『こ、小娘ぇ──!』
「嘘!? かった!」
ドリルへと変形させた尻尾と、重力操作の異能を組み合わせた、緋乃のとっておきの一撃。
しかし、緋乃が自信を持って放ったその一撃は、滅亀の甲羅を貫きこそしたものの──その体を貫通するまでには至らなかった。
その予想よりも圧倒的に高い防御力に対し、緋乃は思わず驚愕の声を上げてしまう。
(ええい、まさかわたしの尻尾を止めるなんて……! まあいい、刺さるには刺さったんだ! なら──)
絶対の自信を持っていた必殺技が、思うような効果を発揮しなかったのだ。
その事実を前に、ショックを隠せない緋乃であったが、すぐに気を取り直すと次の手を打つ。
ほんの少しだけ尻尾をたわめると、そのまま空中で体勢を変更。素早く右脚を滅亀の方へと向け、その足首へと尻尾を巻きつける。
(よし、あとはこのまま……)
あとは、尻尾を全力で縮めるのみ。そうすれば、緋乃の身体は右足を先にして──要は飛び蹴りの形で──滅亀へと猛スピードで突撃できる。
移動と攻撃を兼ねた、現状況において最良と思われる一手。しかし、緋乃がいざそれを実行しようとしたその時。
『許さんぞ!』
(うそっ!? や、やだ、なにそれ!)
滅亀の甲羅部分より、数十本もの鋭いトゲが次々と生えてきた。
先端が鋭く尖ったそのトゲは、一本当たりが緋乃の脚にも匹敵する大きさであり、まともに食らってしまえばただでは済まないだろうことは明らかだ。
『死ねぇ!』
そうしてその大量のトゲは、滅亀が叫ぶと同時に、上空の緋乃目掛けて勢いよく発射された。
激しい炸裂音と共に発射されたそのトゲは、まるでミサイルのように、煙の尾を引きながら緋乃へと迫る。
「ぐっ! このぉ──!」
トゲの速度は速く、迷っている時間などない。緋乃は即座に迎撃を選択した。
右脚を胸に当たるくらいに持ち上げると、トゲに向かってその足裏を全力で叩きつける。
そうしてトゲを粉砕すると、素早く右脚を持ち上げ、再びトゲに向かって全力で叩きつける。
渾身の気を込めた、右足による蹴りの連打。嵐のように襲い掛かる大量のトゲに対し、緋乃は必死に蹴りを繰り出し続けた。
「うりゃあああぁぁ!」
直径10cm以上はある先端の尖った砲弾が、音よりも早く飛んでくるのだ。
しかも、この砲弾は気と相殺し合う妖気によって形成されているときた。
もし仮に、緋乃が迎撃ではなく、気のバリアによる防御を選択していれば。確実に緋乃は重傷を負って戦闘不能になっていたことであろう。
そうして緋乃は、ひたすらにトゲを蹴り壊し続け──なんとかこれを切り抜けたと、そう思った次の瞬間。
『くたばりな!』
「ふう、あぶな──きゃああぁぁぁ!?」
なんとか窮地を脱したかと思った緋乃の目に、まるで津波のように押し寄せる真紅の奔流が映る。
そう、緋乃がトゲの迎撃に必死になっている間に、妖力のチャージを済ませた滅亀が妖力砲を放ったのだ。
チャージ時間の関係上、退魔師たちに向けていたそれに比べれば遥かに劣る威力ではあるものの、退魔師一人を葬るには十分以上の威力であり──真紅の閃光が悲鳴を上げる緋乃を飲み込み、派手に爆煙を巻き上げた。
「は、はひぃ……。今度こそダメかと思ったぁ……」
爆煙の中、なんとか追撃の妖力砲を凌ぎ切った緋乃は安堵の息を漏らす。
緋乃は砲撃が直撃する寸前。全身に気のバリアを纏うことで、これを防ぐことに成功したのだ。
とはいえ、防御が間に合ったのは本当にギリギリのことであり。
緋乃自身ですら、よく間に合ったものだと自分の反応速度に驚いていたりするのだが。
(今のは本当に危なかった……。でも、何とかしのげたし、今度こそこっちの番だ!)
