目指すは地球の最強種   作:ジェム足りない

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12話 廃村の戦い

「いたよ、緋乃。あいつだよ……」

 

 とある廃村にある、小高い丘の上に立つ廃神社。その本殿前の石畳の広場に、一匹の巨大な蜘蛛型のような姿をした妖魔が我が物顔で歩き回っていた。

 最も、外見こそ蜘蛛のそれに酷似しているが、黄色と黒の二色で彩られたその身体は不自然に角張っており──いわゆるロボット型の妖魔であることが伺える。

 

「見た目だけなら戦闘メカみたいでカッコいいんだけどなあ……」

 

 既に人も移り、また神社に祀られていたご神体も移された後の抜け殻とはいえ──人に仇なす邪悪な妖魔が、神聖なる地を占拠しているというのは、大多数の人間にとって気分の良いものではないだろう。

 

「随分と大きいね……」

「うん。でも大きいだけじゃないよ、発する妖気の桁が違う……。妖怪一歩手前の最上級の妖魔だ、気をつけて……」

 

 そして、気を極限まで抑えることでその気配を隠し──茂みに隠れながら、妖魔の様子を窺う二人の少女。緋乃と奏の姿があった。

 

「確かに、発するオーラが段違いだね。今までの妖魔とは比べ物にならない……」

「普通はここまで成長する前に刈り取るものなんだけどね……。人手が足りてないからかな?」

 

 奏からの警告に対し、素直に頷いてその表情を引き締める緋乃。

 神社の神殿とは、魔物を封じ込めて邪気を払う為の建物である。

 故に、その邪気を払う為の祈りを捧げる神職や、ご神体の去った後のこの神社は負の力が湧き出す危険なパワースポットと化しており──悪霊や妖魔にとっては自身の力を高める、最高の餌場となっているのであった。

 

「それでどうするの? 一応、わたしの尻尾ならこの距離からでも攻撃できるけど……」

「いや……、ロボットタイプの妖魔は感知能力も高いからね。攻撃の為に抑えていた気を開放すると、多分バレる」

 

 自身の太ももに巻き付けた尻尾へと目をやりながら、遠距離からの奇襲を提案する緋乃であったが、その提案は奏にやんわりと却下された。

 

「うん……ここは私が先行するから、緋乃にはしっぽでの援護をお願いできるかな? ほら、私は近寄って刀を振るうってことしかできないけど……緋乃にはしっぽという強力な遠距離攻撃手段があるし」

「わかった。じゃあわたしは少し距離を取って、邪魔にならない感じで尻尾撃ち込んでくね」

 

 作戦会議が終わり、至近距離でその顔を見合わせて頷き合う緋乃と奏。

 現在、妖魔は緋乃たちの隠れている側へその顔を向けて停止しているため、今飛び出してはそのまま即座に迎撃されてしまうことだろう。

 どうせなら背中を向けるなり、明後日の方向を向いている時に仕掛けたいと、茂みから飛び出すタイミングを窺う二人。

 緋乃と奏がしばらく息をひそめていると、再び妖魔が行動を再開。その八本の鋭い足をゆっくりと動かし、広間を徘徊し始める。

 

「──今っ!」

「ん……!」

 

 そうして妖魔が緋乃たちに背を向けたその瞬間、奏と緋乃は行動を開始した。

 抑えていた霊力と気をを解き放ち、その身に纏ったかと思うと──奏はそのまま妖魔目掛けて一気に駆け出し、緋乃は太ももに巻き付けていた尻尾をほどいて妖魔へと狙いを定める。

 

『──!』

 

 物音こそ立てていなかったものの、退魔師の霊力を感知したのだろう妖魔が、軽く飛び退きつつその身体を旋回させる。

 そうして緋乃たちに向き直った妖魔は、まずは自身へと高速で接近する奏を迎撃しようとその腹部を持ち上げ──。

 

「遅いッ! 妖断閃ッ!」

 

 妖魔の動きを見た奏は更に加速。そのまま鞘に納まる刀へと霊力を注ぎ込むと、妖魔のすぐそばを駆け抜けつつ抜刀。先制攻撃を加えることに成功した。

 

