度は明らかに人間の出せる速度ではないが、やはり男からは気を使っている様子が見られない。

 男は走りながら右腕を振りかぶり、その勢いとパワーを利用した強烈なパンチを緋乃の顔面目掛けて放つ──が。

 

「見え見えだよ──吹っ飛べ」

 

 緋乃は体を捻り、その右拳を腕で受け流しつつ、男の右側に回り込む形で回避。そのまますかさず右脚を持ち上げると同時に気を集中させ、がら空きになった男の右わき腹へと足刀蹴りを叩き込んだ。

 ボキボキと骨の砕ける感触がブーツを通して緋乃に伝わってくる。今度の蹴りは先ほどの蹴りよりも手加減のレベルを引き下げており、対格闘家レベル──気の運用を行える、きちんとした格闘家を想定したもの──の蹴りだ。

 

「──!?」

 

 男は蹴られた勢いのまま横に吹き飛び、電柱に勢いよく叩きつけられた。しかし、それなりに大きいダメージを負ったはずだというのにも関わらず、悲鳴どころか声一つ上げない男に対して緋乃は不信感を募らせていく。

 

(今のでノーリアクション? 怪しい、怪しすぎる。蹴った感触も人間とは少し違うし、やっぱりこいつ人間じゃない……?)

 

 男が人外の存在だと徐々に確信し始めるも、万が一人間だとしたら困るので、確認の為にもその顔を覆うマフラーとサングラスを破壊せねばと次の一手を巡らせる緋乃。

 気弾、あるいは遠当てとも呼ばれるそれが使えれば。このように相手をダウンさせてから、その顔面目掛けて撃ち込むことで割と安全に隠された素顔を確認できるのだが──生憎と、緋乃は適性がないのかそれを使うことができなかった。

 

(まあいいや。普通に近寄って、普通に吹き飛ばそう)

 

 戦闘中に長々と思考を巡らせている暇はないと、緋乃は思考を一瞬で打ち切り、立ち上がろうとする男へ素早く接近。その顔を蹴り上げようと脚を振り上げる。

 

「せやっ!」

 

 男はその緋乃の蹴りに対し間一髪のところで腕を差し込むことに成功した──が、まるで無駄な抵抗だと言わんばかりに緋乃はそのまま防御の腕ごと蹴り上げ、男の顔を強制的にかち上げた。

 

「……!」

「はじけろ」

 

 緋乃の左の掌が薄く輝く。男は必死によろめく身体に力を込め、広い袋小路の入り口側へ跳ぼうとする。恐らく、体勢を整えて仕切り直しを狙っているのだろう。しかし、緋乃に対してその動きはあまりにも遅すぎた。

 男の顔面に、素早く踏み込んできた緋乃の左掌底が突き刺さり──次の瞬間。男の頭部が白い爆炎に包まれると同時に、周囲へと爆音が響き渡った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「これは……犬?」

 

 意識を失ったのだろうか。仰向けに倒れ、ピクリとも動かない男に対し、緋乃は不意打ちを警戒しつつも接近。気の爆発により変装用具が吹き飛び、露になったその顔を確認する。

 それは緋乃の予測通り、人間の顔ではなかった。変装用具の下から現れたのは黒い犬の顔であり、それに緋乃が驚いていると男の体から黒い煙のようなものが吹きだしてきた。

 

「!?」

 

 緋乃は慌てて飛びずさると、次は何が起こるんだと警戒しつつ構えを取る。ゲームのお約束みたいにパワーアップして復活? それとも道連れにしようと自爆? 緋乃は警戒しつつも次に起こる事象を想像する。

 しかし、緋乃の警戒とは裏腹に怪物は復活したり爆発を起こすのではなく、そのまま消えて無くなってしまった。影も形もなく、まるで元からこの世界に存在しなかったかのように。

 

「……おわり? おわった? ……ふぅ」

 

 怪物が消え去ってからもしばらくの間、念のために警戒を怠らなかった緋乃だが、本当に何も起こらないことを確認すると気を抜いて大きく息を吐いた。

 

(一体何だったんだろ、今の。倒したら消えるとか、まるでゲームみたい)

 

 緋乃はそう思いつつも先ほど投げ捨てたカバンへと近寄り、ゆっくりと拾い上げる。そして、カバンに付着した土やほこりをパンパンと叩いて払うと、肩にかけた。

 

(……そうだ、明乃だ。明乃は無事?)