緋乃は早鐘を打つ心臓を抑えながら、素早く呼吸を整えると、今度こそ滅亀へと強襲を仕掛けんとその体制を整える。
右足の先を滅亀へと向け、飛び蹴りの姿勢を取ると、その尻尾を一気に縮め──。
「く、ら、えー!」
『グヌウウウ!?』
滅亀の甲羅へと、流星のように飛来した緋乃の右足が突き刺さる。
その衝撃で、尻尾が突き刺さったことでその強度を落としていた甲羅は大きく凹み、また同時に大きなひびが入り──滅亀は悲鳴を上げながら吹き飛んでゆく。
「これぞ名付けて流星脚ってね! さぁ、どんどん行くよ!」
即興で今叩き込んだ蹴りを流星脚と名付けた緋乃は、蹴りの反動で抜けた尻尾を縮めながら地面へと着地すると、吹き飛んだ滅亀をダッシュで追いかける。
そうして滅亀との距離を一瞬にして詰めた緋乃は、その右足に気を集中させ、今だ体勢の整っていない滅亀へと強烈な前蹴りを放つ。
「吹っ飛べぇ!」
緋乃の履くブーツの底が、滅亀の腹部分へとめり込んで、新たなひび割れを作り上げる。
その衝撃で再度吹き飛び、転がる滅亀であったが──。
『ガアアァァ!? お、おのれ──!』
「おおっと! 甘いっ!」
やられてばかりではいられまいと、地面を強く叩くことで無理矢理に体を起こした滅亀は、即座に地面より岩の槍を生やす術を行使。
かつて、霊脈を維持管理する退魔師の男を不意打ちで葬った術式だ。
滅亀はその術式を以って、自身へと更なる追撃を加えようとする緋乃を串刺しにせんとするのだが──緋乃はその術をあっさりと回避すると、そのまま滅亀の懐へと潜り込み、その脚を天高く突き上げた。
『──グガァ!?』
緋乃の踵が滅亀の胴体へと突き刺さり、その圧倒的重量を誇る巨体を宙へと浮かす。
そうして右脚一本で滅亀を持ち上げた緋乃は、渾身の気をそこへと送り込む。
放つのは勿論、近接戦闘における緋乃の必殺技。手や足で掴み上げた相手に、ゼロ距離で気の爆発を叩き込むという、膨大な気を保有する緋乃だからこそ許された絶技。
「はじけろぉ!」
『グオアァァ!?』
緋乃が気合の叫びを上げるとともに、白光が駆け抜け、轟音が響き渡る。
正真正銘、本気の一撃。人間に向かって放てば、相手を跡形もなく消し飛ばしてしまうであろう禁忌の一撃だ。
しかし、今回技を受けた相手は人間ではなく妖怪。それも妖怪の中でも最上位クラスの、大妖怪と呼ばれる存在。
人間とは別次元の耐久力を誇る相手であり──現に、緋乃の必殺技を受けたことで吹き飛び、そのボディを欠損こそしたものの、まだまだ戦闘に支障はない様子だ。
『お、おのれ……!』
「ふぅ……、しぶといね……」
爆撃を叩き込んだ緋乃は、素早くバックステップをして滅亀との距離を取る。
トゲの迎撃に始まり、これまで全力で攻撃を繰り出し続けていた反動が押し寄せてきたのだ。
10m程の距離を開け、深呼吸をし、息を整えながら滅亀を観察する緋乃。
こちらに対する恨み言を言いつつも、受けたダメージを再生していく相手の様子を見て、緋乃はうんざりとした声を上げる。
(でも、連続攻撃自体は結構効いたみたいだね。最初は物凄かった妖気が、一回りは減った気がする。まあ、こっちも結構消耗しちゃったけど……)
純粋な気の大きさでは緋乃よりも滅亀の方に軍配が上がるものの、今戦いを有利に進めているのは緋乃の方だ。
巨体ゆえの小回りの利かなさもあるだろうが……恐らく、強者との戦闘経験も足りないのであろう。
ただし、純粋な火力と耐久力という面では自身を圧倒しているため、油断はできないと緋乃は気を引き締める。
(わたしの気の回復速度は人間よりも圧倒的に速い。でもそれはあっちも一緒……いや、純度100%妖怪のあっちの方が回復速度は速いはず。持久戦は不利、速攻で決めに行かないといけないんだけど……さてさて、どう仕留めたものかな?)
重力操作のギフトを併用した、必殺のドリル尻尾は分厚い装甲で止められた。
連続蹴りも
(いや、貫通こそできなかったけど、わたしの尻尾は奴の装甲を貫くことには成功したんだ。もう一度ぶっ刺して、尻尾経由で気を流し込んでやれば──)
≪緋乃! 聞こえてる!? 聞こえてたら右足で足踏み二回!≫
緋乃が次なる攻め手を決めた瞬間。突如、その脳内に明乃の声が響く。
(この声、明乃? え、どうして明乃の声が──)
≪さっさと返事ィ!≫
(ひゃ、ひゃい!?)