「チッ、やはり硬いなっ!」

 

 しかし、並の妖魔なら両断するであろうその一撃は、妖魔の硬い装甲に弾かれ──その表面に刀傷を残すにとどまった。

 

「おっと!」

 

 奏は刀へと目をやり、刃こぼれなどをしていないかを手早く確認すると、その場から飛び退く。反撃として妖魔がその足を振るってきたからだ。

 振り回した足こそ回避されたものの、奏との距離が開いたことを確認した妖魔は、その背中の装甲の中から箱型のミサイルランチャーを展開。そのまま奏に対し即座に発射する。

 

「──させないよ!」

 

 白い煙の尾を引きながら、着地の隙を晒す奏を取り囲むように迫る六発のミサイル。

 直撃させるのではなく、爆風によるダメージと行動阻害が狙いだろう。そのミサイルの包囲網を、飛んできた緋乃の尻尾が次々と食い破った。

 

「ぐぅ……ナイス!」

 

 緋乃の尻尾が飛んできたミサイルの全てを貫き、爆散させるのを見た奏が、その爆風に耐えながらも喝采を上げる。

 

「まだまだ!」

 

 奏と妖魔、その中間地点にて発生した爆風は奏だけではなく妖魔にも襲い掛かり──その爆風にて動きを鈍らせた妖魔に、緋乃の尻尾が襲い掛かる。

 緋乃の尻尾は側面からミサイルランチャ―を貫き、これを爆散させるとそのまま急上昇。真上から勢いをつけて妖魔の胴体を貫かんと強襲した。

 

「なっ!? この!」

 

 しかし、妖魔は体を持ち上げ、傾けることでその上空からの一撃に対処。

 真正面から装甲で受け止めるのではなく、斜めに逸らすその防御法により、緋乃の尻尾による一撃は妖魔の胴体を凹ませるのみに終わってしまった。

 勢いよく地面へと突き刺さった尻尾が石畳を吹き飛ばし、派手に土煙を上げる。

 

「少しはやるよう──きゃっ!」

 

 仕留めたと思った必殺の一撃をかわされた緋乃は、尻尾を引き戻しつつ妖魔に対し思わず賞賛の声を上げるも──土煙の中から飛び出してきた妖力弾を見て、驚きから可愛らしい悲鳴を上げる。

 もっとも、妖力弾自体は気を纏った尻尾で即座に貫き、爆散させたのだが。

 

「はああぁぁぁ!」

 

 そうして妖魔が緋乃へ対処している間に、体勢を整え、また霊気をその刀に存分に込めた奏が妖魔へと飛び掛かる。

 奏の接近に気付いた妖魔が、その鋭い足を掲げて防御態勢を取るが──そんなのは関係ないとばかりに、奏は上段に振りかぶった刀を勢いよく振り下ろし、妖魔のその足を断ち切った。

 

「よし、これでっ──!」

 

 妖魔の懐に潜り込むことに成功した奏は、刀を振り下ろした体勢のままその全身に霊力を漲らせると、刃を返す。

 そうして今度は、妖魔の胴体に渾身の斬り上げを叩き込もうと一歩踏み出したその瞬間。

 

「──きゃああああぁぁ!?」

 

 斬り落とされたはずの妖魔の足が、光を放ったかと思うと爆発。

 至近距離でその爆発をもろに受けた奏は、その勢いで大きく吹き飛び──ボロボロになった状態で地面を転がる。

 

「ぐ、うぅ……。ふ、不覚……!」

「奏!?」

 

 爆発の衝撃で刀が中ほどから折れ、妖気にその身を蝕まれながらも奏の闘志は折れていない。気丈に妖魔を睨みつける奏であったが──それでも体が言うことを聞かないのか、立ち上がることが出来ないようだ。

 そんな奏に対し、妖魔がトドメを刺さんとその巨体を持ち上げ、その鋭い足で奏を貫かんと全体重を乗せた突きを放ち──。

 

「こ、のぉっ──!」

 

 大慌てで駆け付けた緋乃の飛び蹴りが妖魔に炸裂。妖魔はその胴体部分を大きく凹ませながら吹き飛んだ。

 

