目指すは地球の最強種   作:ジェム足りない

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7話 探索

「進んでも進んでも木、木、木。いつまで経っても似たような光景だし、地面はでこぼこしてて地味に歩きづらいし、虫は勝手にわたしの視界に入ってくるし……。なんかうんざりだね」

『だから最初に言ったのに……。いくら緋乃ちゃんでも山は大変だろうから、私が抱き抱えて一緒に飛ぼうかって』

 

 緋乃たちの住む勝陽市から、電車で一時間ほど離れた場所にある森林地帯。

 道なき道を歩む緋乃がふと漏らした愚痴に、その上空をステルス状態で飛行する理奈が反応。緋乃が左手に嵌めている魔法受信体である指輪を経由し、呆れ半分といった様子の念話を返してきた。

 

『というか……秘密研究所とやらを探すのなら、私だけでもよかったんじゃ?』

「いやいや。わたしの都合に理奈を巻き込んどいて、それを丸投げするってのは流石に……ねえ?」

 

 続けて理奈から送られてきた念話に、今度は緋乃が反論する。

 緋乃と理奈の二人は現在、冬休みということを利用して、恭二たち管理機構の掴んだ情報──この森林のどこかに、犯罪結社(ユグドラシル)の隠し研究所がある()()()()()()という情報を追っていた。

 ちなみに理奈がこの場に同行しているのは、武力以外はからっきしであるという自覚のある緋乃が泣きついた結果である。

 

『私は気にしないからいいのに〜』

「わたしが気にするの。……それにもしかしたら、見つかって戦闘になるかもしれないんだしさ」

『心配性だねー。言っとくけど、科学的なスキャンじゃ私のステルスは見破れないよ? ジャンルが違うもん。あとそれに、私だって足手纏いにならないよう、鍛え直したんだからね!』

 

 捜索は自分に任せて、緋乃は待っていればいいと言う理奈。

 そんな理奈に対し、緋乃は自分なりの理由を告げるものの、理奈はそんな緋乃の心配を笑い飛ばすかのように明るい声を出す。

 

「それはまあ、知ってるけど……。……まあともかく、理奈一人に任せるのも、理奈に抱えてもらうのも無し! 理奈の魔法こそが今回の探索の要なわけだし? 余分な魔力を使わせちゃうのは不味いでしょ。少しだけならともかく、長い間わたしを抱えて飛ぶのは疲れるでしょ?」

『まあねえ。確かに緋乃ちゃんは余分な肉がついてない無い分、抱き心地に関しては完璧とは言い難いかもね。でもその代わりに、お肌はすべすべで手触りは最高だし、いい匂いもするからトータルでは──』

「……何の話をしてるのよ。やっぱり下歩いて正解だったね。無意識に正解を選び取ってしまうとは、さすがわたし。さすわた」

『がーん。負担を一方的に押し付けてる負い目から、何されても断れない緋乃ちゃんにあんなことやこんなことをする計画がぁ……!』

 

 互いに互いを心配していたはずが、気づけばいつも通りの雑談を繰り広げていた二人。

 どちらからともなく小さな笑い声が上がり、それに合わせて緋乃の心も晴れやかな物へとなっていく。

 

「ところでどう? 何か怪しい建物とか見えた?」

『ぜーんぜん。あんまり街から離れすぎると、補給や建設的な意味でも大変だと思うから、もうそろそろあってもよさそうなんだけどねー』

「そっか……」

 

 それなりの距離を移動したのだし、そろそろ何かあってもいいんじゃないかなと思った緋乃は、ほんの僅かな期待を込めて理奈に念話を飛ばす。

 しかし残念ながら、理奈より帰ってきた言葉は否。

 その返事を受けた緋乃は、ジャケットからスマホを取り出すと現在時刻を確認し、そのまま数秒ほど考え込んだ後に口を開く。

 

「もっと奥の方にあるのか、それともただのガセネタだったのか。とりあえず、もう13時だし……あと30分ほど進んで、それでも見つからないなら今日のところは帰ろっか」

『りょーかーい』

 

