最狂の転生者がモルモットになる話。   作:最弱神

6 / 25
尚人の戦闘シーン書きたいな…と考えましたがウマ娘という世界観が確実に崩壊しそうなのでやめました。最初の方で用意した設定の事を忘れてるのは何処の誰でしょうかね…(遠い目)
因みに昼想夜夢とは『目が覚めている昼に思ったことを、夜に寝て夢見ること』という意味です。


第六話 「修羅、契約する」

選抜レースから数日後、尚人は勉強させて貰うチームを探す為に学園内を回っていた。

 

「さーて、色々あるけど何処が良いのかね…ん?あれは…アグネスタキオンとマンハッタンカフェか…何話してるんだろ?」

 

「じゃあ…決まったんですか?ここを、出て行くって…。」

 

「!」

 

出て行く…その言葉の意味が退学を意味するのは簡単に想像出来た。彼女が納得してるなら止める義理も無いが…

 

「まぁ、そうだね。申し込んでもいない選抜レースへの強制参加要求が、どうやら最後通告というやつだったらしい。」

 

「選抜レースくらい…出ればよかったのに…。それか、普段の授業を…もう少し真面目に受ける、とか…。」

 

「有象無象に研究を邪魔される日々を繰り返すのはごめんだよ。授業だって、無駄のない範囲でなら受けていたつもりなんだが。」

 

恐らくここでいう『無駄のない範囲で』は最低出席日数を大きく下回っているだろう。もしかしたら一桁かもしれない。

 

「でも…退学したらトゥインクル・シリーズにも出られないし…。研究は…どうするんですか…?」

 

「無論続けるよ。私の頭脳と肉体は常にここに在るのだから。それに、トゥインクル・シリーズでなくとも高い実力を持ったウマ娘の集まるレースはある。いっそ海外に拠点を移してもいいな!イギリス、フランス、アメリカ、ドバイーーそれはそれで新たな可能性が広がりそうだ!」

 

(…そんな風に学業を放棄して海外の研究所に行っても学業ですら放棄した根気の無い奴として追い返されると思うが…)

 

「海外…それはまた…随分と、思い切りのいい…。」

 

「ハッハッハ!それもこれも研究のため、というやつだよ。ともあれ私は、"アグネスタキオン"というウマ娘の肉体を用いて、最高速度のその先を見に行く。それが揺らぐことは無いさ。」

 

「そう…ですか…。」

 

「おや…おやおや?もしかして私を案じてくれたのかな?もしくは幾度もなく実験に付き合う内、癖になってしまったかな!?心配せずとも薬を配送してあげるくらいはやぶさかではないが!」

 

「いえ…2度とおかしな実験に巻き込まれないなら、私としては…願ったり、といいますか…。」

 

「えー!!」

 

「でも…研究は続けるというのなら、よかったです。…では。」

 

「あ、待てカフェ!最後にこの実験…ってもう聞いてないか。」

 

これらの会話から、アグネスタキオンが学園を出る意思は固いようだ。…余計な世話とはいえどうも歯痒いな…と考えていると

 

「君もそう思うかい?」

 

いきなり話しかけられた…最近油断してるなぁと少し自己嫌悪しながら声の主を予想する…この声は…

 

「"皇帝"シンボリルドルフ…何の用で?」

 

「いや…君がえらくアグネスタキオンに興味を持っているようでね。昼想夜夢(ちゅうそうやむ)…というやつかな?」

 

「やめてくれ…その言い方だと俺が変質者になるから…超高速の噂が気になってるだけだよ。」

 

嘘である。超ド級の年長物として彼女が心配なのだ。彼女が社会の荒波に沈み散っていくのは…なんか嫌だと思ってしまう。

 

「…これから私はアグネスタキオンに模擬レースの併走を頼もうと思う。君は見に来るかい?」

 

「…ありがとよ皇帝。見学させて貰おう。」

 


 

夕方 模擬レース場

 

「っと…ちゃっかり客席にいるとは。君もなかなか太いやつだな、新人君。」

 

「いやぁ…あんな話聞いたら行かない選択肢は無いだろ。」

 

"超高速"とまで言われた彼女と"皇帝"が併走するとあっては、見に行かないトレーナーは居ないだろう。まぁ尚人の他に観客は居ないが。

 

「ふぅン。まぁ知欲に衝き動かされる人間は嫌いじゃあないよ。好きなだけ観戦するがいいさ。私がこのレースを駆けるのも、最後だろうからね。」

 

「待たせたな、アグネスタキオン。幸い二人きり…観客も新人君のみ。静かな勝負が楽しめそうだ。」

 