 

 戦闘の緊張感が吹き飛んだからだろうか、それとも勝利の達成感からだろうか。

 少しだけ頭がぼんやりとする緋乃だったが、途中まで共に帰宅していた明乃について思い出すと、素早くカバンの中からスマホを取り出して明乃に連絡を取ろうとする。しかし……。

 

「圏外? え、なんで?」

 

 スマホの画面に表示される圏外の文字。緋乃は慌ててスマホの電源を入れ直したり、機内モードを一瞬だけONにしてみたりと、ネットで見た対処法を次々と行うが、すべて効果なし。

 戦闘前にカバンを投げ捨てたときにその衝撃で壊れたのだろうかと疑うが、普通に操作はできるのでそれはないかと思い直す。

 その後もスマホを弄り続ける緋乃だったが、結局圏外の状態から直らなかった。

 

「はぁ~……」

 

 緋乃は大きくため息を吐くとスマホをカバンに仕舞い込み、頭をぶんぶんと何度か振った後に両手の平で頭をパンと叩いて気合を入れ直した。

 

(まあいいや、急いで帰ろう。とりあえず家に戻って、そこからだ。明乃が無事ならよし、いなかったら探す)

 

 緋乃は大きく深呼吸して気持ちを整えると、その顔を引き締めて走り出した。

 まずは通りに出よう。見覚えのない場所だから、まずは現在地の確認からだと緋乃は駆け続けた。しかし……。

 

「……おかしい。出れない。なんで……?」

 

 いつまで駆けても住宅街から出られない。何度道を変えても同じような住宅街が続くことから、流石の緋乃でも異常事態に気付くが、気付いたところでどうしようもない。

 

「このっ……! なんで!」

 

 どれだけ走っても住宅街から抜けられない状況に思わず声を荒げ、地団駄を踏んで悔しさを紛らわす緋乃。

 注意深く観察すれば、同じ場所を何度も通っているということに気付けただろうが、冷静さを大きく欠いた現在の緋乃ではそれに気付くことができなかった。

 

「どうしよう……」

 

 悔しさと焦燥感から弱りはてた緋乃の脳裏に、ちょっと前に貰った明乃のアドバイスが浮かびかける。

 

(なんだっけ、困ったらなにかしろと明乃が言ってた気がするけど……。駄目だ、思い出せない)

 

 しばらくその場に留まり、ぼんやりする頭を必死に働かせ、忘れた何かを思い出そうとする緋乃。しかし、どうしても思い出せずにやる気だけがどんどん下がっていく。

 

(はぁ……。もうちょっとで思い出せそうなんだけど。まあいいや、頭もなんか熱っぽいし、ちょっと休憩……)

 

 ついにはぺたんと道路の真ん中に座り込み、ぼーっと空を見上げる緋乃。

 しばらくこうしていればやる気も戻るだろうと、ため息を吐きながら夕焼けの空を見上げていた緋乃だが、そんな緋乃の元に小さな声が届いた。

 

「あった、結界あったよ明乃ちゃん! たぶん緋乃ちゃんここだよ!」

「言われてみれば確かに違和感が……! 理奈、お願い!」

「まっかせてぇー! ……うおりゃぁー!!」

 

(あれ、今の声……?)

 

 聴き慣れた声がすると、緋乃が声の聞こえてきた方向へ顔を向けた瞬間。その先にある景色が砕け散り、砕けた景色の向こうから夜空と共に二人の少女が姿を現した。

 

「いたーっ! よかった、よかった緋乃ちゃーん!」

「……っ! 良かった……! もう本当に心配かけて……!」

「あ、あれっ? 明乃……? 理奈……? どうしてここに……?」

 

 明乃と理奈、二人の少女が姿を現すと同時に緋乃の頭に巣くう靄も晴れ、制限されていた思考が一気に回復する。

 思わず立ち上がって二人の友人に駆け寄ろうとする緋乃だったが、それよりも早く、猛スピードで駆けてきた明乃が飛びついてきて押し倒される。

 

「あーもう! 本当に良かった!」

「え? えぇ? ていうか今なんか砕けなかった?」

 

