ソードアート・オンライン 二次創作 『3人のユリ』 作:マスカルウィン
元々息抜き&実験で書いていました。
オリキャラ物は初めて作成したので、色々大変でした。
全4話完結済みで、1日に1話投稿させて頂きます。
基本的に前半部分がSAO終了後1年と少したった世界で、
後半部分がSAOをプレイしていたときのお話しで構成さされています。
ソードアート・オンラインと言うゲームを知っているだろうか?
いや知っているだろうこの世界ではあのゲームを知らない人は居ない。
仮想世界に取り込まれた約1万人のプレイヤー、が仮想世界で死んだら、実際に死ぬデスゲームに巻き込まれた。
そして俺もそのデスゲームに巻き込まれ、無事に生還した。
しかし無事に生還したプレイヤーの数は約6千人、他の4千人のプレイヤーはあの世界で死に、現実世界で亡くなった。
そして復帰した現実世界は、灰色に染まっていた。
ソードアート・オンライン 二次創作『3人のユリ』
2016年3月
リハビリを終え、ようやく普通に学校に通い始めるようになった。
中々現実に慣れる事が出来ず、いや受け入れる事が出来なかったせいか、リハビリが上手くいかず、他のSAO帰還者と比べてもかなりの時間がかかってしまった。
とにかく色々あったが、無事に政府がわざわざ俺達の為に用意してくれた学校に通っている。
元の学校と一瞬考えたが、どうにも馴染める気がしなかったし、そもそも政府がわざわざ用意してくれた学校の方が家から近いのだ、断る理由なんてない。
「とはいえ、どうにもやる気が出ないんだよな」
アインクラッドに捕えられる前から、勉強が好きな人間ではない、新しい学校もなんとなく通って、なんとなく過ごしていた。
最近でやることと言うのは、数年見ることができなかった町並みを探索して調べる事である。
見慣れた道のはずなのに、数年離れていると立っている建物や、店舗は軒並み姿を変えているのだ。
それを新鮮に感じながら、灰色に染まった街を当てもなく歩き続ける。
特にやることもない、これから先どうしたらいいのかわからない、当てもない散歩である。
チリン。
自転車のベルを鳴らされ、通路の真ん中でボーっと突っ立っている事に気づき慌てて端による。
一人の制服にみに包んだ少女が自転車に乗りながら通り過ぎた。
「ユリ……?」
その女の子は俺の灰色の世界で、唯一色を持っていた。
慌てて追いかけると、小さな居酒屋の駐輪場で自転車を止める彼女の姿を確認した。
「あの、すいません。 貴方はユリさんですか?」
「え? あ、はい私はユリです。 と言っても早百合ですけど」
「き、君はSAO帰還者なのか?」
「私は違います、残念ながら……双子の妹はSAOプレイヤーでしたが、帰って来ませんでしたが……」
一瞬世界に色が戻った気がしたが、急速にその色が失われて、元の灰色に戻っていく。
そうか、そうだよなあの時彼女は死んだんだ、この世界で生きているはずがないよな。
「貴方は、あの世界でのユリ……妹に会った事があるんですか!? 妹に似てるから話しかけたんでしょう?」
「あ、あぁ似てるから声をかけたけど別に知り合いってわけじゃなくて、こんな近くで他のSAO帰還者を見かけるなんて思ってみなかったから、それだけなんです、すいません」
頭を一つ下げてその場から立ち去ろうとする。
すると彼女が待ってと声をかけてきた。
「待ってください、もし時間を有効に過ごしたいなら一緒にここでアルバイトしません? 私はあの世界の事をもっとよく聞ける人を探していたんです」
「え? バイト? 聞ける人?」
「私は、あの世界の事をニュースやネットに流れている情報でしか知りません、けど貴方はあの世界を体験したんでしょう? 妹が体験した世界を、だからその妹がどんな世界で生きていたのか、知っている人に話を聞きたいと思っていたのです」
「バイトは?」
「人数不足だったので、それに何かしら関係を持ってないと話しにくくないですか?」
「まぁ、確かにそうかもしれないけども」
「丁度人数不足ですし! やりませんかバイト!」
「いやうん、考えておくよ。 君は悲しくないの? 妹が亡くなったんでしょう?」
