目指すは地球の最強種   作:ジェム足りない

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12話 刃と拳

 内面世界におけるゲルセミウムとの邂逅から数日が経過した、とある日の昼下がり。

 勝陽市内にある寂れた倉庫の一棟、その二階にある休憩室の中。

 

「うんしょ……こらしょ……っと」

「ほー、こりゃ驚いた」

「おおー、リーダーやるじゃーん?」

 

 部屋の中に置かれたソファーやパイプ椅子にどかりと座る、人相の悪い3人の大柄な不良たちの見守る前。

 その腰に重り付きのベルトを巻きつけた緋乃は、手作り感溢れるチンニングスタンド(懸垂バー)にぶら下がって懸垂を行なっていた。

 

「ふふーん、どう? 気を一切使わずにこれとか、ちょっと凄くない? 凄いでしょ」

 

 懸垂を続けながら、不良たちに向けて渾身のドヤ顔を披露する緋乃。

 緋乃が行っているのは、重りを着けて負荷こそ高めているものの、何の変哲もないただの懸垂。誰にでも出来る簡単な運動だ。

 しかし緋乃は馬鹿げた量の気を保有してはいるものの、その身体はまだまだ未成熟。

 身体強化を未使用の状態では、自身の体重の倍以上の重りを着けての懸垂など、とてもではないが不可能であった。そう、これまでは。

 

「あの素の筋力はへなちょこな緋乃ちゃんがよくぞここまで……。う~ん、俺ちゃんも鼻が高いぜ!」

「出たよ後方兄貴ヅラ。お前は何様だ〜?」

 

 眼鏡をかけた不良が胸を張り、誇らしげな声を上げると同時に、スナック菓子を貪るように食っていた太っちょの不良がそれに対する突っ込みを入れる。

 休憩室の中にゲラゲラと笑い声が響き渡り、不良たちが手足をばたつかせた影響で古いソファにたまった埃が舞い上がる。

 

 彼らは不良チーム、タイタン。その最上位メンバーだ。

 タイタンとは勝陽市内の学校に通う、素行不良な高校生たちを中心に構成された集団であり──緋乃が前リーダーに一騎打ち(タイマン)を挑み、勝利したことでリーダーの座を奪い取ったチームでもある。

 “最も強いものが頭を張る”というのが彼らの掟であり、下剋上自体は元から推奨されていたのだが……しかしやはりと言うべきか、小柄な少女である緋乃に従うことを拒んだ者も多々存在した。

 しかし緋乃はそんな彼らに対し、拳による説得を慣行。圧倒的かつ微塵の容赦もない暴力の嵐によって、不満を述べていた者たちも屈服。

 こうして新リーダーとして収まった緋乃は、気まぐれに拠点である廃倉庫に顔を出して不良たちと駄弁り。

 前リーダーからのリベンジマッチや幹部勢からの挑戦を受けては、これを返り討ちにし。

 不良チーム同士の争いに顔を出して大暴れしたりと、自由気ままに振舞っていたのだ。

 

「にしても悪魔だかなんだか知らねーけど、素の身体能力がここまで上がっちまうとかマジでヤベーな」

 

 絶対無敵とか嘯いてたのが真実(マジ)になっちまう、と不良3人組の中で最も大柄なオールバックの少年──タイタンの前リーダーであり、現在のNo.2だ──が缶コーヒーを開けながら小さく呟く。

 

「そーだなー。流石にここまでパワーアップされちまうと、ひっくり返しようがな……」

 

 その少年の言葉に対し、メガネを着けた少年が同意を示す。

 

「おいおい、あんだけ負けといてまだリベンジするつもりだったのかよ?」

 

 そんな二人に対し、俺はとっくに諦めたぞと小太りの少年が茶化す発言をし……そのままふと思いついたといった様子で、疑問の言葉を口にした。

 