 本気で緋乃を心配しつつ、強い力で緋乃に抱き着く明乃に、先ほど起こった出来事に混乱する緋乃。

 無事だったんだ明乃。なんか今パリーンって割れた。というか迷って困ったなら飛んだりすればいいのに、なんで律儀に走ってたんだろう恥ずかしい。

 様々な考えが混乱した緋乃の頭を駆け巡る。そんな緋乃に対し、明乃に遅れて緋乃の元へやってきた理奈がその答えを教えてくれた。

 

「さっき緋乃ちゃんが閉じ込められてたのは結界だよ。ぐるぐると同じ場所に閉じ込められてたの」

「結界……?」

 

 思わずといった様子で聞き返す緋乃に、苦笑しながら理奈が返す。

 

「うん。認識を歪めるオーソドックスなタイプ。きっと空を飛んだり、家を壊して無理やり出る選択肢も奪われてたんじゃないかな?」

「あ、うん。確かに……」

 

 理奈の指摘を受け、つい先程までの自身の行動を思い返して納得したように頷く緋乃。

 確かに、何故か走る以外の案が浮かんでこなかった。そうか、あれはわたしのミスじゃなくて結界とやらの効果か。と緋乃は内心で少し安心する。

 

「ファンタジーだね……」

「うん、ファンタジー。もう今更だけど、実は魔法って空想上の存在じゃなかったりするのですよこれが」

「まあ、実際に味わうと信じるしかない、か……。でも、便利そうだね」

「うん、まあ。でも便利だからこそ悪用されると困るというかなんというか」

 

 緋乃の言葉に対し、腕組みをして難しそうな顔をしながら回答する理奈。

 実際に悪用されて困った側の存在である緋乃も、その回答に対しまあ確かにと頷く。

 

「ああそうそう、さっき結界解除しちゃったから、そろそろ誰か来てもおかしくないよ。だからほらほら、二人とも早く移動しないと危ないよー」

「ああ、ゴメンゴメン。ほら行くよ、緋乃」

 

 理奈の指摘を受け、立ち上がった明乃が緋乃に手を差し伸べる。緋乃がその手を握ったのを確認した明乃はぐいと緋乃を引っ張り上げると、三人で歩道に避難する。

 三人が移動し終えたちょうどその時、タイミングを計ったかのようにライトをつけた自動車が通り過ぎて行った。

 

「ナイスタイミングね……」

「うん」

「ああそうだ緋乃、背中こっち向けて。ああ、やっぱり。あたしのせいで砂ついちゃったわ、ごめんね」

 

 先程押し倒された時についたのだろう。緋乃は明乃に背中を向け、服の背中についた砂をパンパンと払ってもらう。

 

「よし、こんなもんでしょ」

「ん、ありがと」

 

 服の砂を落として貰った緋乃は、ふと理奈の服装へと目線を送る。

 次に何を言われるのか察したのだろう。理奈が慌てて口を開きかけたが、緋乃の口から言葉が飛び出る方が早かった。

 

「その格好……。魔法少女?」

「うっ……。これは魔女としての正装と言いますか、ぶっちゃけるとお母さんの趣味と言いますか……」

「いいじゃん似合ってるんだし。可愛いよ、魔法少女理奈ちゃん」

「ん。明乃の言う通り。似合ってる」

「う゛あ゛あ゛……。嬉しいような恥ずかしいような、緋乃ちゃんを助けられたのはよかったけど、やっぱ恥ずかしいから見られたくはなかったような……」

 

 いつもの私服ではなく、白を基調としたフリフリの服に、これまた白のロングブーツを着用する理奈。

 そんな理奈をからかうような軽い口調で褒める明乃と、真面目な顔でうんうんと頷きながら褒める緋乃。

 友人二人に面と向かって褒められたのが恥ずかしいらしく、顔を真っ赤にして唸る理奈であった。

 

 

 

 