 その後も緋乃は、獣道すらない未開の森の中を、理奈の先導に従って歩き続ける。

 

「でね、明乃はそのギガ盛りMAX昇天丼を食べきったんだけど……写真撮影の後、そのまま笑顔で『第二ラウンドいいかしら?』とか言い出してね?」

『あはは、そりゃ店長さんも引くよねー。というか、明らかにオーバーサイズの量を平然と収める上に、微塵も出っぱらない明乃ちゃんのあの腹はどうなってるんだろうね……』

 

 地面から飛び出た木の根や、常人ならば諦めて迂回するであろう急斜面を軽快に飛び越え飛び降り。

 

「そこで相手チームの頭がなんか急にキレてね。チェーンぶん回しながらバイクで突撃してきたの。まあ普通に蹴りと尻尾を叩き込んで、木っ端微塵にしてやったんだけど。そしたらさ──」

『あ、あはは……怪我じゃなくて、相棒のバイクが爆散したことへの涙ね……。というか頑丈だねその人たち……』

 

 尻尾をアンカーとして崖上の木に撃ち込むことで、それなりに高低差のある切り立った崖を雑に越え。

 理奈ととりとめのない話をしながら歩み続ける緋乃の前に。突如として、そいつは現れた。

 

〈フゴ!?〉

「お、ホーミング生肉発見伝」

 

 全身を黒い毛で覆われた、背の低い四つ足の獣。これといって何の特徴もない、ただの猪。

 恐らくは餌でも探していたのだろう。体長160cm程度のその猪は、木々の隙間からぬっと姿を現した緋乃を見て、驚いたかのように鳴き声を上げ硬直する。

 

『どうかしたのー? なんかあった?』

 

 急に足を止めた緋乃に対し、理奈が疑問の声を上げる。

 

「野生のイノシシみっけた。めっちゃキョドっててウケる」

『へー、ずいぶんと鈍臭い個体だね……。緋乃ちゃん、ふつーに音立てて移動してたでしょ?』

「うん。だから普通なら寄ってこないと思うんだけどね。人間さまの強さと怖さを知らないのかな?」

 

 獣としてみれば大型の分類に属するその肉体は、生半可な牙や爪などでは傷ひとつつかず。

 ひとたび腕や足を振るえば、自身より巨大な獣どころか、巨大な岩や木すら粉砕する。

 気の扱い方を身に着けた人間は、まさにこの地球における絶対王者。人間以外のあらゆる動物にとっての恐怖の象徴。

 故に、野生の獣は人間に決して近寄ろうとしない。人間の姿や気配を察知したとたんに、全力で逃げていくのだが……天敵に至近距離まで近づかれたことに混乱しているのか。

 その猪は、周囲をきょろきょろと見回したりと挙動不審な様子を見せつつも、なかなか逃げるそぶりを見せようとしなかった。

 

「……なんか威嚇してきてるんだけど。いくらなんでもナマイキすぎない?」

 

 しかもそれどころか、緋乃を威嚇するかのように背中の毛を逆立てて、唸り声まで上げる始末。

 最初は猪の混乱する様子を眺めて笑っていた緋乃も、これにはキレた。

 薄汚くみすぼらしい獣風情が、万物の霊長たる人間様に。その中でも上から数えた方が早いであろう戦闘力を持つ、このわたしを威嚇? ふざけてる、許せない。絶対に許せない。

 緋乃の顔から一切の表情が抜け落ちていき、衣服や素肌を守るために纏っていた気が、より一層大きなものへと──戦闘用のそれへとなっていく。

 

「……ころそ」

 

 緋乃の変化を感じ取ったのであろう猪が、怯えた様子でその身を跳ねさせるが、時すでに遅し。

 今更そんな態度を取ったところで、緋乃の行動は変わらない。無礼な弱者には死あるのみ、だ。

 

(ま、来世ではこの反省を生かして、人間さまには絶対に近寄らないことだね……!)