「つってもそこまで変わるもんなん? 確かにパワーアップはしてるんだろうけどよぉ、うちのリーダーって元から馬鹿みてえなパワーしてんじゃん」

「いや、かなり変わるんだが。その馬鹿みてえなパワーが何倍にも、一気に跳ね上がるわけだしな」

 

 小太りの上げた疑問の声に対し、メガネが少し呆れた様子を見せながら回答をする。

 

「はえー、そんなに変わんの?」

「まあわかりやすく言うとだな。貧弱な基礎ステに、バカみてーな倍率の自己バフかけて殴りかかるのがうちのチビ助の基本スタイルだ。ここまではいいな?」

 

 そんなにと驚いて見せる小太りに向け、説明を引き継ぐ元リーダー。

 そんな元リーダーの発した言葉に対して、小太りはああ、と頷いて見せる。

 

「つまり、そのチビ助が人並み以上の基礎パワーを手に入れると──」

「ヤケクソバフと合わさってクソ火力になる……ってコトか?」

「そーいうこと」

 

 はえー、と感心の声を上げる小太り。そんな小太りに対し、緋乃は懸垂運動を止めて、マシンにぶら下がったまま補足説明を行った。

 

「とはいえ不安定な状態でフルパワー開放しちゃったことによる一時的な変化で、しばらく大人しくしてれば元に戻るらしいけどね」

 

 現在の緋乃の肉体は理奈や刹那曰く、不用意に大量の妖気を開放してしまったことで魂の浸食率が大幅に上昇し、それに肉体が引きずられてしまった状態らしい。

 とはいえあくまで一時的な物であり、妖気を抑えてさえいれば、やがて元の状態にまで戻るとか。

 心配そうな顔をした理奈と、少々残念そうな顔をした刹那の二人にそう告げられた緋乃は、やはり完全に制御できていない力を解き放つのはよくないなという事を再確認。

 本当に追い詰められた時以外は、絶対に使わないようにしようと心に誓ったのである。

 

「あー、そういや言ってたねぇ。悪魔パワー取り込んでから、力を持て余してるって」

「扱いきれないほど膨大な力か。贅沢な悩みだ」

 

 人間を辞めるか否かの結構ギリギリな状態ではあったのだが、緋乃自身がよく理解していない上に深刻にとらえていないため、他人事じみた説明になってしまう。

 男衆もまた、緋乃のそんな深刻さを感じさせない適当な説明を受け、適当な感想を返す。

 

「そんなことよりさー、お前たち真面目に考えてるの?」

 

 そうして会話が一段落したのを見計らうと、緋乃は懸垂を再開させながら、男たちへと問いを投げかける。

 

「ん? ああ、考えてる考えてる」

「落ち込んじまったお友達の慰め方法だろ? 考えてるけどなぁ……」

「強盗を返り討ちにして気絶させといたら、別の事故に巻き込まれて死んだーってどう考えてもそいつらの自業自得じゃん? 気にするのが間違いとしか……」

 

 緋乃が口に出したのは、つい先ほど、懸垂バーを利用する前に男たちへと持ち掛けた相談事──研究所の自爆により、研究員たちが大勢死んだことを気に病む理奈の機嫌を自然に取る方法だ。

 緋乃個人としては、相手側の証拠隠滅作戦によって発生した犠牲──それも被害が出たのは敵限定である──をこちらが気にするなど意味不明であったが、理奈は優しすぎるというか、甘いというか。なんにせよ、それを気にしてしまっているのだ。

 

「わたしも同意なんだけどねー。理奈ってばホント無駄に善良というか──」

「だ、誰かー!! 誰かいないか!?」

 

 ガシャガシャと重り同士がぶつかり合う音を鳴らしつつ、懸垂を続ける緋乃。

 そんな緋乃の耳に、慌ただしく倉庫の扉を開ける音と、必死に叫ぶ男の声が届く。

 

「……どうやら、面倒事が起きたみてーだな」

「あの声は健吾だな。随分と焦ってるじゃないか」

「やれやれ、抗争でも挑まれたんかね?」

 

