最狂の転生者がモルモットになる話。   作:最弱神

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お久しぶりです。
前回「次回は菊花賞の予定です。」と言いましたが、予定を変更しました。恐らく次回こそは菊花賞になると思います。
実は、今回出てくるキャラには元ネタがあるキャラが居ます。(ヒントが少なすぎて分からないと思いますが…)
大ヒントを言うとタキオンの友人の友人(?)に関係がある馬です。特に正解しても賞品などはありません。


第二十三話 「修羅、除霊する」

なんだかんだで夏合宿も終わりが近くなり、普段との環境の違いによる活力のブーストも切れかかってきた頃、ウマ娘達の間ではとあるイベントととある噂で盛り上がっていた。

合宿場の近くの山にある神社で花火大会があり、屋台も出るということと、その神社の近くにある祠に幽霊が出るという噂である。

ただ、幽霊の一件は実際に子供のウマ娘が数日間帰ってこなかったという被害も報告されている為、学園としては見過ごせない状態であり、悩みの種となっていた。

 

「という訳でちょっとその幽霊ぶん殴るかなんかして何とかして来るから終わったら花火大会行かねぇか?」

 

「幽霊と呼ばれる存在には質量が存在しないから物理攻撃は無理だと思うがねぇ…?」

 

「腕に塩でも着けておけば除霊効果は充分出るだろ。」

 

そう言って尚人が取り出したのはスーパーで買える特売の食塩であった。当たり前だがこんな物で普通の人間は幽霊を昇天させられる訳がない。

 

「あと切り札として聖水を作ってみた。まぁ各地の伝説やら神話やらに出てくる聖なる物って呼ばれてるのをごちゃ混ぜにしただけの無国籍風って感じだがな。それなりの効果はありそうだし無かった時でも凍らせればアイスになりそうだ。」

 

こんな物に効果があるのかは全くもって不明だが、無いよりかはマシだろう…マシだと思いたい。

 

「食べれるのかい?聖水って?」

 

「教会が配ってるのなんて祈り捧げられてるだけで元はただの水だぞ?水道水なのか井戸水なのかは知らんが。」

 

「それはそうだがねぇ…」

 

「まぁ最悪何かあっても帰ってこれるだろ、それが出来たから今ここに俺は居れてるんだし。」

 

その説得力があるのか無いのか尚人以外にはいまいち分からない言葉にタキオンは折れた。

 

「…生きて帰ってきてくれたまえよ?君のような実験動物(モルモット)兼トレーナーなどこの先見つからないだろうしねぇ。」

 

「確かにそんな奴この世に俺以外居なさそうだな、HAHAHA。」

 


 

その日の夜 寂れた祠

 

「確かこの辺だったよな…あれか、だいぶ風化してるな…手入れされてねぇみてぇだ。」

 

噂の祠は雨風に曝され続けてボロボロになっており、人の手が長い間加えられていないことが容易に分かった。こんなになるまで放置されて鬱憤が溜まったのが怪異現象の原因だろうか?

 

「…取り敢えず綺麗にしておくか、汚ぇ所に住んでると大抵の奴は気が滅入っちまうだろうし。」

 

上に被った埃や落ち葉などを払い、屋根に貼られた銅板の錆を取り、錆びにくいように錆止めを塗り、木に素材に合ったペンキを塗り直し…そんな事をしてると随分と見違えて綺麗になった。これならここに居るであろう神も心地よく住めるだろう。

 

「もしこれで機嫌が良くしてくれたりしてくれたら幽霊退治でも手伝ってくれると助かるんだが。」

 

その辺のコンビニで仕入れた缶ビールと油揚げとおにぎりをお供え物として置いてそう呟く。何を供えれば良いのかはよく分からなかったから適当にそれっぽいのを用意した。

と、そんな所に…

 

「…お、待ってました。」

 

噂の幽霊がやってきた。どうやらウマ娘の幽霊のようだった。

 

…オマエ、ナンデワタシガワカル?