 

 そうして緋乃が無礼な態度を取った猪を始末すべく、全身に気を漲らせながら一歩踏み出したその瞬間。

 

『えー、見逃してあげなよ緋乃ちゃん。可哀想だし……なにより、野生とかばっちいよ?』

 

 理奈が念話で割り込みをかけてきた。

 

「むう……。確かに、言われてみれば汚いね……」

『でしょ? それに、無益な殺生はよくないって言うじゃない?』

「……運が良かったね。ほら、どっかいけ」

 

 自身を諫める理奈の声に従い、猪を見逃すことにした緋乃。

 緋乃は知性に乏しい猪にも理解できるよう、伸ばした尻尾をこれ見よがしに引き絞ると、猪の真横の木へと撃ち込みこれを貫く。

 その光景を見て、猪も圧倒的な力の差について理解したのであろう。

 緋乃に対し背中を向けると、一目散に逃げだしていった。

 

「おー、必死必死。……まったく、なんで弱い奴ほどナマイキなんだろうね。理解に苦しむよ」

『あはは、もしかしたらその猪も、緋乃ちゃんの可愛さにやられてたのかもよ? こんなかわいい女の子ならオレでも倒せるぜー、って感じで』

「そっか、かわいすぎるのも考え物だね……。ふふふっ」

『ふふっ、なんか緋乃ちゃんツボってて草』

 

 猪を追い払った緋乃たちは、雑談をしながら探索を再開。

 しかしこれといって特に怪しいものは見つからず、先ほど緋乃が定めたタイムリミットも刻一刻と近づいてくる。

 さすがにここまで来ると、緋乃と理奈の間にも諦めの雰囲気が漂い始め──緋乃が「予定よりも少し早いけど、ここらへんで切り上げよっか」と口を開こうとした、ちょうどその時。

 上空より森を観察していた理奈から、念話が送られてきた。

 

『……見つけたよ緋乃ちゃん。あっち。今の緋乃ちゃんから見て、左斜め前方に、茶色い建物』

「え、左斜め前? ……何もないけど?」

 

 緋乃は理奈の言葉に従って、理奈が示した方向へと目を凝らす。

 しかし、いくら緋乃が目を凝らしてもそんな建物は見つからない。見えるのは木だけだ。

 

「だろうね。私も通常の視界には映ってないし。ちょっと信じられないけど、光学迷彩とかそういうので隠してるんだろうね……。それより、とりあえず目標は見つけたけど……次はどうするの?」

「そだね……。とりあえず、その偽装を見抜く魔法ってわたしにもかけれる? わたしも確認したい」

「うん、まかせてー」

 

 目標物を発見した以上、上空に留まる理由はないとばかりに、理奈は飛行魔法を解除して地面へと降り立つ。

 そうして自身の横へと降り立った理奈に対し、緋乃は自分にも看破の魔法をかけて欲しいと要求。それを受けた理奈が何言か呟くと、緋乃の視界にもその茶色い建物が映った。

 木々の間に隠れるように建てられた、長方形の建築物。

 世界樹と思わしき大樹のエンブレムが飾られた、正門と思われる場所には見張りや警備員こそいないものの、複数台の監視カメラが設置されている。

 思っていたのよりも小さいのが気になるが……恐らくは地下にでも続いているのだろう。

 

「おー、見える見える。ありがとね理奈」

「どういたしまして。それで、次はどうするの? もっと近寄ってみる? それとも帰って報告?」

「うーん、時間は13時27分。まだまだ余裕あるね。んで、入り口はあそこか……。ふむぅ……」

 

 理奈の言葉を受けた緋乃は、スマホを取り出して現在時刻を確認するとそのまま顎に手を当てて考え込む。

 

「……ねぇ緋乃ちゃん。私達の役目はあくまで偵察。研究所の場所を見つけて、その情報を報告するのが仕事だよね?」

「うん、そうだよ。今日の目的はあくまで偵察」

 

 研究所の入り口をじーっと眺める緋乃を見て、何か嫌な予感でもしたのか。

 理奈は緋乃の左腕を両手で掴むと、今日の探索の目的を再度問いかける。

 

「うんうん、だよねー。……だったらさ、なんで、入口のほうに、歩いてるのかなぁ!?」

 