予想外の声に混乱する緋乃であったが、怒声を上げられたことで、すぐに我を取り戻した緋乃は、身を竦ませつつも素早く足踏みを二回繰り返す。
≪よし、聞こえてるわね! 戦闘中だから手短に言うわ!
(うわあい、すっごい強引だあ!? 事情の説明とか、もっとしてよ!)
≪さん! にい!≫
緋乃のジェスチャーを確認したのであろう明乃は、満足気な声で援護を行うことを告げると、そのまま一方的にカウントを開始しだした。
どうやらこのテレパシーは一方通行のようであり、明乃の側に緋乃の声は届いていないようだ。
それを理解した緋乃は、二つ目のカウントを聞くと同時に大慌てでその場に伏せた。
──どんな攻撃をするのかは知らないけど、なんとなく不味い気がする。
背筋に悪寒が走るのを感じつつ、明乃の指示に従った緋乃の瞳に、突如謎の行動を取った自身へと困惑する滅亀の様子が映り──。
≪いち! ちぇすとおおおぉぉ!≫
直後。周囲の木々を断ち切りながら、明乃の
『グ、ヌアアアアア!?』
緋乃の背後より、横薙ぎに放たれた見えない巨大斬撃。
それをまともに受けた滅亀のボディに、深い斬撃痕が刻まれる。
「おお、すごい……! すごいよ明乃!」
巨大な傷痕より、血の代わりに黒いもやのような瘴気を吹き出す滅亀。
その光景を見て、緋乃が感嘆の声を漏らしていると、背後からがさがさと落ち葉を踏みしめる音が聞こえてきた。
緋乃はいつの間にか強力な技を身に着けていた大親友を褒め称えるべく、笑顔で振り返るのだが……。
「はぁ……はぁ……。ど、どんな、もんよ……」
「めっちゃ息上がってる──!?」
緋乃の目に映ったのは、汗をダラダラと流して、全力で呼吸を整えている際中の明乃の姿であった。
その予想をはるかに超える勢いで疲労している明乃を見て、思わず突っ込みの声を上げてしまう緋乃。
「めっちゃヘロヘロじゃん! そんなんじゃ戦えないでしょ!? 何しに来たの!」
「う、うる、さい……! 全力、ダッシュで……! 山登り、させられた、こっちの身にも、なれ……!」
緋乃の発言に対し、せき込みながらも抗議の声を上げる明乃。
──ああうん。確かに結構高い山だったし、木もいっぱい生えてるし、下から登るのはちょっと面倒だよね。わたしは尻尾でショートカットしたけど。
明乃に対し呆れた目を向けつつも、内心では明乃の現状に対して納得の声を上げる緋乃。
しかし、いくらなんでもこの状況はひどすぎる。雑魚が相手ならまだしも、今戦っている相手はかなりの強敵。
緋乃自身が超強化されているために、かつて戦った次元の悪魔ことゲルセミウムほどの脅威は感じないが……それでも緋乃単独ではギリギリ勝てるかどうか、といった具合の強敵だ。
少なくとも、疲労困憊状態の明乃を庇いながら勝てる相手ではない。
「ああもう、ここは危ないから早く帰って──」
「まちな、さいよ……! ちゃんと、回復手段は、用意してきたんだから……!」
明乃はそう口にすると、スマホを取り出して何タップか軽く操作を行う。
すると、明乃の左手が──いや、正確には明乃の嵌めている銀色の指輪が──光り輝き、その光が明乃の身体を包み込んでいく。
「ふぅ……生き返るわ……。理奈に頼んどいた、生命力譲渡の魔法よ。このあたしが何の対策もせず、ヘロヘロ状態で援護に駆け付ける訳ないじゃん?」
「ああ、うん。そうだったんだね……」
はい、思ってましたと言う訳にもいかず、目を逸らしながら曖昧な返事を返す緋乃。
そんな緋乃に対し、明乃は軽く目を細めて唇の端をヒクつかせると、そのまま状況説明に戻った。
「ちなみに、理奈は今のでスタミナ使い果たしてるから来れないわよ。まあ、退魔師と魔法使いって仲が死ぬほど悪いから、元々来れないんだけどね」
「ああ、そういえばそんなこと聞いたような」
元からこの国を陰ながら守護していた退魔師と、後からやってきた魔法使いの関係はかなり悪いものであり、退魔師たちは自分たちの縄張りで魔法使いが幅を利かせることを良しとしない。