 男たちは三者三様の声を上げて立ち上がると、休憩室から外に出ようと歩きだす。

 それを見た緋乃もまた運動を止め、重り付きのベルトを外して懸垂バーに引っ掛けると、男たちの後に続いて部屋から出る。

 そうして男たちから一歩遅れ、部屋から出た緋乃の目に映ったのは。

 

「おいおい、血まみれじゃねえか! 大丈夫か!」

 

 それなり以上の使い手からの手刀、もしくは刃物で斬り付けられたのか。複数個所に大きな切り傷を受け、血を流しながらよろめき歩く、チームの下っ端の姿があった。

 

「こっからだと大松医院が一番近いか……三郎(サブ)、バイク回せ。その間、怪我の具合を見とく」

「あ、ああ。わかった」

(んー、ぱっと見だけどしばらくは持ちそうかな? 面倒臭がらずに、簡単な気の使い方くらいはレクチャーしてあげるべきだったかなー)

 

 大怪我をしている下っ端(健吾)に対し駆け寄っていく小太りとそれを追う元リーダーに、倉庫の奥に止めてあるバイクへと駆けていくメガネ。

 慌ただしく動くそんな彼らを、緋乃は休憩室から出たところでぼーっと眺めていた。

 

「どうした! 誰にやられたんだ!」

「お、大竹センパイ……。それに大和さんに、リーダーも……よかった、無事で……」

 

 自身に走り寄ってきた小太りと元リーダーの顔。そして休憩室前の手すりにもたれかかっている緋乃を確認したことで、健吾の顔に安堵の涙がにじむ。

 

「すぐにサブが足を持ってくる。それまでじっとしてろ」

「あ、あざます……。って俺のことより、ここは危ないんスよ! なんかヤクザみたいなやつらがチームを狙ってるらしくて、俺も襲われて! 俺と一緒にいた及川(おいかわ)の奴はもう……! みんなも早く逃げ──」

 

 自身を気遣う元リーダーの言葉に礼を言った健吾は、大慌てで自分をこのような目に合わせた犯人について述べると、逃げるように促そうとする──のだが、その言葉は急に途切れる。

 開けっ放しになっていた倉庫の扉。その外からゆっくりと歩み寄る、3人の男たちの姿が見えたからだ。

 スーツ姿にコートを羽織った男が1人に、その子分と思わしき人相の悪い男が2人。

 男たちの姿を認め、驚きに目を見開く健吾。そんな健吾に向けて、スーツ姿の男が懐から取り出した投擲用ナイフ(スローイングダガー)を投げつける。

 超高速で飛来するその刃に対し、ほぼ一般人とそう変わらない程度の健吾が打てる対処法は無かった。

 タイタンの幹部である小太りの男や元リーダーならば対処できるだろうが、生憎と2人は飛来する刃の存在に気が付いていない。哀れ、健吾の頭はスイカのように弾け飛ぶ──かと思われたその時。

 

「おっと危ない」

「──へ?」

 

 飛んでくるナイフの射線上に突如現れた緋乃が、その刃を人差し指と中指の二本の指で挟み込み、受け止めていた。

 指で挟み込む力が強すぎて、ナイフが少々歪んでいるのはご愛敬だが。

 

「うおっ、いつの間に!?」

「ナイフ……? まさか!」

 

 緋乃の受け止めたナイフを見て驚くのは、小太りと元リーダーの二人。

 慌ててナイフの飛んできた方向へと二人が顔を向けると、そこには()()()()な姿をした男たちがこちらに近寄ってきているではないか。

 

「そうか、あいつらが……」

「見たことねえ野郎共だ。チッ、気に食わねえ……」

 

 直前に健吾のした説明。それを思い返し、即座に戦闘態勢を取る小太りに元リーダー。

 そうして二人が構えを取るとほぼ同時に、倉庫の奥からバイクのエンジン音が響き渡る。

 