「あ、ありがと緋乃……。助けられちゃったね……」

 

 これまで、緋乃からは尻尾を利用した攻撃しか受けていなかったからだろうか。

 緋乃の飛び蹴りをまともに食らった妖魔は大きく吹き飛び、神社横の雑木林へと投げ出されていた。

 

「当然でしょ! それより奏は大丈夫なの!? モロに爆発食らってたけど……!」

「う、うん……。骨とかは折れてないし、妖気さえ抜ければ、平気かな……」

 

 そんな妖魔を尻目に、倒れた奏の心配をする緋乃。

 奏は緋乃から差し出された手を取ると、それを支えに、何とかといった様子で立ち上がる。

 

「ふふ、なんだか、緋乃には助けられてばっかだね……」

「ここから先は、わたしがやるよ。奏のおかげでミサイルポッドは潰せたし、足も斬り落としてくれたからもう楽勝だよ」

 

 緋乃が言い終えると同時に、雑木林の中から妖魔が這い出てくる。

 その胴体部分は緋乃の尻尾攻撃と先ほどの飛び蹴りにより大きく凹み、さらに奏に斬られた足の部分からは妖気が漏れ出ていたりと、まさに満身創痍といった状態だ。

 

「生物型と違って、逃げ出そうとしないのは賢いね。逃げてくれたら、簡単に始末できたのに」

 

 妖魔の口に妖力が集中するのを見ながら、緋乃が呟きを漏らす。

 もちろん、いつ妖力弾を撃たれても良いようにと、尻尾を構えることも忘れてはいない。

 そうして互いに距離を開けたまま睨み合う緋乃と妖魔。

 

「来ないのなら──おっと!」

 

 自分から動く様子を見せぬ妖魔に対し、緋乃が仕掛けようとしたその瞬間。

 妖魔はその腹部を持ち上げると、尻の先端より白い糸のようなものを吐き出した。

 緋乃は即座に飛びずさり、その糸を回避する。

 

「なるほどね。でも、こんなものがわたしに──」

 

 一瞬前まで自身のいた地点に着弾する糸を見て、この糸が高い粘着性により相手に絡みつき、その動きを封じることが目的の捕縛攻撃であるということを見抜いた緋乃。

 しかし、糸へと目を向けていた緋乃がいざ妖魔へと目線を戻せば、まるで投網のように糸が大量に撒き散らされる光景であり──そのあまりの糸の量に緋乃が慌てた声を出す。

 

「──っちょ! 多い多い!」

「緋乃ー!」

 

 糸に囲まれた緋乃を見て、絶体絶命のピンチとでも思ったのだろう。

 戦う緋乃の邪魔にならないよう、離れていた奏が大声を上げる。

 しかし、奏の声を聞いた緋乃はニヤリと悪戯めいた笑みを浮かべると──その青い瞳を輝かせ、自身の持つギフトを発動させる。

 

「なっ、糸が……!」

「これぞ秘儀、糸返し──なんてね」

 

 緋乃へと覆いかぶさるように飛んできた糸が、突如妖魔に向かって猛スピードで飛んでいき、その全身へと降り注ぐ。

 緋乃が自身へと降り注ぐ糸の軌跡上に、妖魔の方向に目掛けて働く高重力場を作り出したのだ。

 そして糸は緋乃の作り出した重力に従い、妖魔目掛けて高速で()()()()()()というわけだが──緋乃の真のギフトを知らぬ奏や、また緋乃が超能力者であるということを知らぬ妖魔にとっては予想外の一手であったのだろう。

 驚愕に目を見開く奏に対し、おちゃらけた声を返しながら──緋乃はその尻尾を操り、動きを封じられた妖魔へと攻撃を加える。

 

「ちっ……。わかっていたけど無駄に硬いね……」

 

 上下左右、縦横無尽に駆け巡る緋乃の尻尾はあらゆる方向から妖魔を襲う。

 まずは距離を詰める勢いをそのまま利用した真正面からの一撃。しかし予想以上に硬い装甲に阻まれる。

 ならば次は重力を味方につけた一撃だと、緋乃は弾かれた勢いを利用して尻尾を天高く伸ばし、そのまま真下に向けて撃ちおろす──が、この一撃も装甲を大きく凹ませはしたものの、貫通には至らない。