 

「俺が幽霊とか見えるタイプの奴だから。それで、ここらで幽霊によって子供が数日間行方不明になってるって噂が流れてるんだが、お前か?」

 

「…ワタシハ、レースガダイスキダ。ダカラオモイキリハシリアイタイ。ケドオトナハワタシヲミレナイ。ダカラワタシガミエルコドモニツキアッテモラッテタ。」

 

この幽霊はただ単にレース相手が欲しかっただけらしい。あまり悪意もなさそうだし、ぶん殴って無理矢理昇天させるという方法はやめることにした。

 

「…なるほどね。なら俺があんたのレースに付き合ってやるよ。これでも脚には自信がある。ウマ娘相手でも負けねぇよ。」

 

「…イイノカ?」

 

「ああ、といってもこの後この辺であるお祭りで待ち合わせしてるから今日は1レースだけだがな。」

 

「…ソレデモイイ。オマエハドウヤラフツウノニンゲンジャナサソウダ。ヒサシブリニゼンリョクガダセソウデワクワクスルヨ。」

 

「そりゃ良かった。幽霊と戦うなんて俺も久しぶりだ、ちょっとワクワクしてるよ。」

 

この幽霊、何年ここに居るのかは定かでは無いが、ずっと鍛え続けてきたのだと思われる。その強さは…ハッキリ言って現時点のライスシャワーやタキオンどころが、皇帝(シンボリルドルフ)を大きく越えていた。文字通りレベルが違う。

 

「オマエニハオトルガワタシモカナリキタエテキタ。ソウヤスヤストマケルツモリハナイ。」

 

「へっ、上等。何処で走るんだ?俺は何処でもいけるが、ウマ娘のあんたは芝かダートじゃねぇと全力出せねぇだろ?」

 

「アンシンシロ、コノサキニツブレタレースジョウガアル。ソコデフダンワタシハハシッテタ。」

 

「そうなのか。なら大丈夫だな。」

 

幽霊に着いていってみると本当に競バ場があった。金属部分が錆びていたり照明がへし折れたりしてるが、レース用の芝とダートは充分使える代物だった。何故年期が入ってそうなのに芝もダートもレースで使えるほどの高品質が保たれてるのか、疑問が湧くが考えても仕方ないことなので放置。今は目の前のレースの事を考えることにする。

 

「ダートミギマワリ2000m、ババハリョウ、ソレデイイカ?」

 

「了解、ゲートは…うっそ、まだ使えるぞこれ。電源は…これか。これで準備は良さそうだな。」

 

30秒後にゲートが開くように設定してゲート内に入る。この状態でウマ娘の真似事をするのは初めてだが、手加減とかは練習したし大丈夫だろう。

 

「…ソレジャ、ハジメルゾ。ガッカリサセナイデクレヨ?」

 

「そっちこそ、吠え面かくなよ?」

 


 

結果、無論尚人が勝った。だが彼女の差しとしての脚は非常に速かった。上がり3ハロンの世界記録を3秒は縮めてるだろう。

 

「…ハハッ、コノスガタニナッテカラワタシニカッタヤツガニンゲンノオトコナンテナ…コンナタノシイレースハハジメテダ…!!」

 

「お前も相当速かったぞ?俺が見てきたウマ娘で間違いなく最速だ。他の奴がなんと言おうと、現段階でお前の右に出るウマ娘は一人も居ないだろう。俺の担当が求めてる"最速のその先"ってやつの答えの一つがお前なのかもな。」

 

「イヤ…ワタシガマダイキテタコロ、ワタシニマサルトモオトラナカッタヤツガヒトリイル…モシワタシトオナジニナッテモキタエツヅケテイタラサイソクハオソラクアイツダロウ…ドコニイルノカモモウワカラナイシナマエモワスレタガナ…」

 

「そうなのか、興味深い事が聞けたよ。是非とも会ってみたかったな。」

 

「フフ…ワタシモサ…ワタシは…満足…シた…たった1回なのに…あんなレースをしたら…満足出来ない奴は居ない…友達達のとこに逝くとしよう…良かったら…ここは…好きに…使ってくれ…」

 

声がクリアに聞こえると思い幽霊の身体を見ると、天使の輪っかのようなものがあった。どうやら昇天するつもりらしい。近くに別の存在も居た。あの祠に居た神が彼女を天界まで導いてくれるようだ。

 

「…ありがとうな、他の奴が忘れても俺はお前の事を忘れることはないだろう。お前とのレース、楽しかったぞ。」

 

「ああ…私も、今までで最高だった…あり…が…とう…

 

そう言葉を残して、彼女は神と一緒に天へと飛んでいった。恐らく戻ってくることは無いだろう。そう思いながら後ろを振り向くと足に何かが当たった。拾ってみると古い蹄鉄があった。手に持った瞬間に確信した。これは彼女の物であると。最期に最高のレースをやってくれたお礼なのだと。

 

「…ありがたく貰っていくぞ。じゃあな。」

 