きょとんした顔を此方に向けてくる。
一体何を聞いているのか? という顔だ。
「寂しいし、悲しいに決まっているでしょう? けどいつまでも落ち込んでいるわけにも行かないのも事実でしょう? あの事件から1年以上経過してるんです」
「そうか、そうだよな。 もうあの世界と分かれて1年以上経っているんだよな……」
いつまでも何もせずに、いないはずの彼女を探すなんてって話か。
「それでどう? 一緒にやりませんか?」
上目遣いに声をかけられ、喉が一気にかれる錯覚を覚える。
頭の中にノイズが走る。
寝ていたもう一人がおきるような感覚。
短剣を持ったもう一人の自分が『彼女』に手を伸ばそうとしているのがわかる。
違う、この人は『彼女』じゃない、同じ言動同じポーズ、けど彼女じゃないんだ。
「……どうかしたんですか?」
「今日はちょっと用事あるから、先に行かないといけない場所があるんだ」
嘘だ。
「そうなんですか、もし興味があったらまた声をかけてください! 勿論バイト仲間もいつでも大歓迎中です!」
「わかった、その時は是非」
用事なんてない、興味もある、もう一人の俺は必死に手を伸ばしているのがわかる。
けど俺は、ここで冷えて灰色に染めて引き下がらないと、多分彼女を壊してしまうから、だから……
70層で死んだ俺の最愛の人とは彼女は違う人なんだ。
そう言い聞かせて貼り付けた笑顔を彼女に振舞いながら、この場を去った。
2012年12月 第1層始まりの街
デスゲームが茅場の口から宣言されたあと、俺は一番安い宿に長期滞在の申請をし、ひたすら宿屋に引きこもり続けた。
ゲームだった頃のお話ならば、死んでもよみがえることができる。
しかしこのデスゲームになった後モンスターを狩りになんて行ける筈がない。
そして一ヶ月が経過し、2000人ものプレイヤーが死んだ事を石碑を観察していた酔狂なプレイヤーから聞いた。
「ハハハ……やっぱり攻略なんて無理なんじゃねーか。 さっさと助けこねーかな」
その話を聞いた俺は、乾いた口調で世界を笑い、攻略組みを笑い、また宿屋に引きこもる事を決めた。
「号外! 号外ダヨ! 一層のボス攻略成功らしいヨ!」
おいマジかよ! 等口々に騒ぎながらと沢山のプレイヤーがその情報に酔いしれる。
一部のプレイヤー達は各々パーティー募集の声を挙げ、フィールドに駆け出していた。
もしかしたら、俺でも闘えるかもしれないとその時は血迷った事を考えてしまったのは、一層のボス攻略と言う偉業を達成したプレイヤー達のおかげなのかもしれない。
もうすぐ手持ちのコルも無くなる、今踏み出さなければ今踏み出すんだ。
そう自分に言いつけて、使っていない片手剣を装備ウィンドウを操作し、背中に背負う。
剣の重みを背中に感じながら、初めてのフィールドに一歩踏み出した。
「広い……」
ここが仮想現実ではないという錯覚を覚えるぐらい、広い本当に広い空と大地がそこには広がっていた。
周りと見渡すと、パーティーを組んだプレイヤーたちが、イノシシのようなプレイヤーと敵対している姿が見える。
その様子を見ながら、見よう見ままでソードスキルを試すと、身体が自動に動き剣を振った。
その動きに感動していると、目の前にイノシシが一匹沸く。
「うわっ!」
慌てて剣を振ると、偶々敵に命中し、イノシシが俺をターゲットする。
その後イノシシの突進攻撃により、アバターが吹っ飛ばされ地面に叩き付けれる。
目の前に表示されたHPバーが少し減少していく。
いやHPバーじゃない、俺の命が削られたんだ。
そう考えると頭の中がパニックになり、狂ったように武器を振り回すがイノシシにはあたらない。
「来るな! 来るなよ!」
叫ぶように剣を振っていると、視界にパーティー狩りをしているプレイヤーが目に入る。
助けを呼ぼうと一歩踏み出すと、パーティーの一人がソードスキルを発動させたのが見えた。
ここで逃げたら、多分また宿屋に引きこもる日々に戻ってしまう。
イノシシの攻撃を剣で逸らし、ソードスキルを発動させるイメージをする。
「ふっ!」
スパーンという音と共にイノシシに攻撃がヒットし、イノシシのHPが減っていきアバターが四散した。