大竹(タケ)、ここは俺とチビ助で十分だからお前は健吾の護衛に行け! それが終わったら及川の様子も見に行け!」

「はぁ!? 何言ってんだよ! 俺にも──」

「怪我人抱えて走るんだ、速度も対応力も平常時に比べてガタ落ちする! もし別動隊に襲われたりなんかしたら纏めてお陀仏だ。違うか!?」

「ぐ、ぐぬぬ……」

 

 闘る気満々で気を高めていた小太りに対し、健吾の護衛に回るようにと元リーダーからの指示が飛ぶ。

 その指示に対し不満を露にする小太りであったが、続けて放たれた言葉によってその反論は打ち切られてしまう。

 

「わーったよ! ここは任せる! その代わり、しっかりボコれよ! 生まれてきたことを後悔させてやれ!」

「当然だ! どこのどいつが相手だか知らねーが、売られた喧嘩は()()つけて返す! それが俺たちの流儀だ!」

 

 元リーダーの啖呵を受けると小太りは満足気に笑い、手早く怪我人である健吾をバイクに乗るメガネにくくり付けると、倉庫の大扉を一気に開け放つ。

 それと同時に健吾を乗せたバイクが一気に倉庫から飛び出した。

 

「フン、逃がすもの──」

「お願い逃がして♡」

 

 その行く手を阻もうと、人相の悪い男たちが立ちはだかろうとするのだが──そんな彼らの眼前にワイヤーランスが轟音とともに突き刺さる。

 緋乃がその尻尾を勢いよく射出し、男たちの妨害を図ったのだ。

 

「──チィィ!」

「貴様ッ!」

 

 気付くのが後一瞬遅れていれば、容赦なく胴体をぶち抜かれ即死していたであろうその攻撃に、思わず怯む男たち。

 そうして緋乃の目論見通り、男たちが怯んだ隙にバイクは走り去り──小太りの不良もそれに追随して駆けていき、この場から姿を消す。

 

「……逃がしたか、まあいい」

「道案内はして貰ったことだしな……」

 

 負け惜しみかそれとも否か。男たちはそう呟くとそれぞれ羽織っていたコートを脱いだり、上着の前を開けたりと、動きやすいように衣服を整えていく。

 それを見て元リーダーも肩を回すなどの準備運動を軽く行い、また緋乃も尻尾を引き戻すといつでも気を纏えるよう臨戦態勢へと移行する。

 

「何が目的かは知らねーが、ダチが世話になった礼はしねえとなぁ?」

「悪いが、こっちも仕事なんでね。大人しく死んでくれ」

 

 ボキボキと指を鳴らしながら、男たちを威圧するように気を高めていく元リーダー。

 しかし男たちはそんな元リーダーの威圧など意にも解さぬ様子であり、投擲用のナイフやマチェットといった武器を取り出してその手に構える。

 そのような男たちの手慣れた動きを見て、元リーダーが舌打ちを漏らす。

 

「チッ……」

「思ったより手ごわそうでビビっちゃった?」

 

 その舌打ちを聞いた緋乃は、その顔にいつもの余裕の笑みを浮かべると、元リーダーへと軽口を飛ばす。一応、緋乃なりに元リーダーを気遣っての発言だ。

 

「な訳ないだろ」

「わたし一人でも余裕だから、別に逃げてもいいんだよ?」

「冗談。こっちにも元リーダーとしての意地があんだ、一人くらい分けてくれや」

 

 軽口混じりに説得のようなものを口にする緋乃であったが、元リーダーの決意は固いようであり、引く意思は皆無のようだ。

 それを確認した緋乃は、軽く肩を竦めると闘気を開放。瘴気混じりの邪悪なオーラをその身に纏い──。

 

「シッ!」

 

 突如男たちとの距離を詰めると、そのまま問答無用で蹴撃一閃。

 不意打ち気味に放たれた後ろ回し蹴りが、リーダー格であろうスーツ姿の男へと襲い掛かる。

 

「名乗りも無しかい! 寂しいねえ!」

 

