最狂の転生者がモルモットになる話。   作:最弱神

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普段私は炎上を恐れながら書いてますが、今回の話に限り、炎上も覚悟の上で書いてます。あと運命についての詳しい説明は次回に入れる予定です。あと今更ですが時系列とかに矛盾がある気がしますが気にしないで下さい。


第十九話 「修羅、激昂する」

隠していたことを打ち明けたことにより気持ち的にも多少楽になったのか、アグネスタキオンと尚人は弥生賞と皐月賞を無事に勝利した。そしてそれから数日が経った頃…

 

「…正直今でも信じられないよ…私の想定だと皐月賞が終わる頃には私の脚は砕けると考えていたが…」

 

「俺は大したことしてねぇよ、出来ることをしただけさ…」

 

「その出来ることの中に私が思い付きもしなかった肉体補強案があった事が驚きだねぇ。」

 

「格闘技やってた時に人体の壊し方は徹底的に覚えたからな、あとは逆転の発想だ。どこに衝撃を加えると壊れるのかが分かればあとはそこを補強するなりそこに衝撃が行きにくくするなりすれば良い。」

 

そんな感じで会話をしているとスマホのアラームが鳴る。

 

「おっと、もうこんな時間か。」

 

「天皇賞(春)のデータを撮りに行くんだったねぇ。気を付けて行きたまえ。」

 

「言い方母親か…?まぁ行ってきます。」

 


 

京都競バ場

 

「えっと…今日の出場選手は…メジロマックイーンに…おっ、ライスシャワーも出るのか。記事は…」

 

尚人はたまたま貰った競バ新聞を取り出し読んでみる。その内容はあまり良いものでは無かった。

 

「なんだこれ…こりゃあいつが自分を敵役(ヒール)と思い込むのも無理ねぇな…」

 

新聞には主にメジロマックイーンへの3冠を期待する声が書かれていて、その裏にライスシャワーへの敗北を願う声や根拠の無いバッシングが大量に書かれていた。

 

「三流…いや、四流記事だな。こんなもん読んで民衆は何か…思わねぇか、民衆ってのは液体で真実よりもより単純な答えに向けて流れ込むって人心掌握の本に書いてあったしな。」

 

そんな事を呟き、新聞をゴミ箱に投げ込むと尚人はレースを良く見れる席に座り、ビデオカメラを設置した。

 

「あとは放置でOKっと…パドック行くか。」

 


 

パドックでは、出場の切符を勝ち取ったウマ娘達が客にアピールをしていた。

 

「やっぱりG1はレベルが高ぇなぁ…!?」

 

一目見て絶句した。メジロマックイーンもなかなかだったが、ライスシャワーの肉体は…極限と言っていい程に鍛え抜かれていた。レースという場で戦うこと以外を考えてないとすら思わせる剛脚を彼女は持っていた。

 

「きっちり仕上げて来たみたいだな…余計なもんが何もねぇ。こりゃ間違いなく速ぇぞ…!!」

 


 

その後、ゲート入りが完了し、いよいよスタートという場面…

 

「頼むからマックイーンの三冠の邪魔だけはしないでくれよ…」

 

「ライスシャワーなんかに負けるなよ…三冠を見せてくれ…」

 

(…我慢しろ俺、ここで暴れたらレースは中止、ライスシャワーの決意が無駄になる。レースが終わるまでは見守るのに徹しよう。)

 

勝利を願う者、敗北を願う者、その発言に怒りを抱く者、それぞれが観客席でレースの行く末を見守る。

そして最終コーナーを曲がりラストの直線、メジロマックイーンがメジロパーマーを追い越し先頭に立ち、そこを差そうとライスシャワーが上がってくる。

 

「おいおい辞めてくれよ、マックイーン頑張れ!」

 

「ライスシャワー、またヒールになるつもりか!?」

 

(ライスは…敵役(ヒール)じゃない…)

 

そう思った彼女の眼には…蒼く燃え盛る闘志が…決意が溢れ出ていた。まるで極限まで削ぎ落とされた体に鬼が宿ったように。

 

英雄(ヒーロー)だ…!!」

 

そう呟いた瞬間、彼女の脚はそれまで以上に力強く大地を踏み、メジロマックイーンを…追い越した。1バ身、2バ身とドンドン突き放していき、メジロマックイーンと3バ身の差を作り出しゴール板を駆け抜けた。しかし…

 

「…またやったよ…」

 

「マックイーンの三連覇、見たかったなぁ…」

 

「何で勝つんだよ…」

 

彼女がどれだけの努力を行い、力を身に付け、勝利への願いを抱いて勝ったのかを考え、勝者への祝福を贈る者は…殆ど居なかった。

 

(…今まで様々な経験をしてきたが、ここまで不快な気持ちになったのは久しぶりだな。)

 

そんな事を思いながら尚人は撮影機器を回収し、誰にも見つからないようにライスシャワーの控え室に先に向かう。

 