「……へえ、犬の化け物ね。んで倒したら煙吹いて消滅と。これも魔法?」

「うん、多分ね。犬の使い魔を人型に変化させたか、そういう生物を生み出したか。詳しくはわからないけど、とりあえずこっち側の人間が関わってると思う」

「ってことはやっぱ緋乃を狙った魔法使いがいて、そいつはまだ無事って事ね?」

「うん……。多分、最後に緋乃ちゃんを結界に閉じ込めたのもそいつだと思う」

「くっそー……よくも緋乃を……」

「たぶん結界はただの嫌がらせで、ほっといてもあとちょっとで消えたと思うけど……。私もちょっと許せないな、こっちでも対処してみる」

「サンキュー理奈。あたしたちは魔法とかさっぱりだから、頼りにしてるわよ」

「まっかせて! ……でもあれだね。緋乃ちゃんって真正面から戦うとすごく強いけど、精神操作とか結界みたいな搦手には弱いみたいだね」

 

 心配だから家まで送るという理奈の申し出を有難く受けた明乃と緋乃は、三人で日の落ちた歩道を歩いていた。

 帰宅するにあたり、服装で目立ちたくない理奈は魔法で他者から自分たち三人への興味を薄れさせていた。理奈が堂々と歩いても注目されないのはそのためだ。

 

 明乃と理奈はこの魔法で注目されないのを利用して緋乃から聞いた今までの出来事について話し合い、そんな二人を緋乃はコンビニで買ってきたペットボトルの水を飲みながら聞いていた。

 

「緋乃ちゃん、はいこれ」

「ん?」

「魔法対策のアミュレットだよ。悪い魔力を弾いてくれるの。まあ私用のだから効果はかなり落ちちゃうけど、無いよりはずっとましだと思うから、今回みたいな事件対策にね。とりあえず身に着けててよ。お母さんにも頼んで、すぐに緋乃ちゃん専用の作るから」

 

 歩道を塞ぐのはマナー違反だよねと、二人から一歩引いた位置を歩きながら話を聞いていた緋乃であったが、その緋乃に対し理奈が振り向き、自分の胸にかけていたアミュレットのネックレスを外して差し出す。

 

「あ、ありがとう。……どう?」

「うん、似合う似合う」

「ま、緋乃は元がいいからね。でも学校に行くときは首にかけるんじゃなくて、ちゃんとバレない場所にしまっておくんだぞ~」

 

 受け取ったアミュレットを首にかけた緋乃を見て、にっこりと笑う理奈と、微笑みながらアドバイスを送る明乃。

 それに対し、ありがとうとはにかみながら返す緋乃であった。

 

「ところで、わたし専用っていいの? 面倒なんじゃ?」

「緋乃ちゃんに何かあったほうが大変だからね。だからお金とかも別に気にしなくていいよ、私からのせめてものお詫びとプレゼント」

「お、太っ腹~。ねえねえ、あたしには無いの? 催眠とか洗脳とかこわ~い」

 

 わざとらしくくねくねと体を動かしながら、甘えた声を出す明乃。それを見て、理奈はうーんと一泊置いてから声を上げる。

 

「明乃ちゃんは緋乃ちゃんと違ってなんかそういうの食らうイメージないしな~。気合と根性で打ち破りそう。こう、ふんがー! って感じでさ」

「はぁ? 誰が野生開放ゴリラの擬人化ですって~?」

「そこまで言ってな、ぐぇー! まいった、まいりました超絶美少女明乃ちゃん様お許しを~」

 

 明乃にコブラツイストを決められ、理奈が悲鳴を上げる。思わずといった様子で降伏宣言を行う理奈と、それを受けて勝ち誇る明乃。

 

「うおぉー、勝ったどー! ふんがー!」

「あ、今ゴリラの本性がぐぉあー!? ギブギブ! 参りました、許してー!」

「ふふっ」

 

 再びじゃれ合う明乃と理奈。そして、それを見て笑う緋乃。今まで落ち込んでいた緋乃の顔に笑顔が戻ったのを見て、明乃と理奈の顔にも笑顔が浮かぶ。

 

「ねえねえ、早く帰ろ? わたしお腹すいた」

「そうね、もう暗いし早く帰らなきゃ。うーん、お母さんにどう言い訳するかなぁ」

「あ、それならうちのお母さんが電話で適当に理由つけてくれたはずだから、心配しなくていいと思うよ」

 

 謎の使い魔による緋乃襲撃に、結界による監禁。最後の最後でケチのついた一日だが、それでもなんとか無事に帰ることが出来た。

 三人で笑い合いながら、帰路を歩む緋乃たちであった。


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