 こめかみ狙いの緋乃の一撃であったが、しかしこれはスーツの男が上半身をのけぞらせたことで、緋乃の踵は男の額を掠めただけに終わり──緋乃の足はそのまま激しく宙を切る。

 そうして緋乃の蹴りをかわしたスーツの男は、お返しとばかりに手にしたナイフを振り上げた。

 そのナイフの軌跡の先には、緋乃の青い瞳が。

 眼球という、鍛えにくく防御力が低い器官にもかかわらず、極めて重要な役割を持つ感覚器官。

 男は緋乃からそれを奪い取ることで、一気に優位に立つつもりなのだろう。

 

「貰った!」

 

 鈍く輝く鋭い刃が、緋乃の(まなこ)を切り裂かんと宙を駆け──。

 

「甘い甘い!」

「なっ!?」

 

 しかし、ナイフを握るその手首を掴まれたことで、あっさりと男の反撃は止められた。

 必中の自信を持って振るったカウンターがいとも簡単に止められたことに対し、男は驚愕の声を漏らしてしまう。

 しかし、男の驚愕も仕方のないことだろう。攻撃の軌道上に手や腕を割り込ませて防ぐ通常の防御と違い、相手の手首を掴んで無理矢理停止させるこの技法は、要求されるパワーやスピードもそうだが──それ以上に、相手の攻撃を完全に見切る必要があるのだ。

 ある程度打ち合ってリズムを読み取り合った末の結果ならともかく、第一打からいきなりこの精度の見切りを成立させるということはつまり。単純に攻撃が見えたから止めた、というだけのことで。

 緋乃と男の間に、圧倒的なまでの差が存在することを意味するのだから。

 

「くそっ……!」

「効くかよばーか。おら!」

 

 緋乃に捕まれた腕を振りほどかんと、スーツの男が腕を振り回そうとするが、緋乃の腕はびくともしない。

 ならばと空いている方の手で、緋乃の顔面に向かって拳を叩き込むのだが……そのような気の練りも中途半端かつ、腰も入っていない拳でダメージを受けるほど緋乃の顔面は()()ではない。

 あえて防御的な行動を一切取らず、顔面で受け止めてノーダメージであることをアピールすると、お返しとばかりにそのままスーツの男の腹部へと膝蹴りを叩き込む。

 

「がぼっ……!?」

 

 雑に繰り出された緋乃の膝蹴りに対し、男は咄嗟に腹に気を集中させて対抗──したのだが、その防御はあまりにもあっけなく食い破られる。

 勢い良く突き出された緋乃の白い膝が男の腹にミシミシと食い込み、悶絶の声を上げさせる。

 

「くふふ、おらおら~」

「ごっ……! がっ……!」

 

 その苦痛から思わず頭を下げてしまった男に対し、緋乃は左手で素早く男の髪を掴むと、追撃として容赦なく顔面への膝蹴りを繰り出していく。

 二発、三発と膝を叩き込むたびに伝わってくる、肉を打ち、骨や歯を砕く感覚。僅かずつではあるものの、人体を破壊していくその心地良い感触に、思わず緋乃の口元が弧を描く。

 

「こ、この餓鬼……!」

「そこまでに──ぐっ!?」

 

 圧倒的なスペックに物を言わせた緋乃の攻勢に対し、なす術のないスーツの男。その様子を見て、慌てて部下たちが救援に駆け付けようとするのだが──そうは問屋が卸さない、とばかりにそれを邪魔する男が一人。

 

「チビ助ばっか構ってねえで俺とも遊んでくれや!」

 

 不良チーム、タイタンの元リーダーだ。

 緋乃に遅れること少々。駆け付けた元リーダーはスーツの男の部下、そのうちの1人である部下Aに正拳を叩き込んで怯ませると、更にガードの上から突き飛ばすかのような前蹴りを叩き込んで部下二人を分断。

 そのまま体勢を崩した部下Aを追いかけて、左右の拳による連撃を次々と食らわせていく。

 

「オラオラどうした! その程度か半グレさんよぉ!」

「あぐっ……! ぐおぉ……!」

 