俺は溜まらず膝を折り、その場に座り込む。
HPバーを見ると黄色く点滅している。
これが0になると俺は死ぬ。
しかしこれが0にさえならなければ、死ぬ事は無い。
それをようやく理解した俺は、MMOと言うのにまったく準備してなかったイベントリに気づき、ポツポツとポップしたモンスターを狩って少ないコルを稼ぎ、それでポーションを買い込みフィールドに駆け出した。
まず俺がやった事はコル稼ぎだ。
ひたすら弱いモンスター、安全なモンスターを狩り続けて、上層に行っている攻略組みから強い武器を買う。
攻撃される前に、攻撃を繰り出し、敵を倒せば問題ない! と言う単純思考の理論からだ。
フレンジーボアをひたすら狩り続けて、溜まったコルで強化に失敗した、通称エンド品であるアニールブレード+1を格安で購入し、今度は防具をそろえるために一層のフィールドに駆け出した。
そんな時の話である。
森との境、アニールブレードの所得クエストがある森の境まで来たのだが、そこでボアが多めに発生しているのを発見する。
「森との境だから、誰も気づかなかったのか」
意気揚々と購入したばかりのアニールブレードを背中から抜き、突撃しようとした時の事だ。
ボアが誰かをターゲットしているように走っているのが目に入る。
視線をボアの先に移すと、そこでは一人のプレイヤーが必死にボアから逃げようとしているのが見えた。
森の中に逃げようとしたので、走りながら声を掛ける。
「こっちだ! こっちに逃げて来い!」
どうやら聞こえたらしく、プレイヤーが方向転換しこちらに向かってくる。
ボアの数は5体まずは3体タゲをとれば、あのプレイヤーは数分はもつだろう。
走りながら視界の中に入った、石ころを数個取り、ボアに投げつける。
数百対と倒したボアのおかげか、ソードスキルの発動は難なく行えるまで成長しており、石ころはソードスキル独特の光を放ちながらボアに命中する。
3体ボアは怒った様な声を挙げ、此方に向かってくる。
そのボアを新しい武器と、コル稼ぎの為に上がったレベルで難なく倒し、残りの二つも倒す。
「大丈夫か?」
そう言いながらポーションを差し出すと、それを受け取りありがとうと言った。
そこでようやく、俺が助けたプレイヤーは異性という事に気がついたのが情けない。
「ほんとーに助かりました。 ありがとうございます」
「い、いや無事でよかった」
どちらかと言うと女の子と話すのは苦手だ。
男子となら何も考えずに話す事はできるのだが、女の子と話すとなると萎縮してしまう。
そもそもこの世界に来てから、話したのは異性はNPCぐらいなもので……。
ずっと引きこもっていたんだ、仕方がないじゃないか
「そ、それですね?」
「えっと、はいなんでしょうか?」
「良ければモンスターの闘い方、教えてください!」
「え?……ぇ?」
「ダメって言うか、俺だって最近フィールドで戦うようになったばかりだし」
「な、なら一緒に安全に戦えるように!」
「いや、しかし――」
しどろもどろと頭の中で何故彼女がこんなに積極的なのかとか、どうでもいいことを考えてしまう。
彼女の話によると、始まりの街周辺で狩をしているプレイヤーに声を掛けてレクチャーしてもらおうと思ったのらしいのだが、
パーティーは皆バトル中で声を掛けづらく、うろうろしているうちにここまで来てしまったという事らしい。
このデスゲームが始まってからでは考えられない行動だ。
多分このまま俺には関係ないというのは簡単だ。
けど恐らく間違いなく、彼女の名前の石碑には線が一つ増えて、この世界と現実世界から永久にログアウトする事になるだろう。
「それでどう? 一緒にやりませんか?」
上目遣いで声をかけられて、一歩後ずさってしまう。
怖いわけではない、こんな風に女の子に声をかけられたことがないからだ。
色々考えた結果、頭を掻く振りをしつつ、赤くなった顔を隠しつつ答えた。
「わかったよ、俺の名前はユーリだ」
「ありがとうございます! 名前一文字違いなんですね! 私の名前はユリです。 これからよろしくお願いします!」
これが彼女との出会いであった。
あしたの19時に2話を予約投稿予定。