目指すは地球の最強種   作:ジェム足りない

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八話 お出かけ三人娘

「緋乃ちゃん、明乃ちゃん、ごめ~ん、お待たせ~!」

「待ってないから大丈夫だよ」

「あたし達もついさっき来たとこだしね」

「いやー、まさかもう着いてたとは。二人とも早いねー」

 

 土曜日の午前10:50。駅前の時計台の下にて理奈、緋乃、明乃は無事に合流することができた。

 当然ながら三人とも私服であり、明乃と緋乃という極上の美少女と、二人には僅かに劣るものの、こちらも間違いなく美少女である理奈の三人組は周囲の目線を一気に集めていた。

 

「緋乃ちゃん、はいこれ。こちら、ご注文の品でございます。お納めください」

「おお……なんかキレイ……すごい」

「うわぁー凄いじゃん。なんかお店のよりレベル高く見えるんだけど」

 

 理奈が手提げのバッグの中から白い箱を取り出して緋乃へと差し出す。

 緋乃がそれを受け取り箱を開けてみると、中から出てきたのは七色の石がはめ込まれた銀色のリングネックレス。

 

「お母さんが張り切っちゃってね」

「おおー。でも本当にいいの?」

「もちろん! そのために作ったんだし、貰ってくれない方が困るよ~」

 

 想像していたそれよりも上等なものが出てきて、緋乃はつい理奈へと確認を取ってしまうが、理奈は何でもないことのように手を振り、緋乃へと着用を促す。

 理奈の催促を受け、緋乃はその新しいアミュレットを首に掛けた。

 

「うんうん、緋乃ちゃんは黒系統の服が好きだからシルバーにしたんだけど正解だったね。似合ってるよ。あ、そしてこれは明乃ちゃんに。明乃ちゃんは耐性かなり高めだから、そういうものがあるって知った今なら別になくても問題なさげだけど、まあ一応ね。ないよりはあったほうがいいし」

「あ、ホントに用意してくれたんだ。サンキュー理奈。持つべきものは友達だねぇ〜。明乃ちゃん感謝感激」

「あ、ありがとう……。あ、そうだ、これ。理奈から借りてたやつ」

 

 理奈はアミュレットを首に掛けた緋乃を褒めつつ、明乃にも緋乃と同様に精神防御や呪い対策を施したアミュレットを渡す。

 理奈から褒められて軽く頬を染めた緋乃だったが、ふと思い出した様子で自分のカバンを探り、小さな紙袋を取り出した。

 緋乃の反応から、おそらく中に入っているのはこの前渡したアミュレットだろうと考えた理奈は、顔の前で軽く手を振りながら口を開いた。

 

「いいよいいよ、それもプレゼント。私のお古になっちゃうけど、まあ何かあった時の予備って事で」

「え、でも」

「いいんだって。私はもう新しいの使ってるし、だったら緋乃ちゃんに使ってもらった方がその子も嬉しいから」

 

 うーんと悩むそぶりを見せる緋乃に対し、明乃が気楽そうな様子で助け舟を出す。

 

「理奈もいいって言ってるんだし、貰っときなよ。アクセサリーが増えたと思えばいいじゃん」

「そうそう」

「わかった。ありがとう、理奈」

「どういたしまして」

 

 緋乃がカバンへと紙袋を戻したのを見て、よしと理奈が頷く。

 緋乃がカバンの口を閉めて動く準備が整ったことを確認すると、改めて理奈が口を開いた。

 

「ところでご飯どうする? 私はまだそこまで減ってないかなって」

「あたしもまだいいかなー。緋乃は?」

「まだもつ。よゆーよゆー」

「おっけー。じゃあご飯は後回しで、先にお店でも見て回ろっか」

「ゲーセンゲーセン」

「後回し!」

「がーん」

 

 いきなりゲーセンへ行こうとする緋乃の要求は明乃により一刀両断され、三人は先にウィンドウショッピングから行うことに。

 ファンシーショップでは可愛いぬいぐるみを見て、可愛いもの好きの明乃と緋乃が反応したり。アクセサリーショップにてアクセサリーに詳しい理奈が実物を前に豆知識を披露し、それを聞いて緋乃が感心したり。雑貨店では様々なギミックのオルゴールに緋乃が目を輝かせたり。