「そういう時間帯を狙ったんじゃないかい?どんな腹積もりかは知らんがね。」

 

事実皇帝が何を目的としてこの模擬レースを行おうとしてるのかは、思い当たる節が多すぎるから分からない。単純に彼女の最後の走りを見ようとしてるのか…レースの情熱でも呼び覚まさせるつもりなのか…それとも…

 

「ふっ…さて、コースは芝2000mでいいかな?」

 

「なんだって構わないよ。恐らく会長には大恩があるだろうからね、お安い御用というやつだ。」

 

「…結局君を庇いきれなかったのだから、感謝される謂れは無いさ。」

 

「ハッハッハ!君は相変わらず生真面目さが過ぎる!!まぁいい、芝2000mだね、準備を始めよう。」

 

そうしてアグネスタキオンは準備をしに移動したが、皇帝は考え事をしていた。

 

「…どうかしたか?」

 

「研究のためトゥインクル・シリーズに出る必要があり、学園に来た。だが在学する事自体が研究を拒むのであれば、退学も止む無し。トゥインクル・シリーズに拘泥する事はない。拠点を移し、その他の実力者たちが集うレースに出るのみーーここまでは実に論理的だが、だからこそ不思議だと思わないか?何故彼女は、最後通告があるまで学園に居続けたのだろうな。『担当トレーナー』という、彼女の言う『邪魔者』からは決して逃れ得ぬこの学園に、何故?…君は、どう思う?」

 

(…こりゃ、皇帝はとんでもない策士かもな。まぁ彼女の走りを見るまでは何も言わんが。)

 

こうして、尚人一人だけが見守る中、"超高速"と"皇帝"のレースが始まった…!

 


 

「さて。準備はいいかな、アグネスタキオン?」

 

「いつでもどうぞ、会長。」

 

アグネスタキオンは名高い一族の"最高傑作"であり、素行の悪さすら霞ませてきた脚の持ち主らしい。対する"皇帝"シンボリルドルフは、強豪ひしめくトレセン学園の頂点に君臨する、絶対的な実力者ーー期せずして目撃者となれた二強の対決は、スタート直前から皮膚すら痺れる強烈な迫力を放っていた…!

 

(…この感覚…懐かしいなぁ…おっと、走りを見るのに集中しないと…)

 

そうして…レースの火蓋は切られた。

 

「はっ、はっ…!!」

 

「フッ…さすがは"皇帝"、か…!」

 

剥き出しの才をぶつけ合う中でも、リードを奪い続けたのはシンボリルドルフであった。しかし、最終直線に差し掛かりーー

 

(特殊相対性理論に矛盾することなく、光速度より速く動く仮想粒子の存在は、いまだ完全に否定されてはいない。定説では、ウマ娘の最高速度は時速約70kmとされているが、それ以上に到達し得る可能性を否定する根拠は見つかっていない!わかるか?可能性だ!!この脚は!この体は!!ーー可能性に満ち満ちている!!)

 

アグネスタキオンの眼が、変わった。

 

「くっ…!?」

 

彼女は、アグネスタキオンは…あの皇帝を追い抜いたのだ。

 

「もっと速く!もっと速く!!もっと速く!!!ウマ娘の脚に眠る可能性の果ては!この肉体で到達し得る限界速度は!いまだ影すら見えぬ程、遥か彼方なのだから…!!」

 

その眼は無邪気な少女のようでもあり、狂気的な欲望に憑かれた悪魔のようでもありーー呼吸も忘れるほど、魅せられる色をしていた。

 


 

「はぁっ…はぁっ、はぁ…!!ーー疲れた!!心底そう思うぞ、アグネスタキオン!!」

 

「クク、会長はお優しい。勝利したのは君だというのにね。」

 

「だがハナ差…いや、ほぼ同着だっただろう。全く末恐ろしい。しかし君を手放さねばならんとは、損失が過ぎるな。心変わりの兆しは?全く無いのか?」

 

どうやら皇帝がアグネスタキオンと走ったのはレースの情熱でも呼び覚まそうとする為のようだ。だが尚人は分かっていた。確実にそれだけじゃ無いと。

 

「もしや、生徒会長の君が出張ることで学園に愛着でも持たせようと?だとすれば残念、失敗だ。私の心は変わらないよ。」

 

「そうか…それは、彼の話を聞いてもなお、か?」

 

「ん?彼…?」

 

「…ふふ。」

 

顔を手で隠す。こうでもしないと笑っているのが周りにバレそうだからだ。身体の震えが止まらない。恐らく皇帝の本当の目的は尚人をこうすることだろう。

 

(…ハハハハハ!!こりゃやられたな…良いぜ皇帝。乗ってやるよ。後悔するなよ!!)

