リアルの方がめっちゃごたごたしていまして……。
「遅いッ!」
敵の二足歩行ロボット及び、その近くにいた戦闘員を始末した緋乃は、足を止めることなく、さらに床を蹴ってそのまま加速。
お仲間の上げた絶命の叫びに、恐怖を煽られでもしたのだろうか。顔を引き攣らせている残りの男たちに、文字通り“目にも留まらぬ速度”で接近すると。
「貰ったぁ!」
「ガッ――!?」
身体を捻りながら右脚を振るい、加速の勢いをたっぷりと乗せた後ろ回し蹴りを繰り出し。反応すら許さずに、その踵で一人目の胴体を横薙ぎに両断する。
(これで三匹! 残る雑魚はあと一匹だけど、あのハゲの反応は――)
人型のロボットが一機に、部下の男が二人。計三体の敵を始末した緋乃は、ちらりと金龍の様子を伺う。
先ほど金龍が使用した、新型バトルスーツの機能であろう、闘気のブーストを警戒してのことだったが……。
(むぅ、動きは……無し? なるほど、これは見捨てた系かな? よし、ならこのまま!)
ほぼ壊滅状態の、微妙な練度の部下の救援に動くのよりも、体力の温存を優先したか。
金龍は緋乃に対して警戒こそしていたものの、部下の救助に動くような素振りは特に見せず――それを敵の頭数を減らすチャンスだと判断した緋乃は、攻撃の続行を選択。
(これで取り巻きはおしまい! ボス戦のお時間だ!)
緋乃はそのまま、振るった右足を素早く地に着けると同時に、尻尾を床に突き刺して体の支えとすると。今度は左脚を腰の高さにまで持ち上げ――。
「てりゃあぁー!」
右脚と尻尾を使って床を蹴り、二人目の男に向かって飛び掛かると同時に。
弓のように大きく引き絞った左脚を、真っ直ぐに解き放ち。砲撃のような蹴りを、その腹部へと叩き込む。
「うごぁ!?」
緋乃の蹴りをまともに食らってしまった男は、その衝撃で内臓を破壊し尽くされながら吹き飛んでいき、部屋の壁面に叩きつけられ。
「ば、ばけもの……め……」
口から血と共に呪いの言葉を吐いた後に、ガクリとその頭を垂れたのであった。
「ふふーん、これにて雑魚掃除かんりょーっと」
最初にロボットが爆破されてから、ほんの一瞬。僅か一秒にも満たない、極めて短い時間。
その僅かな時間で金龍の部下たちを一掃した緋乃は、その艶やかな髪の毛を手で払いながら、金龍に向かって得意気な笑みを浮かべる。
「まあ、人型のロボット兵器には驚かされたけど……性能自体は大した事なかったね」
先ほどの戦闘において、機械特有の気配の無さからくる不意打ちをアッサリと受けた事を棚に置き、胸を張る緋乃。
「そりゃそうに決まってんだろ。なにせ、役割が違うんだからな」
そんな得意げな様子を見せる緋乃に対して、金龍は軽く鼻を鳴らしながら反論を繰り出した。
「役割?」
「ああ、そうさ。アレの役割は、多種多様なセンサーを生かした戦場の把握と、瞬時の判断力を活かしたサポートや兵隊たちの指揮だ。戦場の主役として、切った張ったをするモンじゃねえ」
「ふーん」
あのロボット兵器はあくまで支援兵器である、という金龍からの解説を受けた緋乃は、気のない返事をしながら、金龍に気取られぬようこっそりと周囲の様子を伺っていた。
(増援が来る気配は無いね。
「それにしても嬢ちゃん……随分とえげつねえ技を使ってくれるじゃねえか……」
表面上は得意気な笑みを浮かべたまま。目の前の敵を片付けたことで、油断している様子を装いながら、緋乃が戦況を分析していると。何か気になる事でもあったのか、今度は金龍の方から緋乃に対し語り掛けてきた。
「えげつ……ない……?」
「心底不思議そうな顔すんじゃねえ。
金龍の言う“えげつない技”が一体なんなのか、理解できずに首を傾げる緋乃。