 一通り見て回ったころには時刻は既に13:00を回っていたので、三人は近くにあったハンバーガーショップへと足を運んだ。

 

「ふう、さすがにお腹すいたね」

「軽く見る予定だったけど結構経っちゃったね~」

「なんだかんだで緋乃が一番楽しんでたわよね」

 

 ハンバーガーショップはお昼のピーク時は超えたものの、まだそれなりに混雑していた。なので緋乃が席を確保しに列から離れ、残る明乃と理奈の二人は注文と受け取りを担当することに。

 二人は自分たちの番が回ってくるとそれぞれの商品を注文し、受け取ると緋乃の確保した席へと向かって移動。まとめて会計してくれた理奈にそれぞれ自分のバーガー代を渡すと──理奈はこのくらいなら別にいいよとうるさかったが、明乃と緋乃が無理矢理渡した──そのまま食事を開始した。

 

 先ほど見て回った店について話しながら食事をしていた三人だったが、ふとその耳にとある宣伝の声が飛び込んできた。

 

『若き格闘家たちよ、朗報だ! なんとこのたび! 新世代の格闘家たちの集う祭典の対象年齢が引き下げられたぞ! 今までは16歳以上25歳以下の男女が対象ということで募集させてもらっていたが、若き格闘家たちの熱い声援を受け! なんと! 12歳以上25歳以下が対象に! 腕には自信があるけれど年齢制限のせいで出られず悲しみに暮れていたそこの君! このチャンスを見逃すな! 今すぐインターネットにアクセス! 熱いバトルが君を待ってるぜ!』

 

 店に備え付けられていたテレビから聞こえてきたその宣伝を聞いて、緋乃は考え込む。

 全日本新世代格闘家選手権。当然緋乃もその名前は知っていたが、出場には16歳以上という年齢制限が存在するため、自分には関係ないものだと思いあまり興味はなかった。

 賞金が高額なのでそれなりにいい選手が集まってくるだろうし、準決勝と決勝くらいなら見てもいいかな程度の認識だったのだ。

 しかしどうやら、今聞いた宣伝を信じるのならその大会の年齢制限が引き下げられたらしい。そうなれば話は一気に変わる。そこまで考えると、緋乃はゆっくりと口を開いた。

 

「……ねぇ、今のきいた?」

「ああ、そういえばネットニュースに載ってたね。緋乃知らなかったんだ。絶対出るんだとか騒ぐと思ってたのに。なるほどねー、静かだったのはそれでかー」

「うーん……」

 

 念には念を、聞き間違いではないかと目の前で食事をしていた二人に確認をとる緋乃だったが、逆に明乃からは「え、知らなかったの?」と驚かれてしまう。

 いつもならばいや知ってましたけど? たまたま宣伝が聞こえてきたから話題に上げただけですが? とばかりに適当に見栄を張って言い返す緋乃であったが、しかし今回は何も言わず、目を閉じて大会について考えを巡らせる。

 そして、そんな緋乃の姿を不安そうな顔をしながら見守る理奈の姿があった。

 

 

 

 

「あー、楽しかった。やっぱなんだかんだで、行けば盛り上がっちゃうよね~」

「ん、満足。ふふっ、勝ち逃げは気分がいいね」

「むうぅ~、相方がハズレでさえなければ~……」

「ふっ、相方のせいにするとは未熟千万。だからお前はアホなのだー、だよ」

「あ、緋乃ちゃんひどーい。この前思いっきり台パンして、店員さんに怒られて頭ペコペコ下げてた癖に~!」

「うぐっ」

「ちょいとあたしが目を離してる隙にね~。ホントこの問題児は。いやあ、凄い音してビビったわー。やったのが緋乃じゃなくて男子だったら出禁食らってたんじゃない?」

「記憶にございません」

 

 時刻は夕方。駅前から緋乃たちが自宅に戻るには歩いて40分程度と、それなりに時間がかかるので少し早めにゲームセンターを出た三人。

 そんな三人は、本日のゲームセンターにおける戦果について話しながら歩いていた。

 

「ようやく見つけたぞ! 不知火緋乃!」

 

 そうして緋乃たち三人がお喋りをしながら歩いていると、背後の方から男の大きな声が聞こえてきた。


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