 しかし、理奈への回答とは裏腹に、緋乃は固く閉ざされた研究所の入り口へと、堂々と歩いていく。

 理奈はずりずりと引きずられながらも、緋乃に対し必死に抗議をする。が、緋乃はどこ吹く風といった様子で歩みを止めない。

 

「それはもちろん、偵察のためだよ理奈。せっかくここまで来たんだし、もっと情報を持って帰らないと勿体ないじゃん」

「嘘でしょ! ぜったい正面突破しようとしてるでしょこの脳筋! だめだって! 危ないから帰るよ緋乃ちゃん! ──それ!」

「えー、わたしなら大丈夫だよ。でも理奈は危ないから帰って──ふにゃ……」

 

 緋乃が本気で潜入という名の正面突破を行おうとしていることを察した理奈は、緋乃に対し精神操作の魔法を行使。

 左手に魔法受信体(指輪)を嵌めている緋乃は、理奈の洗脳呪文から逃げ出すことも出来ず。

 緋乃の表情がとろんと蕩けたようなものへと変化し──。

 

「──っは!? 危ない危ない! もう、なにするの理奈!」

 

 いざ完全に堕ちるという寸前で、なんとか踏みとどまることに成功する。

 魂が悪魔化した影響で、常人以下だった精神操作耐性が上昇した結果だ。

 

「ああ、無駄に上がった耐性が仇に! いいから、大人しくしててよぉ……!」

「あ、理奈やめ──ふにゅぅ……」

 

 ギリギリのところで理奈の精神操作を跳ねのけた緋乃であったが、それを確認した理奈は即座に次の手へと移行。

 素早く胸ポケットから魔法発動媒体であるカードを取り出し、これを発動。

 先ほどは緋乃の不意を打つため、精度の下がる無詠唱呪文を発動していたが今度は違う。

 きちんと正規の手順を踏んで発動した洗脳術は、十全の威力を発揮し──理奈の魔法を警戒して気を張っていた緋乃の意識を、一瞬で奪い去り完全に支配した。

 

「よしよし、上手くいったね。まったくもう……いくら緋乃ちゃんでも、正面から突っ込んでったら危ないに決まってるじゃん。さ、帰るよ緋乃ちゃん。ついてきて」

「了解しました」

 

 理奈の支配下に置かれた緋乃は、感情の宿らぬ声で理奈の命令に返事をすると、踵を返した理奈に従って歩を進め──ようとして、その動きを止めた。

 今まさに来た道を戻ろうとしていた理奈が、動きを止めて振り返ってきたからだ。

 

「……ねえ緋乃ちゃん、お姫様抱っこしてくれる? 道は私が指示するから」

 

 身も心も完全に理奈の支配下に置かれ、無表情のまま佇む緋乃。

 理奈はそんな緋乃を見つめ、数秒ほど考え込むと……そのまま緋乃に対し新たな命令を下した。

 

「了解しました。それでは失礼します」

 

 緋乃は理奈の命令に従い、理奈へと歩み寄るとその体を抱きかかえる。

 お姫様抱っこという体勢の性質上、緋乃の顔と理奈の顔との間が一気に縮まり──至近距離で自身の顔を見つめてくる緋乃に対し、理奈はその頬を赤らめる。

 

「おおぅ、すっご……。緋乃ちゃんの可愛くも凛々しいお顔が近くで見れるし、いい匂いもするし……最高だよ……」

「お褒めの言葉、ありがとうございます」

「ぐへへ……役得役得。よし、それじゃ町に向かってしゅっぱつしんこー! あ、ゆっくり丁寧に歩いてね? 時間かかってもいいから。いやむしろ時間かけていいから」

 

 理奈はそのまま、緋乃の胸元に顔をぐりぐりと押し付けると深呼吸。

 薄手の生地越しに緋乃の感触と匂いをたっぷりと堪能すると、緋乃に町へと戻るよう命令を出し──。

 

「いやいや、お楽しみのとこ悪いが……そういう訳にはいかねえんだよな」

 