そのような様子を見せる緋乃に対し、金龍は呆れ混じりの声でその技についての指摘をする。
「ああ、あの技ね。いいでしょ? 本来なら
「……お前がさっき消し飛ばした男な、結社の工作員って事で、当然のことながら拷問を受ける訓練とかも受けてるんだよ」
「うん?」
それが何か? とばかりに首を傾げる緋乃を見て、金龍はため息を吐きながら口を開いた。
「手足を先端から切り刻まれたり、火炙りにされても――苦痛に呻きはするものの、決して自己は見失わない。そんな極めて我慢強い男を、一発で発狂させるとか……なあ?」
おかげで他の連中までブルっちまったじゃねえか、さすがの俺様も引いたわ。という金龍の言い草を耳に、今度は緋乃がその眉を顰めながら反論を繰り出した。
「むう、別にいーじゃん。どうせ結果は変わらないんだしさ。殺しの技に綺麗も汚いも――いや、むしろド派手な爆発を上げて盛大に葬ってあげる分、わたしの浸食爆破こそ綺麗な技に分類されるはずじゃない?」
「いや、明らかにアウトだろう。そもそも他人の
しかし、そもそもの他者に対する共感力が引き下げられ、逆に攻撃性が引き上げられている緋乃と、一応は普通の人間として生まれた金龍の意見が噛み合うはずもなく。
「あーもう、ゴチャゴチャと面倒くさいヤツだね! そんなに言うなら、お望み通り、お前も爆殺してあげるよ!」
困った時の暴力頼み。緋乃は戦闘体勢を取ると、真紅に輝く妖気を全身に漲らせながら、軽く膝を曲げて半身の構えを取り。
「何がどうなってその結論に至ったか知りた――いや、別に知りたくねえが……そいつはぞっとしないな……」
戦闘体勢を取った緋乃を見て、金龍もまた薄い白光を纏うと、腰を落として右手を前に出した構えを取る。
「新型のバトルスーツ……。確かに、気の増幅機能は厄介だけど――でも、その程度の小細工で、このわたしは超えられない。超えさせない……!」
「なら試してみるかい? 凡才を秀才に、秀才を天才の領域にまで押し上げる、科学の力を。人類の積み上げてきた、叡智の結晶を……!」
緋乃と金龍。二人の間に流れる空気が再び張り詰めていき、いざ決戦の火蓋が切って落とされる――その直前。
「引っ込んでなさい、三下」
なんの予兆も前兆もなく。突如として、金龍の背後に――黒いロングソードを振り上げた状態の――ベアトリスが出現し。そのまま勢いよく剣を振り下ろして、金龍の腕を斬り飛ばした。
「ぐおあっ……!? ベアトリス、てめぇ――!」
「――!?」
突然、緋乃の眼前にて始まった仲間割れ。
理由や事情は一切不明。もしかしたら、裏で何か確執があったのかもしれないし、単純に気に食わない奴をどさくさ紛れに始末しにきたのかもしれない。
しかし、緋乃にとってそんな事はどうでもよかった。
(何が何だかわからないけど……とにかくチャンス!)
とにかく今の緋乃にとって重要なのは、自分の目の前で敵が隙を晒していること。この一点のみである。
(このままあのハゲに追撃を食らわして、
剣撃を放った直後の、いわゆる技後硬直状態に陥っているベアトリスか。それとも、ダメージを負って怯んでいる金龍か。
どちらを攻撃すべきか、緋乃は自身の尻尾に妖気を巡らせながら、ほんの一瞬だけ思考を巡らせ――。
(決めた! まずはお前からだ……!)
ロングソードを振り下ろした体勢のベアトリスに向かって、尻尾を勢いよく射出した。
片腕を失って戦闘力が大幅にダウンした金龍など、もはや自分の敵ではない。ならば特にダメージを負った様子のない、ベアトリスに一撃を加える方が優先されるだろう。そう考えての行動だ。
(死ねぇ!)