 正面も上も駄目なら横だと、今度は右側面から尻尾を撃ち込む。弾かれた。左側面から撃ち込んだ。弾かれた。

 

(うーん、中々貫けないなぁ。全力攻撃をするにはちょっと距離が短すぎるし……。わたしの超必殺技(ブレイジングバスター)ならたぶん一撃だけど、あれは周辺被害が馬鹿にならない上に滅茶苦茶目立つから使うなって言われて──お、いいこと思いついちゃったかも?)

 

 緋乃の尻尾攻撃は互いの距離が開いていれば開いているほど破壊力の増す攻撃であり──それでも10m程度の距離があれば、過剰とも言える攻撃力を発揮できるのだが──現在の距離では妖魔の装甲を貫けないと判断した緋乃は、新たな思い付きを実行に移すために尻尾を引き戻す。

 

(変形しろ~、変形しろ~。わたしの尻尾よ、全てを貫く最強の矛と化せ……むんっ!)

 

 思い描くは、あらゆる障害を貫き抉る、男の子ならみんな大好きな究極兵器。

 緋乃の尻尾は主からの念を受け取ると、そのイメージに従って先端部分の刃を変形させていく。

 ダガーナイフを思わせるようなその鋭い刃が捻じれていき──ついには、まるでドリルのような刃へとその姿を変えた。

 

(お、これはいい感じじゃない? あとはこれを回転させて……。うんうん、回転速度もいい感じだし、一発成功とはさすがわたしだね……。ふふ、わたしってば、もしかして悪魔としての才能もあっちゃったりするのかな?)

 

 そうして変化した刃は緋乃の意志に従い、根本の部分から高速で回転。

 キュイーンという音を響かせる尻尾を見て、満足気な笑みを浮かべる緋乃。

 と、それと同時に妖魔に絡みついていた白い糸が消失。緋乃の嵐のような攻撃が止んだこともあり、自由を取り戻した妖魔が緋乃を睨みつけるかのようにそのカメラアイを赤く光らせる。

 

(なるほどね。そりゃ妖力で編んだ糸なら、消すのも自在だよね……。でも、これならあのまま尻尾で小突き回して、糸を消す余裕を与えない方がよかったかな? ──いや、あのまま突っついてても奴の装甲は抜けないと思うし、こっちの方が正しいハズ)

 

 ほんの一瞬ではあるが、自身の選択に軽く後悔する緋乃。

 だが、その後悔も一瞬のこと。すぐに気を取り直すと尻尾に力を籠める。

 

「わたしの新必殺技の実験台になれることを誇るがいいよ……!」

 

 先ほどのドリルのように回転する尻尾を見たのか、それとも尻尾の先端の形状から推測したのか。

 妖魔はその口に素早く妖力を溜めると、緋乃目掛けて連続で発射する。

 それと同時に、胴体の凹みが急速に治っていき──背中からはミサイルランチャーが、腹の部分からは大口径の砲台がせり出してきた。

 

「無駄な抵抗を……! 食ら、え──!」

 

 緋乃は素早く飛び退いて連射される妖力弾を回避すると、着地と同時に、先端の刃を高速回転させた尻尾を妖魔目掛けて勢いよく伸ばす。

 緋乃の新たなる力、ドリルと化した尻尾は自身目掛けて連射される妖力弾を貫きつつ、そのまま堅固な装甲を誇る妖魔本体へと突き刺さり──ついにその装甲へと穴を開ける。

 そうして妖魔の装甲を突き破った緋乃は、あえて尻尾を貫通させずに妖魔の体内に止めておき──。

 

「はじけろぉ!」

 

 尻尾の先端に向けて膨大な気を一気に流し込むと、これを起爆。

 内部からの破壊にはその鉄壁の装甲も何の意味をなさず──むしろその装甲が仇となり、妖魔は体内から破壊し尽くされて消滅するのであった。




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