 研究所の関係者と思われる、男の声に呼び止められた。

 

「──!? 緋乃ちゃん後ろ!」

「おっと、妙な動きはするんじゃねえぞ? 新しく開発された、対格闘家用の特殊貫通弾だ。いくらなんでも、お姫様抱っこ(そんな体勢)じゃ避けれねえし防げねえだろ?」

 

 緋乃に振り返るよう指示する理奈であったが、緋乃がその命令を実行するよりも早く、もう一人の男が突撃銃(アサルトライフル)を構えたまま理奈の前方へと姿を現す。

 迷彩服を着こみ、フェイスガードとゴーグルを着用した特殊部隊風の男だった。

 

「あ、あはは……。は、初めまして? お兄さんたち……」

「ああ、初めましてだな」

「いいとこのお嬢さんだけあって、礼儀正しいじゃねーか。うちのクソガキ共にも見習って欲しいぜ」

 

 男たちの反応や目的を窺う為にも、とりあえず挨拶をしてみる理奈。

 すると以外にも、男たちは快く挨拶を返してくれた。どうやら、すぐにズドンと撃たれるわけではないようだ。

  圧倒的優位な状況からくる慢心か、それとも実験台として狙っている、緋乃に対する人質としての価値をこちらに見出しているのか。

 思っていたよりかは話の通じる様子の男たちに、理奈はほっと息を吐く。

 

「ねえ。も、もしかしてさ。もしかして……見られてた系だったり……?」

「ああ、バッチリとな。目の保養になったぜ、ご馳走さん」

「やはり、美少女同士の絡みは絵になるな」

 

 恥ずかしそうに呟かれた理奈の言葉に対し、男たちは笑いながら返事をする。

 もっとも、フェイスガードとゴーグルでその表情は見えず。

 なによりその銃口は、油断なく緋乃と理奈に向けられたままではあるが。

 

「出歯亀代として、見逃してくれちゃったりとか、そんな感じのアレは……」

「悪いが無いな。そんなことしたら、こっちがどやされちまう」

「ああ。それにあの程度じゃあ、見逃す代金にはならねえな。……さあて、怪我したく無けりゃ、俺たちに着いて──」

〈フゴォー!〉

 

 見逃して欲しいという理奈の要求に対し、男たちは当然のごとくそれを却下。

 銃口を理奈へと向けたまま、グリップを握っていた方の手で研究所を指し示した──その直後。

 理奈たちから少しばかり離れた茂みより、一匹の猪が出現。そのまま男たちに対し、威嚇行動を取り始めた。

 

「なんだァ? ずいぶんと生意気なヤツだな」

「チッ、この前の生き残りか? 面倒臭えな……」

 

 まるで男たちに対して恨みでもあるかのように、毛を逆立て、唸り声を上げる猪。

 そんな猪を見て、男たちは不快そうな声を上げる。

 

「まったく、こっちは忙しいんだよ。おねんねしてな──」

 

 そうして男たちの注意が猪へと逸れ。うち一人が威嚇行動を取り続ける猪を始末しようと、銃口をそちらに向けたその瞬間。

 

「うりゃぁぁぁぁ──!」

 

 理奈は自身へと銃を向ける男に対し、素早く腕を構えると渾身の魔力を解き放つ。

 理奈の掌に形成された魔法陣より、青白いエネルギーの奔流が放たれ──。

 

「グオァ──!?」

 

 圧倒的優位な状況だからと、油断していた男へと直撃。

 周囲に生える木々ごとその体を勢いよく吹き飛ばし、はるか後方に生えていた大木へと叩きつける。

 

「なっ! このガキ──ぎびっ!?」

「……排除、完了」

 

 仲間がやられたのを見て、もうひとりの男は大慌てで銃を理奈に向ける。

 が、しかし。男が発砲するよりも早く、勢い良く射出された緋乃の尻尾が男の銃を両断。

 その勢いのまま男の胴体を貫き、その意識を消し飛ばす。

 

「あ、危なかったぁ……。幻術に引っかかってくれる間抜けさんたちで、本当に助かったよぉ……」

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