 

他のトレーナーが見ても似たような状態になるだろう。だが尚人は違う。他のトレーナーは『レースに勝たせたい』『もっと強くさせたい』と思うところだが、尚人の感情はもっとシンプルでもっと純粋だった。

 

『面白そうだ。』

 

ある意味ではトレーナーとして失格なその感情を尚人は抑える事が出来なかった。

 

「…ふぅン?君、どうしたのかなその目は。随分とーー狂った色をしているが?」

 

先程見てしまったアグネスタキオンの走りが、頭から離れない。だが彼女は、『可能性の果ては遥か彼方だ』と言った。アグネスタキオンはーーもっともっと、速くなれるというのだ。それを全力で追う彼女を助ける道…これが面白く無い訳が無い!!

 

(俺も見てぇよ…君が限界すら置いていく姿が!!)

 

「こら、勝手に呆けるな!まさか、『スカウトしたい』とでも言うつもりか?おいおいよしてくれ、これ以上研究を遅延させるつもりはないんだ。」

 

そう、アグネスタキオンはまともなトレーナーなど求めていない。日々のトレーニングでさえ、彼女にとっては研究の一環なのだから。その部分が周りのまともなトレーナーを近寄らせなかったのだろう。だが…彼は、まともでは無かった。

 

「この間の薬…持ってるか?」

 

「急になんだ君は。あるけど。」

 

そう言って取り出してくれたアグネスタキオンの手から、かなり怪しい色をしているその薬を奪い取りーー

 

「えっ。おい、君!?」

 

3本すべてを、一気に飲み干した!!

 

(さばの味噌煮缶にデスソースとレモン汁を大量にかけた後真っ黒になるまで焼いたような味だ…ようするにスゲー不味い!!)

 

「ぁぁ!不味い!!もう一杯!!」

 

そう言って空になった試験管をアグネスタキオンの前に出す。

 

「…驚いた。いや、驚いたな…クッ、クク…アッハッハッハッハッハッハッハ!そんな勢いよく被験体になるやつがあるか!?しかも不味いと言っておいてもう一杯とは!!まるでモルモットだな、君は!!」

 

「好きにしな、実験動物(モルモット)でも構わねぇ!!薬や実験の被験者くらい喜んでやってやる!!」

 

「ーーふぅン?なかなか愉快なことを言うじゃないか。実験動物でもいい?人権を放り捨ててしまって本当にいいのかな?クククッ!…何が、君をそうさせた?」

 

ここが恐らく立ち止まれる最後の機会だろう。この質問に返答したら尚人はアグネスタキオンの実験動物(モルモット)になってしまう。そんな警告が聞こえても、尚人の感情が止まることは無かった!

 

「決まってるだろ、アグネスタキオン。君が言う"果て"…それを俺も見たくなったのさ。それ以外の理由が要るか?」

 

「ふぅーーーーーーン…。」

 

「俺はここに来て1ヶ月もない新人だ。それでも良いなら…俺に、君を担当させてくれ。」

 

かなり久しぶりに頭を下げた。これ以上の交渉材料は無い。断られてしまったら素直に立ち去るしかないだろう。

 

「言葉は月並み。だが狂気の虜…か、クックックックッ。ならば決まりだ、行くとしようか。」

 

「…何処へだ?」

 

「察しが悪いなぁ君は。職員室に決まっているだろう。担当トレーナーがついたというのに退学なぞしていられるか。」

 

「ということは…!!」

 

「ククッ、君の扱いはモルモット、あるいはそれ以下だがね。それでもよければ来るといい。誰も辿り着き得なかった"果て"を、私が見せてやる。」

 

こうして、二人の"狂気"は担当ウマ娘とトレーナーという契りを結んだ…

 

「…フム、いや待て。せめて症状が収まるまで待とう。無用な混乱や誤解を生んでしまっては面倒だからね。」

 

「え?症状?」

 

「気づいていないのか?…君、発光しているぞ。黄緑色に。」

 

「…あっ!!そういえば前そんな事言ってたな…」

 

この日から尚人には『発光人間』というあだ名がついたという…




『アグネスタキオン』
スピード 82 G+
スタミナ 76 G+
パワー 76 G+
根性 79 G+
賢さ 87 G+
所持スキル 『introduction:My body』『根幹距離○』『好位追走』『束縛』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。