 罵倒と共に放たれたストレートがよろめく部下Aの顔面に突き刺さり、ふらつきながらも放たれた反撃の刃に合わせてより強烈なカウンターが叩き込まれる。

 不意打ちを喰らった勢いのまま体勢を立て直せず、また超至近距離での格闘戦であるが故に握った獲物(マチェット)を上手く活かすことができず、元リーダーにいいように殴られ続ける部下A。

 不利な体勢で緋乃に捕まり、身動きの取れない状態のまま緋乃に甚振られるスーツの男。

 手が空いている部下Bは、どちらの救援に行くか一瞬迷った様子を見せると──叫び声を上げながら、マチェットを手に緋乃目掛けて突進してきた。

 

「オオオォ──ッ!」

 

 上司の救援を取ったのか、それとも派手に動き回り、暴れ回っている元リーダーよりも動きを止めている緋乃の方が倒しやすいと思ったのか。

 理由はなんにせよ、部下Bは突進の勢いを乗せた突きを緋乃にお見舞いすべく、鈍色の刃を緋乃の顔面目掛けて掲げたまま猛然と突き進み──。

 

「てい」

 

 いつの間に地中へと撃ち込んでいたのか。

 号令と共にコンクリートの地面を突き破って現れた緋乃の尻尾により、あっけなくその刃は打ち砕かれた。

 

「──は?」

 

 硝子細工のように砕け散る刃を前に、呆けた声を出す部下B。

 目の前で起こったことが信じられないかのように目を瞬かせるが、それで現実が変わるわけは無い。

 突進の勢いをいまさら無かった事にもできず、部下Bは柄だけになったマチェットを握りしめ、間抜け面を晒したまま緋乃目掛けて突撃し。

 

「そりゃっ!」

「べぶ!?」

 

 緋乃が突き出した右手に顔面を捕らえられ、それによって突進の衝撃を一気に自身の顔面と首で受け止める羽目になり──無様な悲鳴を上げる結果となった。

 

「女の子の顔を狙う悪いヤツには……お仕置きだよねっ!」

 

 そうして部下Bのアシストをも潰した緋乃は、大技による反撃へと移行する。

 右手で部下Bの顔面を掴んだまま、左手を一瞬開放したかと思えばスーツの男の顔面を捕らえ直す。

 そうして二人の男の顔面をしっかりと鷲掴みにした緋乃は、そのまま掌の中央部に向けて膨大な量の気を一気に集中させていく。

 それと同時に目も眩まん程の()()が緋乃の掌から溢れ出していき──。

 

ひゃ()ひゃ()め──」

「どーん!」

 

 追い詰められた男がまるで命乞いをするかの如くモゴモゴと制止の声を上げるが、当然のように緋乃はこれを無視。そうして気合を込めた緋乃の一声と共に、大爆発が巻き起こる。

 轟音と共に爆風が吹き荒れ、圧倒的な暴力を前に蹂躙されることしかできなかった哀れな男二人が力なく宙を舞う。

 

「ば、馬鹿な──」

「オイオイ、何処見てんだよオッサン」

 

 そうしてその光景を見て、まるで信じられないものでも見たかのように硬直する部下Aと──目の前で獲物が曝け出した特大の隙を前に、好機とばかりに気を一気に高める元リーダー。

 

「しまっ──」

「ぜりゃあああぁぁ!」

 

 気を取り直した部下Aが大慌てで獲物を掲げて防御態勢を取るが、時すでに遅し。

 渾身の叫びと共に放たれた元リーダーの拳は掲げられた刃を粉砕し、その勢いのまま部下Aの顔面を真正面から殴り飛ばし。その大柄な体を吹き飛ばしたのであった。

 




小ネタ
不良の及川くん→奴さん死んだよ
ナイフヤクザ→ナイフには毒が塗ってあったり。実は強い方だったりする。なお相手
緋乃ちゃん→第二形態継続中なのでクソつよ
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