どうやら妖怪が暴れ出そうとしているこの状況でもそのルールは適応されているらしく──総一郎をはじめ、若い退魔師はそこまで気にしていないのだが、老人たちは異様に魔法使いを敵視しているのだ──それが、理奈が緋乃たちの手伝いに来れない理由でもあった。
『貴様は……! あの時の!』
「あれ、知り合いだったんだ明乃」
「いやいや、知るわけないじゃないの。初対面よ初対面」
緋乃と明乃が状況について話し合い、回復をしているその隙に。
最低限の再生を終えた滅亀が恨み言をふと漏らし。そして、それを耳ざとく聞き止めた緋乃は、その恨み言をネタに明乃をからかう。
「まあ、冗談はさておき、これで二対一だよ。悪く思わないでよね?」
「進化したあたしの力、見せてあげるわ緋乃!」
『チッ……面倒な……』
自信満々に構えを取る緋乃と明乃を見て、心底厄介そうな声を漏らす滅亀。
しかし当然だろう。緋乃一人にあれだけ手を焼いていたというのに、そこに増援が登場したのだから。
しかも、先の一撃によりその実力の高さは証明済みだ。滅亀が厄介に思うのも当たり前のことである。
「……わたしが先行するよ。明乃は援護よろしく」
「ちぇ、しょうがないわね。まあ、いいわよ。ここには弾もいっぱいあるし……あたしの新技、サイコカッターと合わせれば……」
そうして睨み合う二人と一匹。互いに仕掛けるタイミングを窺い、緊張感で空気が張り詰め──ほぼ同時に動きを取ろうとしたその刹那。
「油断大敵だぞ、妖怪」
激しい闘いの騒音や、また大量に生える木々に紛れて接近していたのであろう。
紫電を纏う直刀をその右手に握った総一郎が現れ、背後から滅亀を大きく斬りつけた。
『グオァ!? き、貴様──!』
緋乃と明乃の二人に注目していたであろう滅亀にとって、意識の外からの奇襲攻撃。
それを受けた滅亀は、呻き声を上げつつも、素早くその背からトゲを生やし──即座に背後の総一郎目掛けて撃ち込んだ。
総一郎はそれを背後に飛び退いてかわすのだが、それを追いかけるかのように次々と放たれるトゲミサイル。
しかし、ほんの一瞬ではあるが、背後の総一郎へ気を取られてしまったその一瞬が命取りだった。
滅亀にとっての敵は背後だけではなく、真正面にもいるのだから。
それも、とびっきりに強い少女が二人もだ。
「貰ったァ!」
滅亀が総一郎へと注意を割いたその隙をつき、明乃は滅亀へと向かって手刀を振るう。
明乃の腕が振るわれると同時に、その髪が薄く輝いたかと思うと、見えない斬撃が滅亀を襲った。
『グヌウウウ!』
「隙ありだよ!」
明乃のサイコカッターが直撃し、怯む滅亀。
当然、そんな大チャンスを見逃す緋乃ではない。
明乃がその腕を振るうと同時に素早く駆け出していた緋乃は、その勢いのまま跳躍。滅亀の顔面へと、渾身の踵落としを叩き込む。
『ガッ!?』
「まだまだぁ!」
そうしてそのまま始まる緋乃の連続攻撃。
地面へと着地した緋乃は、素早く左のハイキックを繰り出して滅亀の顔面を蹴り飛ばし。
そのまま踏み込みつつ、その勢いを利用した前蹴りを繰り出して滅亀を悶絶させ。
前蹴りの勢いで後ずさる滅亀の側面に回り込むと、再び跳び上がりつつその右脚を大開脚。
勢いよく踵を振り下ろし、踏ん張る滅亀へ横方向の衝撃を加えて、今度こそ吹き飛ばす。
「おおっとお、あたしも忘れないでよね!」
そうして緋乃と滅亀の距離が開いた瞬間。
念力によって保護・強化された巨大な木の杭が滅亀へと次々と降り注ぐ。
緋乃が滅亀を叩きのめしている間に、明乃は念動力により手ごろな木を引き抜き持ち上げ、そのまま念力による切断で雑に杭として加工していたのだ。
『グオオオォォォォォ──!?』
「──チャンス!」
さすがの防御力か、貫通とまではいかなかったものの、杭が突き刺さったことで悲鳴を上げる滅亀。
本気で苦しそうな叫び声を上げるその姿からは、これまではあった余裕というものが一切感じられず──それを見た緋乃は、今度こそトドメを刺すべくその尻尾へと力を込める。
(明乃と総一郎も来てくれたし予定変更! 全力全開の尻尾ドリルでぶち抜いてやる!)