 

ライスシャワーの控え室

 

「お姉様…やっぱり、ブーイングって痛かったね…」

 

「いつか必ず祝福の言葉に変えて見せましょう…ね?」

 

「そうだね…お姉様、ライス、頑張るよ…!!」

 

そんな事を話ながら控え室に入ると、机の上に青薔薇の花束が置かれていた。

 

「わぁ…綺麗だね…でも誰からだろう…?」

 

「確かに気になるわね…あら?これは…」

 

花束の中に、メッセージカードが紛れ込んでいて、こんな事が書かれていた。

 

勝者には胸を張る義務が…ライスシャワーへ、優勝おめでとう。あの場に居た数少ない()()の内の一人より』

 

「…どういうことかしら?」

 

「…あの人かもね、お姉様。」

 

「あの人って?」

 

「ライスがお姉様やブルボンさん、マックイーンさんの次に尊敬してる人だよ、私に敵役(ヒール)英雄(ヒーロー)の違いを教えてくれた人。」

 

「そんな人が居たのね…私も会ってみたいわね、一度お礼を言いたいわ。」

 

「お姉様も多分一度は顔を見てると思うよ…?」

 

そんな事を話してるのを壁越しに尚人は聞いていた。

 

「…俺がやりたくてやってるだけだっての、さて…子供の涙は、大人が拭わなくちゃな…」

 

そして尚人は、理事長へと電話をかける。

 

「もしもし、たづなさん?理事長に繋いでくれる?急ぎで頼む…理事長ですか?要件が一つだけありまして…『これから俺が行うことは全て俺の独断でやってるのでもし何か責任を追及されたら全責任を俺に投げてください』。それじゃ宜しくお願いしますね?では。」

 

そう言うだけ言うと何かを言われてるのを無視して電話を切り、首元に着けたトレーナーバッチをポケットの中に仕舞う。

 

「さて…運命(クソッタレ)をブッ飛ばしてくるか…」

 


 

翌日 理事長室

 

「濱田トレーナーさん?言い訳を聞きましょうか?」

 

そうたづなさんは威圧感を感じる雰囲気を纏いながら尚人に話を聞く。が、尚人は何処吹く風よと言わんばかりに怯みもせずに自分の意見を述べた。

 

「俺は一切後悔してません。」

 

「反省ッ!!君には匿名のタレコミであの場に居た観きゃ」

 

「客じゃ無い。」

 

「な…」

 

「観客には勝負の舞台に立った者への感謝、負けた者への励まし、そして勝者への祝福を贈る義務が発生する。それを怠った者は決して客とは言わない。」

 

「それでも暴力は…」

 

「まず俺は同じような事を言ったら相手はパイプ椅子で先制攻撃してきましたよ?それに私は受け流しと寸止めしかしてませんので相手にダメージは一切与えてません。終わったあと警察に事情説明しましたが、多少の注意で解放されましたし。俺のこの行いが善だとは言いません、善や悪なんてものに答えはありませんし。だからと言って何の不正も行ってない少女が集団で暴言を吐かれて泣いてるのを見逃すのが良いこととは決して俺には思えません。」

 

「ぐっ…そこを言われると…」

 

「よって私はあの行動に一切の後悔はありません、それとも…理事長やたづなさんも()()()()なんですか?」

 

その言葉を聞いて、二人は黙り込んでしまった。当たり前だ。二人ももし出来るなら尚人と同じことをしていたと自覚しているから、ここで何かを言えばあのような非道な行為を行った者達と同類になってしまうことも理解していたからだ。

 

「…たづな、私たちの負けだな。私達には彼を裁けるほどの非情さが無い。」

 

「そう、ですね…ですが流石に何もお咎め無しという訳にはいきません。そこは理解していますね?」

 

「分かってます。」

 

「謹慎ッ!!濱田トレーナー、君には一週間の謹慎処分を言い渡すッ!!」

 

「甘んじて、受け入れさせて頂きます。」

 

こうして尚人は一週間謹慎処分となり、自宅で時間をもて余すことには…ならなかった。何故ならライスシャワーが勝った後、控え室で泣いていた時に尚人は運命(クソッタレ)が行動していた形跡を見つけていた…つまりあの暴言の数々も、運命(クソッタレ)の仕込みが紛れてる可能性が高い、だから尚人は、一週間の謹慎処分による暇な時間を使って運命に何を行っていて、何を仕込んでいるのかを全て聞き出しに…

 

「運命によって誰かが理不尽に苦しむなら…誰かが人の道から外れそうになるなら俺がブッ壊してやる…!!」




『トレーナーバッチ』
身に付けている者が中央トレーナーであることを証明するバッチ。中央トレーナーは必ず衣服の何処かに着けている必要がある。これを尚人が身に付けている間は彼は『濱田トレーナー』として動いており、外している間は『濱田尚人』として動いている。なお理事長室に入る頃には再度装着していた。
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