最狂の転生者がモルモットになる話。   作:最弱神

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本来鍵を渡すイベントは前回やる予定でしたが完全に忘れてました…


第二十一話 「修羅、信頼する」

東京競バ場

 

今日は日本ダービーの前日、そこで尚人のタキオンの二人はコースの確認とどんな状況になるかの予想を立てに来ていた。

 

「東京レース場…起伏が緩めで最終直線が長いって聞いてたけど、確かに中山と比べると100m以上違うな。」

 

「そうだねぇ…皆あそこの辺りでスパートをかけると予想出来るから…出場する選手も考えると…」

 

「…資料から考えると、今回出る選手のうち逃げを選ぶであろう2名はここでバテて落ちる…勝てるな、このレース。いや元々負ける事なんか今まで一度も考えてないが。」

 

「そうなのかい?モルモット君のことだから何か考えてそうだったが。」

 

「負けた時の事なんか負けた後考えれば良いんだと俺は思ってる。余計なこと考えると疲れるしな。」

 

実際は負ける=死の世界だったから負ける事を考えても何の意味も無いが尚人としての正解。負け戦だとしても勝利の一手を全力で探し、そして全員生き抜いて勝利する。彼はそういう男である。

 

「君を見てると君がどういう人間なのか分からなくなってくるよ…」

 

「ただのクレイジー野郎だと思うが。ゴールドシップとは方向性が違うけど。」

 

「君割と自嘲に躊躇が無いねぇ…」

 

「しょうがないよ、事実だし。」

 

そんな事を話ながらシュミレーションを終わらせ、最終確認を済ませる。

 

「よし。これであとは明日走るだけだな。」

 

「そうだね。可能性を導き出して来ようじゃないか。」

 

「何か掴めたら教えてくれ。詳しく聞きたいから。」

 


 

翌日、タキオンをパドックまで送り尚人は観客席に来ていた。

正直あまり評判は良くない気がするが、恐らく10割で尚人が原因である。

 

「…噂なんてもんはしょせん消費期限75日だから気にしすぎもあれか。」

 

「貴方は…もう少し…気にした方が…良いと思います…」

 

この話し方と気配で誰なのかはハッキリと分かった。

 

「マンハッタンカフェか…タキオンがいつも世話になってるな。」

 

「いえ…今日は…勝てそうなのですか…?」

 

「彼女はぶっちぎりの強ささ、半端じゃない。それに負けることを想定して戦う経験は俺にはない。常に勝つ道、生き抜くを模索し続けて、今日まで両足で立ってきたからな。」

 

「そう…ですか…一つ…聞いても…良いですか…?」

 

「なんだ?」

 

「貴方は…()()()()()のですか?」

 

そう聞くマンハッタンカフェの顔は…興味と恐れが同居していた。

 

「…何を知りたいのかは知らねぇが、俺は霊感はある方だとだけ言っておこう。」

 

「貴方はいったい…」

 

「はいストップ、知らない方が良いことも世の中一つや二つある。特に君やタキオン、皇帝みたいな表側の住民にはな。」

 

「それは…どういう意味なのですか…?」

 

「分からなくて良い、同じことは言わねぇぞ。」

 

「そう…ですか…それは…失礼しました…」

 

そんな事を話しているとレースが既に始まっており、もう中盤も過ぎようとしていた。

 

「…今日俺と君は会わず、ここに着ていた事を知らなかった。会話なんか無論無かった、そうした方が良いだろう。多分だけどな。」

 

「…そう、ですね…念のため言っておきますが…タキオンさんを…悲しませたりしないで下さいね…」

 

「子供の涙を拭うのは大人の仕事だ、大人が子供を泣かせちゃ駄目なのは理解してるつもりだ。」

 

「…なら、良いですが…」

 

どうやら話しているうちにレースは終わってしまったようだ。掲示板には一着の部分にタキオンの番号が書かれており、二着との間には三という数字が表示されている。

 

「…いっけね、見過ごした…」

 

「すみません…私のせいで…」

 

「いや、良いんだ。録画は済ませてあるから後で見直すよ。それじゃ、今回の事は他言無用で頼むな。」

 

そう言って尚人はその場から立ち去りタキオンの元へ向かう。

 

「…私達が表側…そして恐らく彼は裏側…どういうことなのでしょうか…」

 


 

ウイニングライブが終わった後、タキオンに多少責められたが何とか謝り自宅に帰って眠っていると…

 

「…ここがモルモット君の家か…鍵は開かないねぇ…窓なら開いてるだろうか?」

 

そう言って庭に足を踏み入れた瞬間

 

ビーッ!ビーッ!