尻尾の先端が螺旋状に変形しながら、斜め後方へと天高く伸びていく。
半精神体である緋乃の尻尾は、緋乃の精神状態によってスペックが大きく変化する。
強気なときはより強固に、逆に弱気なときは貧弱に。それが緋乃の尻尾の利点であり、欠点だ。
しかし今、強敵を倒す大チャンスを前にした緋乃のテンションは最高潮。尻尾はいつもよりも速く、音速の数十倍のスピードでグングンと伸びていき──。
『クソがぁ! こんなところで、終わってたまるかァ──!!』
その光景を目にした滅亀の背より、大量のトゲが生え、口には膨大な妖力が溜まっていく。
さらにそれと同時に、緋乃の周囲の地面が揺れ、ひび割れが入る。
トゲミサイルに妖力砲に
「無駄な抵抗を……! 大人しく散れ!」
「させるわけ、ないでしょーが! この、スカポンタンが!」
しかし、当然ながら総一郎と明乃の二人がその滅亀の攻撃へと割って入る。
発動直前だった大地の槍は、地面に触れた総一郎が同系の術式を使うことで妨害。
トゲミサイルも明乃の念動力砲で大半が討ち落とされ、残りの分も跳躍した総一郎に両断されて爆散。
最後の妖力砲も、発射直前にダッシュで駆け寄った明乃の、気に加えて念動力を上乗せした手刀。言うなれば、ゼロ距離サイコカッターことサイコソードで、溜めた妖力ごと頭部を断ち切られて不発に終わる。
『グアアアアァァ! 貴様、貴様貴様貴様! キサマらァ──!?』
「見苦しいぞ、貴様の敗北だ!」
「緋乃は! あたしが! 守る!」
総一郎と明乃の二人によって全ての抵抗を潰された滅亀は、最後の手段としてその重量を活かした体当たりを繰り出そうと踏み込むのだが──総一郎の術式により、周囲の木々から伸びてきた蔦のようなもので縛り上げられ、さらに明乃の渾身の念力で地面へと圧し潰されることで、その悪あがきも封じられ。
打つ手の無くなった滅亀は、ただひたすらに憎悪に満ちた叫びを上げる。
「おまたせ、二人ともありがとう! ……さっきは距離が近かったからぶち抜けなかったんだ! だったら! これならどうだぁ!」
そうして、今度こそ滅亀が抵抗手段を失うと同時に、緋乃も攻撃準備を完了。
天高く伸ばした尻尾の先に、滅亀まで続く高重力の小さなトンネルを作り上げると、その中へと尻尾を通す。
甲高い音をたてて高速回転する刃が、重力の影響を受けて超加速。
身動きの取れない滅亀目掛けて、今度こそそのボディを貫通せんと、緋乃の尻尾が唸りを上げ──その射線上に、薄いガラスのような障壁が展開された。
おそらくは妖力による防御結界だろう。しかし、もう関係ない。そんな薄っぺらな障壁で、わたしの尻尾を止められるものかと緋乃は攻撃続行を選択。そして──。
「くらええぇぇぇ!」
『グオオオォォ!?』
直撃。緋乃の尻尾は滅亀が張った妖力による障壁を粉砕。そのままその分厚い装甲をも粉砕し、肉体に食い込み──そこで止まった。
『ど、どうだこの野郎……!』
「……!」
また止められた。仕留めきれなかった。
必殺の一撃を二度も止められたことに驚愕する緋乃であったが、しかし同時に、仕止め損なうことも想定していた緋乃の行動は早かった。
尻尾が止められたと判断したその瞬間。緋乃は尻尾の先端部分から、ウニのように棘を生やして絶対に抜けないようにすると、そのまま両脚に力を込めてその場で大ジャンプ。
滅亀へと尻尾を撃ち込んだまま、その上空へと体を置いた。
(こうなったら、わたしの最大火力で仕留めるまで! 尻尾の戻る力を使えば、いつもより低い高度でこれまで以上の火力を出せるはず……!)
滅亀の直上へと陣取った緋乃は、その左足首へと尻尾を巻き付けると同時に右脚を掲げてI字バランスの体勢をとる。
一瞬で超必殺技の準備を終えた緋乃は、尻尾を全力で縮めると同時に重力操作の異能を全力で発動。
超スピードで滅亀へと向かって落下していき──。
「逝っけえええぇぇぇぇ!」
『チッ、チクショオオオオオ!』
着弾。周囲へと派手に土煙を巻き上げながら──見苦しい叫びを上げる、最新にして最先端を行く大妖怪を粉砕するのであった。