緋乃の意思に従い――主に先端の刃を中心に――妖気を纏った尻尾が伸びていく。狙いはベアトリスの体の中心部、すなわち心臓だ。
あの体勢ではそう易々と回避はできないだろうし、もし無理矢理に回避したのならば、体勢は完全崩壊。圧倒的有利な状態を取れるので、適当に蹴りなりなんなりで追撃をして始末すればいい。
もし防御という選択肢を取られたのなら、その衝撃で体勢を崩したベアトリスを追撃すればいい。なにせ、この自分が殺すつもりで、しっかりと妖気を込めて放った一撃なのだ。そう簡単には防げないし、なんなら防御を貫通して直撃してしまう可能性だってあるかもしれない。
そうなったらそうなったで、肉体に突き刺さった尻尾経由で妖気を流し込み、完全爆殺――はベアトリスの着用しているバトルスーツの機能的に難しいだろうが、それでも大ダメージは狙えるだろう。
「チッ!」
そんな緋乃の尻尾による攻撃を視認したベアトリスは、舌打ちをすると共に、その眉を歪め。
(
もはや防御も回避も間に合う段階ではないと、緋乃が勝利を確信した直後。尻尾がベアトリスの身体を貫く、その直前。ベアトリスの姿が、これまでに何度か見てきたときと同様に、フッと掻き消え――数メートルほど横にズレた位置に現れた。
「ぐおおぉぉ!?」
標的が消えたことで空振りに終わった緋乃の尻尾は、その勢いのまま床へと着弾。
練兵場を揺るがすほどの衝撃と共に、大量の瓦礫を周囲にばら撒き、それに巻き込まれた金龍が悲鳴を上げる。
「フン、無様ね。それにしてもまったく、油断も隙もありゃしない……」
ベアトリスはそんな金龍の無様な姿を嘲笑いつつ、緋乃による更なる追撃を警戒しながら、ゆっくりと体を起こす。
しかし緋乃はそんなベアトリスに追撃を加えることなく、険しい表情を浮かべながら、たった今ベアトリスに起こしてみせた現象について考えを巡らせていた。
(あの体勢からの高速移動……それに移動前後での体勢の変化の無さ……やっぱりこれは……!)
緋乃が見咎めたのは、高速移動の前後における、ベアトリスの体勢についてだ。
なにせ、緋乃からの攻撃を受けたベアトリスは、攻撃を受けた際の姿勢を崩すことなく、そのまま移動してみせたのだ。
これは少々不自然な事だ。別に緋乃だって、別に絶対に移動できない状態だとは思っていなかった。
少し無理のある体勢ではあったものの、移動するだけならばできなくもない。ベアトリスのとっていた体勢は、そういうものであった。
しかし、そうして移動を終えた後に、わざわざあのような動きづらいポーズを再度取る必要性は、全くと言っていいほど存在しない。
まあ一応、緋乃の油断や誤認を誘うという理由はあるかもしれないが、それにしてもリスクとリターンが釣り合っているとは思えない。
以上のことから推察するに、ベアトリスの持つ異能は――。
(空間転移! きっとそうに違いない……!)
そうしてベアトリスの異能に当たりをつける緋乃であったが、しかし、確実に
あのクラスの敵を相手に、読み違えをしたまま戦うというのは、あまりにもリスキー。
だからこそ、緋乃は追撃をやめたのだ。ベアトリスの異能の、その正体を確実に暴くために。攻撃範囲の広さゆえに、仲間を巻き込んでしまう危険性から、先ほどの遭遇戦では使えなかった大技を使うために。
緋乃は右腕を頭上に掲げるのと同時に、精神力を高めていき。
(念には念を。この一発で確かめてやる!)
「這いつくばれっ!」
気合を込めた叫びと共に腕を一気に振り下ろし、異能を発動。練兵場の内部全てを飲み込むように、超重力のフィールドを展開した。
――無論。自分自身はそれに巻き込まれて潰されることがないよう、自身の周囲は台風の目のような安全地帯に設定して、である。
「ぐっ……ぬおぉ……!? クソ、これはやべえ……!」
「小賢しい……!」
今回の技はこれまでのような、燃費を気にした極小範囲の重力反転とは違う。正真正銘、相手を圧し潰して殺すための、緋乃のとっておきの技だ。
まあ本来は
(さすがにこの範囲はキツいね……! でも捕まえたよ、さあどうするクソ女。この状況から逃げるには、異能を使うしかないよ……?)
はたして緋乃の目論見通り、超重力場に囚われたベアトリス(とオマケの金龍)は、襲い掛かる重力に対し、押し潰されないよう気を高めながら耐え忍ぶ状況に追い込まれた――かと思われた次の瞬間。ベアトリスの姿が再び掻き消え。
この練兵場の中で唯一、超重力の魔の手が及ばぬ空間。即ち、術者である緋乃の上方へとその姿を現した。
(ビンゴ! また同じ体勢のまま現れたし――そもそもあの女はわたしの作った重力場に捕まってて、とてもじゃないけど動ける状態じゃなかった! つまり、あの女の能力は転移で確定!)