 

「!?」

 

警告音が鳴り響くと同時に筒のようなものが飛び出してきて、タキオンに向けて先を向ける。そして筒の穴から…

 

「ぶっ…なんだこれは…」

 

大量のトリモチが発射されタキオンを捕らえた。

 

「…なにやってんの?タキオン…」

 

「モ、モルモット君!今すぐ助けたまえ!!このベタベタしたものを外してくれ!!」

 

「…正面からちゃんとインターホン使ってくれれば開けたのに…というか今門限過ぎてるでしょ…」

 

「そんなことはいいから!!」

 

「はいはい…」

 

尚人はトリモチを特殊な液体で溶かしてタキオンを救出していく、ただ服は結構悲惨なことになっていた。

 

「…取り敢えず風呂沸かすから入ってろ、上着は洗っといておくから。流石に下着は帰って自分で洗ってくれ。コンビニかなんかで売ってるかな…」

 

「モルモット君…なんだいあのトラップは…」

 

「ウマソックとかの防犯登録してなくてな、自前で用意した。上手くいくか分からなかったが、効果はちゃんとあったな。」

 

「少なくとも防犯対策はしっかりしてるようで安心したよ…お風呂借りてくるねぇ。」

 

「服は適当に用意しとくから、ごゆっくり。余計な物触るとさっきみたいなことになるから触れないでよ?」

 

タキオンを風呂場まで案内して入らせたあとタキオンが着ていた服を洗濯機に放り込み、コンビニなどで必要な物を買ってタキオンの着替えと共に置いて風呂から出てくるのをリビングでのんびり待つ。

数分後、しっとりと水分を纏ったタキオンが用意した服を着て出てきた。

 

「身体ちゃんと拭こうぜ…風邪引くぞ?」

 

そう言ってタキオンにバスタオルを投げ渡すとタキオンは自分の身体を適当に拭いて机の上に適当に置いた。

 

「…で、こんな時間にどうしたんだ?何か緊急の用事…ではないだろうけど。」

 

「…モルモット君が寝てる間に実験の一つでもしようと思ってねぇ…」

 

「…そんな感じだろうと思った、やるなら起きてる時にしてくれよ…あと不法侵入はやめような。色々騒ぎになるから。」

 

「むぅ…」

 

「そんな顔したって流石に怒られるから…スペアキーやるから今度からは正面から来い…」

 

そう言うと尚人は自宅のスペアキーを机の上に置く。

 

「ふぅン?そんな簡単に渡して良いのかい?」

 

「タキオンなら悪用しないだろ。渡しておくついでに言っとくけどあそこの部屋は倉庫だけど、危険なものが大量にあるから絶対に入るなよ。」

 

「分かったよ、今日はもう遅いし送ってくれるかい?」

 

「…俺免許は持ってるけど車もバイクも持ってねぇ…」

 

実際には倉庫にあるのだが、車検を通すのを忘れていた為使えない。そもそも馬力や最高速度などが頭可笑しい数値になっているので通るかどうかも微妙なところだが。

 

「ペーパードライバーってやつかい?」

 

「まぁそんなとこだな。取り敢えず寮長か何かに電話するか。」

 

尚人はトレセン学園に電話するが、夜遅いこともあり電話は繋がらなかった。

 

「…駄目だ、やっぱり出ない。」

 

「念のため外泊届けを出しておいて良かったねぇ…」

 

「それを先に言えよ…布団で良いよな?」

 

尚人は倉庫に入って来客用の敷き布団と掛け布団を取り出して即閉め直すと床に敷く。

 

「構わないよ。それにしても君の家って広いんだねぇ、誰かと住んでるのかい?」

 

「いや独り暮らしだ。少々広すぎることは自覚してる。」

 

「不動産屋とかで見てなかったのかい?」

 

「この家貰い物なんよ。」

 

「誰からだい?親とかかい?」

 

「親はもう居ねぇ、里親…みてぇなもんかな。」

 

「…その、すまなかったねぇ。」

 

「気にしないでくれ、もう遠い昔の話だ。」

 

そう言って尚人は最初の血縁者である両親を思い出す。だが思い出せたのは集合写真を撮られた時と自分に隠れて葉巻を吸っていた時、そして血の中に沈みもう物言わぬ肉片になっていた時のことだけだった。

 

(俺を除いた一家強盗放火殺人、証拠を消すために家は犯人によって焼かれたが保険として犯人が警察の上層部に賄賂送って早々に捜査は打ち切り。これら全部が運命(クソッタレ)の仕込みだと知った時は開いた口が塞がらなかったな。)

 

「…今日はもう休むとするよ。お休みモルモット君。」

 

「ああ、お休みタキオン。」

 

翌日、色々な人から質問責めされることになった。




『キューバ産の葉巻』
葉巻の本場、キューバで職人が一本ずつ手巻きで仕上げた高級葉巻。細かな所までしっかり拘り抜かれた一級品で最小限の装飾がされたシガーカッターと防水加工がしっかり施された葉巻入れ、専用のターボライターがセットで付いている。
元々は尚人の最初の父親が吸っていたらしいが、彼曰く「煙よりも価値を味わってるような感じだった」そうだ。
普段は吸わないが、尚人の両親の命日の時のみ弔いとして一本だけ吸っている。が、味わいなどは数十万年吸っても未だに良く分からないらしい。
なお両親はとっくの昔に別の生命に転生しており尚人の事など覚えてる訳が無いが、それでも弔いを続けているのは今までの血縁者で唯一思い入れがあるからだろう。
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