そう呟いて、理事長に幽霊騒ぎが解決した事を電話で教え、蹄鉄を懐にしまい甚平に着替えて待ち合わせ場所に行く。

 

尚人は『歴戦の蹄鉄』を手に入れた。

 


 

花火大会会場

 

「…確かこの辺で待ち合わせだったと思うけど…」

 

「遅いよモルモット君、これは後で実験に付き合って貰うしか無いねぇ。」

 

「おお、タキオン。悪かった…な…!!」

 

声を聞いて振り返ったらそこには空色をベースに可憐な浴衣を着たタキオンの姿があった。

 

「…モルモット君?何を呆けてるのかい?」

 

「あ、ああ悪い。タキオンがそういう格好で来るって無かったから、凄く良く似合ってるぞ。」

 

「そうかい?今日行くことを伝えたらスカーレット君とデジタル君に着せられたんだが…そう真正面から褒められると少々照れくさいような感じになるよ…」

 

彼女が言うデジタル君はタキオンの同室であるアグネスデジタルの事だろう。彼女は一言で言えばウマ娘オタクって感じであり、その知識は下手なトレーナーが顔負けする程である。そして脚質もとんでもないことになっており、芝もダートも平然な顔で走れるのだ。そんなウマ娘は中央トレセンの歴史上初めてであり、専用の対応を取らざるを得なかったらしい。

 

「そうなの?まぁタキオンは元から美人だし、それを和服が引き出してるって感じかな。写真撮りたいくらいだ。」

 

「ハハッ、君がそんなに喜んでくれるとは少々想定外だったよ。」

 

「そう?俺は割と思ったことは口にしてると思うぞ?」

 

そんな事を話ながら屋台のある方に向かって行く。そして…

 

「よしトレーナー君、この手先の感覚が10倍鋭くなる薬を飲んでこの型抜きをやってみてくれたまえ。」

 

「任せろ、この手のは無双してたからな。」

 

型抜き屋では一番難易度が高いのをいとも簡単にクリアし…

 

「この薬は動体視力を引き上げる薬さ。これで射的をすれば効果さえ出てれば百発百中間違い無しさ。」

 

「射的は得意だぜ?的が近すぎるのが少々不満だが。」

 

射的屋ではモルモット型のぬいぐるみを1発でGETし…

 

「君はあの輪投げも出来るのかい?」

 

「もちろん、好きなのを取ってやるよ。」

 

輪投げ屋では全ての輪っかを棒に通し…とこんな風に屋台を無双してた回った。

 


 

「トレーナー君ってこういうのが得意だったんだねぇ、最後の方は店側が勘弁して欲しいって言ってたねぇ。」

 

「少々調子に乗り過ぎたかな…まぁ良いか。そろそろ花火が上がるな。」

 

「そうだねぇ…痛っ!!」

 

「タキオン!?」

 

タキオンが急に右足を押さえていたので直ぐに確認する。すると…親指と人差し指の間が赤くなっていた。

 

「あー…草履の鼻緒が擦れたのか…普段履かねぇしな…」

 

「…次からは普通の靴にするかねぇ…トレーナー君、おぶってくれたまえ。」

 

「了解…よいしょっと…」

 

そうタキオンの草履を回収して背中におぶった時、

 

ヒュー…ドーン!!

 

花火が撃ち上がり夜空を様々な色の光で綺麗に彩った。

 

「…鮮やかだな。」

 

「そうだねぇ…昔見た時よりずっと…」

 

「…そりゃ良かった…うん、本当に…昔見た時よりずっと…綺麗だ。」

 

その時の尚人とタキオンの顔は…心の底から嬉しそうだった。

 

才能が1段階開花した事により『独占力』を習得した!




『歴戦の蹄鉄』
尚人とレースで戦ったウマ娘の幽霊が使っていた古い蹄鉄。幽霊が装備していた物は物質ではないので、普通残らない筈だが、なぜか形あるものとしてこの世に残っていた。
長年使っていたのか若干すり減っているが、今まで戦ってきた勲章とも言える細かな傷は色褪せる事はないだろう。

『寂れた競バ場』
壁などに苔や汚れが目立ち、照明はへし折れ、観客席は劣化によりボロボロになっている競バ場。しかしレースをするために必要なダートと芝、そしてゲートは未だに使えるという少々不気味な場所。人が入った痕跡は無いが、どうやって維持出来たのだろうか?幽霊である彼女が維持する為の整備など出来る筈が無いのに。
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