「死になさい!」
渾身の必殺技から逃れ出たベアトリスを見て、緋乃は苛立たしげに目を細める――様子を演じつつ、内心では思惑通りに場が動いたことに対し、喝采の声を上げ。
そんな緋乃の内心に気付いているのかいないのか、姿を現したベアトリスは、空気の壁を蹴ることで一気に加速。上空より緋乃目掛けて襲い掛かる。
「これでもくらえっ!」
だが緋乃とて、何も考えずに自身の頭上にベアトリスを誘導したわけではない。
素早い動きで腰裏にマウントされているアンタレスを手に取ると、そのままベアトリス目掛け発砲――ではなく、まるでブーメランでも投げるかのように、ベアトリスに向かって投げ付けた。
これは別にふざけているわけではなく、単純に発砲するのよりも、こちらの方がより効果的だと緋乃は判断したからである。
特殊合金をふんだんに使用され、さらに空間拡張の術式まで使われたアンタレスの総重量はおよそ70kg。極めて当然の事ながら、銃弾とは比べ物にならないほど重い。
さらに速度に関しても、普通に発砲した銃弾よりも、緋乃が投擲したアンタレス本体の方が数倍以上は速いときた。
故に――この後も続くであろう戦闘において、邪魔になって捨てるくらいならと――緋乃はアンタレスを撃つのではなく、投擲武器として使用したのである。
「なっ!?」
銃で撃たれることは想定していても、流石に銃そのものをぶん投げてくるというのは予想外だったのか。高速で回転しながら飛んでくる大型ライフルを見たベアトリスは、驚愕と困惑の入り混じった声を上げる。
「――っくぅ!」
それでもしっかりと対応し、投げ付けられたアンタレスを剣で弾いてくるあたりは敵ながら見事と言うしかないが――しかし強引にアンタレスを弾いたことで、宙に身を置くベアトリスに明確な隙が生まれ。
「貰ったぁ!」
「おのれ……!」
その隙を突かんと、緋乃はベアトリスに向かって跳び上がりながら、妖気を纏った足を大きく振り上げ――その際に生じた衝撃波もとい斬撃波を以て、ベアトリスに痛打を浴びせんとする。
円弧を描く緋乃の踵の、その延長線上に発生した真紅の斬撃が、ベアトリスの身体を断ち切らんと迫り寄り――。
「甘いってのよ! ――イグニッション!」
しかしベアトリスの方も、そう易々と攻撃を食らってはくれない。
緋乃の対空技が直撃する寸前。緋乃の後方に転移することでそれを回避したベアトリスは、スーツに蓄えられたエネルギーを開放。自身に纏わりつく超重力の網を力尽くで振り切ると、体勢を立て直しながら手にした剣を投げ放ってきた。
「お返しよ、受け取りなさい!」
ベアトリスが転移で逃げたことで、状況はこれまた一転。対空蹴りを繰り出すが為に跳び上がった緋乃は、身動きの取りづらい空中&技後硬直という二重苦の状況を狙われ、再び窮地に立たされる……なんということはなく。
「いるかボケぇ!」
飛来する剣をあっさりと尻尾で絡め取って無力化すると同時に、超重力による広域への圧し潰し攻撃を解除。間髪入れずに、今度はベアトリスを中心とする、半径1メートルほどの空間の重力を反転させた。
その使い勝手の良さから緋乃が特に愛用している、防御不能の崩し技だ。
「クソッ、いい加減に……!」
もはや丁寧さを装う余裕も無くなってきたのか、声を荒げながらその身を宙に浮かばせるベアトリス。
緋乃のこの技の恐ろしいところは、その対処手段の少なさにある。
これが念動力や気の類を用いた技であれば――相応の出力は求められるものの――受け手側も気や魔力を開放して、周囲に“力場”を発生させてやれば、対処は一応できる。
相手が“見えない巨大な手”で掴んでくるのならば、闘気の嵐でその“巨大な手”を吹き飛ばしてやればいい。そういう理屈だ。
だが、しかし、緋乃のこの技に関してはそうはいかない。
何しろ、相手に干渉しているのは重力なのだ。いくら気や魔力を解き放って力場を発生させようが、重力が相手では何の意味も無い。
発生させたその力場を完全に無視して、相手の本体に直接働きかけるからだ。
まあもっとも、ベアトリスは数少ない、この技への効果的な対処法を持っている相手ではあるが――そこに緋乃の狙いはあった。
「潰す……!」
緋乃の目前に転移してきたベアトリスが、ドスの利いた声を上げながら、緋乃を掴もうと右手を伸ばしてくる。
稼働時間に制限でもあるのか、スーツによる増幅状態は解除されていたが――それでもベアトリス本来の能力の高さや互いの体格差を考慮すると、捕まってしまえば最後。生きては帰れないだろう。
「――ッ!」
ベアトリスの伸ばしてきたその手を弾きながら、緋乃はベアトリスの異能についての情報を整理していく。
(なるほどね。おそらく、連続での転移は不可能。ほんの一瞬だけど、インターバルを挟む必要がある……)
緋乃の目的は、ベアトリスの異能がどこまでのものなのか、要はスペックの確認だった。
緋乃の重力操作の異能とは、いわば結界のようなものだ。どの範囲に・どの方向へ・どのくらいの重力を発生させるのか。それらを、あらかじめ指定してやる必要がある。
後出しで重力の向きや強度を変えたり、あるいは“結界”の範囲を広げたり、または一つの結界に複数の重力を同時に発生させるような、高度な干渉はできないのだ。
そのため、仮に“結界”に捕らえたところで、後出しでその範囲から一瞬で離脱してしまうベアトリスは、緋乃にとって極めて相性の悪い敵であった。
(残念ながら燃費は良好みたいだし……厄介ね。このクソ女に、わたしの黄金コンボは通じない。それどころか、うかつに大技を振ったら、手痛い反撃を食らう可能性がとっても大きい……)
重力反転で相手を浮かせて無力化し、そこに必殺の蹴りや尻尾を叩き込む。
緋乃が最も信頼する必殺の連続攻撃が、このベアトリスという女には通用しない。
内心で臍を噛みながら、緋乃はベアトリスが続けて繰り出してきた連続攻撃へと対処していく。
「旧型風情がッ!」
「ふっ!」
大きく踏み込みながら、こめかみを狙って薙ぎ払うよう振るわれた肘を、身を屈めることでかわし。
「目障りなのよッ!」
「くっ……!」
下がった顔面を狙い撃つかのように放たれた膝蹴りを、両腕で受け止める。
体重と勢いの乗った、強力な膝蹴りだ。両腕に走る強烈な衝撃に、緋乃は思わず呻き声を漏らしてしまう。
(スーツの増幅機能無しで、この威力……! 普段のわたしなら、おもいっきり吹き飛ばされて壁に激突。そのまま
今までの緋乃ならば、その体重の軽さが災いして、大きく吹き飛んでいたことは間違いないだろう。
しかし今の緋乃はその弱点も克服済み。着用している衣服の各部に
「私の方が――」
とはいえ、流石にその蹴りの威力の全てを受け止めきることはできず。
ズガガ、と床にブーツのヒール部分で跡を刻みながら、緋乃は後方へと押し出されていき。
そうして、緋乃が体勢を崩した今こそが好機と。
スーツのエネルギー増幅機能を発動させた上に、さらにダメ押しとばかりに、どこからともなく右手の内に剣を出現させたベアトリスが、それを振りかぶりながら一気に踏み込んできた。
「めざわりなのは――」
青白い気を纏ったその刃は、もはや考えるまでもなく防御不能。
しかしそんな一撃に対し、体勢を立て直した緋乃が取ったのは、回避ではなく迎撃だった。
緋乃は全身から膨大な量の――もし常人が今の緋乃に近寄れば、即座に全身の細胞を汚染し尽くされ、死に絶えてしまうであろう程の――妖気を噴出させながら、ベアトリスを待ち構え。
「――優秀なのよ!」
「――お前だーッ!」
振り下ろされる刃と、振り上げられた足を覆う、特殊合金仕込みのブーツが激突。
目が潰れるかと思われるほどの、圧倒的な光量の真紅の閃光と衝撃波が、練兵場の内部にて荒れ狂った。
困ったら爆発させる系主人公